●命令
平日の昼下がり。某食品会社の社長室は、しんと静まり返っていた。窓の外を見れば暖かな日が照っているというのに、その部屋は冷たい空気に沈んでいる。
革張りの椅子に腰かけた男……社長は、向かいに佇む女へと目を向けていた。背筋を伸ばし立つ美女は、どこか知的な印象を受ける。スーツに眼鏡という格好が、彼女を本来の年齢よりも、いくつか年上に思わせた。
「……最近、ライバル企業の躍進が続いていてね」
この会社では加工食品……主に、漬物を主力商品として売り出している。その売上が最近低迷の一途を辿っている。
他企業の商品が大々的に宣伝され、店に並ぶようになってからというもの、売上は確実に落ちていた。
「困ったものだよ。そこで、桐嶋君に頼みたいことがあるのだが」
「はい。何でしょうか」
桐嶋と呼ばれた女は、淡々とした口調で返す。社長は机の引き出しから数センチほどの瓶を取り出した。コトリと机の上に置き、女にそれを見せる。
「難しいかもしれないが……これを、出荷前の商品に混入させることは可能かね?」
桐嶋は、冷めた瞳をより一層細めた。
「毒物……ですか」
「ああ、見た目じゃわからないやつさ。まあ、毒と言っても、何日か腹を下すだけだが……信頼を落とすには、それで十分だ」
このようなものを、一体どこから仕入れたのやら。きっと、裏で取引でもしたのだろう。
(「……致死性の毒ではないのか、つまらない。果たしてこの男にミスター宍戸のような才能はあるのだろうか……まあ、気長に確かめさせてもらおう」)
桐嶋は心の内で呟きつつも、薄く笑い恭しく辞儀をする。
「わかりました。必ず、お望みどおりの結果をもたらしましょう」
●人材探し
「軍艦島の戦いの後、HKT六六六に動きがあった」
新妻・教(高校生エクスブレイン・dn0218)は、集まった灼滅者たちを見回しながら告げる。教の話によると、HKT六六六は有力なダークネスであるゴッドセブンを、地方に派遣して勢力を拡大しようとしているらしい。
「とくに今回の事件は、ゴッドセブンのナンバー3、本織・識音と深い関わりがある」
本織・識音は、兵庫県の芦屋で勢力を拡大しようとしているヴァンパイアだ。本織は朱雀門学園から女子高生ヴァンパイアを集め、彼女たちを神戸の財界人物……とくに、己の欲のためなら手段を選ばない人物の元に秘書として送り込んでいる。その目的は、ミスター宍戸のような、特異な才能を持つ一般人を探し出すことにあるらしい。
「秘書たちはその人間の欲求を満たすべく、悪事を働いているようだ。今回、俺が予知で捉えた事件も、その中の一つだ」
一呼吸置いて、教はゆっくりと口を開く。
「ある食品会社の社長が、秘書のヴァンパイア……桐嶋・亜美に、ライバル企業の評判を落とすよう命令を下した。放っておけば悪事は行われ、多くの人間が腹を壊すことになる上、ライバルの食品会社も被害を受けるだろう。そうなる前に、何としても桐嶋を灼滅して欲しい」
工場の下調べを行った後、桐嶋は配下の強化一般人を連れ、従業員を装って工場に入り込む気でいる。そうして、製造中の漬物に毒物を混入するつもりのようだ。
接触が可能となるのは、桐嶋たちが工場の敷地内に入り、裏口から工場内に侵入しようとするタイミング以降となる。
「桐嶋のポジションはクラッシャー、配下の強化一般人2名はディフェンダーだ。桐嶋はダンピール系のサイキックとサイキックソード系のサイキック、強化一般人はWOKシールド系のサイキックを使う」
また、何の工夫もせずに工場外で戦闘を行おうとした場合、桐嶋は強化一般人にその場を任せ、逃走を図ろうとするだろう。基本的に、彼女は灼滅者と戦うことを避けようとする。工場の敷地はフェンスで囲まれてはいるが、ダークネスならば簡単に突破できてしまうだろう。よって、逃げられないように工夫を施す必要がある。
「工場の中で戦うなら、出入り口を塞ぎつつ戦えば逃げにくくはなるだろう。だけど、機械がゴロゴロあるし、この日は従業員も5、6人いるはずだ」
いずれにせよ、対策を練る必要がある。
「逃げ道さえ断てば、あとは桐嶋を倒すのみ……難しいかもしれないけど、うまく作戦を立てて、どうにか彼女を灼滅してくれ」
参加者 | |
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玄鳥・一浄(風戯ゑ・d00882) |
藤谷・徹也(高校生殺人機械・d01892) |
蓬莱・烏衣(スワロー・d07027) |
紅羽・流希(挑戦者・d10975) |
緒垣・翠(空の青夕日の赤・d15649) |
狩家・利戈(無領無民の王・d15666) |
鮫嶋・成海(マノ・d25970) |
ルーシー・ヴァレンタイン(途切れた鎖・d26432) |
●潜入、監視
桐嶋たちが来る前に、灼滅者たちは工場へと訪れる。早速、潜入班と裏口班に分かれ、作戦を開始した。姿を隠す気流を纏い、玄鳥・一浄(風戯ゑ・d00882)は工場内部を観察しながら歩く。
(「そこらで機械が動いてはるけど、中はわりと広めやねぇ」)
(「ああ。機械にさえ気を付ければ、あとは問題なさそうだな」)
蓬莱・烏衣(スワロー・d07027)が、闇に身を潜ませつつ返す。
潜入班が工場内に入る一方で、裏口班は桐嶋の動向を見張っていた。緒垣・翠(空の青夕日の赤・d15649)が少し離れた場所に、桐嶋たちの姿を見つける。
(「きっ来たよ……ふぇっ、フェンスのとこに、いる……」)
(「来たね……計画、うまく行かせるわけにはいかないんだから」)
ルーシー・ヴァレンタイン(途切れた鎖・d26432)は携帯に指を走らせ、潜入班に連絡する。連絡を受け、紅羽・流希(挑戦者・d10975)は従業員の誘導に移った。
「近くで火事があり、こちらにも有毒ガスが流れて来ています……口元を保護して、外へ出てください……」
関係者を装って説明すれば、従業員たちは納得したように出口へ向かう。流希の声に気付いてない従業員の女性の元に行き、藤谷・徹也(高校生殺人機械・d01892)が肩を叩いた。
「すいません、外で火事が起きたようで避難指示が出ています。出口まで向かいましょう」
「は、はいっ、わかりました!」
女性は徹也の言葉に従い、出口へと足早に歩き出す。
従業員の避難を終えるかという頃、桐嶋たちは裏口へと近付き、工場内へと入っていった。狩家・利戈(無領無民の王・d15666)は潜伏用の白猫の姿から人へと戻る。
(「さあ、時は満ちた。今こそ相まみえるとき!」)
利戈の言葉に頷き、裏口班の四人はあとを追うように工場へと入り込んだ。鮫嶋・成海(マノ・d25970)は周囲を見回し、裏口の脇にある機械へと目をやった。
「失礼しますね。あとで、ちゃんと戻しますから……」
一時的に筋力を増強し、機械を移動させて扉を塞ぐ。戦闘の準備は整った。あとは、桐嶋を討つのみだ。灼滅者たちは取り囲むように位置取り、桐嶋と接触する。
「よお、待ってたぜ、吸血鬼。工場見学は順調か?」
闇を取り払い、烏衣が物影から歩み出た。そして、桐嶋の行く手を塞ぐように立ちはだかる。桐嶋は足を止めた。
「……工場の者ではないな」
「あんたはんに用があってなあ。その毒、使こうてもらうわけにはいきまへんのですわ」
穏やかに紡がれる一浄の言葉に、桐嶋は僅かに眉を寄せた。
「ああ、灼滅者か。……退路は、塞がれているようだな」
「ここを突破したとしても、外は他の仲間が包囲している。逃げ場はない!」
逃走の意思を削ぐためのはったりをかまし、利戈はにやりと笑う。
「あなたにはここで倒れてもらうよ。その下らない企みと一緒にねっ!」
ルーシーが棘を含んだ声音で告げる。その横でウイングキャットのとよたが、くあぁと欠伸した。桐嶋は息を付き、眼鏡をくいと上げた。直後、潜んでいた殺気が急激に膨れ上がる。
「く、空気が、変わった……みっみんな、気を付けて……」
震える声で言いながらも翠は集中し、魔力の霧を発生させた。力を宿した盾を静かに構え、徹也は淡々と言葉を紡ぐ。
「逃走せずに戦うことを決めたようだな。逃げられる状況ではないと悟ったか……何であれ、殲滅する」
各々の武器を手に取る灼滅者たちを、桐嶋は嘲笑った。
「面倒だが相手するしかないか……良いだろう。ついでのお前たちの血も、漬物に混ぜてやる」
「気持ち悪いこと言ってんじゃねぇよ下衆が。その口、すぐに聞けなくしてやる」
敬語が抜け落ちた成海の戦意に呼応するように、ライドキャリバーが唸りを上げる。一方で、流希もいつもの温厚な空気を消し、緋色の鞘から冷たい刃を抜いた。
「お前のような奴には裁きが必要だ。これからそれを、たっぷりと味わってもらうぜ」
●戦闘、悪の芽
先に動いたのは桐嶋だった。霧状の魔力を発し、己とその配下の力を増幅する。ルーシーは盾を翳し、しっかりと前を見据えた。
「やる気になってくれて良かったわ。それじゃこっちも行くよ! ほら、とよたも」
「クアァ……ニャウ……」
溌剌とした声と共に、盾から防護の光が展開される。同時、とよたが渋々飛び上がり、強化一般人へとパンチを繰り出した。
「逃げらんねぇようにその動き、封じさせてもらうぜ!」
烏衣が高く跳び、星の力を宿した脚を上空から桐嶋へと振り下ろす。烏衣の飛び蹴りは、割り込んだ強化一般人へと食い込んだ。
「桐嶋様には指一本触れさせん!」
「忠実な部下ってか……なら、まずはお前からぶっ潰す!」
渾身の力を込め、強化一般人を蹴り飛ばす。烏衣を狙い、桐嶋が動いた。
「大人しく斬られろ……、 !」
桐嶋の目前で、バシンと一浄の鞭剣がしなった。素早く退く彼女の脚に、赤い線が引かれる。
「よう動き回るねぇ、ご迷惑な鬼ごっこはお断りやで?」
柔らかな表情は崩さずに、一浄は鞭剣を手元に戻す。
「早う掴まってくれると、ありがたいんやけどなあ」
「……ふん、鬼にでもなったつもりか」
話す桐嶋の背後から、流希が迫った。流希の高速の斬撃は、振り向いた桐嶋の光剣とぶつかり合い、激しく交差する。
「ああ、『子』はお前だ、ヴァンパイア」
「背後から来ておいて、斬り損ねたな」
「……だが、それなりに重いだろう?」
桐嶋の挑発に、流希は淡々と返す。桐嶋は僅かに瞳を細めた。
「桐嶋様!」
桐嶋を援護しようとする強化一般人を、利戈が阻む。振り翳す交通標識が青く輝いた。
「おっと、ここは一方通行だぜ……テメエの相手は俺だ!」
ガコーン! という甲高い音と共に、強化一般人の頭を殴り付ける。
「いって! 貴様、やったな!」
「むかついたろ? さあ、かかってこい!」
強化一般人の攻撃を受け止め、利戈は嬉々と笑った。
「お前達、挑発に乗るな!」
「余所見してんじゃねぇよ」
成海が護符を放つ。五芒星の方向に浮遊した符は光を放ち、光線を撒き散らした。
「邪魔な光だ……」
「邪魔者はてめぇだ。とっとと失せろ」
成海の声に応えるように、ライドキャリバーも銃弾を浴びせる。攻撃を受けながら、桐嶋は光剣を掲げた。
「私の血を見たんだ、お前らも血を見せろ!」
光剣から爆発するように光が飛び散り、灼滅者たちへと降り注ぐ。
「わっ、すっすごい数……」
時折飛んでくる光弾を屈んで避けながら翠が呟く。
「さあ、次はどうだ?」
立て続けに、桐嶋は翠へと狙いを定めて光の刃を放った。その刃を、射線上に入った徹也が受け止める。
「……! 徹也っお兄ちゃん……」
「庇える状況だったから庇った。それだけだ」
慌てる翠に、徹也はいたって静かに返した。
「あっありがとう……でっでも、血が……」
「任務の遂行に支障は無い。味方の回復援護に移行する」
ルーシーが事前に発動したワイドガードが効いているようだ。想定していたより被害は少ない。頬の傷から流れ出る血を拭い、徹也は盾を広げる。猛禽類の刻印が煌くと同時、回復の光が前列の味方を包み込んだ。
「あっ翠だって、さっきの、おっお返しするんだ……」
翠は身に纏う帯へとエネルギーを送り込む。桐嶋へと狙いを定め、撃ち放った。翠の帯は生き物のようにうねり、桐嶋の体へと叩き込まれる。
「ち……っ」
桐嶋は一旦後方へと下がる。ふらつく強化一般人たちへと呼びかけ、態勢を立て直すつもりでいるようだ。
「一休みするつもりかいな。そんなら一つ、俺の怪談話でも聞いておくれやす」
一浄は羽織で口元を隠し、静かに息を吸い込んだ。
「そのようなもの、聞くわけが……」
「ふたつ、祟り狐が目ぇつけた」
ぽつり、ぽつりと言葉を落とすように語られる。澄んだ、それでいて芯の強い声音が広がり、空気を伝わった。耳に入り込むようなそれと共に、桐嶋たちの目前に黒い狐が現れる。
「狐……?」
「ほな、狐との鬼ごっこ。楽しみましょか」
一浄が微笑むと同時、狐は低い鳴き声を上げ強化一般人へと襲い掛かった。逃げようとする敵を執拗に追い詰め、その喉元に喰らい付く。喉元を噛み切られた強化一般人は、その場に倒れ伏した。
「一人撃破したか。この機に畳み掛ける」
怪談の余韻が冷めやらぬ間に、徹也が接近する。
「目標、捕捉」
桐嶋に照準を合わせ、手のひらからオーラの光条を放出した。光条はまっすぐに桐嶋へと放たれ、桐嶋を庇った強化一般人に命中する。強化一般人は衝撃に吹き飛ばされ、桐嶋は後方へと退いた。
「目標には当たらなかったが、さして問題ではないな」
徹也の視線の先……桐嶋の飛び退いた先で、ルーシーが盾を構えていた。
「避け切れると思わないでよね!」
「お前こそ、自ら斬られに来るとはな」
振り向きざまに桐嶋が光剣を振るう。同時にルーシーも盾を振るい、桐嶋の体へと衝撃を叩き込んだ。肩に剣が食い込み僅かに眉を寄せるも、それ以上のダメージを桐嶋へと与える。
「……あなたが調子に乗ってられる時間も、もう終わりよ」
「ブニャア」
とよたが不機嫌そうな声で鳴き、横から魔法球を撃ち込んだ。
「とよたっ、グッジョブ!」
「ちっ……」
舌打ちしつつルーシーから離れる桐嶋へと、追い打ちをかけるように利戈が迫る。
「次は強烈なタックルをお見舞いしてやるぜ! テメエのトラウマを数え上げな!」
体を取り巻き猛々しく燃えるオーラに、漆黒の影を纏わせた。勢いに任せ、桐嶋へと特攻する。
「タックルとはこうするのだ! ひゃっはあアァ!!」
「っ、守れ!」
桐嶋がとっさに命令するが、間に合わない。灼熱の炎を宿した利戈のタックルが、桐嶋の体を激しく揺らす。
「己の身くらい己で守れ! それが真に上に立つ者というもの!」
「何を、偉そうに……!」
憤ったように、桐嶋は光弾を灼滅者たちへと発射した。ライドキャリバーがすかさず成海の前に滑り込み、無数の弾から守る。光弾の一部が袋詰めにされた漬物に当たり、中身が弾け飛んだ。
「つっ漬物がっ、ぐ、ぐちゃぐちゃに……」
翠が青褪めながら散乱する漬物を見つめる。
「やってくれるじゃねぇか……食いモンの恨みってのは、恐ろしいぜ?」
成海は桐嶋を睨み付け、拳に雷を纏った。バチバチと激しく爆ぜる光を前に、強化一般人が庇うように桐嶋の前に出る。成海に気を取られたために、横から迫る翠への反応が遅れた。
「こっこれ以上、たっ食べ物に悪いことしたら、だめ……!」
縛霊手に緋色のオーラを宿し、翠は強化一般人へと斬撃を叩き込む。翠の一撃は、強化一般人を斬り裂き、絶命させた。
「計画が台無しだ……!」
桐嶋が焦ったように呟く。
「上司の命令だか何だか知らねーけどなぁ」
成海は爆ぜる拳を強く握り締め、桐嶋の正面へと飛び込んだ。懐へと入り込み、桐嶋の顎目がけアッパーカットを繰り出す。
「てめぇが腹壊してお寝んねしてろってんだ。この陰湿眼鏡女が!!」
「がはっ……」
衝撃に眼鏡を吹き飛ばしながら、桐嶋は後退する。その足取りは重い。
足元をふら付かせる桐嶋に向け、烏衣はバベルブレイカーを構え、狙いを定めた。
「逃げようにも逃げられねぇみたいだな。このまま決めさせてもらうぜ」
「ッ……やれるものならやってみろ」
戦闘態勢を維持しようとする桐嶋を、烏衣はまっすぐに見据える。
「強気な姿勢は崩さねぇってか。そーいうの嫌いじゃねぇけど、容赦しないぜ!」
放たれた光刃を横に跳びながら避け、巨大な杭を撃ち放った。
「食べ物粗末にするよーな奴は、杭に貫かれて死んじまえ!」
高速で撃ち出された杭は、桐嶋の中心を貫く。体に穴を空けつつも、桐嶋は何とかその場に踏み止まった。
「まだ生きているのか。ゴキブリ並にしぶといな」
刀を鞘に納めたまま、流希は感情の籠らない声で告げる。
「……まだ、一撃……せめて、一人だけでも、殺す!」
桐嶋は覚束ない足で走り、流希へと剣を振り翳した。鬼気迫る彼女の表情に対し、流希は眉一つ動かさない。
「食いもん粗末にするから、こんな撥が当たるんだぜ」
納刀した刀を、一瞬のうちに抜刀する。一歩前に踏み出した瞬間、眩い剣閃が桐嶋の胴体を真二つに斬り捨てた。
「現世での撥は、これで終いだ。あとは、あの世で閻魔様に食らっときな」
「……識音、さま……大変、申し、訳………」
桐嶋の体は砂のように崩れゆき、最終的には消滅したのであった。
●摘み取った後
戦闘前と変わらず、工場内には機械が稼働する音が響いている。何とか機械には被害を出さず、任務を遂行できたようだ。床に散乱した漬物を片付けながら、成海は息を付く。
「機械に被害が出なくて良かったですね。一部の漬物がこのようになってしまったのは、残念ですけれど……」
「そっそうだね……でっでも、従業員さんも助かって、良かった……」
翠がほっとしたように言い、ほんわりと花が綻ぶような笑みを零した。流希が頷き、言葉を続ける。
「これからも美味しい漬物を作って欲しいものです……なんだか、お腹が空いてきましたねぇ……」
「こうもお漬もんの香りが漂っとるとなあ。……それにしても、このところ悪の組織さん、えらい元気やねえ」
先の戦闘を思い返しながら呟く一浄に、烏衣は考え込むように眉を寄せた。
「ダークネス同士が結託して何かやろうとするってのは、気に入らねぇな」
烏衣の言葉に、ルーシーが首を縦に振る。
「手を組まれたら面倒なことになりそうだからね。とにかく、今回の件だけでも潰せて良かったよ」
粗方の片付けを終えた後、徹也が今の時刻を確認する。
「そろそろ撤収しよう。じきに従業員も戻ってくる頃だろう」
「うむ、破損物もないし、あとはさくっととんずらすれば、事なきを得るだろう!」
利戈は工場内をぐるりと見渡し、満足げに口元を上げた。
灼滅者たちの知らないところで、他にも似た事件は起こっているだろう。それでも、悪の芽を一つ摘めたことには変わりない。こうして、灼滅者たちは桐嶋を灼滅し、学園へと帰還するのであった。
作者:鏡水面 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年3月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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