「おのれ、そこに直るのじゃ!」
「ばうっ」
棒を振り上げて、その少女は犬を追いかけていた。
「はぁはぁ、よくもわらわの菱餅、を」
「へっへっへ」
息は徐々に荒くなり犬との距離は開く一方だったが、少女はただ、追いかけた。犬の口には、ひな壇に飾ろうと買ってきた菱餅がくわえられていたのだから。
「待て、待つの……あ」
だが、疲れてきたのか距離が開く中、小さな段差に足を取られ。
「あがっ」
倒れ伏した少女を置いたまま、犬は走り去る。
「うぐ、うぅ……うわぁぁぁん、もっっちぃぃぃ」
その直後であった、少女が泣きながら異形へと変貌し始めたのは。
「集まったようだな」
座本・はるひ(高校生エクスブレイン・dn0088)は座っていた。何故かブリッジした靴司田・蕪郎(靴下大好き・d14752)の腹の上に、まるで公園のベンチにでも腰掛けるかの様に座っていた。
「実は一般人が闇もちぃしてダークネスになる事件が発生しようとしているのでありマァス」
そして、切り出したのは、何故か下になっている蕪郎の方だった。
「と言う訳だ、今回は菱餅のようでね」
補足したはるひをのせたまま、蕪郎はぐっとあげた片手から君達へ「菱モッチア、雛祭りに参上!」と書かれた靴下をぴらりとぶら下げてみせる。
「普段なら闇もちぃした時点でダークネスの意識に人の意識はかき消されてしまうのだが、問題の少女は一時的にとはいえ意識を残したまま踏みとどまる」
そこで、もし彼女が灼滅者の素質を持つのであれば闇堕ちから救い出して欲しいのだとか。
「かなわぬ時には完全なダークネスとなる前に灼滅を」
それがはるひからの依頼だった。
「闇もちぃしかける少女の名は八文・菱(はちもん・りょう)。小学二年の女子生徒だな」
悪戯好きな近所の犬に大好きな菱餅を盗まれ、追跡虚しく転んで取り逃がしてしまったことでご当地怪人菱モッチアと化す。
「君達が菱モッチアの持つバベルの鎖に補足されることなく接触できるのは、ちょうどご当地怪人に変貌した直後となる」
犬は走り去ってしまい、転んだ少女を起こしてくれるような人も居ない。逆に言えば人避けの必要がない都合の良い状況でもあるわけだが。
「ともあれ、少女を助けるには戦闘は避けられない」
闇堕ち一般人を救うには戦ってKOする必要があるのだから。
「戦闘になれば菱モッチアはご当地ヒーローとマテリアルロッドのサイキックに似た攻撃で応戦してくる」
ただし、武器は杖ではなく畳んだ扇。
「そして、ご当地怪人との接触だが、この時人の意識に呼びかけることで戦闘力を削ぐことも出来る」
狙ってみれば戦闘も優位に進められるかもしれない。
「相手は幼い女の子だ。私としても興味深いが、それはさておき」
大好物を盗まれ、転んだ上逃げられる。
「小さな子には辛かったのだろう」
故に、慰めたり励ます方向でのアプローチが有効なのではないかとはるひは言う。
「ここに菱餅も用意しておいた。良かったらこれも使うと良い」
ずいっと、君達の方に突き出す菱餅がやたら多いのは、はるひが微妙に公私混同したからか。
「救える者なら救いたいと思うのでね。あと愛でたい」
「ソ・ソ・ソ・ソ・ソックゥース!」
何かをだだ漏れさせつつも締めくくって頭を下げたはるひの下で、蕪郎は吠えたのだった。
参加者 | |
---|---|
因幡・雪之丞(災厄の隣の幸い・d00328) |
備傘・鎗輔(極楽本屋・d12663) |
八咫・宗次郎(絢爛舞踏・d14456) |
靴司田・蕪郎(靴下大好き・d14752) |
東屋・桜花(もっちもち桜少女・d17925) |
吉国・高斗(小樽の怪傑赤マフラー・d28262) |
天道・白野威(描き出すは筆のしらべ・d31873) |
アナスタシア・グランツ(荒野の誘惑・d32310) |
●為すべきこと
「バレンタインの次はひな祭りでも闇もちぃか」
「穢れに侵されてしまったのは辛いわね。ちゃんと浄化して助けてあげましょう」
「だな」
白いジャージに赤いマフラーと言ういつもの出で立ちで呟く自身の横で口を開いた天道・白野威(描き出すは筆のしらべ・d31873)の言葉に、吉国・高斗(小樽の怪傑赤マフラー・d28262)は頷き。
「子供の頃って純粋だからさ。理不尽なことがことさらショックなんだよな」
遠くを見つめた因幡・雪之丞(災厄の隣の幸い・d00328)は、自分が大事にしてるものが一方的に奪われたりとか、報われないってことに慣れてないんだと続ける。
「なるほどな」
他人から見ればしょうもないようなことでも彼女にとってはよほど大きなことだった、と闇もちぃの理由について考えていたアナスタシア・グランツ(荒野の誘惑・d32310)は別の角度からの視点へと感銘を受けた様に漏らし、ならばと口にし。
「尚のことボク達で救ってあげなくては……」
「うん、そうだよね。もっちあは助け合いだよ」
今回も仲間を連れて帰らなきゃ、と口にしたのは自身も過去に闇もちぃから救われた東屋・桜花(もっちもち桜少女・d17925)。
「それにしても何で餅なんだろう? ……餅娘3人目かぁ。あ、元餅娘もいるね。……4人目、かぁ」
疑問を口の端にのせた備傘・鎗輔(極楽本屋・d12663)はそんな桜花へ目を留めて呟き。
「そろそろ、行きましょうか」
犬の声を聞いた、八咫・宗次郎(絢爛舞踏・d14456)は仲間達を促す。
(「大切な何かを誰かに奪われる気持ちは俺も過去に味わいましたからね」)
共感と個人的には問題の少女に興味はないという無関心、胸に抱くどちらとも関係なく、正義の味方として放置は考えられないという理念と共に自身もまた歩き出し。
「待て、待つの……あ」
やがて一同が目にしたのは、ちいさな段差に足を取られて躓いた少女。
「あがっ」
転倒することは、解っていた。だが、この時点での介入は出来なくて。
「エクスブレインの指示から外れることはすべきじゃないかな。追いかけさせようと思ったけど」
走り去る犬からちらりと足下の霊犬、わんこすけへと目を向けた鎗輔は呟く。
「うぐ、うぅ……うわぁぁぁん、もっっちぃぃぃ」
そもそも、迷う時間も残されては居なかった。倒れ伏した少女がご当地怪人へと変貌し始めたのだ。ただし、変貌にかかる時間は十秒にも満たない。
「うぐっ、あのい」
「そこまでだぜ、菱ちゃん!」
そして、菱餅の肩アーマーつきおひな様という格好になって、身を起こそうとした瞬間だった、雪之丞が元少女へと声をかけたのは。
「だ、誰も」
ご当地怪人菱モッチアが誰何の声とともに顔を上げたとしても無理はない、だが。
「大丈夫でございますか?」
顔を上げたすぐ目の前で手を差し出す靴司田・蕪郎(靴下大好き・d14752)の存在に、最後まで言い終えるより早く、固まった。これもある意味で無理もない。蕪郎はムタンガと靴下しか身につけていなかったのだから。
「大丈夫?」
「大丈夫? どこか痛くない?」
左右から桜花と白野威が声をかけ、桜花の方は蕪郎同様手を差し伸べていたが、この状況で正面の人は気にしないでねと言うのは難しすぎたのだ。
●お話しよ?
「涙を拭いてくだサァイ。可愛いお顔が台無しでございます」
「言ったらアレだけどどっちがご当地怪人かわかんねぇっす靴司田先輩!」
ハンカチをムタンガから取り出し、ご当地怪人へ差し出した蕪郎を見て雪之丞がツッコミを入れたのは、仕方のないことだったと思う。
「ごめんね、犬は見失っちゃったけど……そうだ、良かったら私たちのを一つあげるわ」
もっとも、動じることのない灼滅者も居るには居て。白野威は桜花の手元を見ると、軽く頭を下げてから今思いついたと言わんがばかりに顔を上げ、狼フードの中の視線を桜花へ向け。
「あ……うん、まずはこれでも食べて落ち着こう?」
ムタンガからハンカチという衝撃的な光景から我に返り、視線の意図を察した桜花は持っていた菱餅を見せつつ言う。
「ひ、菱餅もちぃ?」
効果は覿面だった。
「大好きな菱餅取られちゃって残念だったね」
「大切な菱餅が取られてしまって悲しい気持ちはわかる、でも少し話を聞いてくれないかい?」
ある意味で主導権を握ってしまった仲間へと合わせる形でアナスタシアが続ければ、もはや菱餅から目の離せなくなっている元少女に抗えるはずもない。
「もちぃ、話?」
「ああ。そん……っと、ただその前に――」
餅に釣られたという形であっても、話を聞く姿勢になったご当地怪人へ頷きを返し、雪之丞は切り出そうとしてから周囲を見回し、首を縦に振ることで仲間達へ会話の相手を譲る。
「背の高さがそこまで変わらない犬相手は怖かっただろう。犬には大人でも追いつけないのに、最後まで本当に頑張ったな」
「頑張って追いかけたんだね。えらいえらい」
「っ」
高斗達が口を開き宥めた直後だった、元少女の瞳に涙がたまり始めたのは。
「たまたまあたし達いっぱい持ってるから、一緒に食べよう?」
「心優しいお姉さんが菱餅をたくさん持たせてくれたぞ、これから一緒にひな壇に飾ったり、皆で仲良く食べよう」
このままではまた泣き出す、と察して菱餅を差し出したのは、二人同時。
「ほら。いっしょに菱餅食べて、機嫌直してくれよ。美味しいぜ」
「っ、菱餅もちぃ」
持っていた理由がバラバラでも、ご当地怪人からすれば菱餅が貰えれば充分だったらしい。雪之丞の提供したモノも含めた菱餅に元少女は飛びつき。
「靴下でありマァス」
靴下を食べ出した蕪郎は、うん、スルーでよいのではないかと思う。
「食べ終わったら改めて話を聞いて欲しい。悪いことしてないのに菱餅取られるような理不尽に、俺達と挑む話をさ」
「はぐ……承知したもちぃ」
菱餅をかじりつつ顔を上げたご当地怪人は、申し出を承諾し。
「あとでお姉さんたちと一緒に、あの犬探し……あ、おかわりい、え?」
「靴下美味しい」
菱モッチアが菱餅を食べ終えそうだと気づいた桜花は、追加の菱餅を手に歩み寄ろうとして何故かブリッジ態勢に移行しつつ靴下を食べていた蕪郎に足を取られた。
「にゃあああぁぁぁ?!」
「もちぃっ!? なんか前後から柔らかいものが!! もちが!!」
「ソックゥース!」
悲鳴、転倒、混乱。折り重なる三人の声が周囲に響き。もつれ、絡まった三名が混沌を作り出す。
「ちょ、ちょっと、動いちゃ駄目」
ムタンガがもっちあ(比喩表現)に絡まったり身体に食い込んだりした桜花が悲鳴をあげ。
「前門の桜餅、後門の菱餅か……! く、こんなもちもち、耐えられるのか……!?」
蕪郎のナニカを菱餅と勘違いしつつも視界を桜花にもっちあされた雪之丞は戦慄する。
「だが、ここで挫ける訳には……菱ちゃん、そんな姿になって、誰に何をするんだ? 犬追いかけてとっちめて、泥んこまみれになった菱餅を取り返してそれでいいのか?」
説得に移行することで何かを払拭しようとしたのだろう、ただ。
「むしろ、そなたら何やってるもちぃ?」
目の前でくんずほぐれつしてれば、ご当地怪人の方から逆ツッコミが入るのは妥当な流れであった。
「え? じゃあ、この柔らかいのは何っすか?」
恐る恐る振り返った雪之丞が顔を赤らめた蕪郎を目撃して叫ぶまで、あと三秒。
●浄化
「さて、八文ちゃんだっけか? 犬に菱餅取られて悲しいのは解るけど、それ以上、落ちちゃ駄目だよ?」
仲間の作り出した混沌を横目に鎗輔は元少女へと語りかけた。
「僕もご当地の者だし、一度、君よりも深く落ちたことが有るからいえるんだけど、その力に身を任せてしまったら、大好きな菱餅を食べる所か、友達や家族とも過ごせなくなるよ」
「菱餅が……食べられなく?」
まず闇堕ちについて説明し、続いて励まし闇へ屈せず抗う様に呼びかける。
「そんなの嫌もちぃ!」
「なら、決まり。穢れを祓うわ。菱餅愛は、正しくないとね」
その第一段落が終了し、元少女が食いついてきたところで、白野威は言う。
「穢れを祓う?」
「あなたはとても強い子のはずよ……大丈夫、このくらいの事、乗り越えられるわ。オォ――ン!」
首を傾げた菱モッチアへと視線を向け、そして遠吠えと共に白き炎を放出し。「ええ」
頷いた宗次郎は、片腕を異形化させつつ困惑するご当地怪人を見る。
(「悪になるならただ滅殺するのみですが、救える命は救うのが正義の味方と言うものでしょう」)
だからこそ。
「俺は全力で八文さんを救い出しますよ」
口を開き宣言すれば、巨大化した腕を振り上げアスファルトを蹴った宗次郎の身体は一気に元少女へと肉迫する。
「大切な何かが奪われることの辛さということであれば、俺も知っています。だから」
最後まで言い終えることはない、否、攻撃のさなかの一言だ。全てが口を出るよりも、振り下ろした拳が菱モッチアへ落ちるのが早かったからに他ならず。
「うぐ、よくもやったもちぃな」
「防御は任せろー! 桜花ちゃんがトラブルスタンバイしてるときいて!」
「ちょっと、どういうこと?!」
「そうか、なら回復はボクに任せて貰おう」
巨腕を押しのけて立ったご当地怪人の敵意を前に、宣言した仲間の声へとアナスタシアは返し、身構える。
「ただ、トラブルとやらはもうさっきやったんじゃないのかい?」
一応ツッコミと言う形で軽口を添えながら。
「くらうもちぃ!」
「させねぇぜ、赤マフラーキック!」
「いくよ、靴司田さん」
視界の中では奥義を振り下ろすと跳び蹴りを放つ高斗が交差し、断裁鉞を手に呼びかけた鎗輔もまた元少女へ斬りかかった。
「もぢっ、な」
蹴られた場所を押さえつつ上げた顔に驚きが浮かぶが、遅い。
「大好きな物を奪われてしまうのは辛いでございますね」
「何を言」
まして、向けられる声に気がそれれば、隙が生じる。
「しかし、八文さんは勇敢でございます」
「っ」
それが、元少女を思ってのものなら尚更のこと。攻撃もブリッジも関係なかった。
「今の内に回復しよう」
「すまねぇ」
「ナノナノ」
アナスタシアとナノナノのみずむしちゃんが扇に打たれた高斗を癒す間も攻防は続く。
「っ、この程もちゃべっ」
斬魔刀を扇で弾いたところへライドキャリバーが突っ込んで撥ね飛ばし。
「うぐ」
「辛かったけど、一人でないて暴れても解決しないよ」
「そうさ、菱ちゃんは被害者だ。けど、その力でウサを晴らすなら、悪い子になるんだぜ」
起きあがったところで桜花と雪之丞が立ち塞がる。
「っ、もちぃ」
「声は、届いているようですね」
バベルの鎖を瞳に集め、宗次郎は呟いた。元少女が怯んだのは、灼滅者に攻撃されたのとは明らかに別の理由で。
「今度、貴女が転んだ時には真っ先に手を差し出しましょう。その気持は俺だけではなくここに居る皆さんが同じ気持です」
「え」
思わず周囲を見回したご当地怪人に、頷きを返した者がいた。
「ああ」
「だから、人として……帰っていらっしゃい!」
「踏みとどまるんだよ。色んな意味で、ね」
攻防はまだ終わらない、でも。
「もう、涙を見せる必要はございません」
攻撃をしかける灼滅者達は、紛れもなく彼女の味方であった。
「玉業――檄魂!」
「もぢばっ」
薙ぎ払われた元少女の身体が傾ぎ、やがて倒れ伏す。
「何とか、救えたようだね」
「そうですね」
人に戻りつつある少女を見つめ、一同は頷きあう。それが、戦いの終着であった。
●決意
「よく頑張ったわね。お帰りなさい。立てる?」
「すまぬのじゃ」
差し出された白野威の手を借りて少女は起きあがり。
「おかえり、菱」
かけられたおかえりの声は一つではなかった。
「うむ、ありが……っぷ、ちょ、苦しいのじゃ」
ただ、伴った抱擁については少々問題があったらしい。
「あの桜餅は凄かったもんな、うん」
「誰か、助け」
「ちょ、暴れないで、あ、みゃあぁぁぁっ」
何かを思い出し頷く者がいれば、窒息しかけた少女へ胸を鷲掴みにされて悲鳴をあげる者もいて、生じる混沌の中。
「無事、彼女も救えた訳だし、可能なら犬も含めて皆で菱餅を食べたいな」
「菱餅、美味しいでございますからね。きっと、あの犬もお腹がすいていたのでございます」
希望を口にしたアナスタシアへと空を抱える様なポーズで蕪郎は頷くと、歩き出す。
「はぁはぁ、もう駄目かと思ったのじゃ」
行き先は、抱擁から何とか脱し、まだ息の荒い少女の前。
「これどうぞ。好きなんでしょう?」
「あ、菱餅なのじゃ」
「どうぞ、こちらも」
白野威が菱餅を差し出す横に立ち、差し出すのはやはり菱餅だった。
「菱餅のおかわりはまだまだ用意してございます」
美味しいものは皆さんで食べて笑顔になりましょうと促せば。
「そうだな。一緒に食べたほうが、もっと美味しい」
一連の流れを見ていたアナスタシアも、同意し。
「だったら、皆でひな祭りってのも悪くないよな?」
マフラーをなびかせて、高斗は提案する。元々、少女は盗まれた菱餅を取り返す為に追いかけてきたのだ。家には菱餅以外が揃っていても不思議はない。
「それと、もう一つ。学園のことも話ておかないとな?」
「あ」
高斗の指摘に声を上げたのは誰だったか。
「学園とな?」
「ええ。あなたの境遇に最適な場所があるんだけど……来てみない?」
ほぼ同時に興味を見せた少女の頭を撫でつつ、肯定して見せた白野威は問いかけ。
「餅仲間はいつでも歓迎だよっ」
「学園にきなよ。君と同じ様な経緯で仲間になった人は多いよ。それに餅についても語れる人、多いしね」
「そうだな。学園には餅好きな人が多いから、きっと友達が増えるぞ」
鎗輔が鷲掴みから復活した誰かを横目に誘えば、高斗も頷いてみせる。
「僕は、本で得た知識でいいなら色々と披露出来るよ。退屈だけはしないし、ね。色んな、ほんとに色んな意味でね」
「むぅ……」
急な話ではある。だからこそか、唸った少女は、顔を上げ、周囲を見回し。
「解ったのじゃ」
決意を籠めて頷いた。
「皆の言うことなら間違いはあるまい」
そして、それとと続ける。
「帰ったら母様に本とむたんがとマフラーとおおかみのフードと乗り物と、その服をおねだりしてみるのじゃ」
最後に少女が示したのは、シスター服を身に纏う、アナスタシア。
「ちょっ、ムタンガは駄目ーっ」
「いえ、ムタンガより出来れば靴下をおねだりして欲しいでありマァス」
助けてくれた人達を全部のせラーメン宜しくリスペクトしようとした少女には即座に二名分のストップがかかったが、それはそれ。
「と言うか、ライドキャラバーも無理があると思うのだけれど」
ともあれ、そこまで乗り気なら少女が学園に通うのもそう遠くない日のことになるのかも知れなかった。
作者:聖山葵 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年3月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 3
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