甘くてすっぱいイチゴのスイーツ

    作者:天木一

     ふわふわのイチゴのショートケーキ、サクサクのイチゴタルト。蕩けるようなムースにゴージャスなパフェ。高級感のあるイチゴのミルフィーユや、なんにでも使える万能のイチゴジャム。和菓子ならばもっちりとした苺大福なんてものまである。
     甘くてすっぱい真っ赤な果実が店頭に並び始めると、春が近いのだと感じることが出来る。
     イチゴはそのままでも美味しいが、スイーツにすればさまざまな味が楽しめる。スイーツに使われる果物の王様といってもいいだろう。その堂々たる姿は人を惹きつけてやまない、魅惑の果物だ。

    「うーむ……難しそうだな」
     図書室で貴堂・イルマ(中学生殺人鬼・dn0093)がじーっとお菓子作りの本を見ながら唸る。
    「どうかしたのかい?」
     そこへ本を返しにきた能登・誠一郎(高校生エクスブレイン・dn0103)が通りがかった。
    「買い物をしていたらイチゴが並んでいるのを見たんだ。それで自分でも何かイチゴのデザートが作れればと思ったのだが、ケーキの類は作ったことがなくて」
     レシピを見てもぴんとこないのだという。
    「あーお菓子作りってまた普通の料理とは違うしねぇ。んーそれなら他の人も誘って教えてもらうか、見て参考にしたらどうかな?」
    「なるほど確かに、実際の作業を見るのが一番だな」
     誠一郎のアドバイスに頷き、イルマは本を閉じて立ち上がる。
    「イチゴのデザートか、美味しそうだね。僕も参加していいかな?」
    「もちろんだとも、一緒に美味しいイチゴのお菓子を作ろう。日時は今度の日曜で構わないか? それでは、他の人を誘いに行ってくる」
     イルマは足早に図書室を出ると、イチゴのデザートを作らないかと灼滅者達に声をかけていくのだった。


    ■リプレイ

    ●苺
     調理室に甘酸っぱい香りが漂う。テーブルには宝石のように苺が並んでいた。
    「初めてのケーキ作りだ、がんばろう!」
    「美味しく出来ればいいねぇ」
     イルマと誠一郎が材料を計る。
    「最近イルマと一緒になるときは食べ物が関係する事が多いな」
     ヴァイスが餅つきや中華と食べ物絡みだったのを思い出す。
    「……その内『イルマのグルメ』的な特集も組めそうな気がしてきたぞ」
    「その為にはもっと美味しい食べ物を探さなくてはな」
     イルマは想像して笑う。 
    「あー、こういうのは俺もいまいち不慣れかも。適当でもなんとかなる料理と違って、分量間違えると結構大惨事だよね」
     そう言いながらも殊亜はマカロン作りに挑戦する。
    「早春の気配ですねぇ。イルマさんはロールケーキですか、私の方は苺大福です」
    「苺大福も美味しいな、できたら交換しよう!」
     紅緋とイルマは笑みを交わし料理を始めた。
    「さて、まずは簡単なコンポートから作りましょうか……」
     流希は慣れた手つきで苺を煮詰める。
    「で、次にイチゴのカスタードクリームを作って、と、ミキサーってどこに在りましたっけ……?」
    「苺尽くしドリームや! ヒャッホーイ!」
     回る悟を想希が楽しそうに眺める。
    「苺尽くしか。悟、何作りましょうか?」
    「んー……苺大福タワーとかどや! 苺大福てんこもりでビッグドリーム叶えよや!」
    「ふふ、いいですね。夢の塔です」
     笑って想希は頷いた。
    「ボク、お料理苦手だから、相棒にレシピを貰ってきたんだけど、作れるかな……」
    「大丈夫ですよ苺は夜月先輩にきっと味方してくれますから」
     不安そうな夜月を弥太郎が励ます。
    「んと、苺ムースに苺ゼリーを重ねて生の苺を飾るんだって、そんな難しくないって言ってた……頑張る!」
    「僕は苺大福を作ってみます。昔にやったことがあるので大体は流れで……」
     出来るのを楽しみにと料理を始める。
    「俺、いちご大好きなんだ、けど。料理、苦手、だから。谷古宇に、作ってもらおうと、思って……食べるのは、任せて」
     キリッとした表情で千太郞が宣言する。
    「完全に僕が作る担当で空屋くんが食べる担当だよね? 作るのは好きだからまぁいいけど♪」
     陽規がツッコミながらも笑う。
    「空屋くんは和菓子が好きみたいだから、いちご大福作ろうかなっ」
    「……いちご大福? ……それ、すごく、好き。物、とったりする、くらいなら、できるから」
     千太郞も少しでも手伝おうと隣に並ぶ。
    「苺のクラフティを作ってみます。まだ寒いし暖かいスイーツも良いかな、と思って。お土産用に冷めても美味しいですし」
    「こっちはイチゴのシフォンケーキに挑戦です。やったことはないけど挑戦挑戦! 上手く出来たらクラブの皆にお土産にしましょうか」
     ゆまと龍之介は皆にも喜んで貰おうと気合を入れる。
    「こういうの憧れてるんだけど」
    「お、これ作るのか。俺達にはまだ早い気もするけど」
     儚が雑誌を見せると隼人は照れて顔を赤くする。
    「可愛くてボリュームもあって、素敵だなぁって……え? あ、そっか、これ、ウエディングケーキ」
     何を見せていたのか気付いた儚も顔を真っ赤にした。
    「洋菓子は多岐さんに任せた」
    「洋菓子任された。おし、ロールケーキ作るわ」
     供助が苺大福を、多岐がケーキの準備に取り掛かる。
    「いちご大福とムースが食べたい! スイーツ班出動!」
     民子が指示だけ出そうとすると、強制的に作業台の前に立たされた。
    「こういうのは他人が作るのを食べる方が美味いと思うの……しかもムースじゃねーし、ちぇー」
    「俺は苺大福作る。白餡と漉し餡用意したから、好きな方でな」
    「いちご大福は白あん! イチゴは丸ごと!」
     供助が材料を並べると、これに決まってると民子が白餡で包み始める。
    「ムースか、合間に作るか」
     多岐が何を手伝わせようかと民子を見た。
    「わたしはいちごのシャルロットをつくるわ」
     樹は生地を焼きながら、流し込むムース作りに入る。
    「バースデーケーキですから、やっぱり生クリームのケーキがいいですね♪」
     一工夫しようと翡翠は平たい容器で苺プリンを用意してイチゴプリンのケーキを作る。
    「一切の手抜きを排除して、完璧に作るね」
     真剣な表情でライラがショコラタルトを作り始めた。
    「ううん……やはりといえばやはり、みんな手際がいいですね。これは私もまけてはいられません」
     彩歌は苺のシューを作ろうと皮を焼き、カスタードと苺クリームを作る。
    「こういう形で祝ってもらえるのって、なんだかうれしいです」
     今日はレイラの誕生日祝い、レイラもお返しにとクッキーを作ろうとしていた。

    ●料理
    「今日は2月生まれのメンツの誕生会だ!」
     錠がホットケーキの準備をする。
    「えへへ、また今年も皆さんに祝ってもらえて幸せ、です」
     めぐみが朗らかに笑う。
    「2月生まれのお祝いってことは、オレは食べるだけで大丈夫なんじゃないかな!」
    「誕生日だろうが関係ねぇ、お前らも一緒に作るんだよ。俺は全力で見張る係な」
    「つか俺の見張り役ってなんだよ、葉」
     錠のツッコミを無視して葉はスマホのカメラを、見学組みになろうとするエルメンガルトに向けた。
    「いちごのホットケーキですか……! がんばって卵わりますです!」
    「ともちゃん卵割れるかい。そうそう、めぐみ先生お手本にしよ」
    「お手本にさせてもらいますですめぐみ先生!」
    「あっはい! た、たまごを割ればいいんですねっ! 任されました!」
     鈴がアドバイスし、朋恵がじーっと見つめる中めぐみが卵を手に取る。
    「が、がんばれ、ファイトわたし!! 樹宮せんぱいの期待に応えて、ともちゃんさんに年上らしいところを見せるの……!」
     だが卵は虚しく砕け散った。
    「ほい、ともちゃん笑ってー。由乃ちゃんもスマイル1つ下さい。あとでエルに高く売るから」
     葉が手伝う2人をパシャパシャと写真に収めていく。
    「トモちゃんもメグミも手伝うんだねそっか。そっか……せめて味見を」
    「エル先輩摘み食いだめよ、安土先輩と生クリーム泡立てて!」
    「ハイ! 泡立てます!」
     鈴の指示にエルメンガルトも慌てて手伝う。
    「ん? 生クリーム混ぜればいいのか? 了解」
    「コレがあの生クリームみたいになるまで混ぜればイイんだな!」
    「いや、エル、同じ方向に回すのがコツだ」
     香艶が手本をみせてやる。
    「由乃先輩、草神様に感謝しながら苺のヘタ排除しよ……」
    「では私達はジャムをこさえましょうか」
     鈴と由乃が沢山の苺のヘタを取り始める。
    「俺は最近よくフレッシュジュースの店を利用するんで、自分でもやってみっかな」
     香艶が材料を並べる。
    「イチゴミルクは牛乳の代わりに豆乳でいちごソイな」
     丁寧にアレンジした苺ジュースを作っていく。
    「よっしゃ固まってきた」
    「つくしー ピンクー ちゃんと焼けてますか? ああ、急いてはいけません。落ち着きを持って穏やかな心でじっくりと、ステイ!」
    「言われなくてもちゃんと見張ってるっ……って、ステイ!」
     錠がひっくり返そうとしたのを由乃と撮影中の葉は止めた。
    「そんじゃ早速……ってえ? まだはえーの?」
     2人に止められはやる気持ちを抑えてぷるぷるして待つ。
    「ここから本気出しますです……!」
     積まれていくホットケーキに朋恵が苺とクリームでトッピングしていく。
    「気合入れていきますわよ!」
     全ての指に絆創膏を貼った桐香が、緊張して危なっかしく作業を始める。
    「指、大丈夫ですか…?」
     いちごが心配そうに見守る。
    「あ、あら? 何故こんな状況に……?」
     気付けばテーブルの上は混沌としていた。どうしようと子犬がすがるような目で振り返る。
    「落ち着いてください。お手伝いしますから、ね?」
     手早く片付けていちごが新たな準備をしてくれる。
    「頼りになりますわ♪」

    ●スイーツ
    「それでは、御剣様は苺に溶かしたチョコを付けて苺チョコを作っていただいてよろしいでしょうか?」
    「溶かしたチョコをつける……それぐらいなら、多分できる!」
     自信ありげに溶かそうと奮闘するが、水を入れたりと試行錯誤を繰り返す。そんな様子をヒノエは微笑んで見守っていた。
    「うぅ…でも、なんとか出来たぜ」
     何とか出来上がった物を手渡す。
    「ではここからはお任せください」
     ヒノエは苺ショートを手早く作り始める。
    「同じ大きさだと重ねにくいから、色んな大きさがいいと思うんです」
    「大きさ変えるんえぇな! のった!」
     想希の意見に乗って悟が早速作り始める。中身には餡や生クリームにクリームチーズまで様々な物を詰める。
    「レシピ通りに作ればいいのは分かるのだが。さて、とにかくやってみるか」
    「イチゴのババロアか……私も作ったことは無いけれど、うまく出来るかな……?」
     久遠と言葉は一緒にレシピを見ながら料理を始める。
    「……成程、レモンはアクセントとして入れるのか」
    「ふむ……ゼラチンはこう使うんだね……寒天なら得意なんだけど……!」
     手探りのようにレシピの意味を読み解きながらも順調に進み、冷蔵庫に入れて完成を待つだけとなる。
    「余った材料で苺牛乳を作るか」
    「後は冷やして固めるだけだね? 私も一品作り足そうかな……?」
     2人は材料を見て次のお菓子作りに取り掛かる。
    「イルマさんマカロン好き? 何個食べる?」
    「マカロンは好きだ、うむ、それなら5……3つで」
     殊亜の質問に、イルマは少し遠慮して答える。
    「3個だね、ロールケーキと交換しよう」
    「わかった、がんばって美味しいケーキを作ろう!」
     集中して作業を続ける。
    「お手伝いしますよ」
    「ありがとう、では巻こうか」
     紅緋とイルマがせーので巻くと、横から苺やクリームがはみ出る。
    「あーちょっと盛りすぎたかな?」
     たっぷりと乗せまくった誠一郎がはみ出たクリームを掬った。
    「……すごい、ね。どんどん、いちご大福に、なってく。なんだか、魔法見てる、みたいな気、してくる……」
    「はい、試食どうぞーっ」
     出来上がった苺大福を陽規が差し出すと、目を輝かせて千太郞が口に運ぶ。嬉しそうに頬を膨らませた。
    「出来立て、だから。余計おいしい……もう一個、食べて良い? だめ?」
    「もう一個? まぁ今回は空屋くんの為に作ったんだし、好きなだけ食べていいよっ、じゃないと勿体無いしね」

    ●おやつの時間
    「誕生日おめでとうー!」
     パンッとクラッカーが鳴り響き、テーブルの上には赤いスイーツが所狭しと並んでいた。
    「わあーありがとうございます。私もみなさんにクッキー作ったので、食べてください」
     レイラは嬉しそうにしながらクッキーを差し出した。
    「ううん、これだけ沢山の種類があると壮観ですね……! 私も沢山作ったので、いちごパーティと参りましょうか。」
     彩歌の言葉に頷き、皆がワクワクしながら食べ始める。
    「完食するわよ」
    「皆さんのもとっても美味しそうです♪」
     ライラが皿に乗せていく。翡翠もレイラに渡して自分も頬張った。美味しいですとレイラも蕩けるように笑う。
    「これからの1年もいい年になるようにしたいわね。……わたしもみんなが作ったものを食べさせてもらっていい?」
     皆の幸せそうな顔に混じり、樹も甘い苺のお菓子を頬張った。
     チンッと音がするとゆまがオーブンから取り出そうと手を伸ばす。
    「はうっ!」
    「あ、水瀬さん、大丈夫ですか? やけどしないように気をつけてくださいね?」
     少し触れて思わず手を引っ込めたゆまを、龍之介が気遣う。
    「熱かったです……えへ、はい、気をつけるです」
     完成したクラフティとシフォンケーキを並べる。
    「出来上がったけど、うーん。初挑戦としてはまだうまくできたのかな?」
    「相羽さん、シフォンケーキとても上手に出来てる。初めてとは思えないですよぅ!」
     2人はお土産分を除けると、周りの皆にもお裾分けし、いただきますと笑顔を共にする。
     大福が塔のように積み上げられていく。
    「一番天辺のだけは特別だから、王様乗せて?」
    「へ? 苺帽子? なるなる、そいつがてっぺん! 王様か! やるな想希!」
     差出し出された苺を2人で共に乗せた。そして顔を合わせ笑い会う。
    「悟、記念撮影しません?」
    「記念撮影えぇな!」
     塔の前であーんと想希が差し出すと悟がかぶりつく。その場面が切り取られ、一枚の写真に収まった。

    「飾りつけに先程御剣様に作ってもらった苺を乗せれば完成です」
    「おぉーすげー!」
     ヒノエが並べた見事なショートケーキを前に、菖蒲が歓声をあげる。
    「苺のショートとかつくれるとか天才か! 今度一緒作ろうぜ!」
    「そうですね、今度は一緒に作ってみましょうか?」
     自分も作ってみたいと目を輝かせる菖蒲に、ヒノエも釣られるように笑みを浮かべ、2人仲良く美味しそうに食べ始めた。
    「えへへ、意外と上手くできた! 弥太郎、食べてみて? ね?」
    「はい、一緒にいただきましょう」
     苺ムースに苺ゼリーその上に飾られた苺。鮮やかな赤いケーキを夜月が見せびらかすと、弥太郎も苺大福を見せる。
    「夜月先輩の作りたての苺デザート……うん、とても美味しいです」
    「んー! 弥太郎の作ったの可愛くておいしい! ボク苺大福大好き!」
     2人は互いのお菓子を食べて笑みを浮かべ、苺の甘さを堪能する。
    「久遠、その……良かったら、あーん……?」
     言葉はババロアを掬ったスプーンを久遠の口に運ぶ。
    「……うむ、美味いな。俺からも食べさせてやろう」
     久遠もスプーンを手にしてお返しにとあーんをする。甘い雰囲気の中2人は微笑みあった。
     儚と隼人が白いケーキに苺をたくさん載せていく。
    「これが愛の協同作業かな、なんて」
    「ケーキ一緒に切ろうか」
     完成したウェディングケーキを前に照れる儚。隼人はそんな姿に花嫁姿を連想し同じように照れながらも、手を取って一緒にケーキを切り分けた。
     2人の気持ちを示すように、ケーキはとても甘い物になっていた。
    「緑茶にあう! めっちゃ美味しい!」
     民子が大福、ムース、ロールケーキとぱくぱく食べてはお茶を呑んで幸せそうにほうっとする。
    「これちょっと貰っていい? エルさんにお裾分けしたいんだけど」
    「誕生日の席に一緒に持ってけ」
     ケーキを食べながら供助が誕生日で騒ぐ近くの知り合いに目をやると、苺大福を食べていた多岐が盛り付けた皿を渡してやった。
     2つのイチゴショコラタルトが皿に並ぶ。
    「これで完成! ……とは言っても半分以上いちごさんが作った感じですが……」
    「いえいえ。私は手伝っただけですから。桐香さんのいただきますね?」
    「どうぞ召し上がれ」
     ケーキを食べるいちごを、両手で頬杖をつき笑顔で見つめる。
    「ふふっ、幸せですわ」
    「私のもどうぞ。見てばかりいないで食べてくださいな」
     そんな桐香にいちごが作ったケーキを差し出す。
    「本当はずっと見ていたい位ですが……」
     ケーキを口に運び頬を緩めた。

    「さ、皆さん、一緒にお茶にしましょう」
     紅緋がお茶を淹れて並べる。
    「では、いただこう」
     イルマがケーキと大福に手を伸ばす。
    「形は崩れたが、美味しくできてるな」
    「上手く作れましたね」
    「いや~、やればできるもんだねぇ」
     イルマと紅緋が食べながら頷き合い、感心したように誠一郎も頬張る。
    「シフォンケーキを作ったんで食べてみてくださいねぇ……。いやはや、一度作ってみたかったのですよ……」
     流希のコンポートとクリームを添えられたケーキをイルマと誠一郎は口に運び、ふわふわの食感を楽しむ。
    「なかなか上手くできたと思うけど、さあイルマさん食べるといい」
     殊亜が差し出す6個のマカロンを前に、イルマは目を輝かせてかぶりつく。
    「甘すぎないようにしてみたけどどうかなぁ」
    「うん、美味しい!」
     小動物のように食べる姿を殊亜は微笑んで見守る。
    「お裾分けだ。イルマの作ったケーキも美味しそう……良かったら食べ比べでもしてみるか?」
    「美味しそうだな喜んで交換しよう!」
     ヴァイスの苺の練乳プリンは蕩けるような味わいで、イルマは夢中で食べる。それを見てヴァイスも釣られたように笑い、ケーキを口に運んだ。
    「これで完成かな」
     香艶が最後の苺を置くと、でーんと天を突く大きさのホットケーキタワーが完成した。
    「タワーすげえ……どこから入刀したら良いんだ……」
     鈴が思わず唸る。
    「完成なのです……って、す、すごいおっきいタワーなのです! 食べるのもったいないのです……! けど、お祝いにはぴったりですね」
     朋恵が感激したように目を輝かす。
    「誕生日おめでとう!!」
     仲間達が一斉に声を揃えて3人を祝う。
    「エルせんぱいもともちゃんさんもおめでとうございます。わたしにも、おめでとうをありがとうございます」
     皆からの祝辞にめぐみも笑顔を返す。
    「まあその。来年の誕生日も一緒に祝えるといいですね」
     由乃が今日は楽しかったと微笑む。
    「……で、どうやって食うのコレ。一個でもイチゴ抜いたら崩れそう。まあいいや、とりあえず一枚撮ろ」
    「モチロン今日の主役の3人を真ん中にしてよ」
     葉がカメラを構え、錠が皆を並べる。
    「ジャムもいっぱい塗って、誕生日おめでとうありがとう!」
     エルメンガルトはホットケーキにかぶりつき頬張った瞬間、カメラが風景を切り取った。
    「わぁスゴイねぇ、僕が写真代わろうか?」
     誠一郎がスマホを受け取り葉も加わってボタンを押す、するとエルメンガルトが取った部分から崩れそうになるタワーを皆で支える場面が写し出された。

    作者:天木一 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年3月6日
    難度:簡単
    参加:36人
    結果:成功!
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