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現在の時刻は夜八時。
沖縄国際通り近くに建てられたホテルには、今日も多くの客が宿泊していた。
今このホテルの宴会ホールでは、大規模な宴会が開かれている。
出てくる海鮮料理や泡盛に舌鼓を打ちつつ、皆で楽しく語り合う。
そんな楽しいひと時を過ごしている彼らには、笑顔が溢れていた。
そしてそのホールの外に、2人の人影があった。
無言で宴会の様子を眺めていた、大学生くらいの美形の男子が、不意に呟く。
「見なよ、あれ……皆馬鹿みたいに笑って。気持ち悪いにも程がある。君も、そう思うだろ?」
男に声をかけられたのは、同じく大学生くらいの歳の、小柄な女子だった。
「気持ち悪い……? うん、そうね。気持ち悪い、気持ち悪いわ。全員殺さなきゃ気が済まないくらい気持ち悪い」
女は、自身に言い聞かせるようにそう言葉を重ねる。
そんな女の様子を、無表情で眺めている男。
この男の名は、スマイルイーター。ミスター宍戸に支持され、KSD(国際通り)六六六を立ち上げたゴッドセブンの1人。
「君も大変だねぇ……デモノイドロード、だっけ? 悪の心を保ち続けなきゃ理性の無い化け物になっちゃうなんてねえ……」
本当に気の毒そうに語るスマイルイーター。
「ええ、そうよ……善の心がちらつくたびに、心が化け物に支配されそうになって……毎日吐きそうよ」
青ざめた顔でそう語る少女の肩を、スマイルイーターがぽんと叩く。
「ま、それで僕を頼ったのは一応正解かな。自分で言うのもなんだけど僕結構強いし、悪行を重ね続けるのには最適な人間の傘下に納まったと思うよ」
スマイルイーターはそう言って、宴会ホールを指さす。
「という訳で、いってらっしゃい。あそこで気持ち悪い笑いを浮かべている全員、キミのその力でグチャグチャに殺してきて。僕は全く悪い事だと思わないけど、君ら基準なら結構悪い事なんじゃないかな?」
女はその言葉に頷き、デモノイド寄生体を全身に迸らせる。
右腕は巨大なグレネードランチャー、左腕は巨大なチェーンソーと化していた。
寄生体に覆われた女の目元は見えなくなったが、ニヤリと口元を釣り上げた女の様子を見ることは出来た。
「殺す殺す殺す殺す……私が人であり続けるために、お前ら全員殺してやる!!」
狂った、もしくはまるで狂ったかの様に叫びをあげる女の攻撃に成す術は無く、一般人たちは次々と惨殺されていく。
「ふうん……」
無表情でその様子を眺めていたスマイルイーターが、ぽつりとそう呟いた。
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「軍艦島での戦いの後、ミスター宍戸の指示で各地に派遣されたゴッドセブンは組織を立ち上げ、活動を開始しました。今回私が予知したのは、KSD六六六のスマイルイーターが起こす事件です」
神埼・ウィラ(インドア派エクスブレイン・dn0206)は赤いファイルを開き、事件の説明を始める。
「スマイルイーターは、沖縄の現地ダークネスを配下にし、沖縄の支配を狙っているらしいです。そして同時に、笑顔で過ごす人々の大量虐殺も行おうとしています。現地へ向かい、この虐殺を阻止してください」
今回スマイルイーターが引き連れているのは、デモノイドロード赤尾・由美(あかお・ゆみ)。19歳。
「今回は、このデモノイドロードを灼滅してください。スマイルイーターの灼滅は、今回行うべきではありません」
スマイルイーターは、沖縄の各地に爆弾を仕掛けており、彼が灼滅されればそれが全て爆発するとウィラは言う。
「スマイルイーターは皆さんが現れれば即座に撤退し、自分に攻撃が向けられれば、その事で皆さんを脅してやはり撤退するでしょう。そんな卑劣で卑怯な品性下劣な作戦を立てるスマイルイーターは個人的にもかなりむかつきますが、今回は灼滅を諦めた方がいいでしょう」
数百では収まらないであろう死者をだしたくなければ、とウィラは続ける。
「デモノイドロード、由美が殺戮を行うのは、とあるホテルの宴会ホールです。スマイルイーターは直接手は出しません。皆さんは二人がこのホテルの中にはいってから、戦闘を仕掛けることが出来ます」
宴会ホールはホテルの中を割と進んだ場所にあり、その時エントランスや通路には、数人の従業員しかいない。
「スマイルイーターは由美に、宴会を楽しんでいる人々を殺すよう指示するため、それ以外の場所にいる一般人には特に積極的に手は出しません。宴会ホールへ向かうことを阻止すれば、大勢の一般人を救うことが出来ます」
ウィラは資料を一枚めくり、敵の戦闘能力の説明に入る。
「由美は、両手に形成したグレネードランチャーとチェーンソーを使って戦闘を行います。攻撃、防御、回避、全ての面で特に秀でている能力は無く、戦闘能力はやや弱めです」
そこまでの説明を終え、ウィラはファイルをパタンと閉じた。
「説明は以上です。デモノイドロードを灼滅し、一般人の大量虐殺を防いでください。お気をつけて」
参加者 | |
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虹龍・虎狼(人懐っこい一匹狼・d04031) |
住矢・慧樹(クロスファイア・d04132) |
伊庭・蓮太郎(修羅が如く・d05267) |
西原・榮太郎(霧海の魚・d11375) |
七峠・ホナミ(撥る少女・d12041) |
志乃原・ちゆ(トロイメンガイゲ・d16072) |
清浄・利恵(華開くブローディア・d23692) |
哭神・百舌鳥(百の声を持つ男・d33397) |
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六六六人衆、スマイルイーター。そしてデモノイドロード、赤尾・由美。
この2人が訪れ、そして大虐殺が行われるホテルの近くに、8人の灼滅者たちは集まっていた。
「いやはや、沖縄の各地に爆弾とは、傍迷惑な事をしてくれますね……何としても食い止めないと。頑張りましょう」
「ああ、そうだな……手を出せねないのは気にくわねーけど、スマイルイーターの奴はいつか絶対灼滅してやるぜ」
西原・榮太郎(霧海の魚・d11375)が仲間たちに呼びかけ、虹龍・虎狼(人懐っこい一匹狼・d04031)がそれに応えた。
「自分である為に悪を成す、か……思うところはある。だが、彼女の成す事を見逃すわけにはいかない」
清浄・利恵(華開くブローディア・d23692)がそう呟いたころ、灼滅者たちの視界に、スマイルイーター達が現れた。
エントランスに向かう2人の後を追う灼滅者達。
そして2人がエントランス内に足を踏み入れた瞬間、住矢・慧樹(クロスファイア・d04132)のライドキャリバー『ぶんぶん丸』が飛び出し、2人の前に立ち塞がる。
「そこの国際ナンチャラ! それ以上先にはこの武蔵坂が進ませないぜっ!」
「君達の自分勝手な思惑で、みんなの笑顔を奪うような真似はさせないよ……」
続けて慧樹と哭神・百舌鳥(百の声を持つ男・d33397)が2人に接近し、デモノイドロード・由美を包囲する。
「悪いが、この先は通行止めだ。もうお前はここからどこへも行けなくなる」
更に伊庭・蓮太郎(修羅が如く・d05267)も、由美の前に立ち塞がる。
「……なんだ、武蔵坂の灼滅者か。ほんと君達は絶妙なタイミングでやってくるよね」
「何? 何なのよこいつらは!?」
スマイルイーターは軽くため息を吐き、由美は状況が飲みこめない様で狼狽している。
その一瞬の隙に、灼滅者たちはエントランスにいた僅かな一般人たちを避難誘導していく。
蓮太郎がパニックテレパスを使用すると、周囲の人間が一瞬にして混乱に陥った。
そして七峠・ホナミ(撥る少女・d12041)が、トイレに逃げ込むよう一般人たちに呼びかけた。
「いいですか? 私の野暮用が済むまで大人しくしておくんですよ?」
更にプラチナチケットを使用した志乃原・ちゆ(トロイメンガイゲ・d16072)が、一般人たちにそう投げかけた。
混乱状態の一般人に細かい内容は理解できなかったようだが、エントランスに戻れば危険だという事は理解したようだった。
「ふう……じゃ、そういうわけで頑張って。どうにかして、奥の宴会ホールの一般人を皆殺しにするんだよ」
「わ、分かったわ…………」
スマイルイーターに肩をぽんと叩かれ、由美は静かに頷く。
「……私たちの気が変わらないうちにさっさと退場してちょうだい」
「言われなくてもそうするさ。それじゃあ、ごゆっくり~」
スマイルイーターはひらひらと手を振りながら、ゆっくりとした足取りで、ホテルから去って行った。
その余裕のある態度は、どこか自分たちを馬鹿にしているように、灼滅者達には見えたのだった。
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「あんたらが何なのかはしらないけど……邪魔をするならみんな殺すまでよ!!」
由美は全身のデモノイド寄生体を迸らせると、目元が覆われ、両腕は巨大な武器へと化していた。
「偶然とはいえ、似た姿だね……本当に」
スレイヤーカードを解放した利恵もまたデモノイド寄生体を全身に迸らせ、目元を覆い全身を同化させた姿へと変わった。
「ふん、この力が使える奴、割といるのね……そんな事はどうでもいいわ。纏めて全員死になさい!!」
由美はグレネードランチャーから蒼い榴弾を射出すると、大きな爆発が灼滅者達を襲う。
「ふう……こんな攻撃じゃあオレは倒れねえぜ!」
仲間に向けられた攻撃も引き受けた虎狼が、片腕を獣化させ、由美に向けて爪を振り下ろす。
「チッ……! 殺してやる、殺してやる!!」
由美が振り下ろしたチェーンソーが、虎狼の肩口を抉った。
「グッ……理性の無い化け物になるから言われるままに悪事をはたらくって、もう理性なんかねーじゃんか」
虎狼は痛みを堪えながら、畏れを纏わせた拳を力強く放つ。
放たれた拳は由美の鳩尾に抉りこみ、由美の身体が転がった。
「ゲホゲホ……ふん、当事者じゃないからそんな事が言えるのよ。化け物になったら、私は絶対に人を殺す。それなら、人でいる方がまだマシじゃない!!」
「…………例えそこにどんな理由であっても、あなたがしようとする事を見逃すわけにはいかないわ」
由美の叫びに、ホナミははっきりとそう返した。
「そうです……一般人の皆さんを、殺させる訳にはいきません」
榮太郎はそう呟き、魔を払う打刀、九字兼定『桜火』を構えた。
次なる攻撃を仕掛けようと動いた由美の動きを、榮太郎は見切る。
「ここです」
不意に飛び出し、通り過ぎざまに由美の脇腹を切り裂いた。
「グッ……!!」
呻く由美に、榮太郎は月詠の詩を開いて魔力を込め、更に追撃を仕掛ける。
「僕たちには、僕たちの成すべきことがあるんです」
榮太郎の手元から、月の光の様に淡く輝く光線が放たれ、由美の胸を貫いた。
「クソ……そこを退きなさい!!」
目の前の灼滅者がそれなりの力を持っているとようやく理解した由美は、灼滅者たちをすり抜け宴会ホールへ向かおうとする。
「言ったはずだ。ここは通行止めだと」
そこに立ち塞がった蓮太郎が盾で由美の顔を殴り飛ばし、エントランスに押し戻した。
「邪魔をするなぁぁぁあぁあああ!!」
由美は狂った様な叫びを上げ、酸を撒き散らすグレネードを射出した。
「そんな姿になって何がヒトだ! 既にあんたは化け物じゃんか!」
己の炎で酸を蒸発させた慧樹が、両足と槍に業火を纏わせ、由美と対峙する。
「黙れ黙れ黙れ!! 正しい人間でいられるアンタらに言われる筋合いはない!!」
由美は滅茶苦茶にチェーンソーを振り回すが、慧樹は炎を纏わせた蹴りでチェーンソーを受け止める。
「隙だらけだぜ…………俺の炎で燃え尽きろ!」
そして突き出した槍が由美の心臓を抉り、体内を燃え上がらせた。
「グゥゥゥウウ!!」
くぐもった呻き声が、戦場に響きわたる。
「こっちもそこそこ傷を受けてきたねぇ…………これは、1年中満開の花を咲かせるという不思議な桜に住む鳥の御話」
百舌鳥の語る七不思議、『桜色の鳥』が、灼滅者たちの傷を癒していく。
「回復ありがとうございます…………それじゃあ、次は私が攻めましょう」
ちゆは百舌鳥に軽く礼を言い、片腕を異形化させる。
「ああ、クソ、やばいわ……早く誰か殺さないと…………!」
由美は呟き、再び蒼い榴弾を撒き散らした。
「当たりません」
ちゆは自身に向けられた榴弾を冷静に帯で誘爆させ、由美に接近して鬼の腕を叩きつけた。
「人であり続けるために人を殺すと言うのは、どんな気分なのでしょうか」
衝撃で下がる由美に、ちゆはそう投げかける。
「最悪に決まってるじゃない! ……ああ、違うわ、最高よ!! 人を殺す事ほど気持ちのいいことは無いわ!」
「……本当に、難儀なものですね」
ちゆは表情を変えぬままそう呟くと、影を纏わせた刃を由美に放ち、由美の中のトラウマを引きずり出した。
「ああ、やばい、やばい……化け物にはなりたくない……」
由美は頭を抑えながら、そう呻いていた。
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デモノイドロードは悪の心が薄まると、デモノイド寄生体に支配されてただのデモノイド、化け物になってしまう。
由美は灼滅者との戦いの中で、自身の心の中の悪が薄まるのを恐怖と共に感じていた。そして、一刻も早く誰かを殺さねばと焦っていた。
「グオ……頼むから、誰か……死んで!!」
由美が振り下ろしたグレネードが、虚しく空を切った。
「そう言われて殺される奴がいるか!」
慧樹は槍を構え、ライドキャリバーのぶんぶん丸と共に由美の身体に突撃を仕掛けた。
「終わりは、そう遠くないようだね…………これは、恋い慕う男に取り付き、果てには殺してしまう、女の話……」
百舌鳥の語る怪談が、由美の全身に纏わりつき、その全身を蝕んだ。
「ゲホ……アア……まだ、まだ私は人間よ……」
ゆらゆらと立つ由美には、既にかなりの攻撃が叩き込まれていた。
「すまないねぇ……オレ達に出来るのは、せいぜい君が苦しむ時間を短くする事くらいなんだよ……」
百舌鳥はほんの僅かに表情を暗くすると、怪談蝋燭を掲げる。
蝋燭に灯された炎が赤く変じると、無数の炎の花が飛ばされ、由美の全身に降りかかった。
「追撃するぜ!」
百舌鳥に続いて飛び出した虎狼が、巨大な影を伸ばして由美の全身を包み込んだ。
「グオオ……死ね……死ね死ねしネシネ!!」
由美はちゆに向けてチェーンソーを突き出したが蓮太郎がそれを身体で受け止める。
腹に突き刺さったチェーンソーに身体を削られようと、蓮太郎は退かなかった。
「ここは通さん……!」
そして巨大な盾を叩きつけ、由美の身体を吹き飛ばした。
「……赤尾由美とかいったか。善だの悪だのと、随分難儀なことだな」
「ウルサイ……あんたらに何が……!!」
ぎこちない動作で立ち上がりながら、由美は血走った眼で蓮太郎を睨み付ける。
「気の毒とは思うが、生憎こちらは遠慮も容赦も持ち合わせてはいない」
自身の内から発せられる膨大なオーラを拳を、蓮太郎は大きく振りかぶる。
「今、この場で、お前は終わりだ」
機銃の様に激しい拳の応酬を放つと、由美の全身が鈍い音を立てる。
「…………続きます」
続けて榮太郎が拳を突き出すと、霧霞の様な淡い練気の塊が、由美の腹に突き刺さった。
「殺人を悪い事だと思っている人と戦うなんて複雑だけど……誰かがやらなきゃいけないのよね……」
ホナミは改めて自分の役割を確認すると、由美の前に凛と立つ。
「チガウ……人を殺すのは楽しいコト……そうじゃなければ困る……」
最初の頃と比べ、由美は暗く濁った声を発していた。
「行くわよ……もういい加減沈めてあげる!」
ホナミは足元の影を刃へと形成させると、由美の足元を深く斬りつけた。
膝を付く由美を前に、ホナミは構えた槍に妖気を込め、更に攻撃を仕掛ける。
「今日この夜に、人々の笑い声が途切れることは、ないわ」
ホナミが放った氷の刃が、由美の胸に突き刺さった。
「…………もう、終わりです」
更にちゆが放った帯が、由美の全身を深く斬り刻む。
「ゲホ、はあ、はあ、良かった……まだ人間ね、私……」
満身創痍となった由美は、そう言って灼滅者たちに銃口を向ける。
そしてそんな由美の前に、利恵が立った。
「ボクも一応デモノイドロードだが……君と違って悪を成して自我を保つ必要は無い」
だが、と利恵は言葉を続ける。
「だが……ボクは今、君を殺すことで背後にいる人々や仲間を助けようとしている……それは、君の成す悪と変わらないのかもしれない」
「………………」
由美は銃口を向けたまま、一言も言葉を発さない。
「それでも、ボクはこの『悪』を成す。それがボクの選んだ、誰かを守る道だから」
利恵は片腕に殲術道具を取り込むと、片腕を蒼い長剣へと変化させた。
「そう……そうね、最早、悪を成す事に躊躇ってる段階じゃあ無いのかもしれないわ……」
そう語る赤尾の口調は先程の化け物混じりの物とは違い、しっかりとしたものだった。
「だから……私はここであんたらを殺してやるわ! 1人残らず!! 奥にいる連中も全員よ!」
悪を成す事自体に怯える不安定な存在だった赤尾は、最早悪を成す事に躊躇をしない、完全なデモノイドロードとなっていた。
由美は榴弾を発射した。そしてその爆発を凌ぎ、耐えきった灼滅者たちが、一斉に攻撃を仕掛ける。
ちゆの突き刺した槍が肩を抉り、
榮太郎が振り下ろした刀が深い傷を刻む。
虎狼が振り下ろした爪が足を引き裂き、
慧樹が無数の蹴りを全身に叩きこむ。
百舌鳥が放った炎の花が全身を焼き、
ホナミの放った氷の刃が全身を凍てつかせた。
蓮太郎が放ったまっすぐの拳が由美を打ち、
利恵は蒼い長剣をまっすぐと振り下ろした。
「さよならだ」
鋭く、そして静かな斬撃が、由美の身体を一閃する。
声も無く由美は倒れると、身体に纏わりついたデモノイド寄生体がズブズブと蠢き、そして消え去って行った。
「これで終わり…………残念ね、あんたらを無惨に殺すのを、楽しみにしてたのに……」
そう言って軽く笑うと由美は眼を閉じ、そして2度と開ける事は無かった。
エントランスの中央に横たわった死体は、まるで普通の少女の物の様だった。
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「灼滅完了、だな」
「一般人に被害なし。俺たちも無事。俺たちの勝ちだぜ」
虎狼と慧樹はそう言って、殲術道具をスレイヤーカードに封印した。
「さて、ここの後片付けをしないと……お客さんがこれを見たら、せっかくの笑みが崩れてしまうよ」
「そうね、出来るだけの事はしていきましょう」
百舌鳥とホナミが、戦場となったエントランスを可能な限り修復していく。
「HKTの新たな活動か。企みを1つ潰せたのは良かったが、まだまだ事件は続きそうだ」
「こういう組織だった六六六人衆って、何を求めてるんですかね……無差別殺人上等な癖に、組織に従う、か……何かあるのでしょうか……」
蓮太郎と榮太郎は、HKTの動きには注意せねばと、改めて気を引き締めていた。
「笑顔を憎む爆弾魔、スマイルイーターか……今は手をだせないが、いつか必ず何とかしないといけないな……」
「確かにそうですね……彼が仕掛けた爆弾は何個あって、そして何処に仕掛けられているんでしょうか……」
利恵とちゆは、卑劣な罠を仕掛けたスマイルイーターの事を考えていた。
こうして灼滅者達は一通りの後始末を終えると、ホテルを後にした。
8人の灼滅者たちは戦いの末、多くの一般人たちの命と笑顔を守り切ったのだった。
作者:のらむ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年3月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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