天才奇術師・ルーナの殺戮マジックショー!

    作者:のらむ


     とあるショッピングモールのイベント広場で、小さなマジックショーが開かれていた。
     ヨボヨボの老人が必死に鳩とかを出しているが、そこまで真剣にショーを見ている人がいない。
    「待てい! さっきから見てれば何なんですか、そのしょぼいマジックは!! ……とう!!」
     唐突に大声を上げ、、シュタッとステージの上に舞い降りた、赤毛の少女。
     その少女が、やや膨れっ面で老人に迫る。
    「ちょっとおじいちゃんもうどっかいって! 私が代わりにショーやりますから!」
     グイグイと老人を舞台裏に押し込んだ少女に、少ない観客たちは僅かにざわつく。
     そしてステージの中央に躍り出た少女は、観客や周囲を歩いていた買い物客に呼びかける。
    「皆さんお待ちかね! 天才奇術師ルーナの登場だ!」
     敬語から偉そうな口調に変えたルーナという少女がくるりと身体を一回転させると、身につけていた服が一瞬にして変わった。
     シルクハットに燕尾服、白い手袋にステッキ、そして顔の半分には白い仮面という、割とストレートなマジシャンの格好をしたルーナの姿を見た客たちはなぜか偉く感動し、イベント広場には多くの人間が集まった。
    「皆集まってくれてありがとう! それじゃあさっそく……ショーの始まりだ!」
     ルーナはステッキで軽くシルクハットを叩くと、たくさんの鳩が一斉に飛び出した。
     またかよと客たちが思った次の瞬間、血飛沫が上がった。
     飛び出した鳩たちが、ステージ近くに立っていた客の1人に一斉に喰らいついたのだ。
     悲鳴が起こり、客たちはパニック混じりに一斉に逃げ出した。
    「おやおやどうしたんだい? ショーはまだ始まったばかりじゃないか!」
     ルーナがステッキを振るうと、今度は無数のギロチンが降ってきて、一般人達の身体を真っ二つにしていく。
    「人体切断マジックって奴さ!」
     そう言って笑い、ルーナがパチンと指を鳴らすと、逃げ惑う一般人の頭が突然爆発し、息絶えていった。
    「ハハハハハ、これは手品だからね! タネも仕掛けもあるのさ! 決して超能力なんかじゃないからね!!」
     再びステッキでシルクハットを叩くと、今度は剃刀のように鋭い無数のトランプが飛び出し、生き残っている一般人の身体をバラバラに刻んでいく。
    「今日は私のショーを見てくれてありがとう! 来世にまた、見に来てくれたまえよ! ハッハッハッハッハ! ……ふう、帰ろう」
     そして元の格好に戻ったルーナは血溜まりの上を歩き、家へと帰るのだった。  


    「六六六人衆序列五七九位、ルーナ。自らを天才奇術師と称する彼女が、大量殺人を引き起こします。皆さんは現場へ向かい、彼女の殺戮を防いでください」
     神埼・ウィラ(インドア派エクスブレイン・dn0206)は赤いファイルを開くと、事件の説明を始める。
    「場所は、とあるショッピングモールのイベント広場です。元々そこでは小さなマジックショーが開かれていたのですが、ルーナはそのイベントを乗っ取り多くの人を集めたうえで、多くの人を手品とやらで殺します」
     ルーナはスタイリッシュモードの様なESPを使用して呼びかけるため、割かし多くの人がその場に集まるらしい。
    「観客として集まるのは全部で60人。そしてその内30人が殺されます。ちなみにルーナは、自分のショーを見るために集まった人間しか殺さなかったようです。会場近くに居ても、ショーを見ずブラブラしていた人とかには、手を出さなかったということですね」
     まあ自分を邪魔する灼滅者には普通に攻撃するでしょうが。とつぶやき、ウィラは更に説明を続ける。
    「皆さんはルーナがこの60人の客を集めてから、一般人に攻撃を仕掛けるまでの間に、ルーナに接触することが出来ます。それ以前にルーナへの接触や一般人の避難、目立つ行動をとってしまえば、ルーナのバベルの鎖に感知されてしまうでしょう」
     そのイベント広場はショッピングモールの中央にあるらしく、東、西、南の方に通路が伸びているとウィラは言う。
    「ルーナの戦闘能力ですが……まあルーナは手品と言い張ってますが、要するに種も仕掛けもない手品風サイキックを使って攻撃してきます。ポジションはキャスターで、身軽さを生かしてやたら攻撃を避けてきます」
     そこまでの説明を終え、ウィラはファイルをパタンと閉じた。
    「説明は以上です。可憐な見た目の少女ですが、六六六人衆に変わりは無く、やる事はえげつないです。どうか皆さんお気をつけて。皆さんが無事に、全員で帰ってくることを祈っています」


    参加者
    冴木・朽葉(ライア・d00709)
    椎葉・花色(青嵐の焔・d03099)
    刀鳴・りりん(透徹ナル誅殺人形・d05507)
    森村・侑二郎(一人静・d08981)
    ライン・ルーイゲン(ツヴァイシュピール・d16171)
    三和・悠仁(夢縊り・d17133)
    アイリ・フリード(紫紺の薔薇・d19204)
    今・日和(武装書架七一五号・d28000)

    ■リプレイ


    「皆さんお待ちかね! 天才奇術師ルーナの登場だ!」
     ルーナが高らかに声を上げ、そしてその格好に感銘を覚えた一般人たちが、わらわらと集まっていく。
     しかしその一般人達の中に、数人の灼滅者達が紛れ込んでいた。
    「ん? おい見ろよ、マジックショーだってよ。ちょっと見ていかねえ?」
    「ああ、本当ですね。糖分は確保できましたし、せっかくですから見ていきましょうか」
     冴木・朽葉(ライア・d00709)と森村・侑二郎(一人静・d08981)が、クレープ片手にそんな事を言いつつ、ステージに近づいていく。
    「見たくもないショーを見せつけられて、代償が命とか。今回のもまた、ふざけてる六六六人衆だねぇ」
    「ふざけてるのはいつもの事だ」
     木葉や冬崖など、サポートのメンバーも集まっていた。
     そして、ステージの周りに60人の一般人と、灼滅者達が集まった。
    「皆集まってくれてありがとう! それじゃあさっそく……ショーのはじま」
    「おっと……この場は預からせていただくのじゃ!」
     刀鳴・りりん(透徹ナル誅殺人形・d05507)が高らかに名乗りを上げ、りりんを含めた4人の灼滅者が、プリンセスモードを使用してステージの上に躍り出た。
     またも突如として現れた謎の人物達の格好を見て、観客たちがワッと盛り上がる。
    「いや、ちょ、あの、これ私のステージ……」
     注目の矛先が自分から逸れてあからさまに動揺するルーナをよそに、ライン・ルーイゲン(ツヴァイシュピール・d16171)は観客たちに投げかける。
    「み……みなさん、マジックショーの始まり、です」
     ラインの言葉と同時に、ナノナノの『シャル』がふわりと舞い上がり、よく分からないが歓声を上げる観客たち。
    「いや、えー…………はい注目! こっち注目! ちょっと本当にちゅうもーく!!」
     バタバタと手を振りながら呼びかけるルーナだが、先程に比べ、ルーナの方を真剣に見ている一般人はかなり少なくなった。
     それはつまり、ルーナが殺害対象として選ぶ一般人が激減したということでもあった。とても効果的な作戦だっただろう。
    「くっ、これじゃあ全部ぶち壊しだ……だがまだ私のショーを見てくれている人だっているんだ……見るがいい、これが私のマジックだ!!」
     ルーナがとんとシルクハットを叩くと、中から人喰い鳩の群れが放たれる。
    「極限動作履行開始。防衛行動に移行します」
     ターゲットとなった一般人の前に立ち塞がった今・日和(武装書架七一五号・d28000)が、攻撃を受け止めた。
    「さて、それじゃあ……避難誘導開始だよ、皆」
     アイリ・フリード(紫紺の薔薇・d19204)は装着していた通信機に手をあて、呼びかける。
    「了解。サポートは任せろ」
    「予定通り、ラブフェロモンを使用して誘導を行います」
     アイリからの指示を受け取り、『Riskbreaker』の面々は行動を開始した。
    「さて、少しは皆の役に立たないとねぇ。百物語でも語ろうか……表題は、『殺戮の奇術師』」
     百舌鳥が身振り手振りを交え、ウィラが予知した殺戮の詳細を怪談として語り、周囲の一般人を徐々に遠ざけていく。
    「何という事だ。私のショーをこれほど邪魔するとは……一体どういう神経をしてるんだ!!」
    「それはこっちの台詞ですよ自称天才! これのどこが奇術ですか? ただの人殺しじゃないですか!」
     怒号を浴びせるルーナの顔面に、椎葉・花色(青嵐の焔・d03099)が縛霊手をぶち当てた。
    「実際に殺しておいて手品も何もありません……元に戻さないというなら、あなたは見た目だけの似非奇術師ですね」
     三和・悠仁(夢縊り・d17133)は自身に強化を施しつつ、そう投げかける
    「な……、なんたる侮辱…………!! だったらこれどうだ!!」
     ルーナはステッキを振るい、トランプ型のナイフが一斉に投擲された。
    「させません……! ……大したことありませんね。この程度のマジックで終わりですか?」
     一般人に向けられた攻撃を受け止め、更に盾で殴り返した侑二郎。
    「ぐぬぬ……どうやらショーは完全にぶち壊された様だ……許せん! 邪魔したお前ら全員殺してやるからな!」
     

    「クソ……私は客以外には手を出さないのがポリシーだが、お前らは別だ!!」
     ルーナの指先から、淡い魔力の塊が放たれ、灼滅者たちに襲い掛かる。
    「魔力とか……どう考えても超能力寄りでしょう、それは」
     花色が縛霊手を振るって魔力を弾き飛ばすと、空中が爆発した。
    「くっ……滅茶苦茶ですよまったく……一か所の出口に留まらないよう、東、西、南それぞれに分散して逃げてください!」
    「最早マジックでもなんでもなくない!? ……とと、大丈夫ですか? すぐに運びますね」
     空と千巻の2人が、爆発に驚いた一般人たちに避難を呼びかけいく。
    「さてさて……次はこっちの番ですよっと!!」
     花色はバベルブレイカーのジェット噴射で、ルーナに向けて全速力で突っ込んだ。
    「……ッ当たれこの!!」
     放たれた杭はルーナの身体を貫き、ガリガリと抉り取った。
    「ガッ……!! 超能力じゃないマジックだ!」
     ルーナは即座にトランプを投擲し、花色の身体にザクザクと突き刺していった。
    「……大丈夫か、今すぐに回復するよ!」
     朽葉が縛霊手から癒しの光を放ち、花色の傷を即座に癒した。
    「どうもありがとうございま……すっと!!」
     花色は杭に突き刺さったルーナを蹴り飛ばし、ステージのセットに叩きつけた。
    「何ですか今の面白トランプ。まだあなたのマジック、見れてないんですけどお?」
     花色の挑発に、ギリギリと歯をくいしばるルーナ。
    「この……うわっ!!」
     攻撃を仕掛けようとしたルーナの足元に、威司が照明を落下させた。
    「さーせーん。設備故障っすー」
    「はあ? ふざけないでくださ……グッ!」
     気を取られたルーナの背を、悠仁が放ったダイダロスベルト、『蒼怨』が切り裂く。
    「よそ見してる暇なんてあるんですか」
     悠仁は呟き、足元の影から巨大な刃を形成していく。
    「くっ……どうやら、僕の奇術をどうしてもくらいたい様だね!」
    「チッ……だから奇術じゃねえよ。天才名乗るならもう少し工夫しろ。結果だけ見ても対して目新しい事やってねえだろうが」
     影の刃はルーナの全身を切り刻み、ルーナは傷を抑えながら後ずさる。
    「うるさい……私は天才なんだ……誰が何と言おうと天才なんだ!!」
    「そうかよ」
     ルーナの叫びと同時に、空から無数の刃が降り注ぎ、周囲の人間に無差別に降り注いだ。
    「危ないわね全く……ちょっと腕が斬れたかしら」
    「ふむ……安心しろ、私は無事だ。お前は必ず護る」
     由宇や雛菊が、攻撃の対象となった一般人を庇い、そのまま安全地帯まで誘導していった。
    「よし……もうすぐ避難は完了ですね。この調子で行きましょう」
    「だな。あのペテン師の好きなようにはさせない」
     炯と侑紀が、ペアを組んで避難を進めていく。
    「大丈夫です、最後尾は僕が守るので慌てないで! でも速やかに避難を!」
    「彼の言う事に従い、速やかにここを立ち去ってください。訓練ではありません。本物の避難です」 
     春虎とイブが、残りわずかとなった一般人たちを1人1人着実に避難させていった。
     ルーナは、ショーを客に見せることを何よりも大切にしていた。
     そのショーを邪魔することで相当の怒りを買い、更にルーナの観客を横取りし、そもそものターゲットを減らす形となった作戦が功を奏し、一般人の死者が出ることがなく、避難はあらかた終了した。
    「よし……みんなを守って。アイギスベイル!」
     日和がほっと息を吐き、巨大な盾を展開させると、傷ついた前衛の傷がまとめて癒された。
    「くそ……今更だがお前らは多分灼滅者だな……許すまじ灼滅者!!」
     長い赤毛を逆立てながら、ルーナは人喰い鳩を放出する。
    「くっ……Bitte!!」
     身体を切り裂かれたラインが杖を振るい空にハートを描くと、ナノナノの『シャル』がラインの傷を癒した。
    「一般人の方々を助けることは出来ましたが……このまま、あなたを灼滅します」
     更にラインはフラメンコギターを構えるとメロディを奏で、綺麗な音色は強烈な音波となる。
    「……うわっ! 危ない当たるとこだったグオッ! 何するんだ卑怯だぞ!」
    「まあ、この程度の不意打ちで文句言われる筋合いは無いね」
     スレスレの所で攻撃を避けたルーナの後頭部に、避難誘導を終え戻ってきたアイリの蹴りがぶち当たった。
    「それに、わたしの攻撃もまだ終わっていませんよ?」
    「え? …………グハッ!!」
     更に演奏を続けていたラインが再び音波を放つと、ルーナの身体が弾き飛ばされ宙に浮く。
    「Gehen Sie!」
     ラインに指示されたシャルが竜巻を放つと、ルーナの身体は更に宙に浮き、天井に叩きつけられた。
    「よし、更に続きましょう」
     侑二郎は影の触手を天井に伸ばすとルーナの身体を絡め取り、そのまま地上まで引きずりおろし叩きつけた。
    「あたまいたい……もうほんと許さないわ……いやでもそろそろ逃げた方がいい気も……何かこいつら全体的に強いし……」
     ふらふらと立ち上がったルーナは自身の傷を癒し、蓄積されていたバットステータスの多くを解除した。
    「ふむ、回復したの……ならばこちらに取っては攻めの好機!!」
     りりんは槍を構え、ルーナの背後に一瞬で回り込む。
    「殺人鬼の技。自ら喰らえ!!」
     突き出した槍が、ルーナの心臓を的確に貫いた。
    「ガッ……離れろ!!」
     ルーナが人喰い鳩を放つと、りりんは瞬時に地を蹴り後ろに下がる。
     そして心臓と頭に手をあて、何かを考えるルーナ。
    「ふむ……どうだろうか、ここで思い切って停戦するというのは。私は逃げる。お前らは私を見逃す。お前らは死なない。私は誰も殺せないけど私も死なない。どうだ?」
    「断る」
    「なんでですか!」
     りりんの一言であっさり提案を蹴った。
    「ここで逃せば、貴様はまたどこかで悲劇を起こす……今度もわしらが介入できるとは限らぬ。ここで食い止めねばならぬのじゃ!」
     りりんはルーナに突撃する。
    「正義が疼く。悪を滅ぼせと」
     そして魔力が込められた杖が叩きつけられ、ルーナの身体の内部が爆発した。
     そしてルーナを取り囲み、逃すまいとする灼滅者達。
    「ガフ、ゲホッ!! …………そうかそうか、そこまで言うなら仕方がない!! ならばお前らを皆殺しにして逃げるまで!!」
     マントを翻し、灼滅者達と相対するルーナ。
     六六六人衆と灼滅者の、命のやり取りが始まった。


     前半、ルーナの攻撃により前衛の体力はそれなりに削られていたが、避難誘導が相当早く終わったため、避難誘導に当たっていた灼滅者はすぐに戦場に戻る事が出来ていたため、戦況はそう不利な状態ではなかった。
    「人体切断マジックだ!! 何度でも言うがマジックだからな!!」
     無数のギロチンが、正確な動作で前衛に降りかかる。
    「くっ…………よし何とか護れたね」
     仲間に向けられた攻撃まで引き受けた日和。
     そして杖に魔力を込めてバチバチと蒼い雷を生み出すと、ルーナに突っ込んだ。
    「荷電召喚。対象に輻射します」
     日和が掲げた杖を中心に雷が放たれ、ルーナの身体を焼け焦がす。
    「更に続くのじゃ!」
     雷に怯んだルーナを、りりんが槍で一閃する。
    「くっ……何故ここまで私を灼滅しようとするのか……ただちょっと過激な奇術を見せたいだけじゃないか!!」
     ルーナが放ったトランプが、花色の身体を切り裂いた。
    「いっつ…………その奇術が問題だって言ってるんですよ。奇術じゃないけど!!」
     傷口を抑えながらそう返し、ルーナに向けて帯を射出した花色。
    「人を殺すのが、そんな理由だなんてね……」
    「そんな理由とはなんだ、立派な理由じゃないか! 六六六人衆的に!」
     日和の言葉にルーナはそう答え、日和は更に攻撃する。
    「神剣抜刀。対象を斬断します」
     日和が手刀を振り下ろすと、放たれた風の刃がルーナを斬りつけた。
    「こっちの傷も結構深いけど……ここで仕留められる可能性は十分にある」
     朽葉が軽く剣を振るうと、暖かな祝福の風が灼滅者たちを包み込んだ。
    「ふふふ……悪いが私もこんなところで死ぬわけにはいかないのだよ……」
     ルーナが再び自らの傷を癒し、隙が生まれる。
    「よし……いくぞ、シエラ。お前の魔法をあいつにぶつけてやれ」
     朽葉の言葉に答え、ウイングキャットの『シエラ』が巨大な魔力の塊を放り投げた。
     その塊から無数の赤きナイフが生まれ、ルーナに向けて降り注ぐが、ルーナはスレスレの所で避けていく。
    「くっ、何だその手品っぽい魔法は!!」
    「お前のも奇術っぽいただのサイキックだろう。それじゃあ俺も……仕掛ける」
     朽葉は足元の影をルーナに向けて伸ばすと、その足を絡め取った。
    「よし……今だよ、誰か攻撃を」
    「それでは、私が行きましょう」
     朽葉に答え、悠仁は影を纏わせた標識をルーナの鳩尾に叩きつけた。
    「ガフ……いや、これはまずいですね本当に……さっさと逃げなきゃ……!!」
    「逃がしませんよ」
     血を吐き、戦場を見回したルーナが全速力で走り出し、その前に侑二郎が立ち塞がった。
    「くっ……どけ!!」
     ルーナの放った魔力が侑二郎の身体に爆発を起こす。
     全身に深い傷を負い、血に塗れた侑二郎。
     だが、道を譲る気は全くなかった。
    「この程度の傷……殺人を防ぐためなら安いものです」
     侑二郎は渾身の力を込めて盾を振りかぶり、ルーナの脳天に叩きつける。
    「ここで……絶対に仕留めます」
     立て続けに放った魔の弾丸が、ルーナの心臓を更に抉った。
    「ああ、くそ……私はまだまだ奇術を見せていくんだ……そして喝采を浴びるんだ!!」
    「残念ですが、それは諦めて下さい……わたし達は、絶対にそれを許すわけにはいかないんです」
     ライン奏でる清らかな音色が、更にルーナの身体を蝕んで行った。
    「あなたが何と言おうと、あなたのそれは奇術ではなくただのサイキック。己の殺人衝動に都合のいい理由なんてつけないでくれるかな」
     アイリは二連装駆動衝角【Crux】改を構え、ルーナと相対する。
    「…………なんで……なんで奇術だって認めてくれないんですか……私には……私にはこれしか出来ないんですよぉぉ!!」
     ルーナは手を掲げ、攻撃を放とうとするが、それよりも早くアイリが杭を放つ。
    「殺すなら、殺されても文句言えないよね? 悲劇の拡散を防ぐためなら、僕は喜んであなたを殺すよ」
     朱いオーラが纏った二本の杭が、ルーナの肉体と魂を貫き、ルーナの身体が叩きつけられたステージがゆらりと崩れ落ちた。
    「くっ、そ……!!」
     そしてルーナが反撃を仕掛けるよりも早く、灼滅者達が一斉に攻撃を仕掛けた。 
     りりんが槍がルーナを貫く。
     侑二郎が盾が頭を打つ。
     朽葉が縛霊手で身体を引き裂く。
     日和の帯が全身を縛り付ける。
     悠仁の放った矢が心臓を貫く。
     ラインの蹴りが肩を砕く。
     花色が畏れと共に首を切り裂く。
     そしてアイリが、拳銃を構える。
     スコープを覗き、アイリはゆらりと立ち上がったルーナの脳天を確実に捉えた。
    「天才の人生の多くは悲劇で幕を閉じるというのは、本当だったようだね、ふふふ…………」
     満身創痍のルーナが力なく放ったトランプはアイリの首元を掠める。
     次の瞬間、銃声が響いた。
     バタリとステージの中央に倒れたルーナは、二度と目を開けることは無かった。
    「悪いね、あなたの最期がこんなに地味で」
     そう言って、アイリは拳銃を懐にしまった。

     こうしてルーナの殺戮は阻止され、それが再び起こる事も無くなった。
     一般人を守りきり、六六六人衆を灼滅した。
     この最大限の戦果を手にし、灼滅者たちは学園に帰還したのだった。

    作者:のらむ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年3月19日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 12/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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