背徳の美学

    作者:東城エリ

     夜も深まった時刻、金属的な輝きが満たす内装が施されたエレベーターが、2人の男女を乗せ地下へと降りていく。
     独特の浮遊感の後、ドアが左右に開くとそこは地下駐車場だった。
     風圧で遊ばれた前髪を撫でつけながら、長身の男は歩き出す。ブランドスーツが様になっている。
     男の半歩背後にあるのは、豊かな金髪を背に流し、豊満な胸をトラディショナルなスーツに押し込めた美女。
     駐車場に待機していた運転手が自動車のドアを開く。
     男は乗車せず、美人秘書の方へと半身を振り向かせた。
    「夏木、そろそろ潮時だと思うだろう?」
     夏木と呼ばれた秘書は、男の同意を求める問いに、静かに頷きを返す。
    「処理はお任せ下さい」
     訪問先の人物なのだろう、男は用済みだと判断したら、すぐに切り捨てる。
    「出せ」
     自動車に乗り込んだ男は秘書をその場に残し、地下駐車場を後にした。
     
    「それでは始めましょう」
     斎芳院・晄(高校生エクスブレイン・dn0127)が、眼鏡の奥の緑瞳を向ける。
     軍艦島の戦いの後、HKT六六六に動きがあったようです。
     彼らは有力なダークネスであるゴッドセブンを、地方に派遣して勢力の拡大を図ろうとしています。
     ゴッドセブンのナンバー3、本織・識音は、兵庫県の芦屋で勢力を拡げようと、古巣である朱雀門学園から女子高生のヴァンパイアを呼び寄せ、神戸の財界を支配下に置いているようです。
     ヴァンパイア達は、神戸の財界の人物の秘書的な立場として、その人物の求める悪事を行い、欲を満たしているとのことです。
     
    「夏木というASY六六六のヴァンパイアに、男が依頼したのは、これまで後ろ暗い仕事を任せてきた者達の処理です」
     幾つかそういった事を得手にしている者達を飼っているようで、そのうちのひとつが完璧な仕事をこなせなかったのがいけなかったようです。
     男の依頼を受けた夏木は、配下である強化一般人に仕事をさせるつもりです。
     自身も現場に赴き、配下の仕事を監督します。
     仕事に漏れがあってはいけないからということでしょう。
     
    「接触するタイミングは、処理対象がエレベーターから地下駐車場に降りてきた時になります」
     男が処理を依頼したのは3人。
     夏木がおびき寄せる為に、仕事を依頼し、予定通り行動を起こした所でエレベーターから出てきた所を逃走を図られないように包囲し、処理をするのでしょう。
     地下駐車場には、処理対象の3人、夏木達以外はいません。
     自動車は数台駐められています。
     駐車場は50台ほどが収められる広さで、自動車で出る為の出入口は合計2カ所。
     あとは、エレベータ1機と、その傍にある階段。
     ヴァンパイアの夏木は、武蔵坂学園の灼滅者が現れた時点で、基本的に逃げ出そうとします。灼滅を考える場合は、逃走させないよう、工夫が必要でしょう。
     夏木はダンピールのサイキックと同等の物を使用し、武器は大鎌を振るいます。
     配下の強化一般人は6人。全員男性です。刀を持つ者が3人で近接をメインにし、銃を持つ者が3人で援護するように仕掛けて来ます。
     夏木は、彼らから少し離れ、処理対象と強化一般人を含めた戦域を把握すべく見ています。
     
    「後ろ暗い仕事を担当している者達ですが、救えば、夏木の仕事のミスが依頼者の男の勘気に触れるかもしれません」
     ASY六六六の狙いは、HKT六六六のミスター宍戸のような才能を持つ一般人を探し出す事なのでしょう。
     その一環として、一般人に手を貸すような事件を行っているといった感じなのかもしれません。
    「それでは、皆さんよろしくお願いします」
     そう言うと、晄は皆を送り出した。


    参加者
    ジャック・アルバートン(ロードランナー・d00663)
    赤槻・布都乃(悪態憑き・d01959)
    天樹・飛鳥(Ash To Ash・d05417)
    赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996)
    戒道・蔵乃祐(グリーディロアー・d06549)
    華表・穂乃佳(眠れる牡丹・d16958)
    藤堂・恵理華(紫電灼刃・d20592)
    白藤・幽香(リトルサイエンティスト・d29498)

    ■リプレイ

    ●ビルにて
     春先とは言え、夜はまだ肌寒く感じられた。
     だが、ジャック・アルバートン(ロードランナー・d00663)はそよ風ほどに思っているのか、鍛え上げられた腕を夜風に晒している。
    「気に入りませんね」
     藤堂・恵理華(紫電灼刃・d20592)は視線を受けて、続けて言葉を紡ぐ。
    「依頼されたのなら自分で手を下せば良いものを、手下に任せて見物とか、ウザいにも程があります」
     もちろん依頼をした者も気に入らないが、今は傍観者を気取るヴァンパイアの夏木が気に入らなかった。
     目的の場所近くまで来ると、件のビルを見上げた。殆どの窓が明かりを落としている中、ひとつのフロアだけが煌々と明かりが灯っている。
     それが、ASY六六六のヴァンパイアである夏木が処分をしようとしている標的。
    「さむい……」
     華表・穂乃佳(眠れる牡丹・d16958)は腕にある霊犬のぽむを抱きしめる。
    「ダークネスが…普通の人? の指示…聞くなんて…?」
     何か思惑でもあるのだろうかと、疑問を口にした。
    「まぁ、碌なコトじゃねぇだろうってのは確かだな」
     赤槻・布都乃(悪態憑き・d01959)の言葉に、人見知りの気がある穂乃佳は一瞬驚いた表情を見せるが、こくりと頷く。
    「第二のミスター宍戸は遠慮願いたいものだ」
     思い通りにはさせぬとジャックはビルへと眼差しを向けたまま告げる。
     ラフな服装の戒道・蔵乃祐(グリーディロアー・d06549)は無造作に前髪を掻き上げ、くしゃりと握りしめた。
    (「HKTは、ゴッドセブンの得意分野に合わせた全国展開を狙っているようですね。ASYの場合は、コネクション……ですか」)
     ダークネス同士の抗争にはそぐわない要素だと感じつつも、対武蔵坂学園を想定し結成した組織かも知れないと思うと、不安の芽は早々に摘んでおかなければと思う。
    「ASY六六六の狙いがどうであれ、一般人は守らないとね」
     天樹・飛鳥(Ash To Ash・d05417)はポニーテールにした長い髪を夜風に遊ばせ、隣へと立つ。
    「そうだよね。失われていい命なんてない筈だもの」
     名前通りの色彩を持つ赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996)が力強く同意する。
    「思惑通りに運ばせないように阻んでいけば、何か動きがあるでしょう。今はじっくりと企みを潰していきましょ」
     年齢の割に冷めた口調で語る白藤・幽香(リトルサイエンティスト・d29498)は、白衣を翻し仲間を見上げた。
    「では、中へと入りましょうか」
     蔵乃祐がビルの管理人にプラチナチケットを使い、関係者だと思わせるのに成功すると、素早くその場を離れ、エレベーターホールの方へと移動する。
     一基だけのエレベーターは、1階に箱が留まったまま。
     自分達の足音だけが響く。
     傍にある階段を見つけると、地下駐車場へと降りていった。

    ●地下駐車場
     数台の自動車が駐車されている。
     コンクリート床を駐車場の明かりが経年劣化した案内の文字の剥がれなども照らしていた。
     階段から身を乗り出すように覗き込めば、出入口の表示も見て取れる。
     標的のフロアの人物だけが残っているのは、夏木が偽の依頼を依頼する為。
     依頼の内容を話すために、接触する場所が地下駐車場なのは、逃げるのが容易いかどうかなのだろう。
     室内よりも室外の方が断然、難易度は低い。
     空調の音と外の音が混じった音が聞こえる中、駐車場の出入口の方から足音が聞こえてきた。
     駐車場には自動車で乗り入れてこなかったらしい。
     同時に、エレベーターが動き出した。
     夏木が到着したことを知らせたのだろうか。
     処分対象のいるフロアに止まったエレベーターが、機械的にアナウンスしているのが微かに響いて聞こえた。
     もうすぐ地下駐車場に降りて来るだろう。
     カツカツと靴底がコンクリート床を蹴る音が近づく。他はシューズなのか、それほど聞こえない。
    「手筈通りにしなさい」
     指示する声が響く。それが夏木の声なのだろう。手慣れたような声音で命令をしている。
     6人の男たち、強化一般人は、逃がしてはならないと、エレベーターの方へと走ってくるのが見えた。
     エレベーターが降下するに従って、表示されている数字も地下へと近づき、到着を知らせる合成音声が聞こえ、扉が開いた。
     明るいエレベーターの箱内から3人の男たちが出てくる。
     潜んでいた階段の影から飛び出す。
    「させないよっ! 小江戸式インターセプト!」
     鮮やかな赤が立ちふさがる。緋色だ。
     強化一般人が標的の男たち3人に近づこうとする所に割って入る。
    「な、なんだアンタら」
     落ち合う予定だった相手へと敵意を向ける様子に戸惑う男たち。
     前に出るのは、攻撃の力が増している飛鳥と穂乃佳、幽香。そして守りの力の増しているジャックと相棒のライドキャリバー、俺の上腕二頭筋、布都乃と緋色、恵理華。後ろで傷を癒すべく蔵乃祐と穂乃佳の相棒、霊犬のぽむが展開。
    「君たちを守りに来たんだよ」
     シヴァを装着した飛鳥が振り向く。
    「むい……そこの……一般人さん? ……はなれるのー」
     穂乃佳のふわりとした言葉。だが、手には強さを秘めた縛霊手。
     刀を持つ強化一般人へと歩を進める。
     穂乃佳は片腕を異形巨大化させると、その膂力から生み出される力を叩きつけた。
    「ん……ぽむ……回復……お願い」
     尻尾を振りぽむが応える。
    (「……すこし……不安だけど……前に……でるのー……がんばらない……と」)
     ぽむは前にいる仲間が傷つけば、癒す役割と振ってある。
    「恨みを買う覚え位あるだろう」
     そう言われれば、ぐうの音も出ない。
     銃を持つ強化一般人へとジャックはWOKシールドで殴りつける。鍛えられた筋肉が鋼のように変化し、重き一撃となる。
     俺の上腕二頭筋は、強化一般人達の入って来た出入口の方へと回り込み、逃走を阻む。走ってきた勢いを乗せるように、ジャックが攻撃した敵へと突っ込んでいく。
    「さっさと逃げて下さい、このままじゃ貴方達殺されますよ?」
     それでも良いの? と恵理華は続ける。
    「えっとHKT六六六の人、軍艦島ぶり?」
     会ったことない人だったら、ごめんね! と緋色は妖の槍を構えた。
     緋色は小柄な身体で妖の槍を手足のように淀みなく操る。妖の槍を回転させ、自身と共に風を纏い、突っ込んで刃となる。
     刀を持つ強化一般人が怒りの灯った眼差しを向けた。
    「あたしと戦ってよ!」
     誘うような緋色の声は、前足を引っかけて離れる猫科の動きを思い出させた。
    「あなた方は用済みだそうです。依頼は囮、こいつらは掃除人」
     蔵乃祐は、前衛の仲間たちに白き炎を放つと、その炎は予知を妨げるものとなり力を与える。
     アンタたちはじゃぁ何なんだと聞かれ、
    「あなた方を助けに来た助っ人でも思って下さい。あなた達が生き残ると、得になる人間も居るという事です。この場は僕達を利用するのが、賢明だと思いますよ?」
     エレベーターのドアが閉まらないように腕で押さえる。
     前方を見ると、強化一般人が邪魔されたことに対して顔を歪めていた。早々に傷つく展開になるなど考えてなど居なかったのだろう。
     簡単な仕事の筈だったと、後悔が沸くだろうが、自分は逃げられない。
     率いる夏木に命じられ、この場に来たのだから。
    「愉しそうね。私達も混ぜて貰えないかしら? 邪魔する役だけどね」
     幽香は口元に笑みを刻む。
     手下を率いている夏木は周囲を見渡し、悔しげに唇を嚙む。
     エレベーターから出た途端、動き出した状況に3人の男たちは、自分達に迫る危機と向き合うに十分だったらしく、疑いの籠もった眼を夏木に向ける。
    「夏木サン、どういうことだ」
     3人の中では一番立場が上らしい音が訊ねる。
    「残念ね」
     夏木はそう言うと、一歩下がる。
     そして、
    「貴方たち、両方の処分を任せるわ」
     強化一般人たちが各々頷き、獲物を向けて狙いを定めてくる。
    「好きにするがいい。今はな」
     ジャックが獰猛さを秘めた眼差しを向けた。
    「逃走を援護する」
     飛鳥は縛霊手のシヴァが内蔵する祭壇を展開させると、霊的な因子を強制的に停止させる結界を網の目のように構築していく。
    「これで牽制する!」
     それは敵に麻痺という阻害要因となってもたらされる。
    「早くなさい」
     冷静さの秘めた声音で幽香が急がせる。
     逃げられては困る強化一般人たちがじりじり動くと、
    「お兄さんたち、おいたは駄目よ」
     そう言って、幽香は縛霊手が内蔵する祭壇を展開させ、麻痺の力を増加させた。
     恵理華はWOKシールドのシールドを仲間へ届くように拡げる。
     強化一般人たちは眼前の敵をどうにかしないと、逃げようとする標的の男たちに追いつくことも出来ないと、一斉に突っ込んでいく。
     1組目の刀を持つ強化一般人と銃を持つ強化一般人が、互いを援護するようにジャックへと向かうは、刀は巌のような筋肉に見合わず動きは素早く避けてみせると、銃にはWOKシールドを眼前に構えてしのぐ。
     それくらいなら受けてやろうという、余裕さえ感じさせた。
     2組目は、恵理華へと襲い掛かる。刀を持つ強化一般人の攻撃には躱したものの、銃を持つ強化一般人の攻撃は受けてしまった。
    「くっ」
     摩擦熱が肌を傷つけて、痛みをもたらす。
     3組目は、緋色へと。
     先ほど、怒りを誘発させていた強化一般人だ。
     小柄な身体で刀の切っ先を避け、銃口が定められた途端、僅かにずれるようにしてステップを踏んだ。
     布都乃が急げと、3人の男たちを促す。
    「アンタらも命は惜しいだろ?」
     追い立てるように布都乃が言う。
    「クソッ」
    「逡巡してる場合では無いでしょう」
     恵理華が乗ってきたエレベーターの箱に押し込むように急かした。
    「考えることが出来るのは、命が助かってからにするといいわ」
     少なくとも、今はその時じゃないでしょうと、毒が漏れてしまう。
     自分たちでは、何も出来ないのだと判断すると、男たちは行動を決めた。
    「逃げる」
     緋色は処分対象だった3人の男たちが再びエレベーターに戻るのを見て、殺界形成を使い、一般人が近づかないようにする。
     同時に、男たち3人を追いかけられないよう、エレベーターと階段の前に展開し、2者の戦いが本格的に始まった。
     ジャックは畏れを纏うと、自身の力に乗せて斬撃という形に変化させ、銃を持つ強化一般人に放った。
     俺の上腕二頭筋は機銃で一斉斉射をし、ダメージを蓄積させていく。
     銃を持つ強化一般人がコンクリート床へと力尽き倒れる。
    「いちげきひっさつ!」
     守り重きを置いていた緋色は攻撃重視へとシフトし、槍の切っ先が螺旋を描き、ドリルのように命を削り取った。
     蔵乃祐は強化一般人の中心点あたりを起点にすると、そこから急激に熱を奪い去り凍えさせ、死へと近づけさせていく。
    「凍て尽くす……そこっ!」
     飛鳥も蔵乃祐に続けて、同じく死に誘う氷花を生みだす。
     巫女舞のような優雅な動作から繰り出された穂乃佳の装着するダイダロスベルト。
     帯を射出し、勢いの増した帯は弾丸のよう。
     貫かれ、弾丸よりも大きなを作る。
     ぽむは、口に咥えた斬魔刀で切り裂く。
     刀を持つ強化一般人が倒れ、数を着実に減らしていく。
     布都乃のダイダロスベルトが強度を持つ帯を射出し、その勢いのまま硬度の流れとなり、弾丸のように貫く。
    「実験台になってね……?」
     合わせるように妨害重視から攻撃重視へと切り替えた幽香のダイダロスベルトも硬質な帯となり、楔となり穿った。
     2人目の銃を持つ強化一般人が背をコンクリート床に打ちつけて倒れる。
     恵理華はWOKシールドで守りの力を緋色へと拡げる。
     残る強化一般人は刀を持つ強化一般人2人に、銃を持つ強化一般人1人。
     一気に半数を晴らした状況は、夏木に場を離れさせるには十分だったらしい。
     徐々に戦域から離れようとしている夏木を見やり、布都乃は大声をあげる。
    「格下の灼滅者相手に逃げたぁ、堕ちたモンだな! 依頼主に上手く取繕おうが、傷付いたプライドは一生癒えねえ。仕事も出来ねえ、逃げ腰の吸血鬼・夏木。精々ご安全に逃げるこったな!」
     笑い声もつけて送り出してやる。
     夏木はギリと歯を噛みしめ、憎しみを込めた眼差しを布都乃へと向けた。
    「覚えていなさい」
     一度決めたことは翻さないと決めて居るのか、夏木はこの場を離れるようだった。
     ならば、それならそれで構わないと、目の前の戦いに集中する。
    (「ヤツも灼滅してえトコだが……まぁ、今は出来るコトをするさ」)
     宿敵への未練を断ち切るように、布都乃は息を整えた。
     エアシューズのローラーダッシュで生じる摩擦熱。それが炎を纏い、動きに合わせて炎が弧を描き終点地へと向かう。ジャックが無駄のない動きで、激しい衝撃と共にダメージを叩き込む。
     俺の上腕二頭筋が続いて機体を突撃させた。
     銃を持つ強化一般人が倒れる。
     銃を手にしていた強化一般人は倒れ、残るは刀を持つ男たちのみ。
     数の優位がはっきりと変化する。
     取り囲む円は狭まり、攻撃の層は厚くなる。
     緋色はホワイト・カミーリアで殴りつけ、そこから魔力を流し込むと魔力は暴威を振るい敵の体内を掻き乱す。
     蔵乃祐は味方を癒やし、敵を殺す即効性のサイキック毒を満たした注射器を、恵理華に注射する。
     癒しの効果をもたらすと、恵理華が振り向きありがとうございますと口にした。
     穂乃佳は自身に慣れ親しむカミを降ろすと、内に満たされた力を風の刃へと変化させ、斬り裂く。
     ぽむも続けて六文銭で射撃をし、援護する。
     布都乃のエアシューズが摩擦で熱を生む。生まれたのは炎となり、敵を焼き尽くす刃となり、衝撃はダメージとなって敵を沈める。
     残る1人も傷つき、周囲を見渡して味方は誰ひとりいないのに動揺していた。
    「これだけの数の手裏剣なら……当たれ!」
     飛鳥は緋龍甲を払うよう動作をする。すると、仕込まれた無数の手裏剣が毒を纏い、不規則な軌道を描きながら、敵へと突き立つ。
     吸い込まれるような軌跡の後、赤の色彩を纏って沈んだ。

     地下駐車場に立っているのは、灼滅者だけとなり、戦いが終わった。
    「一般人の人たちは無事逃げ切れたのかなぁ」
     緋色が案じるような声音で呟く。
     夏木は逃走したが、標的となった一般人3人は上手く逃がすことはできた。
     それからのことは彼ら次第だろう。
     飛鳥は周囲を注意深く視線を巡らす。
     大丈夫だと分かると、緊張を解いていく。
    「早く戻りましょう、こんなところは早々に去るのが一番でしょう」
     恵理華が口にする。
    「そうだな」
     地下駐車場を出ると風が肌を撫でる。
     春を運ぶ夜風が心地よかった

    作者:東城エリ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年3月23日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ