●花の娘
彼女の名は羽蝶蘭。
名の由来となったのは可憐な花をつける小さな蘭。そのなかでも珍しい白花を咲かせる蘭に似ていると言われ、かつての主人にそう名付けられた。
白花羽蝶蘭の花言葉は『百年の恋』。
主から貰った名をとても気に入っている彼女の口癖は――。
「……あれじゃ百年の恋も冷めてしまうわ」
蘭の名を持つヴァンパイアは倒れた青年を見下ろし、自分の爪先に滴る血を舐め取った。その爪で胸を貫かれたらしい青年は既に事切れているが、蘭は構わずに続ける。
「せっかく素敵な恋が出来ると思ったのに。貴方にはがっかりよ」
青年を言葉巧みに連れ込み、この部屋の中で口付けを交わすまでは良かった。だが、相手がヴァンパイアだと夢にも思っていなかった青年は、蘭が首筋に鋭い牙を突き立てようとしたことに気付き、驚きの声をあげたのだ。
それが彼女の気に障り、青年は殺されてしまった。
こうして人を殺してしまうのも既に数人目。死した青年から興味を無くした蘭はぼんやりと遠くを見つめた。
「ああ、私を愛してくれる人はいないかしら。例えば百年の恋をしてくれるような――」
ヴァンパイアは夢見がちに呟き、窓辺から外を見つめる。
射し込む夕陽は赤く、床に広がってゆく血を奇妙な色に照らし出していた。
●百年の栄華
軽井沢の別荘地の一部は今、ブレイズゲートと化している。
その中のひとつの洋館に羽蝶蘭と名乗るヴァンパイアが巣食い、付近の住民を拐かしているらしい。彼女は気に入った相手を見つけると言葉巧みに洋館に連れ込み、相手にひとつでも気に入らない所があると殺してしまうという恐ろしい行いをしている。
事前に調査に向かい、羽蝶蘭の情報を持ち帰った灼滅者の話を聞き、君は仲間と共にブレイズゲートへ赴くことにした。
この地の中心となる洋館はかつて高位のヴァンパイアの所有物だったが、サイキックアブソーバーの影響で封印され、配下達も同様に全滅した。
しかし、この地がブレイズゲート化した事で消滅したはずの者達が蘇り、かつての優雅で残酷な行いを繰り返すようになったのだ。
ヴァンパイアは範囲外に影響するような事件を起こすわけではない。だが、その中に一般人が取り込まれているのならば放ってはいけない。
敵の灼滅を決めた君達は件の洋館へ向かう。
ありもしない百年の恋を夢見て、殺戮を繰り返す悪しき吸血鬼を滅ぼす為に――。
参加者 | |
---|---|
天鈴・ウルスラ(踊る朔月・d00165) |
偲咲・沙花(偽演ユースレス・d00369) |
遊木月・瑪瑙(ストリキニーネ・d01468) |
成瀬・圭(エモーションマキシマイザ・d04536) |
水門・いなこ(影守宮・d05294) |
香坂・天音(遍く墓碑に・d07831) |
猪坂・仁恵(贖罪の羊・d10512) |
袖岡・芭子(幽鬼匣・d13443) |
●希う恋
百年の刻。それは愛を紡ぐには長過ぎるほどの時間。
花の名を抱くヴァンパイアは洋館で独り、百年の恋を夢見ている。窓辺で外を見つめる彼女を捉え、灼滅者達は部屋に踏み入った。
「はい、こんにちは」
猪坂・仁恵(贖罪の羊・d10512)の抑揚のない声が耳に届き、羽蝶蘭が振り返る。
「お客様かしら。でも、ノックもしないなんて失礼ね」
「随分とお悩みの様子ですけれど、もしかして恋の悩みです?」
「……余計なお世話よ」
胡乱な眼差しを向ける敵の声には答えず、仁恵は少しくらいなら相談に乗れますよと告げた。そんな仁恵の視線は一瞬、傍らで倒れている死体に向けられる。
同じく部屋の中にある亡骸の存在に気付いた偲咲・沙花(偽演ユースレス・d00369)は密かに冥福を祈った。
恋に恋するとはよく言ったものだが、それは普通の乙女だからこそ可愛らしいものだ。
沙花は胸中で独り言ち、目の前の吸血鬼を見つめた。
警戒をにじませるヴァンパイアに対し、水門・いなこ(影守宮・d05294)はスカートの裾を恭しく摘み、ナノナノと共に軽いお辞儀をしてみせる。
「さぁてお見知り置きを、お姫様。わしは水門のいなこ、そしてこちらがおかあさんじゃ」
「ご丁寧にどうも。私は羽蝶蘭。それで……貴方達は何をしに来たの?」
いなこ達を見つめ返すヴァンパイアは静かに問うた。
彼女に対し、成瀬・圭(エモーションマキシマイザ・d04536)は強く宣言する。
「決まってんだろ。お前を灼滅しに来たんだ」
彼女が夢見る百年の恋なんてそうそうありはしないものだ。一生添い遂げるだけで難しいってのによ、と圭は小さく零した。不意に、その姿を見た羽蝶蘭の目の色が変わる。
「あら、貴方はとても素敵ね」
「はあ!?」
彼女の好みには適合しないと踏んでいた圭は、熱い視線をどう受け止めていいかわからずに一歩後ずさった。
「ははぁ、これはまた意外な選択ですね」
仁恵は無表情のまま、圭と羽蝶蘭を見比べる。その隣で天鈴・ウルスラ(踊る朔月・d00165)は実に複雑な表情を浮かべていた。
「恋に恋するお年頃って年でもないでゴザろうに……不快でゴザルな」
不快なのは所業についてか。それとも、別の感情からかは自分でも判断がつかなかったが、ウルスラは首を振って妙な考えを振り払う。
「恋は盲目。よく言ったものね」
香坂・天音(遍く墓碑に・d07831)は軽い溜め息を吐き、敵と仲間達の様子を眺めた。
この先の恋の展開がどうなるのかいまいち読めぬまま、遊木月・瑪瑙(ストリキニーネ・d01468)も静かに身構える。
「夢を見るのは自由だけど、そこに巻き込まれるのは、ちょっと遠慮したいかな」
「そうだね。いざこざはよくない」
袖岡・芭子(幽鬼匣・d13443)も瑪瑙の呟きを聞き、こくんと頷いた。
愛して欲しい。その感情はつまり、自分の全てを認めて欲しいということだ。芭子は改めてヴァンパイアを見遣り、素直な感想を零す。
「君は可愛いと思うよ、でもちょっとだけ許容範囲が狭すぎるんじゃないかな」
欠点も含めて、愛だと思う。
そう語る芭子だったが、肝心の羽蝶蘭は圭に夢中だ。ウルスラがむむむ、と唇を尖らせる様に気付いた天音は、これ以上の会話は不毛だと感じる。
そして――天音はスレイヤーカードを取り出し、己の力を開放した。
「さあ、始めましょ。貴女のレクイエムを」
天音の傍らにハンマークラヴィアが現れたと同時に仲間もそれぞれに構え、沙花も解除の言葉を口にして霊犬のナツを呼び寄せた。
「始めようか、人形劇を」
「ぬしゃの王子様は来ん、でも今日はわし達と逢引をしようぞぇ」
いなこも悪戯っぽい笑みを浮かべてヴァンパイアに言い放ち、戦いへの覚悟を抱く。
恋に焦がれる娘に与えられるのは愛ではなく、灼滅の道。
彼女が希う百年の恋など始まる前に終わってしまうだろう。何故なら、かのヴァンパイアの命は今日この日に、自分達の手によって潰えるからだ。
●恋の惑い
彼女達の名は、戦闘集団「Epitaph」。
自分達はあらゆる闇を切り裂いて滅し、その名を墓石に刻んできた。
「――今日で貴女も墓碑銘の仲間入り。覚悟はいいわね、羽蝶蘭?」
貴女の恋の終着点になってあげる、と先陣を切った天音が敵へ突っ込めば、続けてライドキャリバーが駆ける。
身構えた二人を一瞥した羽蝶蘭は不敵に笑み、魔力を宿した霧を発生させた。
「いいわ、私は愛を力で勝ち取ってみせる」
自らの力を高めた敵を渦巻く瞳に映し、仁恵はわずかな警戒を抱く。相手は武器こそ持っていないが、秘めたる力は相当なものだろう。
「回復は任されたですよ、皆頑張って暴れてきて下さいね」
仲間達に告げ、仁恵は自らの腕を鬼神のそれへと変じさせた。
華奢で小さな身体とは不釣り合いなほどに巨大化した腕がヴァンパイアを貫き、仁恵は自分に破壊の力を宿す。
それに合わせて瑪瑙も駆け、同じく鬼神の一閃を振るった。
相手が力を溜めるなら此方もそれを上回る手を打つだけ。瑪瑙の淡々とした眼差しは何処か鋭く、敵を捉えていた。
そんな中で、先程の敵の言葉を聞いた沙花は眉を顰めていた。
「……愛、ね」
ごっこ遊びとすら呼べぬそれは恋愛なのだろうか。彼女が殺した誰かと恋をするはずだった者もいるかもしれない。芽吹く前のそれを殺した罰は重すぎる。
ナツ、と名を呼んだ沙花は霊犬を敵に向かわせながら、複雑な思いを向けた。
その間にウルスラが防護符で己に力を与える。
「恋だ愛だと兎角ややこしい事を成り立たせるには、誠実さと覚悟が必要でゴザル。相手を試すような真似をしてる時点で、お主に愛を語る資格はないでゴザル」
思いの丈を敵に告げ、ウルスラは次の手に備えた。
その通りだね、と同意を示した沙花が盾の防護を張り巡らせた動きに合わせ、いなこも守りの力を発現する。
「甘い言葉よりももっと甘い、殺し合いという逢引で見惚れさせてやるのじゃ」
いなこ達の補助によって力が漲っていく。その頼もしさを感じながら、前に踏み込んだ芭子は圭に呼び掛けた。
「さ、成瀬、行こうか。見せてあげようよ。私達エピタフで一番の火力組の力をさ」
「ダンスは得意かい、羽蝶蘭。 一曲付き合いなよ」
芭子の声に頷いた圭は相手に挑発めいた言葉を投げ掛け、床を蹴り上げる。二人が同時に放つ鬼神の力は左右から敵を穿ち、衝撃を与えた。
されど羽蝶蘭とて強力なダークネスだ。
痛みを振り払った敵は圭を狙い、攻撃へと転じる。瞬時に逆十字が圭の身を抉り、痛みに耐える短い声が零れた。
すかさずナノナノのおかあさんがふわふわハートを飛ばし、仲間を癒す。
だが、巡る催眠は強力な効果を以て圭を惑わせはじめていた。
「なんだこれ、頭が――」
「成瀬……大丈夫?」
窺うように首を傾げた瑪瑙はすぐに彼が危ういことに気付く。
とりあえず一発殴ってみてもいいが、きっとこんな時に限って余計な影響が出てしまうのが関の山。無視しておこうと判断した瑪瑙の考えの奥には、ウルスラや仁恵が何とかしてくれるだろうという信頼がある。
「これで貴方は私の物よ。本当はそっちから好きになって欲しいのだけど、ね」
くすくすと笑む羽蝶蘭は催眠効果に苦しむ圭を手招く。
だが、そのとき。
「目ぇ覚ますデース!!」
「うおっ!? 何だ、ウルスラか」
ウルスラの声と共に圭へと防護の符が叩きつけられ、催眠が解除される。戦闘効果とはいえ、恋人として彼が惑わされるのに我慢ならなかったウルスラの一閃には、愛しさとせつなさと切実さが織り込まれていた。
「まぁ、こういう展開になるわよね。王道ってところかしら」
天音は仲間のやりとりに小さく双眸を細め、催眠がこれ以上の被害を出す前に、と更なる防護を施した。
クラヴィアも機銃を掃射し、ナツと沙花も相手の動きを留めようと狙う。
「今まで勝手をしたんだ、血みどろの花は散る頃合いだ」
容赦のない言葉と一閃を打ち込んだ沙花は敵を睨み付けた。其処に体勢を立て直した圭が加わり、釘バットを振るう。
「無粋者で悪いな。生憎、売約済でね」
攻撃と同時に圭はちらとウルスラを見遣る。彼の視線に気付き、ウルスラは思わず赤面してしまった。その様子を見ていた仁恵は軽く手を叩き、「なるほど」と口にする。
「その圭とか言う男は、彼女が今ここにいるのじゃぞ! その眼鏡じゃ!」
いなこは二人を指差してひやかす。
すると、それを聞いた羽蝶蘭は心底残念そうな溜め息を吐いた。
「何よ、その子が恋人なのね。貴方はもう要らないわ」
結果、圭はフラれた。
瑪瑙は茶番と化した流れに何とも言えぬ感情を抱き、神霊の剣を敵に向ける。
「さて、恋愛ごっこにわざわざ付き合ってあげる義理はないね」
力で得る恋など言語道断。
そして、瑪瑙は迷いのない一撃を羽蝶蘭へと放ち、敵が宿す力を打ち砕いた。
●恋と愛
羽蝶蘭は当初、灼滅者を一捻りにする心算だった。
しかし、彼女の最大の誤算は相対する者達が学園でも相当な力を持つ戦闘集団だと知らなかったことだ。
天音やクラヴィア、ナツが仲間を守る為に立ち回り、ウルスラが敵の動きを留める。
いなこは付与した怒りをシャウトで消されたことで支援に徹する方が良いと判断し、おかあさんと一緒に補助を重ねてゆく。
そして、攻撃手には芭子と圭、瑪瑙が回り、敵を少しずつ弱らせていった。
「なかなか、やるじゃない……!」
「君は恋をしたら何をしたいんですか?」
仁恵は仲間達に癒しの歌声を施した後、羽蝶蘭に問う。
「相手に敬ってもらいたい? 相手に大事にされたい? 相手に愛されたい?」
「そうね、その全てだわ」
頷く敵に対し、仁恵は更に問いを重ねた。
「じゃあ、君は相手に何をしてあげるって言うんですか」
求めるばかりじゃ相思相愛とは言えねーですよね、と語る仁恵の眼はぐるぐると渦巻いており、感情が読み取れない。
次の瞬間、次の攻撃が来ると察知した沙花は銀硬貨の盾を構えた。
「恋に恋したままじゃ、何も見えないよ」
沙花は芭子に向けられた紅蓮斬を受け止め、縛霊手で斬撃を弾き返す。そして、流星めいた蹴りで反撃を放った。
彼女に続いた瑪瑙は魔術杖を握り、『百年の恋』を語る敵を思う。百年なんて時間がどれだけのものかなんて自分には見当もつかない。
けれど、ひとつだけ分かることがあった。
「少なくとも、君がそのままである限りは相思相愛なんて成り立ちそうにもないね」
解き放つ魔力の奔流で羽蝶蘭を貫き、瑪瑙は片目を瞑る。
ウルスラも黒死の斬撃を放ち、敵のこれまでの行いを非難した。
「パートナーに不満の無いカップルなど居らんでゴザろうよ。不満があっても傍に居る為に必要なのが愛情ってもんじゃないデース?」
「……煩いわね」
問うてみても良い反応は返ってこない。だが、別に恋愛講座をしたい訳ではなく、ウルスラ達が此処で彼女を屠ることに変わりはない。
ウルスラの一閃の後、圭も先程のお返しとばかりに踏み込む。
戦いをダンスと表現したとおり、圭はその無骨な外見とは裏腹に舞うように華麗な槍撃を打ち込んだ。リズムに乗った流麗な動きの中、圭は語る。
「永遠に続く恋なんてない。だから、オレたちはそれを求めて足掻くんだ」
そうするのがキレイな恋の形だ、と。
灼滅者の見事な連携に追い詰められていく中、羽蝶蘭が目を付けたのは芭子だった。おそらく、最初に「君は可愛い」と語った言葉を覚えていたのだろう。
「ねえ、私のものにならない?」
縋るように手を伸ばした敵を真っ直ぐに見つめ返し、芭子は口を開く。
「百年の恋ができたら素敵だよね」
「ええ、男なんて結局裏切るわ。だったらいっそ女同士で愛し合うのも良いでしょう?」
愛して欲しいと思うのはきっと誰でも一緒だ。
だが――。
「……やっぱり君の愛って、私の思っている物と違う気がするよ」
ごめんね、と閃光を纏う拳を突き付けた芭子は呟く。
君は愛せないと思う、と。
「でも良かったら、覚えていて欲しい。恋は、世界で一番ポジティブな感情だよ」
そう告げた芭子の殴打が敵を襲う中、天音も思いを言葉に変えた。
「愛でも恋でも、押し付けて相手を傷つけるなら、それはナイフと変わりないのよ」
天音が凛と告げると、クラヴィアが機銃を掃射した。その弾雨の中を低姿勢で駆けた天音は、龍を模した両腕を燃やして叫ぶ。
「燃えろォぉぉぉおおぉっ!!」
放たれたのは力任せの殴打から始まる至近距離のラッシュ。其処に勝機を見出した仁恵はもう癒しは必要ないと判断する。
「行きますよ。癒しは任せされましたが、ニエが暴れねーとはゆってねーですよ!」
愛よりも、恋は難しい。
受容することを知らず、正すことも出来ぬ相手ならば、後は灼滅するだけ。振り上げた仁恵の魔術杖は力の奔流となり、猛威を振るう。
いなことおかあさんも攻勢に移り、流星の蹴りとしゃぼん玉が炸裂してゆく。
「灼滅してやるのじゃ。わしの仲間がな!」
夢はもう終わり。そして、おやすみお姫様。
もう起きてくれるんじゃないぞぇ、と告げたいなこが射線をあけた先には、最期を狙って駆ける瑪瑙の姿があった。
至近距離まで間合いを詰めた瑪瑙は鬼のそれへと化した腕を振り下ろす。
「人の感情は移ろい易いもの。永遠もずっとも信じていないけど」
羽蝶蘭にだけ聞こえる声で囁いた瑪瑙の一閃は刹那、敵に命の終わりを齎した。
「嫌よ、私の百年の恋は、まだ……」
「夢を見るのなら、覚めない夢に落ちれば早いよ。そこで永遠を探せばいい」
倒れゆく羽蝶蘭を見下ろした沙花は、最後まで恋を求めた彼女にわずかな羨望を覚えながら、そっと目を瞑った。
●恋の終わりと始まりに
館には静寂が訪れ、全ての後片付けを終えた一行は帰路につく。
部屋の扉を閉めた圭はふと思い立ち、傍らのウルスラへ自分なりの思いを告げた。
「百年かはわかんねーけど、そのくらい長い恋をしてえよ。お前とね」
「願わくば、死が二人を分かつまで。ありきたりな言葉ですが、そう在ってほしいですね」
耳打ちに頬を染めたウルスラは照れながら頷く。
だが、しかし――仲間達がそれを見逃すはずがなかった。
「ひゅーひゅー」
「ひゅーひゅーだね」
淡々とした声で煽る仁恵。合わせてひやかす芭子。
いなことおかあさんも賑やかしに入る中、瑪瑙やナツを抱いた沙花や一歩離れた所で静かに見守る姿勢に入っている。
「貴方たちねえ……」
天音はその様子に呆れていたが、不意に緩く双眸を細めて思う。
何処へ行っても皆はいつも通りなのだろう。
賑やかで奔放。それでいて、戦いでは誰よりも頼れる真剣さを持つ仲間。快い思いを抱き、天音は皆と共に洋館を後にする。
こうして、永き刻を夢見た娘の物語は死という結末で終幕を迎えた。
百年の恋は叶わずとも、きっと――その名は永劫、彼女達の掲げる墓碑に刻まれる。
作者:犬彦 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年2月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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