●都内某所
最強最悪を謳い文句にしていたお化け屋敷があった。
お化け屋敷の舞台は西部開拓時代の閉鎖された鉱山。
4人一組になってトロッコに乗って進むタイプのもので、途中には財宝を探して鉱山に足を踏み入れたギャングや、落盤事故によって命を落とし、アンデッドと化した労働者達、その原因を引き起こした死神などが待ち構えており、トロッコめがけて物凄い勢いで襲い掛かってくるらしい。
そのため、途中でトロッコを降りてしまいう客が後を絶たず、錯乱状態になって発見されていたため、『このお化け屋敷には別ルートが存在に、そこで遭遇する死神は別格。死ぬほど恐ろしい目に遭ってしまうらしい』と言う噂が流れ、都市伝説が誕生したようである。
「サイキックアブソーバーが俺を呼んでいる……時が、来たようだな!」
依頼の語り手は、神崎・ヤマト。
……今日も髪型が決まっている!
今回の相手は死神の姿をした都市伝説だ。
基本的に、この都市伝説は相手の命を奪う事はない。
その代わり、相手が完全に戦意を喪失するまで、巨大な鎌を振り回して襲い掛かってくるようだ。
おそらく、お前達が行く頃には誰かが襲われている最中だろう。
まあ、恐怖で腰を抜かしている分には、それほど危険はないんだが、『こ、こんなの作り物だ。俺がその証拠を見せてやるっ!』と言った感じで襲い掛かっていくような奴がいたら最悪。
都市伝説がそいつを狙って攻撃を仕掛けていくから、色々な意味で面倒な事になる。
まずはこいつらの説得と避難。
……それと都市伝説の退治だな。
都市伝説は巨大な鎌を振り回して攻撃したり、鎌状の衝撃波を飛ばしたりするんだが、相手が戦意を喪失させるまで攻撃する事を止めない。
そのため、相手が強気なほどターゲットにされやすく、ダメージを受ける可能性が高くなっている。
そういった意味で、一般人の避難を重要視しなくちゃいけないから、くれぐれも気を付けてくれ。
参加者 | |
---|---|
大浦・政義(中学生エクソシスト・d00167) |
望月・心桜(桜舞・d02434) |
芥川・真琴(Sleeping Cat・d03339) |
天護・総一(唯我独尊の狩人・d03485) |
吾妻・刑(騙り鬼・d06063) |
ジョン・フール(仮面の男・d06120) |
月雲・螢(とても残念な眼鏡姉・d06312) |
エイナ・クレメンス(中学生ダンピール・d08291) |
●死神
「何だか緊張しますね。初めての依頼だからかも知れませんが……」
都市伝説が確認されたお化け屋敷に辿り着き、大浦・政義(中学生エクソシスト・d00167)が大きく深呼吸をしてからトロッコに乗った。
お化け屋敷の中はヒンヤリとした空気が漂っており、どこからか薄気味悪い唸り声が聞こえている。
そして、女性客の悲鳴、悲鳴、野太い叫び。
おそらく、最後の叫びはオッサン。
誰かに喧嘩を売っているようだが、声の感じからして半泣きである。
「そう言えば、ここってアトラクションの死神が人を襲う……みたいね。危ないから……、みんなでどうにかしよう?」
仲間達に声を掛けながら、エイナ・クレメンス(中学生ダンピール・d08291)がトロッコに乗って奥へと進む。
だが、トロッコがゆっくりと進んでいるせいで、なかなか声がした方に辿り着く事が出来ず、無駄に時間ばかりが過ぎていく。
「それにしても、まことさん達みたいに、こわい物に触れないといけない事情があるならともかく、ヒトってどうして、こわいって思いながらこわい物に触れたがるんだろうね……」
不思議そうに首を傾げながら、芥川・真琴(Sleeping Cat・d03339)が疑問を口にした。
もしかすると、刺激を求めているのかも知れない。
平凡な日常では、決して味わう事が出来ないスリルを……。
そういった意味で、都市伝説が出現したのも、当然だったように思えた。
「どちらにしても、誰も犠牲は出したくないから、本気で行くぞえ」
今度は別の男性の悲鳴が聞こえてきたため、望月・心桜(桜舞・d02434)がトロッコから飛び降りて全速力で走りだす。
……男性達は腰を抜かしていた。
何故か、その場に都市伝説はいない。
それでも、男性達は何かに向かって、『テメェ! ブチ殺すぞ!』、『これ以上、近づいたら、タダじゃ済まねえからな!』とドスの利いた声を響かせている。
「なんというか、ガッカリ感が半端ではないんですが……」
げんなりとした表情を浮かべ、吾妻・刑(騙り鬼・d06063)が汗を流す。
例えるなら、狼の皮を被ったヒヨコ。
声だけであれば、極道映画でも通用しそうだが、当の本人達は小動物レベル。
おそらく、本当は怖くて仕方がないのだろう。
しかし、一緒にいる相手に弱いところを見せたくないと言う気持ちがお互いにあるため、あえて虚勢を張っているのかも知れない。
「大丈夫ですか? もしも動けないようでしたら、肩を貸しますよ」
すぐさまプラチナチケットを使い、天護・総一(唯我独尊の狩人・d03485)が関係者を装った。
だが、男達はお互いに虚勢を張り合い、『だ、大丈夫。出口まで歩けるから』と言って、総一を追い払おうとする。
この様子では、お互いにここで逃げたら、ずっと笑いモノにされるという気持ちがあるのかも知れない。
こいつだけには負けられねぇ的な何かが生んだ悲劇……。
「とても、葬には思えません。さあ、早く。私と一緒に安全な場所へ避難してください」
そう言って月雲・螢(とても残念な眼鏡姉・d06312)が男性の手を掴もうとした瞬間、物陰に隠れていた都市伝説が現れ、ブンと大きな音を立てて巨大な鎌を振るう。
既に男性達は失禁状態。
這って逃げる事も出来ず、涙を流して抱き合っている。
「だから早く避難しろと言ったんだ。……まあいい。人々の噂から出た紛いモノとは言え、死神と呼ばれるのであれば、一度手合わせ願おうか」
都市伝説と対峙しながら、ジョン・フール(仮面の男・d06120)がランドキャリバーに飛び乗った。
次の瞬間、死神が奇妙な唸り声を響かせ、力任せに鎌を振るう。
それをギリギリのところでかわしたジョンは、男性達から離れるようにして都市伝説を引きつけていくのであった。
●怯える男達
「勇気と無謀は紙一重、とはよく言ったものですね。困ったものです」
横目で男性達を見つつ、刑が苦笑いを浮かべる。
男性達はすっかり腰が抜けて動けない。
それでも、虚勢を張る事を忘れておらず、『それ以上、こっちに来たら、死ぬぞゴラァ!』と叫んで、都市伝説を威嚇している。
おそらく、本音を言えば怖くて仕方がないのだろう。
だが、逃げる事が出来ない以上、こうやって威嚇するしか方法が無い。
見ず知らずの刑達を信用するだけの余裕もないのだから……。
「怖いもの見たさから生まれたモノを、見たいヒトの安全のために倒すのも変な話なんだろうけど、ねー……」
複雑な気持ちになりながら、真琴が都市伝説に攻撃を仕掛けていく。
それと同時に光が集まって焔となり、都市伝説の身体を炎に包む。
だが、都市伝説は怯まない。
全身が炎に包まれたまま、真琴達に襲い掛かり、巨大な鎌をブンと振り下ろす。
「これが死神……? まるで学芸会レベルだな。気迫の欠片もありゃしない。この鎌だってデカイだけで、オモチャだな」
クールな表情を浮かべながら、ジョンが都市伝説の死角に回り込み、その懐に潜り込んで鋼鉄拳を叩き込む。
それでも、都市伝説は大鎌を振るって半減しようとしたが、どうしても攻撃が大味になってしまうため……、当たらない。
その上、大鎌を振り終える前に、ジョンの第二撃が直撃した!
「それでも、ここでは恐怖の対象として恐れられてきた存在……。ただ、わたし達がそれを上回るだけの力を持っていた。……それだけの事」
都市伝説と対峙しながら、エイナが騒音刃を炸裂させる。
次の瞬間、都市伝説が『ウォォォォォォォン!』と叫び声を響かせ、鎌状の衝撃波を飛ばしてきた。
エイナ自身はそれを難なくかわす事に成功したが、都市伝説が狙ったのは、彼女の背後にいた男性達!
それに気づいたエイナが男性達を守るようにして横に飛ぶ。
舞い上がる血飛沫。男性達の野太い悲鳴!
衝撃波の直撃を喰らったエイナよりも、男性達の方が怯えて喚き散らしている。
「こ、怖いよう。一緒に出口まで来てよう」
わざと涙声で演技をしつつ、心桜が男性達にしがみつく。
その途端、男性達が『ひゃあ!? し、死神かと思ったぜ!』と叫んで、額に浮かんだ汗を拭う。
「この子が怖がっています、一緒に逃げてあげてくれませんか?」
男性達を守るようにして陣取り、螢が非常口のある方向を示す。
それを聞いた男性達が『し、仕方ねえな』と答えて、心桜の手を掴んだ。
おそらく、内心は『逃げる口実が出来た』と喜んでいるのだろう。
……先程と比べて明らかに足取りが軽い。
「さあ、早く! 死にたくなかったら、早くここから出て行ってください! 私達がこいつを抑えているうちに!」
何度か鎌状の衝撃波を喰らいつつ、総一がグッと唇を噛み締める。
ここで攻撃を避けるのは簡単だが、そんな事をすれば間違いなく男性達に当たってしまう。
しかし、男性達はその事に気づかぬまま、心桜を連れてその場を後にする。
「さて、これでようやく戦いに集中する事が出来そうですね。申し訳ありませんが、人に危害を加える存在を放ってはおけません。倒させて貰います」
都市伝説に謝りつつ、政義が攻撃を仕掛けていく。
敵を倒す事に対して仕方がないとわかっていても、まだ少し抵抗があるらしく、その迷いが動きにも表れていた。
だが、ここで退く訳にはいかない。
これ以上、被害者を出さないためにも……、退く訳にはいかなかった!
●都市伝説
「もちろん、覚悟は出来ていますよね?」
妖艶な笑みを浮かべながら、螢がナイフを淫靡に舐める。
都市伝説は大鎌をゆっくりと構え、流れるようにして飛び、少しずつ間合いを取った。
「どんなにあなたが抵抗したとしても、結果は同じです。諦めてください。楽に消滅したいのであれば……」
冷たい視線を都市伝説に送りながら、政義がフォースブレイクを仕掛ける。
それと同時に都市伝説が攻撃を避け、政義の首を刎ねるために大鎌を振り上げた。
「……させない」
チェーンソー剣を起動させ、エイナがズタズタラッシュを放つ。
それでも、都市伝説が大鎌を振り上げてエイナ達を攻撃しようとしたが、背後から強烈な一撃を喰らって、派手にバランスを崩す!
「待たせたのぅ。まあ、ほとんど終わっているようじゃが……」
ようやく仲間達と合流し、心桜がナノナノのここあに合図を送る。
どうやら、男性達が家まで送るとしつこかったらしく、連絡先まで聞かれそうになったらしい。
新手のナンパ……と言う訳ではないが、彼らなりに使命感のようなものがあったのだろう。
もっとも、心桜からすれば、新手のナンパ以外のなにものでもなかったのだが……。
だが、そんな心桜めがけて、都市伝説の大鎌が……!
「どこを見ていやがる。お前の相手は、この俺だ!」
ライドキャリバーに乗った状態で突撃し、ジョンがシールドバッシュを叩き込む。
その一撃を喰らって都市伝説が断末魔を響かせ、暗闇の中に消えていくようにして跡形もなく消滅した。
「……眠りなさい。人のくだらぬ言葉が生み出した空虚な死神。あなたとの一時は、私の人生においてもっともつまらない時間の一つでしたよ」
クールな表情を浮かべ、総一がサッと背を向ける。
これで都市伝説が現れる事はないだろう。
もう二度と……。
「うっ……。そろそろ帰ろう。まことさんは、寒いのが苦手だから」
ぶるっと体を震わせ、真琴が寒気を遮るようにして、コートの襟元を閉じる。
どうやら、クーラーの温度が低めに設定されているらしく、真琴達の体を撫でるようにして冷たい空気が通り抜けた。
「折角なのでトロッコに乗って帰りませんか? 僕、好きなんですよ。こういったホラー物のアトラクション。なんたって都市伝説が生まれる程ですからね。きっと楽しいですよ」
そう言って総一が勢いよくトロッコに飛び乗る。
そして、総一達はトロッコに乗って、そのまま出口に向かうのだった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2012年9月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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