湯けむり美女のご奉仕

    作者:天木一

     白く曇る温泉から見上げた空には冬の星々が見える。
    「ふ~いやはや良い湯ですな。五臓六腑に染み渡るようですよ」
     湯に浸かり頭にタオルを乗せた老人が、両手で掬った湯を顔にかける。
    「ふふ、温泉はすっごく体に良いのよ。お爺さんはしばらくここで休んでいくんでしょ? なら私がもっと元気になるようサービスしてあげる!」
     その隣に寄り添うように肉付きのいい美女が甘い声を囁く。
    「ほっほっ、それは嬉しいですな。ではお嬢さん、まずは一献いただけますかな?」
     老人は湯に浮く桶に入った酒器を指し示す。
    「ええ、じゃあまずは一献」
     盃を持った老人に、女はお銚子を手にしてとくとくとお酌する。それを嬉しそうに老人は味わうように飲み干す。
    「ふむ、やはり美女のお酌で呑む酒は格別ですよ」
    「それなら嬉しいわ。じゃあもう一献」
     美女がお酌する様を老人は目を細めて楽しむ。
    「こうやって湯治していると力が漲ってくるわい」
    「きゃっ、もうお爺さんったら、まだまだ若いのね」
     盃を持ちながら反対の手で美女のお尻を触ると、軽く声をあげながらも、満更ではない様子で美女が見返してくる。
    「ほっほっほっ、いやはや申し訳ない。あまりにも魅力的なお尻だったので、ついね」
    「そういうのは、部屋に戻ってから、ね」
     美女から頬に軽く接吻をされ、老人の枯れていた体に生気が漲るように流れていた。
     
    「軍艦島の戦いの後、HKT六六六に動きがあるみたいなんだ」
     教室に集まった灼滅者に、能登・誠一郎(高校生エクスブレイン・dn0103)が説明をする。
    「ゴッドセブンというダークネス達を地方に派遣して、勢力を拡大しようとしてるみたいなんだよ」
     有力なダークネス達のようで、各地で一斉に行動を開始されれば脅威となる。
    「その中の1人、ゴッドセブンのナンバー5、もっともいけないナースは愛媛の道後温泉で活動するみたいだね」
     配下のいけないナースを使って、温泉に来るダークネス達にサービスをするようだ。
    「サービスを受けたダークネスは、元気になってパワーアップしてしまうみたいなんだ。しかも、もっともいけないナースと友好関係を結んでしまうみたいでね、そうなるのを阻止してもらいたいんだよ」
     パワーアップするだけでも厄介だが、更に手を結ばれるとなれば厄介さが増すばかりだ。何としても阻止したい。
    「場所は愛媛の道後温泉だよ。旅館で湯治している六六六人衆がいけないナースに接待を受けてるみたいだね。接触できるタイミングは、晩御飯を一緒に食べているところか、温泉に入っている時だね」
     食事は個室で、温泉は貸切のようだ。だがその場を動けば他の客も居る。
    「いけないナースはお客の安全を第一に動くみたいで、六六六人衆を無事に逃がす事を最優先に動くみたいなんだ。流石にダークネス2体を同時に相手取るのは難しいから、そのまま逃げさせるのも手かもしれないね」
     湯治に来ているだけあって、六六六人衆には戦う気はあまり無いようだ。
    「湯治に来ているところを襲うのは少し気が引けるけど、放っておいてHKT六六六の勢力を拡大させるわけにはいかないからね。みんなの力で阻止して来て欲しい。あ、泊まりになるから、終わったら温泉や食事を楽しんでもいいかもね」
     寒い冬に温泉旅館なんて楽しそうだねと誠一郎が羨ましがる中、灼滅者達は温泉の事は終わってからだと、気を引き締めて現場へ向かった。


    参加者
    守安・結衣奈(叡智を求導せし紅巫・d01289)
    神宮時・蒼(大地に咲く旋律・d03337)
    下総・水無(少女魔境・d11060)
    姫乃川・火水(ドラゴンテイル・d12118)
    豊穣・有紗(神凪・d19038)
    月代・蒼真(旅人・d22972)
    照崎・瑞葉(死損ないのディベルティメント・d29367)
    世木・誉(カメリア・d30566)

    ■リプレイ

    ●旅館
     温泉宿の中を客として灼滅者達は歩く。古びた建物にはリラックスした様子の浴衣姿の客達の姿があった。
    「HKT六六六の活動の一つがこの道後温泉に置かれたかは気になる所だけど……。まずは勧誘の目、きっちり潰さないとだね!」
     今は理由よりも敵の交渉を妨害しようと、守安・結衣奈(叡智を求導せし紅巫・d01289)が仲居を魅了して敵の今の場所を聞き出す。
    「……やっている事は、立派、ですけれど……。……それが、今後波乱を呼ぶ、行為ならば」
     神宮時・蒼(大地に咲く旋律・d03337)は損得無く人を癒すだけならば良かったのにと思いながら、ぎゅっと拳を握った。
    「……見逃すわけには、行きません、ね」
    「淫魔と六六六人衆の密会かぁー、やな感じだね」
     一体何を企んでいるのだろうかと、世木・誉(カメリア・d30566)は首を捻る。
    「うーん……もっともいけないナースって、どこらへんがもっともいけないんだろう……」
     だがその思考はいつの間にかナースの方へと移り、更に首の角度を曲げて考え込んでいた。
    「湯治に来てるお爺さんを襲うと考えるとちょっと申し訳ない気もしますが、しかしパワーアップも手を結ぶのも阻止しなければいけませんからね」
     隣で頷いた下総・水無(少女魔境・d11060)が、温泉へ向けて歩き出す。
    「襲撃は温泉中だね。淫魔らしく外交してるみたいだけど、そうは問屋が卸さないってねっ」
     ダークネスの勝手にはさせないと豊穣・有紗(神凪・d19038)が意気込む。
    「終わったら温泉旅館に泊まれるみたいだし、頑張るぞ~!」
     おー! と皆も一緒に腕を上げた。
    「あー、温泉はいいなぁ。でもまぁダークネス連中を元気にさせるわけにはいかねーしな、いっちょ頑張ってこうぜ!」
     元気に姫乃川・火水(ドラゴンテイル・d12118)が声をかけると、仲間達も釣られたように元気良く頷いて行動を開始する。
    「温泉、おいしいご飯、美女のお酌つき。羨ましい話じゃあるけどなぁ」
     従業員の振りをしていた月代・蒼真(旅人・d22972)が敵の温泉を貸し切る時間の情報を得て、清掃中の札を掛けると脱衣所で仲間と共に水着に着替えた。宿で水着という格好に何だか気恥ずかしさを覚えながらも、気を引き締める。
    「余裕があったらこういういい温泉でのんびりしたいよなぁ……」
     気持ち良さそうな温泉にのんびり浸かりたいと、思わず想像してしまう。すると隣の眠そうな目をした霊犬のトーラも期待したような目で蒼真を見上げていた。
    「ちょっと男子~。水着だからって私ら見て戦いに集中できないとかしないでよね~」
     水着に着替えた照崎・瑞葉(死損ないのディベルティメント・d29367)が男子の方へじとっとした視線を送る。だが男子の視線はメンバーで一番スタイルのいい結衣奈の方へと向けられていた。
    「……あ? 貧乳だから私にゃ興味ない? ………へぇ」
     瑞葉の声が低くなり怒りを籠めて拳を握り、この怒りを敵にぶつけようと、貸切り温泉の扉を開けた。

    ●接待
     独特な香りが漂い、空へと湯気が立ち上る露天温泉。そこには2人分の人影があった。
    「いや~道後温泉は初めて来ましたが、良い湯ですなぁ……」
    「それならお誘いして良かったわ」
     温泉には白髪の目立つ年老いた男と、肉つきの良い魅力的な女が一緒に浸かっていた。のんびりした静かなひと時。だがそれを破る闖入者が現われる。
    「温泉に浸かって楽しんでいる所恐縮なんだけど。お命頂戴するよ!」
     啖呵を切った結衣奈が帯を老人に向け、女が動き出すのを確認してから射出する。
    「危ない!」
     女がそれを庇うように前に出て手で弾いた。
    「何事ですかな?」
     動じていないのか、のんびりした調子で老人が振り返る。
    「……お邪魔、します」
    「お楽しみのところ悪いですがお邪魔させてもらいますよ!」
     殺気を放って一般人が寄り付かなくした蒼と、音を封じる結界を張った水無が、同時に槍を手にして仕掛ける。
    「ほっほっ、元気ですな。それほど元気なら温泉は必要なさそうで、羨ましい限りですよ」
     迫る2本の槍を、女と入れ替わるようにして移動した老人が、頭に乗せていたタオルを濡らして振り抜くと弾いた。
    「今は貸し切り中よ? このお爺さんを癒してあげないといけないんだから、早く出て行って!」
    「悪いけどそういう営業活動はNGだ。目のやり場にも困るし、さっさと仕掛けさせてもらうよ」
     女に向かって蒼真とトーラが左右から同時に仕掛ける。蒼真が拳で殴り、トーラが口に咥えた刀で斬りつける。
    「ダークネスに元気になられちゃ困るからな。邪魔させてもらうぜ!」
     火水が雷を纏った拳を放ち、避けようとした女と老人の間に入って分断する。
    「やれやれ、これではゆっくり湯治という訳にもいきませんかな」
    「ここは私に任せてお爺さんは先に上がって! お客さんを守るのも私の務めだから!」
     どうしたものかと老人が腰を上げると、守る為に女が巨大な注射器を手にする。
    「ふんむ。ではお任せしましょうかな。無事に終われば続きをいたすことにしましょう」
     そう言って老人は腰をタオルで隠してよっこらしょと温泉を上がる。
    (「ま……無茶は出来ないよな」)
     警戒だけはしたまま、老人に背を向けて蒼真は女と向き合う。
    「私の営業を邪魔するなんて許さないんだから!」
     女が踊ると大切な部分をタオルで隠した魅惑的なボディがたゆんと揺れて見る者を惑わす。その隙に踊るような打撃が蒼真と火水に叩きつけられる。
    「友好関係なんて結ばせないよ、なんとしてもね」
     赤い眠そうな目で誉が見つめると、美しい歌声で唄い出す。すると女の動きが鈍った。
    「夜叉丸は皆を守ってね! それじゃあ始めるよっ!」
     有紗がそう呼びかけると、任せておけと霊犬の夜叉丸が尻尾を振った。それを見下ろし一瞬笑顔になった有紗は駆け出す。縛霊手の拳を固め殴りつける。女は仰け反りその体に霊糸が巻きつく。だがその糸は一瞬にして断ち切られた。
    「ほっほっ一つだけ手助けをば。それでは失礼するとしようかの。続きを楽しみにしておりますよ」
     手刀を振るった老人は頭を下げると、脱衣所へと消えていった。
    「逃がすのは不本意だけど……」
     手を出さずに瑞葉は去る老人を見送る。
    「ここで戦っても倒せそうにないしねぇ……」
     そして去ったのを確認すると視線を女に向けた。そしてたゆんたゆんと動くたびに揺れ動く胸を見て目を細め、自分の胸に視線を落とす。
    「…………鬱るわぁ……ケッ」
     八つ当たりのように瑞葉は駆け出すと、怒りを込めて飛び蹴りを放つ。足は女の胸に深々とめりこみ、弾力によって弾かれた。その光景に思わず男子はおっぱいの神秘を、女子達は絶望を味わう。
    「いやん!」
     はらりと落ちそうになった胸を覆うタオルを女は慌てて拾って巻きなおす。
    「流石ダークネスだぜ……」
     思わず火水が声を漏らした。

    ●いけないナース
    「接客中に邪魔するなんて、もう怒ったんだから!」
     温泉から上がったナースは駆け出すと、抱えた注射器を突き刺してくる。
    「言っただろそういう営業はNGだって。そもそもここはそういう旅館じゃあないんだ」
     蒼真は仲間の前に立ってオーラを纏った腕で受け止める。刺さった針からエネルギーが引き抜かれる前に、トーラが六文銭を撃ち込んで引き離す。
    「道後温泉に一体何があるか、その答えに近づく為にも、貴女たちの勧誘活動、妨害させて貰うよ!」
     気迫を込めて結衣奈が剣を振るう。刃は透き通り実態を失い、ナースの肉体ではなく魂を斬り裂く。
    「きゃあ!」
     痛みに顔をしかめたナースが身を引く。
    「……温泉で、暴れるのは、よくないです、けど」
     そこへ水着の上から着たパーカーの猫耳フードを揺らしながら駆ける蒼が蹴りで足を刈る。バランスを崩したナースは温泉の中にどぼんと落ちた。
    「ぶはっ」
    「もっともいけないナースって六六六人衆ですよね? それって本家いけないナース的にはどうなんですか?」
     水面から起き上がったところへ、水無が疑問をぶつけながら炎を纏った蹴りを浴びせる。
    「ナースはみーんなナースよ?」
     防ごうとナースは巨大注射を盾にするが、勢いを殺せずに吹き飛んだ。巻きつけたタオルがずれて大事なところが見えそうになる。
    「くっ、流石淫魔だぜ、目に毒な攻撃をしてきやがる!」
     火水はその肌色から目を逸らしながら背後から組み付く。腕にぷにんと出来たての餅のような感触が伝わる。
    「きゃー! 痴漢よ!」
    「違う!」
     悲鳴を上げるナースに怒鳴り返し、火水は体を持ち上げて投げ飛ばす。
    「何がいけないナースだよ!!」
     そこに待ち構え構えていた瑞葉が縛霊手の大きな拳を握り固める。
    「私はなぁ!!」
     まるでボールを投げるように大きく振りかぶった拳を打ち抜く。
    「割とナースコスプレが嫌いなんだよぉ!!」
     拳がナースの顔にめり込み、衝撃にぐるぐると回転して温泉に盛大な水飛沫を上げて落ちた。
    「げほっげほっ鼻に水が入っちゃった……私はコスプレじゃないわよ? 正真正銘みんな大好き白衣の天使よ!」
    「本物のナースは病院にいるものだよっ!」
     有紗の影が伸びるとナースの体を縛り上げる。だがナースも反撃にウインクをするとピンクのハートが飛ぶ。魅惑的なハートが届く直前、夜叉丸が割り込んで刀でハートを真っ二つに斬り捨てた。
    「ナイスフォローだよっ」
     有紗が笑顔で親指を立てると、夜叉丸は仕方ないなと一瞥して駆け出した。擦れ違い様に咥えた刀で斬りつけるが、注射器で弾かれる。だが反対側から駆けていたトーラが死角から斬り込みナースの胴に傷を入れた。
    「きゃあ! 私の肌に傷がついちゃった! 後でコラーゲンを取ってたっぷりケアしなくっちゃ」
    「戦いなんだから傷がつくくらいは当たり前だよ。嫌なら最初から戦うべきではなかったね。もう手遅れだけど」
     誉の声が響きナースの心を惑わす。ふらりとよろけたところへ蒼真がの影が刃となって襲い掛かった。
    「長湯しすぎるとのぼせるだろう? そろそろ上がったらどうだ」
     影を追うように蒼真が湯の中に突っ込んで踏み込むと、ボディブローを当てて打ち上げる。追撃を避けようと、ナースはハートを飛ばして牽制する。
    「同性なんだから、そんなハートなんかに惑わされないよ!」
     結衣奈がそのハートを剣で斬り裂き、その勢いのまま回転すると足を撥ね上げて上段蹴りを放つ。加速に炎を纏った蹴りがナースを捉えて打ち落とした。
    「きゃあああああ!」
     ナースは何とか受身を取って衝撃を逃すが、体は傷だらけになっていた。
    「……人を癒すのは、否定、しません。ですが、企みがあるのなら、ここで止めます」
     蒼が獣の如く異形化させた腕を振り抜く。ナースは咄嗟に注射器を盾にして身を守るが、腕は注射器を砕きナースの体を薙ぎ倒す。
    「もっともいけないナースも淫魔かもしれないということですかね? HKT六六六は六六六人衆だけかと思ってましたが」
     倒れたところへ水無は馬乗りになって拳の連打を浴びせる。
    「もう! なにするのよ!」
     ナースはハートを飛ばして水無を吹き飛ばす。直撃を受けた水無はくらりと視界の歪みを感じる。
    「あ! 今回復するからね!」
     すぐさま誉が縛霊手から光を飛ばし、水無の受けた状態異常を癒してしまう。
    「俺がハートだろうと何だろうと全部治しちゃうよ」
     後衛から仲間の動きを良く見ていた誉が胸を叩く。
    「この後みんなでゆっくり温泉を楽しみてーんだ。だからこれで決めさせてもらうぜ!」
     火水が大きく跳躍し蹴りの体勢に入る。それを見たナースは起き上がって逃げようとする。だがその足を何かに引っ張られる。
    「おっとっとっ、逃がさないよ!」
     有紗が影をロープのように伸ばして足に引っ掛けていた。それに気を取られ逃げるのが遅れる。
    「必殺! 奴奈川キィィィック!!」
    「きゃあぁ!」
     飛び蹴りが胸を打ち、ナースは吹き飛ぶ。
    「ナースなんて……巨乳なんて消えてしまえぇ!」
     絶叫と共に、瑞葉が振り上げた縛霊手の拳を一直線にナースの顔に叩き込んだ。

    ●温泉
     戦いが終わり皆で後片付けをすると、灼滅者達はゆっくりと温泉に浸かる。余裕が出来てようやく皆の水着姿を見せ合ったりする時間となった。
    「あー、こうして温泉に浸かってると嫌なことも忘れちゃうね~」
     黒い水着を着た瑞葉は先程までの不機嫌とは一変して、すっきりしたような顔で温まっていた。
    「ところでダークネスにも湯治って効くんですね? イフリートも源泉で竜種になったりしますし恐るべし温泉パワー」
     肩まで浸かって百を数えた水無が良い気持ちで息を吐く。
    「天ぷらー、お刺身ー、お肉ー♪」
     そしてこの後の食事を思って一風変わった歌を唄い出す。そんな歌詞を聴いているとお腹が減ってくる気がした。
    「一働きした後にはお風呂がいーよね。あ、温泉卵も食べたいなー、せっかくの温泉だしね」
     赤い水着の誉は確か売ってたよねと、忙しなく旅館を見て回った時の事を思い出し、後で買いに行こうと決めた。
    「あ~、気持ちいい……。身も心も温まるね~。こういう時には一杯飲まないとね!」
    「そりゃまぁ、温泉に浸かりながら盆を湯に浮かばせてお猪口で一杯とか憧れはあるけどさー……あ、ジュースとかならできるのか」
     赤に白のラインが入ったビキニの結衣奈が脱衣所から桶に入ったジュースを持ってきた。その用意の良さに白と青の水着を着た火水が苦笑いを浮かべながら受け取った。皆にも配ると、温泉に浸かりながらの甘いジュースで一息吐く。
    「夜叉丸も気持ちいい? 温泉でこうやって星を眺めるのって、何だか贅沢な時間だよねっ」
     緑にビキニを着た有紗が、お風呂の横で大きな桶に入った夜叉丸に声をかけて夜空を見上げる。桶にはもう一匹、トーラも一緒に入っていた。二匹は目を細めて幸せそうに温泉の湯を堪能していた。
    「トーラも気持ち良さそうだな。贅沢は敵ではあるが、適度に贅沢もしなければ人間腐ってしまうからな。何事も程々がいいのだ」
     青い水着の蒼真は懐具合を気にするのを止めてゆっくりと温泉を楽しむ。宿泊費が経費で落ちるというのを蒼真が知るのはまだ後の事だった。
    「……おほしさま、綺麗、ですね……」
     仲間と少し離れた場所でピンクのワンピースの水着を着た蒼が、静かに温泉に浸かりながらキラキラと輝く星を見上げる。その時突然顔に水が掛かった。
    「えい! びっくりした?」
     結衣奈が水鉄砲で蒼に悪戯して笑顔を見せる。びっくりした顔で固まる蒼に、こうやるんだよと手で水鉄砲の指導を始めた。
     それに釣られて他の仲間達も水鉄砲で遊び始める。しっとりとした雰囲気は流され、楽しく賑やかな子供らしい時間が過ぎる。
     汗を流して体から湯気を昇らせながら温泉から上がると、浴衣姿の灼滅者達はぐーぐーと鳴るお腹を押さえ、旅館の美味しいご飯を我先にと食べに行くのだった。

    作者:天木一 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年3月22日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ