
●
――ねえ、『ミツイシ菌の蜜石さん』って知ってる?
あの理科準備室に入ったら最後、ミツイシ菌に侵されて死んじゃうんだって。
それは、寂れた田舎町の小学校に古くから伝わる、曰くつきの怪談話。
昔々、とある都会から蜜石さんという名のそれはそれは美しいお嬢さんが転校してきた。
いかにも蝶よ花よと育てられた余りに綺麗な彼女は、田舎育ちの児童からしてみれば非常に浮いた存在に見えたのだろう。
転校からしばらく経った或る日から、学校中に陰湿な噂が飛び交った。
「よそからやってきた蜜石は、都会の臭いで汚れてるんだぜ!
こいつに触ったら『ミツイシ菌』がついて、病気になって死んじゃうぞ!」
そんなものは何の根拠もない噂だ。
しかし、人を疑うことを知らぬ蜜石さんは、その噂を信じてしまい――。
(「皆に伝染っちゃいけないわ。皆を殺しちゃいけないわ……。じゃあ、わたしは、一人ぼっちで生きなきゃ……」)
薬品だらけの狭い狭い理科準備室に閉じこもり、二度とその姿を見せなかった。
以来、理科準備室の扉を開けてしまえば、『ミツイシ菌』に汚染され、そのまま死に至るという――。
そんな、哀しい物語。
「嗚呼、嗚呼、なんて悲劇的なお噺なのだろう! 是非とも欲しいな、その病を……!」
真夜中の校舎に、歌うように独り言ちる少年の声が響く。
古びた理科準備室の扉が開かれ、少年が手に持つヒビ割れたスマートフォンが室内を照らし出した。
――其処には、見るも無残なほどに汚れた少女が、ひとり。
「来ナイデ……アナタ、死ンジャウ、ワヨ……」
「いいや、死にはしないさ。だが、君のその病の怪談を、僕はもっと広めたいのでね――」
都市伝説たる汚れた少女――『ミツイシ菌の蜜石さん』は、怯えるように眇める。
だが、少年がニヤリと愉快げに笑んだのち、ヒビ割れたスマートフォンがさらに光量を増していった。
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「タタリガミは都市伝説を生むだけでなく、既に存在する都市伝説を喰らって能力を得ることもできる。
……お前さん達にゃあ、新たな都市伝説の力を得たばかりのタタリガミを灼滅して欲しいんだ」
武蔵坂学園の新たな仲間となった七不思議使い、その宿敵であるタタリガミ。
さっそくそのタタリガミにまつわる事件が数多く寄せられ、白椛・花深(高校生エクスブレイン・dn0173)もどこか当惑している様子だ。
「タタリガミは標的とする都市伝説……『ミツイシ菌の蜜石さん』を喰らう為に、真夜中の小学校に忍び込む。
お前さん達が介入できるのは、そのタタリガミが蜜石さんを捕食した後だ。
蜜石さんが喰われる前にタタリガミを攻撃すれば、バベルの鎖で察知されて何が起こるか分からない。
……俺様としては、非推奨だ」
苦虫を噛み潰したような気難しい顔で、花深はそう灼滅者たちに告げる。
捕食される都市伝説の内容が内容なだけに、複雑な気持ちもあるのだろう。
戦場となる理科準備室は狭く、薬品も数多く置かれている。
かなり古い部屋のため、灯りもつかないのだという。戦う際には気をつけた方が良いと、エクスブレインは注意深く伝える。
「んで、これから戦うことになるタタリガミなんだけどよ……捕食したばかりの蜜石さんの能力を使って攻撃してくる。
会話自体は可能――だが、あまり期待しない方が良いだろうな。
蒐集欲が強いコレクションマニアで、どんな由来の都市伝説であろうと自分の為だけに悪用する」
そう。
たとえ、「皆を殺しちゃいけない」と自分を犠牲にし、ひとりで閉じこもったという謂れのある都市伝説でさえも。
「……癪に障るよな、タタリガミって奴は」
灼滅を頼む、と花深は灼滅者たちに改めて願った。
噂が産んだ病が広まるなど、きっと都市伝説自身も望んでいないはずだと信じて。
| 参加者 | |
|---|---|
![]() メルキューレ・ライルファーレン(春追いの死神人形・d05367) |
![]() 灰咲・かしこ(宵色フィロソフィア・d06735) |
![]() ティルメア・エスパーダ(カラドリウスの雛・d16209) |
![]() 御神楽・フローレンス(高校生エクソシスト・d16484) |
![]() 夜伽・夜音(トギカセ・d22134) |
![]() アルディマ・アルシャーヴィン(リェーズヴィエ・d22426) |
![]() 白星・夜奈(夢思切るヂェーヴァチカ・d25044) |
比丘尼・一葉(百不思議七物語三八・d33238) |
●
無人の校舎は、真昼の喧噪を吸い込むような暗闇に包まれていた。
先の見えない暗がりの廊下を歩くのは、8人の灼滅者たち。各々が手に持つ幾つもの灯りが周囲を照らすが、やはり夜特有の不気味さは掻き消されない。
――狭くて暗いお部屋にひとりぼっち……とっても、寂しいこと。
――なんてやさしくて、悲しい御話。
瞑目した夜伽・夜音(トギカセ・d22134)が想うは、孤独を自ら選んだ少女の願い。
都市伝説であれど、その中に『やさしさ』が未だ息衝いているというのなら――それを奪わせる訳には、いかない。
メルキューレ・ライルファーレン(春追いの死神人形・d05367)もまた、喰われる運命から逃れられぬ都市伝説に想いを馳せていた。
(「噂話というものは、だいたい元になった逸話というものがありますが……もしこの話の元になった事実があったとしたら、それは、あまりにも、」)
哀しいことだと、胸を痛める。
長い睫毛のその奥、無機質な鏡色の双眸には、哀しみの念を映して。
されど灼滅者として、タタリガミも都市伝説も屠るべき存在。背反する想いを抱えながらも、物語の終止符は、必ず打たねば――。
(「別に、ダークネスも、都市伝説も、てきで、ころす、だけだから……どーとも思わない、なのに……」)
白星・夜奈(夢思切るヂェーヴァチカ・d25044)の中にも、はっきりと言い表せぬ程の複雑な思いが渦巻いていた。
己の傍らに漂う、軍服の老人――ビハインドたる『ジェードゥシカ』をふと見つめる。白銀の髪に、露国特有の白い肌。愛する祖父を死に至らしめたダークネスは、何よりも憎い。
それは滅すべき都市伝説も例外ではない。今回もタタリガミが都市伝説を喰らえば、相手取る敵が減って手間がなくなるはずだ。
しかし……躊躇いを抱く自分の感情を、夜奈は認めたくなかった。認めては、いけないのだ。
(「タタリガミにとってはお構いなし、か。せめて、これ以上広まらないようにしなきゃ」)
常の柔和な笑みを湛えたまま、ティルメア・エスパーダ(カラドリウスの雛・d16209)は決意を固める。
都市伝説を狙う新たな敵・タタリガミ。それも此度の相手は、ただただ力を蒐集する無節操な性質であると聞く。
「他人の趣味に口を挟むつもりはないが、個人的に少しばかり不快だしな」
眉根を寄せ、アルディマ・アルシャーヴィン(リェーズヴィエ・d22426)が辛辣に呟く。
タタリガミは未だ情報が少なく、謎が多い存在だ。気を引き締め、確実な灼滅を遂行せねばなるまい。
(「不思議、不思議ですね。彼女が本当は何を思って自分から閉じこもっていたのか」)
比丘尼・一葉(百不思議七物語三八・d33238)が内に秘めるは、未だ見ぬ都市伝説への関心だ。
もし都市伝説を入手できたならば、幼馴染が記した『双羽伝奇集、松葉怪奇譚』にその情報を加えてもらいたいところだが……。
そう逡巡する間にも、灼滅者たちは件の部屋の前へとたどり着いた。灯りで壁を照らすと、古びた標識で『理科準備室』と記されてある。
「来ナイデ……アナタ、死ンジャウ、ワヨ……」
「いいや、死にはしないさ。だが、君のその病の怪談を、僕はもっと広めたいのでね――」
扉の奥から聴こえる声はふたつ。一方は都市伝説、そしてもう一方は……タタリガミであろう。
(「心優しき都市伝説を、己が欲望のみで喰らうなど……!」)
御神楽・フローレンス(高校生エクソシスト・d16484)の心に沸き上がるのは、タタリガミへの静かな怒りだ。
たとえ宿敵でなくとも、許しがたき非道な悪事に違いない。今すぐにでも捕食を阻止したい衝動を抑え、フローレンスは対峙の時を待つ。
やがて扉の隙間から微かな光が漏れ、明滅し始める。「ヤメテ……! 来ナイデ……!」という少女のか細い叫び声が続いたものの、やがて虚しく掻き消された。
――ああ、美味しい。
少年が恍惚に声を漏らしたのだ。
「さあ、往こう。この悲しい物語を、仕舞にする為に」
灰咲・かしこ(宵色フィロソフィア・d06735)が後方から静かに告げ、皆を促す。
そして、扉は開かれた。幾つもの灯りに、目を眇めるタタリガミ。
「成る程、実に救い様が無いな。私利私欲に走った無節操な蒐集家とは――」
かしこが鋭い視線を向ければ、タタリガミはへらりと軽薄な笑みを浮かべる。
「おや? きみたちは……ああ、噂の武蔵坂、か」
艶やかな髪に、埃や涙で汚れた白い肌。まるで少女のような容貌の、少年。
灼滅者たちは一目で悟った。奴のその醜くも美しいあの姿は、奴が捕食した都市伝説……『ミツイシ菌の蜜石さん』のものなのだと。
●
「丁度良いね。せっかく手に入れた病の怪談、試させてもらおう!」
にや、と口端を釣り上げて愉快に笑い、タタリガミはスマートフォンを打ちながら怪談を語り出す。
それはつい先程手に入れたばかりの、虚の病に苛まれた哀しき少女の物語だ。
「『――いと高き神よ、私は喜び、誇り御名をほめ歌おう』」
それと同時、祈るように紡がれた、常の言葉。
淡い翠の宝玉が埋め込まれた大鎌を手にしたメルキューレが、タタリガミへ急襲する。発生された死の病の怪奇現象を斬り裂きかわして、滅すべき相手の目前へと迫る。
「残念ながら、その物語は広めさせません。『彼女』を、返して頂きます」
人形の如く整った貌に、怜悧な眼光。言い放つと同時、メルキューレは大鎌を振り下ろす。
Lily valkoinen――白百合をかたどった彼の得物は、その美しい意匠からは想像もつかぬほどの斬撃を叩き込んだ。
「度し難いね。この力をどう使おうが、所有者である僕の自由さ。咎められる理由など、ない」
「『トギカセ』」
大事なその言葉を確かめるように、静かに唱えたのは夜音だ。
黄色標識を展開し、前衛を担うアルディマ、メルキューレ、夜奈、ジェードゥシカ、一葉のビハインド『三葉』に耐性の加護を与える。
「皆を殺したくないって蜜石さんのお気持ちを、そんな風に使っちゃうのはめっ、なの。
タタリガミさんとは初めましてさんだけど……しっかり灼滅させてもらうよぉ」
夜音がタタリガミに向かって指差しし、『めっ!』の仕草をする。すると音もなく瞬時に夜音の脇をすり抜け、アルディマが肉薄した。
「余裕ぶっていられるの今のうちだ。早く決着をつけよう――『我が名に懸けて!』」
展開される殲術道具。龍砕斧を振り上げ、タタリガミの身体を叩き斬った。
その膂力に圧倒され、タタリガミの華奢な身体が吹き飛ばされた。戦場たる理科準備室の壁をぶち破り、そのすぐ隣の理科室へと転がっていく。
灼滅者たちもそれを追いかける。此処ならば準備室と比べて室内も広く、戦闘に支障は出ないだろう。
次いで躍り出たのは、白銀の髪を揺らした蒼い瞳の令嬢(ヂェーヴァチカ)。夜奈は白い光をまとわせた聖剣を振りかぶる。
しかしその目にも留まらぬ斬撃を、タタリガミはひらりと躱した。だが続けざまに繰り出されたジェードゥシカの霊撃は、的確にタタリガミの身体を射抜く。
「嗚呼、まったく理解し難いな。都市伝説に同情でも抱いたのかい?」
武蔵坂は面白い奴等が揃っている、とタタリガミはけたけたと嘲笑う。
そんなタタリガミに敵意を込め、夜奈は睥睨した。絶対零度の眼差しを向けて、吐き捨てるように告げる。
「ただ、タタリガミを、ころす、だけ。ヤナは、都市伝説なんて、どーとも、思って、ない」
それが本音かと問われれば嘘になる。しかし、恨みを以って灼滅すべき都市伝説に、憎しみとは真逆の感情を抱いたなど――それが夜奈にとっては無性に腹立たしかった。
「迷える少女の魂に救済、そして悪霊に天罰を。神に捧げる曲を聴きなさい!」
フローレンスが言い放ち、ギターをかき鳴らす。普段の清楚な佇まいからは想像もつかないほどにロックな、はっちゃけシスターとしての姿だ。
速弾きすると同時にフローレンスの霊犬『シェルヴァ』がタタリガミの懐まで飛び込み、斬魔刀を見舞う。
ゆらり、と崩れ始めたタタリガミの身体。その様子を一目で好機と察知したのは、予言者の力を帯びたかしこの、柘榴石の眸だ。
「これ以上、心優しい少女の心を弄ぶと言うならば容赦はしないさ。君を消し、全てを終わらせる」
「物騒なことを言うねえ。今は夜も遅いのだから、お嬢さんはもう眠る時間だよ」
「さあて、ね。――本当に眠りに就くは、果たしてどちらだろう?」
タタリガミの皮肉った台詞にも余裕綽々と返して、かしこは『wand of wisdom』を構えた。杖に飾られた青色のトパーズが、光を帯びて煌々と輝き出す。
放たれたのは魔力圧縮された矢だ。反動を受け、かしこが身に纏うエプロンドレスの裾がふわりと翻る。
魔の矢はタタリガミを真っ直ぐに射抜くが、それでも未だ、奴はにやにやと不気味な笑みを崩さない。
そのままタタリガミが吐き出したのは、本来ならば都市伝説の力であるはずの『死の病』だ。
煙のような黒い菌が、後方から的確に狙いを定めていたティルメアを侵す。威力は凄まじい、が、それでも彼は笑みを崩すことはない。
「その力の源、蜜石さんは皆を傷つけたくはなかった――それが、都市伝説の由来だったはずだよ」
紡ぐ言葉も、普段の明るい彼どおり。だが容赦なく鞭剣を振るい、タタリガミを捕縛する。
悲しみよりも笑顔になって欲しいとティルメアは一途なまでに願う。たとえ相手が都市伝説であろうとも――笑顔でいれば、幸せだから。
「彼女はとても悲しく不思議な都市伝説ですね。けれど、貴方の噺はお粗末過ぎます」
彼女の不思議を生かせていない、と一葉が断言すれば、タタリガミは「何?」と怪訝に眉を顰める。
「きみ……名は、何と言うのだい? 僕と同じ匂いをするから、一応聞かせて頂こう」
「百不思議三十八、不死議の一葉、貴方の不思議では殺せないでしょうね」
名乗り上げ、くすり、と笑みを一つ。一葉は比丘尼の家系に伝わる『人魚の不死議』を語る。人魚の肉を喰らい、長い年月を生きたという先祖の物語。それは言霊となり、前衛の仲間たちへ癒やしをもたらした。
「御話さん、集めたくなるよねぇ。僕の御話さんも、聴かせてあげるよぉ」
夜音が紡ぐ七不思議は夜伽話。しっとりと、夜の静寂に溶け込むような声音で語り始める。
『普通』を夢観たという黒の少女と影の枷との物語。夜音の伽枷奇譚はタタリガミを囚え、執着するかのごとく離れない。
確実にダメージを蓄積してきたのか、タタリガミの顔にも段々と焦りが生じ始めてきた。
言い表すならば、多勢に無勢。タタリガミ自身が慢心し、灼滅者たちへの挑発を続けて攻撃を疎かにしたのが原因か。
だが無慈悲にも攻撃の手は止まない。メルキューレの足元に這う影の蛇が、タタリガミの身体を喰らう。
(「このタタリガミを灼滅すれば、結果的に『ミツイシ菌の蜜石さん』は救われるのでしょう――……」)
メルキューレは微かな望みを信じた。哀しい結末が待ち受けていようとも、彼女を奪い返すために。
三葉が霊障波を放ち、次いでフローレンスがギターを響かせればシェルヴァが六文銭を撃ち放つ。
立て続けの連撃に耐えかね、バランスを崩したタタリガミにトドメを刺したのは、アルディマのオーラの砲撃であった。
撃ちぬかれ、倒れ込むタタリガミ。
「ふふ……残念だ。せっかく今まで集めたコレクションを、失うとは、ね……」
最期まで蒐集癖にこだわりつづけるタタリガミ。あまりにも哀れな末路だ。
アルディマは横たわるタタリガミを見下ろし、最後に告げた。
「収集家を気取るなら、最低限のマナーは守ることだな」
●
「彼女は……蜜石嬢は純粋過ぎたのだね」
徐々に消えゆくタタリガミの身体に視線を落としながら、かしこが呟く。
死に至る病。それはこの暗闇より深い、深い『絶望』に他ならない。
絶望に苛まれていたのは本当は誰なのか。
人々が創り上げた偽りの病に侵されていたのは、蜜石という少女自身なのではないのか。
(「……きっと、苦しかったのだろう。どうか今は、安らかに眠って欲しい」)
かしこはただ願う。もうこれで、孤独の苦しみを味わうことはないのだから。
一度喰われた都市伝説は元通りにはならない。吸収も、理屈上では不可能だ。一葉は悔しそうにうつむき、語りかける。
「『ミツイシ菌の蜜石さん』……貴方の不思議が無くなるのは惜しいですが、私は、忘れませんよ」
その様子を見届けていた夜奈は、どこかやるせない気持ちを抱いたまま視線を落としていた。
せめて、一葉の元で幸せになっていてくれたら――そんな、淡い願いが潰えたのだ。けれど夜奈自身はそれを断じて認めたくはなかった。
そんな彼女の背を、ジェードゥシカは静かに見守っていた。まるで、愛する孫娘の心を労るように。
タタリガミとの戦いで少なからず傷を受けていながらも、ティルメアの笑顔が絶えることはなかった。それは仲間たちに心配をかけたくないという、彼自身の願いがあったからだろう。
「まるで、蜜石さんが笑ってるみたいだ」
タタリガミは、激しい損傷を受けてもなお眠るように横たわっていた。
都市伝説と同じ姿であるからこそ、まるで『ミツイシ菌の蜜石さん』本人が安らかに眠っているようにも見えた。
「蜜石さんの想い……僕たち、守りきれたかなぁ」
蜜石さんに似たタタリガミの寝顔を見つめ、ふと夜音が呟いた。
都市伝説と直接対話ができなくとも、この場に居た8人の灼滅者たちは、『彼女』を想い続けていた。
その尽力もあって、灼滅者たちは灼滅という形ながらも、都市伝説を救済したのだ。
きっとこの結末が、彼らに成せる最高の終止符であるに違いない。
ならば後はせめて、この日に失った命と、報われぬ物語の為に――、
「……祈りましょう」
両手を組み、そっと目を伏せたメルキューレがそっと紡いだ。
銀の指輪に飾られたペリドットが光を帯びて輝く。まるで彼の祈りを、同じく願うかのようだ。
やがて夜明けが近づき、理科室の窓辺から日の出の光が差し込み始めた。
タタリガミが欲した、哀しき都市伝説。
『ミツイシ菌の蜜石さん』の物語は、夜明けとともに、これにておしまい。
| 作者:貴志まほろば |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
![]() 公開:2015年3月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 5
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