●主人と執事と、花嫁と
「美しい……。最近の若者とは思えぬ。そうは思わないかい?」
『御意。花嫁に相応しい品格かと思われます』
古風ゆかしき時代の別荘と思わしき、豪奢な一部屋。
その中央に美しい女性を横たえ、男が装飾品を吟味していた。
まずは眠る乙女に相応しきドレス、次に髪飾りに指輪に……と一つずつ付けては、外していった。
「迷うねぇ。ここは彼女を起して、どれが好みか聞いてみようか?」
『なりません。あくまでケイン様のお好みが基準であり、花嫁にはその範囲で着飾っていただくのが筋かと』
美女の首筋には二つの牙痕。
唄うように装飾品を眺める男は、その牙痕に相応しきチョーカーを選ぶ。
しかしそうすると髪飾りがいけない、かといってこのままでは色合いが良くない……と悩む。
『いかがなものでしょう。まずはその色でまとめて、合わない色は美しき花を、あるいは血潮で染め直すのです』
「ああ、それはいいねえ。コーバックの言うとおりだ。お前は良くできた執事だね」
執事は男に、あくまで自分の好きな物を……。
と言ったのと同じ口で、別の事を提案する。
それはまるで執事と男の好みが近いとでも言わんばかりであった。
……唄うような男の首元には、女と良く似た牙痕が三つ。
花婿と、花嫁一人と、もう一人。
豪奢なシャンデリアが映す影は、二つ。
●ゲートと、吸血鬼の復活
「最近になって、軽井沢の一角で失踪事件が起きているのは知ってるか? 狭い地域なのに不思議と噂以上にはならない事から、ブレイズゲートと推測されている」
「バベルの鎖ですか。まあ一件二件退治しても同様の件が頻発するならブレイズゲートが怪しいですね」
騒ぎの洋館は、かつて高位のヴァンパイアの所有物であったが、そのヴァンパイアはサイキックアブソーバーの影響で封印され、配下のヴァンパイアも封印されるか消滅するかで全滅したらしい。
だがその地が、ブレイズゲート化した事で、消滅した筈のヴァンパイア達が、過去から蘇ってしまい再びかつての優雅な暮らしを行うようになった……と推測されている。
「おそらく現れるヴァンパイアは消滅した配下の一人……だろう。別荘の一つを占拠し、かつての栄華を取り戻そうとしているなら、これを阻まねばらん」
犠牲者を出さず生を謳歌するだけならまだ考慮の余地もあるが、被害が出ているなら捨て置けない。
今ならばまだ、配下の吸血鬼レベル。事件もそう大きくは無い。
大ごとにならない内に、対処=灼滅する必要があるだろう。
「奴らはサイキックアブソーバー以前の暮らしを続ける亡霊のような存在だ。亡霊は亡霊のままに、始末を頼む」
コクリと何人かの灼滅者が頷いた。
ある者は詳しい話を聞き、ある者は友人たちに連絡を入れる。
ブレイズゲートと化した、血塗られた屋敷の主人を灼滅する為に……。
●調査のない失踪事件
「……最近だけど、何人か行方不明なんだって」
「この辺り……。吸血鬼が居るって話じゃなかったか? 別荘ブレイズゲート化して、吸血鬼が蘇ったってやつ」
灼滅者たちが別荘周辺で起きる失踪事件を突き止めた。
だが奇妙な事に、その事件は犯人の特定どころか調査も始まって居ない。
そこへ近い位置に居るメンバーを呼び集めた仲間がやって来る。
「話を聞いているなら早い。その件もあって、ここで落ちあったんだ。別件帰りで悪いが、手伝ってくれ」
偶然に別荘地に訪れている灼滅者の元や、他の依頼帰りに、話を聞きつけて来たものなど様々。
事情は様々だが思いは一つ、敵が居るならば倒し、可能であるなら犠牲者を助けるため。
必要なメンバーに声を掛け、急遽チームを編成したのである。
そして辿りついたのは、古風な洋館であった。
豪奢な杖をアレンジした紋章が掲げられ、中々に時代がかった様相を見せる。
灼滅者達は捜索に出た全員が集合したのを確認すると、急いで突入していった……。
参加者 | |
---|---|
アイレイン・リムフロー(スイートスローター・d02212) |
オデット・ロレーヌ(スワンブレイク・d02232) |
夜鷹・治胡(カオティックフレア・d02486) |
殺雨・音音(Love Beat!・d02611) |
ディアナ・ロードライト(暁に輝く紅玉・d05023) |
篠歌・誘魚(南天雪うさぎ・d13559) |
鬼追・智美(メイドのような何か・d17614) |
橘樹・慧(月待ち・d21175) |
●
「ほえ~、綺麗なトコだな~」
作り物の耳をピッコピッコさせて、殺雨・音音(Love Beat!・d02611)は物語に出てくる少女達を思い浮かべた。
こういう屋敷に招待されて、御姫様に『成る』のだ。
もっとも今宵は、吸血鬼の御呼ばれなのだろうけど。
「いかにも何か出そうな洋館ですね」
篠歌・誘魚(南天雪うさぎ・d13559)は銀縫いとられた黒絹のカーテンを眺めて、プラネタリウムの様だと溜息をつきそうになった。
白い壁にフリル付きのカーテン、紫檀の棚には明らかに実用品ではない器が並ぶ。
「派手目な装飾は控えめ……。よい趣味ですね。でも、現代の軽井沢には重くて似合いません」
「敵の住処らしい雰囲気のトコかな? 成り金よりはマシだが、それだけだ」
誘魚の言葉に苦笑して、夜鷹・治胡(カオティックフレア・d02486)は陶器皿を適当に手に取った。
まるでわかんねー。
だけれど、これ一枚分の金があれば、生活が豊かになるのは判る。
「被害広がる前に潰しておかねーとな。でねーと何もかも燃やしたくなっちまう」
「あはは。それは大変だね~♪てーこちゃんが闇堕ちしない内に倒しちゃわないとっ」
治胡には別世界過ぎて、羨ましいとも悔しいとも思わないが、長居したくないのが本音だ。
そんな彼女の気持ちを知ってか知らずか、ネオンはつけ耳を治胡にも付けてあげる。
今日の気分は狼さんだ、イケメンぶりに磨きがかかるだろう。ウンウン。
「わぁ~素敵ねー。タキシードと牙でバンプも素敵だったけど、狼も似合うかも」
「でしょでしょ~。ネオンちゃんの特殊なおめめは、無敵なんだぞっ☆」
「何がだよ。ったく、さっさと行こうぜ」
オデット・ロレーヌ(スワンブレイク・d02232)とネオンがまとわりついてきたので、治胡のストレスは霧散する。
夢見る乙女には叶わない、ネオンだけならツクリな気もするがオデットはフルパワーだ。
霊犬たちがおかーちゃん? と首を傾げるので、ちげーよと返して暗き闇の先頭を突き進む。
●
次の扉を開けても敵の待つ部屋では無かった。
今度は目くるめく輝きが、周囲を埋め尽くす。硝子細工がロウソクの光を反射で無数の魚や鳥を映しだし……。
「この洋館の中だけ、時が止まっているのね。誰も見ないアンティークの幻火機……」
眩しそうにオデットが、近くを飛ぶ明かりの魚に手を伸ばした。
美しいが誰も見ない装飾は、むなしいだけの存在だ。鉄剣に浮いた赤錆と何処が違うのだろう?
「ここは広くて綺麗だけど、ちょっとひんやりしてるわね……。輝いてるのにちょっと寒い……」
「さっきのは客間で、ここからが本館だと思うわ。たぶん外に出れない吸血鬼の為ね」
アイレイン・リムフロー(スイートスローター・d02212)は隣に居たディアナ・ロードライト(暁に輝く紅玉・d05023)の肩とぶつかって、ほんのりと温かさを感じる。
ちゃんと間を空けていたのだが、寒さや怪しい気配に、少しだけ不安になったのだろう。
気がついたディアナは何かを察したように、指の先をチョコンとだけ握ってくれた。
奥の間より、おぞましき気配を持つ、ナニカが歩いて来る。
『ケイン様がお逢いになられます。みなさま、良く、おいでくださいました』
「(偽りの世界、偽りの日常。全てが偽物の世界……。そして、偽りの住人)」
ディアナは輝きで彩られた世界の終わりを見た。
滅びた吸血鬼の闇庭、そこにある偽りの宮廷。その主人に使える従僕。
そう思ったのだが、ふに落ちないことが一つ。
「……主人の方は強そうじゃないわね。奥のは偽物かしら? ……仮初の命で作り上げた主と在りし日の栄光追い続ける……何だか可哀想ね」
「一目で判るくらいだし、専門の人形遣いじゃねーな。主人まではゲートも再現できなかったと」
一同を出迎えた従僕の吸血鬼は恐ろしいほどだが、奥に見える主人はそれほどでもない。
ディアナの見立てに橘樹・慧(月待ち・d21175)は同意した。
おそらくは自分を納得させる為の、仮初めの主人なのだろう。重厚な装飾と変わらぬ程度の、虚飾に満ちた主人が座す。
その様子は一同が一目で判るほどであり、人形遣いと呼ばれる黒幕には遠い御遊戯だ。
「血を吸った人を手下の吸血鬼に変えて思いのままに操る……まるで伝承のヴァンパイアね」
「理解はできるけど、認めたくはないわね。相容れないと言うべきなのかも」
ほんの僅かに握った指先を離しながら、アイとディアナは頷き合った。
一刻も早く、この偽りを終わらせる為に。
『お客様をお連れしました』
「本来的にはサーヴァントは主に忠実に仕え支えるべきものなのですが……」
鬼追・智美(メイドのような何か・d17614)は溜息をつくと、戦闘態勢に移行した。
本末転倒……。
仕えるモノが主人を操る……。
滑稽、いや醜悪と言うほかあるまい。
『やあ。婚礼に花を添えてくれる気かな? どうだい? 美しい花嫁だろう?』
「お遊びとはいえ、何か勘違いをされていらっしゃるようですね。人形遊びに加えて、一般人を拐すなど……」
智美もまた、今は、主人を持たないメイドだ。
寂しい気もするが、だからといって主人を捏造する気にはなれない。
ましてや偽りの虚栄を存続させる為に、ただ人を犠牲にするなどもっての他である。
●
「どうやらきついお仕置きをして差し上げなければならないようですね」
『ケイン様を祝福するのではなく、邪魔をなさる気ですか? 相応の罰を下さねばなりませんね』
智美の言葉を侮蔑と見なしたのか、執事の制裁が飛んでくる。
僅か一瞬の踏み込みの後、恐るべき指先が心臓を抉ろうと……。
「レイスティル、頑張って……!」
『無駄な事を!』
智美を守ろうとした霊犬のクナイと、吸血鬼の紅蓮の爪がせめぎ合う。
だがそれも一瞬の事、弾き飛ばされて傷を負ってしまった。
いや、むしろカバーを間にあわせたレイスティルを褒めるべきだろう。
「見栄っ張りね。それがあなたの誇りなの? ……悪趣味な一人芝居を終わらせましょう」
アイとハールが傷ついた霊犬の前に出て、残り二人の敵を食い止める。
大剣を振り降ろすビハインドの影に隠れて、アイが突撃を駆ける。
「ディアナ!」
「ナイスキャッチ! お互い相容れないなら、戦うだけよね」
アイに続いてディアナが飛び蹴りを駆け、二人の進路が交差。
手と手を中心にターンして、一人は前衛として残り、もう一人は中衛に下がった。
入れ違いの攻撃でアイたちも負傷したが、誰かが治すだろう。
だから大丈夫……。と言えるメンツがいるなら、そうでないメンツも存在した。
「よくもウチの連中をやってくれやがったな!」
『自業自得でしょう』
治胡の鉄拳と、執事の手刀が交錯した。
二転、三転。
ベアナックルからバックナックル、肘と肘のつば競り合いで押し込んでいく。
「ふん、こういう手合いは好きじゃねー。だいたい、人をオモチャにしてるんじゃねーよ!」
『君は吸血鬼に何を求めているのかね? 人などただの血袋だよ』
『その通りでございます、ケイン様』
治胡の拳が炎をまとい、ブン殴った後ですかさず蹴り飛ばす。
だが、その間隙を縫って、杖を掲げた主人役の吸血鬼が殴りつけた。
無理な横槍もあり、主従ともども仲間からのまともに攻撃を受けたが、間を挟むには十分だったのだろうか?
吹っ飛ばされたはずの執事も、治療を受けて立ちあがって向かってきた。
そこを仲間達が取り囲んで、包囲網を築く。
『手癖の悪い娘たちですね。これは躾けが大変そうです』
「悪いけど王子様以外にそのつもりはないの。執事なら、主を庇って倒れるのも本望でしょう?」
「エクソシストとしての本領、見せつけてあげましょう。……ところで」
フリルを刃に変えて伸ばしたオデットや、朱い槍で抉った誘魚が包囲に参加する。
まずは一体ずつ、それも元凶から転転と言う所で、何かに気がついたのか、誘魚がマイペースに突っ込んで来た。
「今の内容だと、王子様になら躾けられても良いのですか?」
「ちっ。違うもん。そう言う意味で行ったんじゃないんだからね? 違うんだからっ」
誘魚のツッコミに対して真っ赤になりながら、オデットは槍を振りまわし、ポカンポカンと叩く姿は愛らしい。
……ややあって沈黙すると、誘魚に追撃の為の道を譲った。
スッキリした表情なので、きっと正気に戻っているはずである。たぶんね。
●
「いーよーいーよー。その表情いいねー、思わず写メしてみたり♪」
戦いが進めば無傷とはいかない、ネオンは後ろから抱きついたり耳をフーフーしながら治療。
そんなスキンシップは不要だとはしっているが、その方が治る気がする。
いま思いついた理由だけど、そんな気がして来たから座右の銘にしようっか。
「「HA・NA・SE!」」
「つれないなあ~。皆っ、フレフレ~v」
耳だけじゃなくて、尻尾を付けようとしたのがマズかったのかもしれない。
治胡も慧も、ネオンの手から逃げるように、みんな脱出してしまった。
「素敵な舞台でお茶でもしたい位なのに、ゆっくりさせてくれないんだね~。執事が真の黒幕っていうの、ロマン感じちゃう~♪」
「わーってるならてめーも参加しろっ。奥手だから怖いって、……。どこが奥手なんだ!」
とか、みんなの気持ちを解しながら、ネオンは今日も頑張るのです。
時々秋波(氷)を放って見るけど、つれないよね、グッスン。
と、まあ別世界の誰かさんを見れば判るように、戦いは順調に進んでいた。
倒せてはいないが、数手も手番が廻ればタダでは済むまい。
『ええい、この狼藉者が!』
「カバーや治療が面倒癖えな。……ったく、主やその花嫁、戦わせていいのかよ。綺麗に飾った花も彫像も、所詮は駒扱いなんだな」
慧が伸ばす光の刃が闇を照らし、さらには、その影が伸びて拘束を始める。
だが影の手へ割って入った主人役のせいで、思うように掴めなかった。
「怪我した主人に庇わせやがって。でなきゃとっくに……。執事の化けの皮、そろそろ剥がれてきたんじゃねーの」
『何のことやら!』
慧の目の前で、割って入った主人役が片膝をつく。
真なる吸血鬼である執事はおかげでまだ余裕ぶっているが、本来であればとっくに倒しているはずだ。
とはいえ体力の水準線は下降を続け、いつまでも支えきれるはずが無い。
援護役のジャマーが阻害では無く回復をしている時点で、限界は見えていた。
「どうそれらしく整えたってハリボテ栄華じゃん。繁栄誇ったあんたの時間は終わってんだ。妄念に囚われた過去の亡霊は浄化の光の裁きで塵に還れってーの……俺が抑えとく!!」
「はい、私にお任せ下さい。ここで最終段階に参りますよ」
慧がどつきながら影の束縛を強めると、合わせて仲間が飛びこんで来た。
交通標識を振りまわしながら、智美が連続攻撃の第一打となる!
「貴方のお遊びもこれまでです……!」
智美が標識の意義を拡大し、動きを止めた所で蹴りあげる。
火花が散るほどの一撃を放った後、次なる仲間が挟みこむように迎え討った。
「優秀な執事を演じても、その恐ろしさはあなたの域を超えないの」
治療の補助に回っていたアイが、此処に来て再び攻撃に参加。
狙っている訳ではないが主人役はカバーリングで相当に傷つき、執事も赤ランプと言った所だ。
もはや疾風怒濤の攻めで、一気に倒した方が早いだろう。
「一人きりな、あなたの底を思い知らせてあげる。……信じてるから」
「当然よ、あなたに、アイに当てたりなかしない」
アイは凍結弾を放つディアナの攻撃の前に、あえて身をさらした。
一歩タイミングを間違えれば、味方の攻撃に当たってしまう危険な間合い。
トドメを刺したのはアイの斬撃なのか、ディアナの魔弾なのか既に区別はつかぬ。
刹那の差を付け、アイは『向こう側』に飛び抜けた。
●
『ガアアア!!』
「悪ぃな。てめえに時間はかけてやれねえ……」
真なる主人である執事が倒れたことで、ケインと呼ばれた偽の主人役は暴走を始めた。
そこへ向かって紅い弾丸が跳ねる。
人の形をしたナニカは、癒しきれない傷口から炎をさらして突撃を掛けた。
「順番を待たせてるんだ。まだ戻れるあの娘をさ」
強烈な蹴りが突きささる、鈍い衝撃の後。
治胡は帽子を目深にかぶり直して、崩れ落ちる主人役に別れを告げた。
「どうだ? 抗えそうか?」
「主人も気絶しましたし、おそらくは。狙ったのより順番が前後してしまいましたけど……」
治胡が振り向くと、智美たちが緊張しながら闘い続けていた。
言葉を投げながら、おそるおそる打撃を加えて行く。
「その衣装はね、もっと幸せな気持ちで着るものよ。目を覚まして」
「首の傷は消せないかもだけど、あんたはまだ戻れるよ。長い悪夢にそろそろ幕を下ろそうか」
オデットと慧は、反応に素早さを感じなくなっていた。
散発的に動き出し、時折、かなりの攻撃を放っては来るのだが……。
もはや、当初の勢いは無い。
途中からずっと治療に回っていた事もあり、間合いも掴めていないようだ。
「あとちょっとかな? そんじゃ俺らで削るから、最後の締め頼んだぜ」
「メンドイけど、助けられる人は助けなきゃね♪」
「あなたを血の色に染めるような人の言うことを聞いていてはダメ。……それに、悪い人はもういないわ」
慧の言葉に頷いて、ネオンとオデットは最終段階にに入った。
彼が影野手で束縛を掛けるのに続いて、サーバントたちは後方に待機。
万が一にも避けられない状態で、ネオンが、オデットが、手加減しつつ気絶させた。
「がんばり過ぎました。帰ってお昼寝がしたいです」
誘魚は簡素な弔いをしながら、入口に掛った紋章を眺める。
そこだけが煤ボケて、読み取ることができなくなっていた。
だが、入る時は杖の紋章が刻まれていたはずだ。
「死体は灰に魂は常世に、そして妄念は幻想にそれぞれあるべき場所に還ってね……」
「でも、ここに囚われている以上、また続けるのでしょうね……」
ディアナとアイは、美しさを失わない建物に禍々しさを感じた。
むろん、普通の建物なら当然だが……。ここは偽りのはずなのだ。
「ブレイズゲートは……まったく面倒ですね」
マイペースにそう呟いて誘魚は立ち去ることにした。
立ち塞がれば、何度でも灼滅するだけ……。
作者:baron |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年3月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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