
「ね、折角だからさー、この季節だけにしか体験できないお祭りにいかない?」
いつものように唐突に言った飛鳥井・遥河(中学生エクスブレイン・dn0040)に、教室にいた綺月・紗矢(小学生シャドウハンター・dn0017)や伊勢谷・カイザ(紫紺のあんちゃん・dn0189)は首を傾ける。
「この季節だけのお祭りって、どんなのだ?」
「冬ならではのもの、ということか」
「そーそー、冬といえば雪! 雪といえば、こんなお祭りなんてどう?」
遥河はそう言って、どや顔でガイドブックを広げる。
そんな、冬ならではのお祭りとは。
「『かまくら祭り』? おお、確かに冬ならではなお祭りだな!」
「すごくたくさんのかまくらがあるんだな」
「この『かまくら祭り』はね、日光市の湯西川温泉で毎年行なわれてるイベントなんだけど。かまくらの中で楽しめる『かまくらバーベキュー』や、夜になると何百個もあるミニかまくらにキャンドルが灯される『ミニかまくらイルミネーション』が人気なんだって! それにね、雪の滑り台とかそり遊びとかスノーシュー体験とか、雪で目一杯遊べるんだよ!」
日光市湯西川温泉街で毎年行なわれている、『湯西川温泉 かまくら祭』。
大小様々なかまくらが作られ、昼も夜も、雪を存分に満喫できるイベントだという。
そんな祭りの中でも、昼の催しで人気が高いのは、かまくらの中でバーベキューができる『かまくらバーベキュー』。文字通り、かまくらの中でバーベキューができるというのだ。東京ではなかなか体験できない珍しいバーベキューを、わいわい楽しんでみるのも良いだろう。
また、雪でできた滑り台やそり遊びなど、色々な雪遊びもできるという。
バケツとスコップが自由に使えるので、雪だるまやかまくらを作ってみたりするのも楽しそうだし。真っ白な森や雪原をスノーシューで探検する、スノーシュー体験もまた面白そうだ。
その他にも会場には大小様々のかまくらがあり、街道には雪だるまが並ぶというので、売店で軽食でも買いながら散策するだけでも、雪を満喫できるだろう。
そして――夜になると。
何百ものミニかまくらの中に、キャンドルが灯される。
その光景は、夜空の星とも相まって、とても幻想的で。雪の中、静かに揺れる無数の炎は美しく、日本ならではな風情もあり、とてもロマンチックな絶景なのだという。
ミニかまくらだけでなく、夜になると大きなかまくらにも明かりが灯されて。イルミネーションも煌き、真っ白な雪の会場が仄かに彩られる光景は必見だ。
「かまくらバーベキュー……! かまくらの中で肉や野菜を焼いて食べれるのか。夜のミニかまくらイルミネーションもすごく綺麗そうだな……川沿いでみると一望できていいと書いてあるな」
早速バーベキューに瞳をキラキラさせつつも、イルミネーションに心躍らせる紗矢。
「おお、すげーな、自動販売機もかまくらの中にあるのか。スノーシューやそり遊びも楽しそうだし、雪だるまとかいっぱい作るのも面白そうだな!」
カイザも興味深そうに、ガイドブックを眺める。
そんな二人に、遥河はへらりと笑んでから。
「今年の冬もそろそろ終わりに近づいてるからさ。折角だし、雪を目一杯満喫したいよね」
そして周囲の皆に、こう声を掛けるのだった。
「ね、かまくら祭り、もし興味あったら行ってみない?」
●藹々、雪と戯れる
冬の澄んだ青空に、白い息をはあっと吐きながら。
「おし、僕は顔担当な!」
雪をごろごろ転がして、どんどん大きくしていく朔之助。
それに倣って、嵐も小さい雪玉をころころ。
二人が作るのは――あっと驚くような、でっかい雪だるま!!
でも。
「楕円形になっちまった」
それに顔と比べると、体の方が小さいような……?
いや、細かい事は気にしない!
そんな嵐が作った胴体に、朔之助の作った頭を、いざ合体!
顔に色々細工してみれば……その出来に、思わず噴出してしまう二人。
だって、誰かさんにそっくりだったから!
それから嵐が追加したのは、朔之助そっくりのミニ雪だるまと。
『進学おめでとう』――そんなメッセージ入りの、雪のプレート。
そして勿論、朔之助がもうひとつ、作ったのは。
「これで3人一緒だ!」
嵐の様な、花がよく似合う可愛い子。
そして3人の雪だるまに挟まれて、ノリノリで記念撮影!
ぎゅっと握り合うその手は、じわり、あったかくて。
そっと蕾が開く様に……自分に似た雪だるまを見る嵐の顔には、柔らかな微笑みが。
スノーシューを履いて、準備も万全!
「先輩おっそいなー早く早く!」
「はいはいこけんなよ」
わーっと銀世界に駆け出した維の手招きに、そう答えつつも。
さくさく歩いていたレナードは、懐かしさを感じる一面の雪景色に、ふと足を止める。
でも……そんな物思いに耽っていたのも、束の間。
「!!」
「あはは、ぼーっとしてるのが悪いんだよ!」
維の投げた雪球が、顔面に直撃!
「このやろ、オレの雪玉のが強いし」
そして勿論、全力でやり返します!
投げては転がし、避けては投げる、熾烈な雪合戦のはじまり!
いや、雪合戦……だったのですが。
「てか先輩ムキになりすぎじゃない!?」
「おまえが避けるからだろ」
ムキになってごろごろ転がした雪玉は、投げるにはちょっと辛い大きさに!?
だから。
「……もうこれ雪だるまでよくね? ツナのはそれ、頭ね」
「顔と腕も作ってあげよう」
いざ共同作業、雪だるま作りに変更!
もう、景色どころではなくなっているけれど。
白くて楽しい世界に完成した雪だるまは――なかなか上出来。
カイザやゼロと水花がやって来たのは、ペット用広場。
「冬といえば、確かに雪ですよね」
ゼロと一緒に犬の様にはしゃぐ、カイザの様子に微笑みながら。
ころころと雪玉を転がして作るのは、今度は本物の雪だるま。
そしていつの間にか並んだ大きめ雪だるまは……雪まみれになった、ゼロだるま!?
そして次に、ちょっぴり小さめなかまくらを。
「伊勢谷くんも手伝ってくれませんか?」
「おうっ。もうちょいこっち削った方がいいか?」
完成度に何気に拘る几帳面なカイザに、水花は微笑みつつも頷いて。
「ゼロくん、どうぞ」
ちょこんとジャストサイズなかまくらに収まったゼロも、その出来にご満悦!
冬はおこたでぬくぬく……も、いいんだけれど。
「こうやって雪で遊ぶのも楽しいね~!」
今日の【Jaeger】は、みんなで楽しく雪遊び!
凪流の言葉に、白兎も頷いて。
「あまり寒いと外には出ないのでこうやって遊ぶのはなんだか新鮮です」
「東京はあんまり積もらないから、たくさんの雪を見るのは久しぶりかも……!」
「……ふふ、冷たい」
そっと雪を掌でひとすくいした葵に、愛華はみんなの分用意した、いろんな色の手袋を差し出して。
「新潟の実家でも雪遊びはよくしましたが……ふふ、真っ白な雪、懐かしいです……」
「八重沢は新潟なんですね。北海道より沢山降ると聞いた事があります」
徹の言う様に、降雪量の多い新潟出身の桜にとって、雪は懐かしいもの。
そして、ひなこにとっても。
「札幌ご当地のザ・どさんこたる私なら、雪遊びはライフワーク!」
雪遊びならば、ドーンと、お任せあれ!
そんなクラブの皆で、いざ雪だるまを……作ろうとしているのだけれど。
「余り奇抜な物だと浮いちゃうからね。オーソドックスながらも巨大な雪だるまを作らない?」
「うんと大きいの作りませんか。キングより背高のっぽさんの!」
キングのそんな提案に、徹も大賛成!
「キングさんと黒鐵さんの方はドデカイ雪だるまが出来そうですね」
早速くるくると胴体を作り出した二人に、巨大雪だるまの爆誕を予感する白兎。
「大きな雪だるま……みなさんで協力したらきっとすごいものが出来上がるに違いないです……」
「キングさんくらいの大きさ……頑張りましょうか」
桜と葵も、キングよりも大きな雪だるまを作るべく気合の腕まくり!
そして頼りになるのは、やっぱり!
「センセイ頑張っちゃいますよー!」
「先生……プロだわ……!」
「若林センセイ!ついていきますっ」
ひなこ先生の指導の下、凪流と徹も雪玉をころころ!
「雪玉を作るときは2つのボウルに雪を詰めて組み合わせると、きれいにできて転がりやすくなるんだって」
さらに愛華からも、ワンポイントレッスン。
かぱりとボウルをはずせば、簡単にまん丸綺麗な雪玉の出来上がり!
「焦らずしっかり着実に。ほら、いつも私たちがクラブでしてる感じですよ!」
「雪国出身の皆はやっぱり慣れてるな! でも負けないぞー」
真人は、雪に慣れている仲間の手際に感心しつつも。
負けじと、いざ雪玉をごろんごろん。
そして、よいしょっと、力を合わせて。慎重に、胴体に頭を乗せた後は。
「しっとりした雰囲気超大切。とはいえやっぱ王冠は外せないトコロね……」
「キラキラな王様雪だるまを作りましょう!」
「キラキライルミネーション!? それ、ナイスアイディアっ!」
キングやひなこや凪流の提案に沿って。
しっとり雰囲気は損なわず、尚且つキラキライルミネーションで雪だるまさんを着飾った後。頭にちょこんと、王冠を。
「電飾もきらきら、王様雪だるまですね……」
「ふふ、雪だるまの王太子みたい」
「ちょっと大きすぎたかな? ははは」
完成した大きな王様雪だるまを、桜や葵や真人も見上げる。
そんな巨大王様雪だるまが出来上がった横で。
白兎が作っているのは、雪ウサギ。
「手のひらサイズのを1羽、さらに小さいのをもう1羽。親子さんです」
「お目目は赤い木の実でしょうか……親子の雪うさぎさん、可愛いですねっ」
桜も白兎と一緒に、かわいくなーれ、と雪ウサギ作り。
そして、葉っぱのお耳を付けた雪ウサギさんも一緒に。
「とってもかわいい……! こっちの雪だるまさんの近くに寄り添って仲良しこよしですな、うんうん!」
「大きい雪だるまさんの周りに並べたら、雪だるまさんも寂しくないのです……!」
「何だか家族みたいですね」
「白兎の作った雪うさぎも可愛いな、白兎と同じだね。なんてなー」
雪だるまさんとずらり並べれば、可愛い大家族。
「ちょっと不思議だけど、こうすると保冷効果もあるみたい」
そして愛華が仕上げに、雪だるまさんにマフラーをくるりと巻けば。
大きな雪だるまさんと小さな雪ウサギさんの、完成!
それから雪の大家族と一緒に、いざ皆で記念撮影……なのですが。
「はいみんな、並んで並んで」
「ちゃんとカメラのタイマーをセットして……」
撮影役を買って出た葵も一緒に写れるように、タイマーをセットしたキングは。
「雪で転んだ間にカシャッ☆ とならないように早く戻らなくちゃ♪ ……ひゃあっ!?」
自分で立てたフラグを、しっかり回収しました!?
でも、雪塗れになりながらも、仕切りなおしてもう一回。
今度はばっちり、いつかてっぺんとるぞー! と。
雪だるまさんの頭に星をつけて、ハイチーズ!
そんな、皆で過ごす最高に楽しい雪の日をカメラに収めてから。
「動き過ぎてちょっとお腹すいちゃったよ」
「ふ~……一仕事したらお腹すいちゃったね! 何か食べて帰りますかっ!」
「雪だるま作りでお腹すきました。折角だからBBQも楽しんでいきたいです」
真人の言葉に、凪流と徹も頷いて。
いざ、おいしそうなバーベキューの香り漂う、かまくらへ!
●温々、美味しいひととき
まだ少し、お昼には早いから。
「折角だし、昼食前に雪だるまを作らないか?」
「雪だるま作りでお腹を空かそう! 顔は私に任せて?」
啓太郎とつばめが作るのは、雪だるま!
仕上げのお顔は、芸術家肌のつばめにお任せ!
そして案の定……啓太郎が思わず笑うほどに。
ずらりと並んだのは、妙にリアルな人面雪だるま達。
それから、そんな人面雪だるま達に見守られながらも。
時間はお昼、かまくらバーキュー開始!
かまくらの中でバーベキューなんて、不思議で新鮮で。
「空野は米が好きって聞いてたから、おにぎりも持ってきたぞ」
おにぎりをつばめに手渡しつつ、もぐもぐ肉を頬張っていた啓太郎だけれど。
「お米好きって覚えてくれてたの? あ、そうだ。野菜どうぞー!」
一生懸命刺したよ、と得意げに差し出されたピーマン串に。
「すごく……緑色だ……」
思わず、そうぽつり。
おにぎりに肉に、ピーマン串にと。
雪に囲まれたかまくらの中で、終始笑顔で、二人はもぐもぐ。
誰かと一緒に食べることって――こんなに、楽しいから。
かまくらにこもって、紗矢達をいざ待ち伏せ!
そんな七葉が挑むのは、これまでと同じ大食い勝負!?
いいえ!
「食べ比べは絶対勝てないから、今度は食べさせ勝負するね」
今回は、食べさせ勝負です!
そして紗矢を見つけ、一緒にいるカイザや遥河もろとも。
「ん、せっかくだから何か食べていってね」
かまくらの中へ、誘い込み成功!
3人が食い倒れるまで、肉に野菜にと、どんどん次々に焼いていく七葉であったが。
「ね、教えて。紗矢さんのお腹って宇宙なのかな?」
「わたしのお腹が、宇宙?」
結局は、きょとんと首を傾げる無自覚な大食い幼女の、一人勝ち??
【Lulu Flowers】のかまくらの中は、ちょっぴりぎゅうぎゅうの、おしくら饅頭。
「わぁ……! かまくらってこうなってるんだ……!」
「中は暖かいのね、不思議!」
「ふふっ、さむさむかと思いましたが、中、すっごくぽかぽかでしたっ!」
そんな初めてのかまくらに、興味津々な攸糸や麗樹や侑太に。
「あら、かまくらは初めて? 初体験にご一緒出来るなんて素敵ね!」
嬉しげにそう、声を上げるゆき。
いえ、かまくらは勿論、バーベキューも初体験の人が多い、初めて尽くし!
早速みんなで、かまくらバーベキュー!
「飲み物はぽかぽか、あったかいお茶でいいでしょうか?」
そうお茶を淹れる侑太に、有難う♪ と礼を言いながらも。
「皆さんのお好きな食べ物は何でしょうか?」
「お肉もお野菜も大好きなおれです楓夏ちゃん! でもあれが良いなぁ。とうもろこし!」
「シマエナガさんは攸糸くんと一緒でトウモロコシが好き!」
「あら、あら! ゆきちゃんと攸糸さんもトウモロコシがお好きなのね……!」
攸糸やゆきのリクエストに応え、沢山トウモロコシを焼き始める楓夏。
でも実はそんな彼女の一押しもやっぱり、トウモロコシ!
そしてトウモロコシが焼ける香ばしい匂いが漂う中で。
「ふおお……!ゆきちゃんの奇麗な羽はお守りするよ……!」
「それではおれもと楓夏さまと麗樹さまの綺麗な髪をお守り……!」
ゆきの羽や楓夏と麗樹の髪を守るのは、頼もしいナイトたち。
そんな攸糸や侑太に、礼を言って笑んでから。
「麗樹さんのオススメも頂きたいですね♪」
「すらりと美人さんはやっぱり好き嫌いないのかしらね?」
楓夏とゆきに訊かれた麗樹は、焼けたトウモロコシを皆に振り分けつつも、少し考えて。
「バーベキューなんだからお肉焼きましょ、お肉!」
やっぱりバーベキューといえば、肉です!!
「んんー! 美味しい! バーベキューって凄く楽しくてあったかいね!」
「雪景色を眺めながら、皆で美味しい物を頂く……幸せですねぇ……♪」
寒いけれど……ぽかぽかぎゅっぎゅ、あったかくて美味しい。
この凍てつく時期だけしか味わえないこんな楽しみと、心に刻まれる皆との思い出。
侑太は楽しくおしくら饅頭しつつ、攸糸や楓夏の言葉に頷きながらも、思う。
そんな温もりは――皆さんの心がぽかぽかだからでしょうか? と。
「散々忙しかったからお腹すいたよね」
「やっとゆっくり出来るし飯食おうぜ飯、バーベキュー!」
木葉の言葉に頷く翼は、この間焼肉食べていたような気はするものの。
大食いトリオという名の元に、今日はかまくらバーベキューです!
そんな、今でこそバーベキューに滾る木葉と翼だが。
「というか……そうだな、散々心配掛けられたぞこの大食い馬鹿コンビ!」
年末早々立て続けに闇堕ちした二人の肩に見舞われるのは、里桜の全力手加減攻撃!
そしてそれを甘んじて受けた二人の前に。
「今日は沢山食べて遊ぶとするぞ!」
どんっ! と大量に確保した具材を広げる里桜。
本人は否定するだろうけど……その瞳は心なしか、涙目に。
そんな里桜の様子には敢えて突っ込まずに、頭を撫でてあげる翼。
でももう、しんみりは終わり。
超がつく大食いが3人集まれば、具材が焦げる暇などありません!!
いえ――むしろ。
「あ、これちょっと早かった……」
「……あ、この肉ちょっと生っぽかった……」
ガリガリ生焼けの野菜やまだ赤いお肉を、ぱくり。
そんな慌て過ぎた互いの様子に、3人笑い合いながらも。
「あ、そだそだ、これ食い終わったらさー、雪だるま作ろうぜ! でかいの!」
「ふふっ、雪だるま作りも楽しそうだな」
「雪だるま。いいねいいね。特大のヤツ」
箸は止めずに、遊びの計画を!
春になる前に――冬を目一杯、楽しみたいから。
いえ、勿論それだけではなく。
「あと売店もあるらしいから何か買い食いー!」
3人の大食いは伊達じゃない。食べ歩きもしっかり忘れません!
そして、またちょっぴり里桜の瞳が涙で潤むのは。
こうやって、また3人で一緒に遊べることが……嬉しいから。
●煌々、静かな夜に灯る
午前中は東照宮、お昼はかまくらで野菜バーベキューを楽しんだ紅緋は。
「かまくらイルミネーション、そろそろですかね?」
ぽつぽつと灯り始めたミニかまくらの光を、紗矢と一緒に眺める。
星や月が輝く夜空だけでなく、地上にも無数の光が満ち溢れて。
それが綺麗だと思うのは――きっと、明かりを灯した人々の思いがこもっているから。
そして、灯火揺れる川沿いの空気は綺麗に澄んでいるけれど。
「紅緋、寒いけど大丈夫か?」
ふと自分を覗き込む紗矢に、ごめんなさい、つい、と小さく笑み返す紅緋。
この寒さや身を寄せ合う温もりもまた、冬の醍醐味だから。
しっかりと手を握って、淡い光に満ちる雪道を一緒に歩いているのだけれど。
――……気に入らない。
桃夜がそう感情を抱く相手は、クリスにとって因縁だった宿敵。
その相手はもういないし、八つ当たりだって、分かってはいるんだけど。
心ここにあらずな彼の中にいまだ居る存在に、妬かずにはいられない。
でも……クリスの心を癒すことが、一番大切だから。
「ん、なんか折角のデートなのにごめん」
「気にしなくていいよ」
笑って、そう返す桃夜。
そして、胸に穴が開いたような感情は残るけれど。
掌から伝わる桃夜の温もりに、安堵感を覚えながらも。
クリスは、気を遣って世話を焼いてくれる彼を見つめる。
「トーヤは僕には勿体ないくらい出来た嫁だと思う」
「嫁を気遣うのは夫の役目だからさ。当然でしょ♪」
「ん? 嫁は僕?? はいはい、じゃあそういうことにしておいてあげるよ」
そして……ありがとう、そばにいてくれて――と。
雪の世界で紡ぐクリスに、桃夜は微笑む。
「ほら、綺麗だね……クリスみたいだよ」
より綺麗に恋人を照らし出す無数の灯火を、一緒に、眺めながら。
寒くても、動けばいいのです!
雪の滑り台やソリで目一杯遊んで。
明るいうちから雪と戯れ、キャッキャはしゃいで沢山遊んだ、その後。
「疲れたり冷えていない?」
「ふふー、まだまだ元気です」
くるりとマフラーを巻き直してくれた依子の気遣いと、首に感じたくすぐったさに、笑む昭子。
楽しいと、つい全力で遊んでしまいそうだけど。
二人は手を繋ぐと、暗くなり始めた雪の道を、ゆっくりと歩き始める。
そして――真っ白な雪の夜に静かに灯り始めるのは、小さな炎。
「ゆらゆらと、綺麗ですねぇ……」
ひとつ、ふたつ、みっつ……人の手で次々と灯されてゆく炎は、無数の揺らめきとなって。
白く冷たい綺麗な世界に、不思議なあたかたさをもたらしていく。
「昭子ちゃん。人が居て、灯るものっていいですねぇ」
それはきっと、何かが生きているように感じる安心感と。
「はい、すきです」
遠くにあっても愛しく思う、無数の灯火の中にある祈りや営み。
そして二人は、白い息をそっと冬空に昇らせながら。
揺らめく温もりが照る世界で、記念写真を1枚。
もうすぐ終わりを告げる――今年の冬の景色とともに。
| 作者:志稲愛海 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
![]() 公開:2015年3月8日
難度:簡単
参加:32人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 3
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