その日を前に、蓬モッチアQは問う

    作者:聖山葵

    「ちょっと、何で犬なんか入れてるですか? ここは私有地なのですよ?」
     質問と言うより抗議に近い声が住宅地の外れで上がったのには訳がある。
    「あれを見るのです!」
     周囲には金網のフェンス、少女が示す先には「私有地に着き立ち入りはご遠慮下さい」の看板。もちろん、囲われた土地を我が物顔で駆け回る犬の飼い主がこの私有地の持ち主だったなら問題はない。
    「んまぁ、ケチくさいこと。いいザマスか? ジェニーちゃんの健康の為には適度な運動が必要不可欠。ここは毎日通える距離にあって、ジェニーちゃんも……」
     おそらくジェニーちゃんとやらは、駆け回っている犬のことなのだろう。つまり、勝手に私有地に犬を放ったあげく、少女の抗議と指摘に眉をつり上げ勝手なことを言い始めた中年女性の主張はエゴ一色。
    「わうっ、わうわう」
    「あ、あぁ」
     その間にも犬は敷地内を駆け回り、生えていた蓬を踏み倒す。
    「まぁまぁ、ジェニーちゃんったら元気なんザマスから。ホラ、あんなに楽しそうにして――」
    「ぐ、ぎぎぎ……ふざけるなもちぃぃぃぃっ!」
     聞いていた少女がブチ切れてご当地怪人になってしまったとしても無理はないことだったのだ。
     
    「と、言う訳で一般人が闇もちぃしてダークネスになる事件が起きようとしている。今回は蓬餅だな」
    「確か、ひなまつりには元々菱餅ではなくこの蓬餅が供えられていた説があり、そこに白などのお餅が加わって今の菱餅になったと言う話がありましたね」
    「まぁ、時期的にはちょうど良い、ということだな」
     情報提供者である西原・榮太郎(霧海の魚・d11375)の言葉に頷いた座本・はるひ(高校生エクスブレイン・dn0088)は集められた君達に向かって言う。
    「もし、彼女に灼滅者の素質があるなら闇もちぃから助け出して欲しい」
     と。また、もし完全なダークネスとなってしまうようであればその前に灼滅を、とも。
    「ご当地怪人に変貌しつつも一時人の心を残したまま踏みとどまるようなのでね」
     救える可能性があるのだよと、はるひは補足し更に説明を続ける。
    「少女の名は、蓬野・榛名(よもぎや・はるな)。中学三年の女子生徒だな」
     蓬餅の大好きな少女で、祖父の所有する毎年蓬をとりに行っている私有地に足を運んだところ身勝手な中年女性とその犬に、蓬を台無しにされたことが切っ掛けで、蓬色の十二単を身に纏ったご当地怪人蓬モッチアQへと変貌する。
    「ちなみに蓬モッチアQのQはquestioner、つまり質問者もしくは尋問者に由来するものだな」
     故に問う訳だが、その問いは人の頃に投げかけた抗議のような生やさしいモノではない。
    「おそらく、サイキック攻撃を伴うだろう」
     当然ながらそんなものを一般人や犬が喰らってはただでは済まない。
    「ただし、問いと共に襲いかかった瞬間に介入し、庇えば中年女性も犬も助けられる」
     ついでにこのギリギリのタイミングの介入であれば、バベルの鎖に引っかかって察知されることもないのだとか。
    「後は元凶になった一人と一匹を追い払い、少女を救うだけだ」
     闇堕ちした一般人を救うには戦ってKOする必要があるので戦いは避けられないが、この時人間の意識に呼びかけ説得することで戦闘力を削ぐことが出来るという。
    「まぁ、今回のケースでは怒れるご当地怪人を宥める必要もあるだろう」
     放っておけば、中年女性へ制裁を加えようしかねないのだから。
    「それも踏まえて、説得は少女を労るというか慰める方向が良いのではないかと提案しておく、ついでにおの蓬餅を持っていって渡すと良い。些少は効果もあるだろう」
     言いつつはるひは君達に蓬餅を差し出し、更に説明を続ける。
    「戦闘になれば蓬モッチアQは、ご当地ヒーローと咎人の大鎌のサイキックに似た攻撃で応戦してくる」
     堕ちかけとは言えダークネス、その威力は侮れないが説得で弱体化していれば話は変わってくる。
    「ある意味件の少女も被害者なのでね。だからこそ救えるものなら救いたいのだよ」
     そう締めくくると、はるひは君達へ彼女のことを宜しく頼むと頭を下げたのだった。
     


    参加者
    御剣・裕也(黒曜石の輝き・d01461)
    乾・舞斗(硝子箱に彷徨う者・d01483)
    枷々・戦(異世界冒険奇譚・d02124)
    如月・春香(クラッキングレッドムーン・d09535)
    西原・榮太郎(霧海の魚・d11375)
    ソフィ・ルヴェル(カラフルジャスティス・d17872)
    雪峰・響(雪風に潜む白兎・d19919)
    莫原・想々(幽遠おにごっこ・d23600)

    ■リプレイ

    ●シビアだからこそ
    「彼女はクエスショナーであり、クエスターでは無いのですね」
     押し黙っていた乾・舞斗(硝子箱に彷徨う者・d01483)は口を開くと、ため息を一つ残し歩き出した。
    「今回は……個人的には正直、闇落ちする程の狂気は一般人の方が持っていそうな気がしてますけど」
     足の向く先は、何処かで犬の鳴き声の方。説明にあった、その一般人の方が見えてくるのもそれ程先のことではなく。
    「んまぁ、ケチくさいこと」
     声の方を見れば識別出来る程度先に件の人物は居た。
    (「……あれね」)
     声を発さず、ただ如月・春香(クラッキングレッドムーン・d09535)もまたそれを認める。
    「ここは毎日通える距離にあって、ジェニーちゃんも――」
    「これは怒るのも無理は無いですね……」
    「ですよね。その気持ち、凄くよくわかります……」
    「ああ、全くだ」
     遠くから聞いていても自分の都合以外の何物も存在させず喚き散らす中年女性を見てソフィ・ルヴェル(カラフルジャスティス・d17872)がコメントすれば、御剣・裕也(黒曜石の輝き・d01461)と雪峰・響(雪風に潜む白兎・d19919)が揃って頷いた。
    (「ああいう風に自分勝手なことをする奴がいたら、怒りたくなるのも当然だな」)
     響達が問題の私有地に近づく間も、犬は傍若無人に私有地を駆け回り、荒らして行く。
    (「雛祭り……誕生日だから、小さい時はケーキと一緒に菱餅も並んでたっけ」)
     思い出した誕生日とひな祭りの光景に自分の胸を痛めながら莫原・想々(幽遠おにごっこ・d23600)がぼんやりしつつも仲間について行く間もまた。
    「蓬餅、美味しいですよね」
     独り言か、仲間に同意を求めたのか。口を開いた西原・榮太郎(霧海の魚・d11375)は現在進行形で荒らされて行く私有地を見たまま、続けた。
    「蓬餅を愛しているからこそ、蓬を育てている場所を荒らされるのが嫌なのは分かりますが……一般人を襲うのは、ちょっと行き過ぎですかね」
     逆説的に、完全なダークネスにならず、一時とはいえ踏みとどまるのは件の少女自身にも実力行使に至るのはやりすぎという思いがあったからか、それとも。
    「まぁまぁ、ジェニーちゃんったら元気なんザマスから。ホラ、あんなに楽しそうにして――」
    「ぐ、ぎぎぎ……ふざけるなもちぃぃぃぃっ!」
     ただし、闇もちぃを避けることも出来なかったという訳で。
    「想々ちゃん、大丈夫か?」
    「え? ……あ、なんでもないです」
     回想から引き戻された想々は、自分の顔を覗き込む枷々・戦(異世界冒険奇譚・d02124)に瞬きした後、頭を振ってみせると、変貌しつつある少女の姿に目を留めた。
    「よ、蓬色の十二単……グ、グラデーションが綺麗かも?」
     まぁ、確かに鮮やかではあった。ただし、変貌が終われば待っているのは、一人のエゴ中年女性にとっては生命の危機。
    「その横暴がまかり通るか、この鎌で聞いてやるもっちぃぃぃ!」
    「だめです!」
     実際、ギリギリであった。大鎌を振り上げたご当地怪人の前に裕也が飛び出したのは。
    「もちゃっ」
     同時に舞斗の影が触手と化して元少女へ絡みつき。
    「私有地に入ってすみません、でもその衝動に身を任せちゃだめです!」
    「ぐ、どういうこともちぃ?」
    「ま、待ってください。落ち着いてください……!」
     頭を下げ制止する裕也へ、いきなり攻撃されたこともあってか敵意の籠もった視線を向けてご当地怪人蓬モッチアが問えば、すかさずソフィはフォローに回ってご当地怪人を宥め。
    「ひっ、あ、あ……」
    「行け、あっちだ」
     ESPで中年女性をパニックに陥れた響は自分達が入ってきた私有地の入り口を示して言う。
    「命が惜しいなら早く逃げて、もうここに近づくな!」
    「ひ、ひぃぃっ」
    (「……戻ってこない様にしないと」)
     一目散に逃げ出した女性の背中を見つめて春香は殺気を放ち。その殺気に怯えたのか別の理由でか、駆け回っていた犬もキャンキャン鳴きながら女性の後を追って私有地を飛び出した。

    ●お餅を食べよう
    「逃げるもちぃ? そうはさ」
    「蓬餅でも食べながら、話しを聞いてくれませんか」
    「蓬餅?」
     逃げた怨敵の背を見て、即座に追いかけようとしたご当地怪人は裕也の差し出した蓬餅を見た瞬間、足を止め。
    「わ、わたしを誑かすつもりもちぃか? そんなも……うぐっ」
     視界から外し、脇を通り抜けようとして、失敗した。
    「……これであの女性も少しは懲りるといいんだが。 ん?」
     響が蓬モッチアの方に向き直ったのは、ちょうどこの時。
    「美味しい蓬餅、作ってもらったんですよ……!」
    「お、美味しい蓬餅もちぃか? うぐぐ」
     もう、完全に目が離せなくなっていたところに追い打ちをくらったらしく、呻き。
    「今回、自分も作ってみましたが……中々、良い蓬が見つからなくて大変ですね」
    「な、こっちにももちぃ?」
    「あ、蓬餅」
     蓬餅を榮太郎が取り出した瞬間、ようやく呪縛が解けて驚きの表情で元少女が振り返る。裕也まで釣られてしまったのは、甘いモノが好きだからだろう。
    「……話があるもちぃ? なら、話してみるもちぃ」
     どうぞと差し出された蓬餅を一つ食べ、結局籠絡されてしまった蓬モッチアは聞く態度をとると灼滅者達を促した。
    「これは……」
     一部の灼滅者には想定外だったが、先方が敵意を引っ込めて話を聞く姿勢を作ったのに、戦闘を始めてぶち壊す理由は何処にもない。
    (「……これで一安心ですね」)
     穏やかに説得出来る空気が調ってしまえば、自分が説得に加わっても話がややこしくなるだけ、と舞斗は会話の話から外れると犬に踏み倒された蓬をそっと起こし。
    「大変ですね……」
    「解ってくれるもちぃ?」
     視線を戻せば、上品によもぎ餅を食べつつ自身の話へ相づちを打つへ裕也と元少女は尋ねていた。何時の間にやら話し手と聞き手が逆転したらしい。
    「怒る気持ちももっともだぜ、俺だってあのおばちゃんに怒ってる」
    「貴女の怒る気持ちはとても分かります」
     自分に向けられた問いではなかったが、戦とソフィは同意を示し。
    「大事な場所を荒らされて、勝手な言葉が悲しかったんですよね」
    「大好きな物がああやって踏みにじられるのはつらいことだよな」
     事前に知っていた憤りの理由に想々や響も理解を示しつつ、だが四者はでもと続ける。
    「え?」
     蓬モッチアからすれば、おそらくは意外な流れ。
    「それでお前がわざわざ闇に堕ちちゃう事なんてこれっぽっちも無いんだからな!」
    「そうです、闇に囚われてはダメです!」
    「だいたい、その方法じゃ相手と同じか、それ以上に身勝手になっとるよ」
     驚き立ちつくす元少女へソフィの同意を挟む形で戦と想々が指摘し。
    「怒りに任せるよりは、蓬餅を食べてもらってそれを作るのに必要な物なんだってわからせた方が効き目があると思う。大好きな物だったら、みんなに知ってほしいよな?」
     響は言葉と共に、用意してきたよもぎ餅を差し出す。
    「……蓬餅」
    「蓬餅、私もすきやったなぁ……あっ」
     ご当地怪人同様、響のそれに目奪われた想々は今、思い出したとでも言う様に荷を開き。
    「ほら、持ってきました」
     中からとりだした蓬餅を差し出す。第二次蓬餅時間の始まりだった。
    「大切な蓬なんですね、大好きな気持ちがとても伝わってきました」
     私も好きですから、とソフィも倣って蓬餅を取り出したのだ。
    「大事な蓬を荒らされて怒る気持ちは分かります、苦労も困難もあったのでしょうし。ですが暴力は頂けないかな」
    「もちぃ」
     むろん、そんなおやつの時間の様相を呈したこの時も、説得は続く。
    「その蓬餅、美味しいですか? あんまり、美味しく感じられないんじゃないですか?」
     榮太郎の意見にしょげて俯くご当地怪人からは、介入した当初の様な威圧感は失せ。そこに他の灼滅者から疑問が投げられる。
    「え?」
     呆然とし、蓬モッチアが手元の蓬餅を見た時だった。
    「チェンジ! カラフルキャンディ!」
     ソフィーがスレイヤーカードを掲げたのは。

    ●救出(物理)
    「彩り鮮やかは無限の正義! ソフィ参ります!」
     かけ声から始まった変身を終えたソフィは羽織ったマントをなびかせて決めポーズをとると、そのままライドキャリバーのブランメテオールに跨った。
    「いきましょう、ブラン。あの人を救う為に!」
     一輪バイク型のサーヴァントから返る答えはエンジン音のみ、だが意思は伝わって。
    (「……戦闘開始ね」)
     仲間の封印解除に、意図を察した春香はcresc.fortississimoのネックに手を添えると、千秋と一度だけビハインドの名を呼んだ。
    「……命中重視で、お願い」
     反応さえ待たず、言い終えるなり地面を蹴って、手にした殲術道具を楽器ではなく鈍器と見なし、殴りかかる。
    「な、もべちゃ」
     穏やかな時間の終焉、急に訪れた戦いの時に硬直する蓬モッチアは巧みなギターテクニックを駆使した春香へ殴り飛ばされ、落下地点に待つは、霊撃を放つ構えの千秋。
    「もぢばっ」
     バットで打ち返されたボールの様にご当地怪人は再び宙に舞い。
    「せっかくここまで上手くことが運んだ訳ですし……」
     放物線を描く元少女目掛けて、舞斗は先端を刃と化した影を伸ばす。
    「きゃあっ」
    「烽、頼むぜ」
     影は悲鳴をあげるご当地怪人の服を容赦なく切り裂き、戦はビハインドに呼びかけながらクルセイドソードに炎を宿し、振りかぶりながら前へと飛んだ。
    「安心しろ、絶対助けるから! 戻ってきて一緒に蓬餅食おうぜ!」
     声は少女へ、叩き付ける刀身は少女を蝕む闇へと。
    「もあちゃっ」
     一撃が見舞われた瞬間、吹き上がる炎が斬り裂かれた十二単もどきに取り付き。
    「熱っ、熱もべっ」
     炎へ気をとられたご当地怪人が烽の霊障波をモロにくらって仰け反った。
    「うっ、く」
    「質問するだけでなく、自分で答を出してみたらどうだ? そのための手助けならオレも付き合う」
    「いや、明らかに今それどころじゃないもちぃよ? 見ればわかるもちぃよね?」
     ダメージの残る場所に手を当てつつ、声をかけてきた響へと問い返したのは、ある意味無理からぬことだったと思われる。
    「よく狙いを定めて……、そこだ!」
    「ちょ」
     だが、返ってきたのは答えではなく射出されたmisty clothの先端で、そちらに気をとられた元少女は気づかなかった、同じタイミングで殺人注射器を手に肉迫するもう一人へ。
    「油断大敵ですよ」
    「な」
     声へ反応した時には、もう遅すぎる。
    「もちあばっ」
     弱体化しているところへの連係攻撃である。避けられる筈もない。
    「ぐううっ、良くもやったもちぃな?」
     蹌踉めきつつもかろうじて踏みとどまったご当地怪人は、大鎌を振り上げると次の瞬間。
    「断罪の時か」
    「行きます、とぅ! アメちゃんきーっく」
    「へべもっ、がっ」
     ライドキャリバーの上から跳んだソフィに蹴り倒され、おまけにブランメテオールに轢かれた。
    「うぎぎ」
    「ええと、ごめんなさい!」
     そして、呻きつつ身を起こそうとするところへ容赦なく振り下ろされる裕也の交通標識。ただ、それでも戦いは終わらなくて。
    「やはり、力で訴えるというのは良くないと思いますよ?」
     続く戦闘の中、榮太郎は説得を続けつつ、非物質化させた九字兼定『桜火』で一撃を繰り出す。
    「く、それでもわたしは」
     元少女にも意地があると言うことか。大鎌の柄を杖代わりにし、立っていた蓬モッチアはこれに反応しようとし。
    「踏み荒らして、ごめんなさい」
    「もぢゃああっ?!」
     後ろからチェンソー剣で斬られ、悲鳴をあげて倒れ伏したのだった。

    ●おさそい
    「気がつかれましたか?」
     声をかけたのは誰だったか。
    「……ひとまずこのぐらいにしておきますか」
     救った少女が目を覚ましたのだと言うことを察した榮太郎は、周辺の後片づけをしていた手を止めると少女を囲む輪の中へと近づいた。
    「……というと、武蔵坂学園なのです?」
    「はい」
     裕也がご当地怪人であった時にも説明していたからなのか、事情はある程度把握している様で、会話の内容は概ね学園への勧誘だった。
    「仲間がもう説明してるが、オレ達や君と同じような力を持った人が通う学校があるんだ。蓬餅を広めたかったら、そこに行ってみたらどうだ?」
    「私のお友達にも同じお餅を愛する方が居ます。ですので榛名さんもこの学園できっと仲良くなれるはずです」
     響の言にソフィが続き、一つ頷いてじっと見つめれば、次に口を開いたのは、想々。
    「一緒に学園で、榛名さんの作った蓬餅が食べたいな」
    「っ、その目はずるいのです」
     少女は、説得のさなか羨ましげに見ていたのを覚えていたのかも知れない。
    「皆さんも言っていますが、貴女のような餅好きは学園に多いのですよ。気の合う方が見つかりますよ?」
     そう、榮太郎が畳みかけずとも、おそらくは――。
    「恩人にお願いされて嫌なんて言える訳がないのです」
     嘆息と共に漏れた呟きが、答えであった。
    「蓬餅愛に溢れたわたしの蓬餅、楽しみにしてるといいのです」
    「わぁ」
     若干得意げに胸を反らした少女へ裕也は瞳をきらきらと輝かせ。
    「へぇ、じゃあそいつには劣るかもしれないけどよ……こいつ、食うか?」
    「んー、そうですね……」
     とっておいた蓬餅を取り出して問う戦に、少女は一つ唸り。
    「ただ、その前に誰かお裁縫道具貸して欲しいのです」
     服の裂けた部分をおさえながら続けたのだった、顔を赤くして。

    作者:聖山葵 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年3月9日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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