「あ~あ~……まさかこんなところで序列から外れるとはなぁ……」
元序列625位の六六六人衆・咎道は、残留思念となってかつての戦場である駐車場にいた。咎道の肩には貫通された傷痕が残り、灼滅されたときの状態のままで宙吊りになっていた。
「灼滅されて尚、残留思念が囚われているのですね……」
「ん~?」
下位の序列に留まってしまったことを嘆き残留思念となった咎道の前に、シャドウである慈愛のコルネリウスは現れた。
幻影となって現実世界に現れたコルネリウスは、夕日に照らされながら咎道に語りかける。
「私は『慈愛のコルネリウス』。傷つき嘆く者を見捨てたりはしません」
「ほう? お嬢ちゃんは可哀想な俺に何をしてくれるんだい?」
「……プレスター・ジョン、プレスター・ジョン、聞こえますか? ……プレスター・ジョン。この哀れな男をあなたの城にかくまってください」
「そうか、やっぱりコルネリウスが関わってきたんだね……」
かつて咎道と対峙した志那都・達人(風祈騎士・d10457)は、五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)の予測を真剣に聞いていた。
「はい……皆さんにはコルネリウスの企みを妨害するために、力を与えられた咎道を再度灼滅して頂きたいのです。現実世界に現れたコルネリウスは実体を持たないため、咎道の残留思念に力を与えることを防ぐのは難しいと考えられます」
得体の知れないコルネリウスの目的を考えながら、達人は言う。
「プレスター・ジョンか……咎道の思念がどこかに飛ばされる前に、手を打たないといけないね」
「1度灼滅した相手とはいえ、油断はできません」
と、姫子は注意を促す。
「咎道は以前と変わらない実力を備えています。過去の戦い同様、咎道の扱う武器は大振りのサバイバルナイフです。エナジーを操り咎道自身の周囲に爆発を巻き起こす能力にも注意してください」
コルネリウスと接触することはできるが、コルネリウスは灼滅者たちと交渉する気はないようだ。何も語ることなく姿を消してしまうだろう。
「咎道は灼滅者の皆さんに恨みを抱いているはず。現場に駆け付けた皆さんを見つければ、好戦的な態度を見せるでしょう。くれぐれも気をつけてください」
参加者 | |
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阿々・嗚呼(剣鬼・d00521) |
八握脛・篠介(スパイダライン・d02820) |
志那都・達人(風祈騎士・d10457) |
白崎・四葉(白爪草・d12759) |
リリー・アラーニェ(スパイダーリリー・d16973) |
獅子鳳・天摩(謎のゴーグルさん・d25098) |
黒百合・來琉(御伽の国の空想少女・d29807) |
五代・士(平和を求めるヒーロー・d32706) |
夕焼けが見下ろす駐車場に現れたコルネリウスは、半透明の像を結ぶ実体のない幻影だった。
咎道に力を注ぐように手をかざすコルネリウス。咎道の残留思念は実体を持ち、肩の傷痕も徐々に消えていく。
宙吊りになっていた咎道は地に足を着け、改めてコルネリウスと向き合う。そこにライドキャリバーにまたがる獅子鳳・天摩(謎のゴーグルさん・d25098)と志那都・達人(風祈騎士・d10457)がいち早く駆け付ける。天摩はコルネリウスの姿を見つけると瞬時に『殺界形成』を展開し、戦場となる駐車場全体は殺気をはらむ。そして達人の『サウンドシャッター』が場外まで響くような物音を未然に遮断する。
「コルネリウス……」
そうつぶやく天摩は、振り返るコルネリウスと視線を交える。
「あんたの慈愛を全て否定はしないっす。でもソウルボードに表れている事もその人の本質の全てとは限らないっすよ」
コルネリウスが天摩の言葉に無言で耳を傾ける間にも、咎道とコルネリウスの周りには続々と灼滅者たちが集まる。
白崎・四葉(白爪草・d12759)は鋭く大きな白慈色の爪を構えながら、
「何度残留思念に力を与えようと、私達は必ずそれを再び殺しに行くわ。それでも、貴方にとっては意味があるのかしら」
コルネリウスは四葉の問いに答えることなく姿を消し、実体化した咎道だけが残された。
咎道は手にしていたナイフを構え、改めて集結した灼滅者たちを見回し、
「準備体操の用意までされてるなんて……気が利くお嬢さんだね」
皮肉をとばす程度に相手を侮っているような咎道に向けて、リリー・アラーニェ(スパイダーリリー・d16973)は鋭い攻撃を放つ。リリーのコルセットから伸びたベルトは、咎道が飛び退いた場所のアスファルトを穿つ。ベルトを射出する攻撃に覚えがある咎道は、リリーの存在に目を留める。そこで再び現れた咎道とはじめて目を合わせたリリーは言った。
「久し振りね、おじさん……2度と会いたくなかったけど」
リリーの言葉に引きつった不気味な笑みを浮かべる咎道。その双眸には激しい怒りの表情がちらついていた。
達人は咎道に答える暇を与えず、
「また会ったね」
とつぶやくと、一気にライドキャリバーの空我を加速させ、咎道の目の前へと迫り拳を振るう。
咎道は一瞬はっとした表情を見せながらも、迫る空我のフロント部分を蹴って大きく跳躍する。空中で体をひねりながら、後列の四葉、黒百合・來琉(御伽の国の空想少女・d29807)や五代・士(平和を求めるヒーロー・d32706)の頭上を飛び越えて咎道は着地した。
8人の包囲から抜け出し、機敏な動作で攻撃の構えを見せる咎道。咎道は8人が陣形を反転させようと動き出すところへ切り込み、八握脛・篠介(スパイダライン・d02820)に刃を向ける。
攻撃に備えて構える篠介の槍を咎道は足で押し止め、振り下ろすナイフで篠介の肩口を切り裂いた。
士はシューズの車輪から火花を散らし、更にナイフを突き立てようとする咎道に向けて炎をまとったキックを食らわせる。咎道はその衝撃でアスファルトの上に身を投げ出した。
「やってくれるのう」
篠介は士の助けを受けて反撃に転じ、突き出す槍に咎道の体を穿とうと力を込める。跳ね起きる咎道は篠介の一撃を避けようとするが太ももに傷を負う。
阿々・嗚呼(剣鬼・d00521)は咎道を追撃しようとベルト状の武器を射出する。咎道はそれをナイフで薙ぎ払おうとするが、嗚呼はベルトを自在に操りナイフを避ける。嗚呼は咎道との距離を詰めながら、確実に咎道の体を貫こうと狙う。嗚呼の攻撃は、後退しながらナイフをさばく咎道の腕を刺し貫くと同時に力任せに地面に押し倒す。
咎道はその傷を物ともせずに嗚呼のベルトを引っ張り、ベルトを操る嗚呼を引き回そうとする。嗚呼の両足は宙に浮き、咎道の腕を貫いたまま大きく振り回される。
「ベルトを抜いて!」
來琉がそう叫んだとき、嗚呼の体は地面に接近し、咎道が反撃に出ようとしていた。嗚呼の真下に入り込む者に咎道は気づいたが、急な方向転換は困難だった。そのまま嗚呼はミドガルドに騎乗した天摩に抱き留められ、咎道からベルトを抜き去る。咎道の思惑通りとはいかない展開になった。
「よっ……とぉお……!」
危うくバランスを崩しそうになりながらも、天摩は急ブレーキを掛けつつミドガルドの機銃で舌打ちする咎道をけん制する。天摩の意志によって貫く刃の如く射出されたベルトは、防御しようとする咎道を突き飛ばしフェンスに激突させる。
フェンスに突っ込んだ咎道に、四葉は追い打ちをかけにいく。咎道の腹部を強打すると同時に、霊力による網を張り巡らせて体の自由を奪う。そこに來琉の『影縛り』が加わり、咎道は更に身動きが取れなくなる。
リリーはデモノイド寄生体が青白い巨大蜘蛛をかたどった杭打ち機から遠慮なく攻撃を叩き込み、咎道の体を弾き飛ばす。
膝をついて起き上がろうとする咎道は、明らかに追い詰められた表情になっていた。8人はじりじりと包囲を狭めていく。しかし、顔を上げた咎道は達人とリリーの方を見て、一変して性悪な笑みを浮かべた。
「まずい」と思った瞬間、前列の4人は咎道が引き起こした爆発の衝撃を受けていた。爆音が耳をつんざき熱風に包まれ、体中が焼けつく痛みに襲われる。
多量の白煙が巻き起こる中、士は咎道の姿を見つけ出しハイパワーブレイドを振るう。咎道は士の動きを察知し、互いの刃を交えて火花を散らす。
「よくも……! 全力で行かせてもらうぜ!」
咎道は士と剣戟を繰り広げる中で、
「ふーん……そんなもん?」
元六六六人衆らしい余裕を見せ、重い一撃で士を押し返す。
「せっかく復讐できるチャンスなんだから、引っ込んでてもらえないかなぁ?」
痛手を負う達人、リリー、篠介、天摩らから咎道の意識をそらそうと、嗚呼は突撃する。
「その復讐……邪魔させてもらいます」
一方で來琉は、4人の傷を癒そうと濃霧を発生させる。
「悪いけど、コイツらを倒させはしないよ」
咎道は不自然に発生する濃霧を警戒する素振りを見せる。
來琉のサイキックにより治癒を促された4人は、反撃の意力を見せる。篠介と四葉が咎道に迫っていく中、達人と天摩はお互い逆方向に駐車場を大きく旋回し、咎道を間に挟む位置に着く。
篠介の燃え盛る回し蹴りを受けて咎道はよろめき、続け様に四葉に斬撃を叩き込まれる。その隙に達人と天摩は助走をつけ始め、咎道への挟撃を実行に移しにいく。
「行け! 合わせる!」
咎道は天摩への達人の合図の声に振り返る。ハンドルを握った2人は体を支え、車体をうまく傾けあってお互いの蹴りを咎道の前後にお見舞いした。尋常ではない衝撃に、咎道は見たことのない表情を見せる。
2人の攻撃でわずかに宙に浮く咎道の肩口を、背後から貫くものがあった。リリーの『レイザースラスト』が、貫いた咎道の体を更に宙に浮かせる。
「どうかしら。これで左右対称……バランスが良くなったんじゃない?」
以前とは逆の肩を貫いたリリーは、力なく垂れ下がる咎道の腕を見て勝ち誇った笑みを浮かべる。
「さようなら……コルネリウスのおまけさん」
高い位置から落とされた咎道は、四葉の白爪によって射抜くように突き飛ばされ、無様にアスファルトの上を転がる。
「また、か……」
うめくようにつぶやいた咎道の体は徐々に実体を失い、風にさらわれる砂のように吹き飛んだ。
緊迫した戦いを終えて空我の上で一息入れる達人に、來琉は声をかける。
「お疲れ様、店長。もうあの悪者と会うこともないんだろうね……」
「ああ、もう3度目は、ない……」
達人はそう言って、夕日が沈む空を見上げた。
作者:夏雨 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年3月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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