欲と命は泡と消え

    作者:相原あきと

     そこは北海道、すすきの。
     その裏通りを美人だが少しキツい目をした女性が毒づきながら独りで歩いていた。
    「あそこで目押しに失敗するなんてありえない! だいたい、あの台に何万つぎ込んだと思ってるの! むっかつく!」
     彼女の名前は『レイカ』、本名ではなく源氏名というやつだ。
     今日も出勤前に大好きなパチスロに行っていたのだが、調子が悪くすっからかんになってしまった。だが、レイカはそれを大変な事だとは思っていない。生活費は借金すれば良いし、その返済はあとうん人に身体を売ればいくらでもなる。元ナンバー1の指名率は伊達じゃない。もっとも、少しだけ不安があるとすれば、歳が上がってきたせいか、最近の指名数が若いだけが取り柄のモエとか言うガキに負けが続いているという事か……。
    「あなた、SKN六六六に入りませんか?」
     声がしてレイカが振り返る。そこにいたのはアイドル?のような外見の女性。ただし、その頭部をすっぽりとシャボン玉のような物が覆っているのが気にならないと言えばウソになる。
    「なに、あんた?」
    「私はアリエル・シャボリーヌ、私ならあなたの魅力を最大に引き出してみせます。そうすればお店のナンバー1にすぐにでもなれるでしょう」
    「ナンバー1に?」
    「はい。私のSKN六六六に入って下さい。そして、私といっしょにすすきのの夜を支配するのです」
     ナンバー1に復帰すれば、もっと指名が増え、もっと金が稼げ、それだけ好きな事につぎ込める……。レイカはそう軽く考え、アリエル・シャボリーヌの誘いに頷くのだった。

    「みんな、軍艦島の戦いの後、HKT六六六がゴットセブンを地方に派遣して勢力を拡大しようとしているのは知っているわよね?」
     教室の集まった皆を見回してエクスブレインの鈴懸・珠希(中学生エクスブレイン・dn0064)が言う。
     今回の依頼はその中の1人、ゴッドセブンのナンバー6、アリエル・シャボリーヌが北海道のすすきので起こす事件だ。
     シャボリーヌはすすきののエッチなお店に勤めている女性を淫魔に闇堕ちさせ配下を増やそうとしていると言う。
    「今回の依頼は、その淫魔に闇堕ちしてしまった女性が起こす事件を、事前に止めて欲しいの」
     淫魔はその地区の有力なパフォーマーに勝負を挑み、その勝負に勝つことでその地域の淫魔的な支配権を確立しようとしているらしい。
    「ターゲットの淫魔は『レイカ』って名乗っていて、そのレイカが勝負を挑むのは一般人のモエって言う20歳前半の女性よ」
     淫魔レイカは単独で動いており、お店の裏口でモエという女性とどういう勝負内容にするか話をしていると言う。灼滅者が介入できるのはそのタイミングだ。
    「そのまま戦闘になれば一般人のモエって人が巻き込まれちゃうから、避難させるなら人をさく必要があると思う。だけど……」
     珠希は言う、優先するべきは淫魔の灼滅である、と。
    「そのあたりは現場の判断に任せるわ」
     淫魔レイカはサウンドソルジャーと殺人注射器に似たサイキックを使い、得意な能力値は神秘、戦いでは攻撃特化で襲ってくると言う。
    「ちなみに見た目が美しい若い女性には嫉妬し易いみたいだから、そのあたりをうまくやれば気を引いたりもできるかもしれないわ」
     もちろん、若いといっても見た目が子供な娘には嫉妬しない。当たり前だが……。
    「アリエル・シャボリーヌに勢力を拡大させるわけにはいかないわ、配下である淫魔の灼滅、よろしくね!」


    参加者
    ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)
    九条・雷(アキレス・d01046)
    月雲・悠一(紅焔・d02499)
    霈町・刑一(本日の隔離枠 存在が論外・d02621)
    花園・桃香(はなびらひとひらり・d03239)
    十文字・天牙(普通のイケメンプロデューサー・d15383)
    音森・静瑠(翠音・d23807)
    シルヴァーナ・バルタン(宇宙忍者・d30248)

    ■リプレイ


    「お、おば様が若い方に喧嘩を売るなんて良くないと思いま……って、ちがーう!」
     夕暮れ差し込む地裏を歩きつつ、セリフを間違えたとポケットからメモを取り出し再確認するは花園・桃香(はなびらひとひらり・d03239)。淫魔を挑発する大役とはいえ普段使い慣れぬ言葉は難しい。
     くぅ~ん、とばかりに見上げてくるのは霊犬のまっちゃだ、思わず頭をなでてあげ戦いが始まるまで隠れているよう言いつける。それにしても――。
    「うぅ、彼氏さんの前でもこんな恰好したことないのに……」
     泣きそうになる。
     今の桃香は大人っぽいセクシーなドレスに濃いめの化粧、もちろんエイティーンで変身してある。
     ちなみにもう1人と一緒に挑発役をやる予定だったのだが、その人は途中で「気を引く為には予想外の位置から出るべきでござる」とか言って途中でいなくなってしまった。
     やがてエクスブレインに指定された場所が見えてくると、そこにはゆるふわ妹系のお水女性に指を突きつけ罵倒する、件の淫魔がいた。
    「オバサンが若い子に喧嘩売ってるって、超みっともなくな~い?」
     桃香の言葉に淫魔が振り向く。
    「何あんた?」
    「年が年だから焦ってるのは同情するけどさぁ」
    「ちょっと! あんた喧嘩売ってんの!?」
     詰め寄ってくる気配に桃香が内心びくりと驚く。だがその時――。
    「フォッフォフォッフォッ」
     突如響く独特の笑い声。
    「な、何よこの気味悪い笑い声は!」
     淫魔が路地の前後を見通すも、笑い声の主は見つからない。
    「薄汚れたババアがNo1を気取るなど片腹痛いでござるな」
    「え、上!?」
     淫魔が見上げると、雑居ビルの3階の窓際に足先を絡め吊り下がるようにシルヴァーナ・バルタン(宇宙忍者・d30248)がいた。
     シュタッと着地し両手の大鋏(?)を体の横でピースさせると――。
    「フォッフォフォッフォッ」
    「だから、何なんのよあんたは!」
     バルタンの決めポーズを遮って淫魔が叫ぶ。
    「フッ、技量を磨いて来なかった老害に、遅れは取らぬでござる、パフォーマンス勝負でござろう? それならば、私が受けて立つ!」
     鋏を突きつけ宣言するシルヴァーナ。
    「私の言うパフォーマンスは……」
     そう説明し出す淫魔だが、それを無視して木材を取り出し、ザクザクとすごいスピードで木工細工を開始するシルヴァーナ。見る見るうちに淫魔をモデルにした木像が作られていく。……が、バチン。
     ゴロン。
     鋏捌きを間違い木像淫魔の首がポロリと落ちる。
    「おっと、でござる」
    「ちょっ!?」
     あまりの事に目を見開く淫魔。
    「まーまー冷静に、ここは私の忍者技術をもう一度見るでござるよ」
    「だ、誰が見るか! というかどこが忍者技術なのよ! あ、あんた、私をバカにするのもいい加減に!」
    「フォッフォフォッフォッ」
     ブチィ!
     今一予定と違うような気もするが、完全に淫魔の気を逸らしたその瞬間、一般人のモエの手が誰かに引かれる。
     それは月雲・悠一(紅焔・d02499)だった。
    「怪我をしたくなきゃ、大人しく言う事を聞いておけ!」
     王者の風を使いつつモエを黙らせる。
     コクコクと涙目でうなずくモエに、本当はこういうのは弱い者イジメみたいで好きじゃないんだけどなぁ……と心の中で呟く悠一。
     まぁ命には代えられない、好みは二の次である。モエが黙ったのを確認すると悠一は隠れていた音森・静瑠(翠音・d23807)にモエを即座に引き渡す。
    「ちょっとモエ! 私の話はまだ終わってないわよ!」
     淫魔が気づき振り向こうとするが。
    「アラサーのババアはさっさと引っ込め、って感じ?」
    「誰がババアだ!」
     絶妙な桃香の挑発にモエの方を見ず、桃香を睨み付け。
    「若くて美人だからって調子に乗ってるんじゃないよ!」
    「フォッフォフォッフォッ」
    「お前は黙れっ!」

     静瑠はモエを担いで路地裏を走り抜ける。
     戦場外に彼女を連れて行くのが自らの役目だ。
     モエから伝わってくる感情は純粋な混乱と恐怖、さもありなん。急に誘拐されたようなものなのだから。
    「申し訳ございませんが、大人しくしていて下さいね」
     静瑠の言葉にビクッとするモエ。
    「先程の方も、そして私も、貴方が関わるべきでない所で動いているのです」
     たぶん、静瑠の言う意味を理解できていないのだろう。それでも良い、重要なのは戻ってこないよう言い含めることだ。
    「今はあなたを助けます。でも、次はありません」
     命の危険を言外ににおわせておく。
     コクコクと必死にうなずくモエに静瑠は反応せず、急ぎ戦場外へと走るのだった。

     ――それは男女が仲睦まじくしていると制裁しに現れるという。

     サバト服姿の霈町・刑一(本日の隔離枠 存在が論外・d02621)が影に潜みながらRB百物語の一部を語り出すと周囲の雑霊が爆発しろと騒ぎだし……たような気がした。とりあえず人払いは十分だ。
     そして隠れていた他の灼滅者達も次々に淫魔の前へと姿を現す。
    「え、何よ、あんた達!」
    「ばんはっす。ここに来れば綺麗なおねーさんに会えるって聞いてきたんすけど」
     ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)が片手をあげながら挨拶し。
    「でも、人間やめてるんじゃ、その気も失せるっすね。仕方ないっす。自分たちがきちんと引導を渡してあげるっすよ、お・ば・さん」
    「なっ!? だから、私はおばさんって言われる見た目じゃ――」
     怖い形相で否定してくる淫魔だったが。
    「なんていうか、賭け事で身を持ち崩す人ってこんな感じなんだなァ……やァん、怖ァい……こーいう大人にはなりたくないねェ、ほんと」
     九条・雷(アキレス・d01046)が最後まで言わせず挑発し、有無を言わせずさらに言葉を続ける。
    「賭け事に溺れるのも良いけど、女の人は体大事にしなきゃなァって思うわけ。でも、そういうダメな生き方が良いなら良いんじゃない? ちょっとだけ……可哀想だけどね」
     三つ編みの先をいじりつつ、雷が淫魔を笑い飛ばす。
    「悪いけど、その生活を続けたのは私じゃなくて、元の人間でしょう? 私にしたらおかげさまで堕ちてくれたんだ、ありがたい事にね!」
     挑発の論点がブレたところで冷静になる淫魔。だが、集まっている者達を一蹴しようとし、そこで一般人ではあり得ない命中率予想に驚き、慌てて踵を返し逃げようとする。
     轟ッ!
    「あっつ!?」
     逃げようとした先で立ち上った炎に思わず足を止める淫魔。
    「悪いが、ここから一歩も通さないぜ」
     十文字・天牙(普通のイケメンプロデューサー・d15383)が炎を我慢し淫魔の前に立ち塞がる。
    「おやおや、炎はお嫌いですか?」
     躊躇したのが仇となり周囲を取り囲まれる淫魔。声をかけた刑一が続ける。
    「炎と嫉妬は切っても切れぬ関係なんですが……あなたのその嫉妬心、RB団の同志になれそうなもんですがね、実に残念」
     そして、時計から淫魔へと視線を戻してギィが言う。
    「さて、モエさんは十分離れられた頃っすかね? それじゃそろそろ淫魔はここで灼滅するっすよ」
     灼滅者たちが一斉に戦闘態勢へと移行する。その姿に淫魔も覚悟を決め。
    「いいわ、私の邪魔をした事、後悔させてあげる」


    「殲具解放」
     ギィの言葉と共に現れたのは鍔の代わりに宝玉がはまった斬艦刀・剥守割砕。
    「淫魔の技は先日たっぷり喰らったっすからね。心の準備は十分。果たしてどちらが上か……行くっすよ」
     同時、一気に間合いを詰めたギィの一撃に驚きながら淫魔が回避――するも、回避仕切れず肩口から血が飛沫く。さらに背後からの気配を察して慌ててそちらを振り向くが、天牙のヤクザキックが腹にめり込む。
    「ぐっ」
     思わず息が止まり、ババッとグーにした右拳の各指の間に注射器を出現させ灼滅者を牽制、だが、追撃とばかりにシルヴァーナと雷が接敵してくる。ハサミを閉じ剣のようにし急所を狙って突いてくる攻撃を注射器で弾き、雷をまとった拳を空いた左手で捌き、淫魔は少しずつ冷静になる。見誤った……こいつらはちょっと特殊な奴らじゃない、8人で群れ、私を狩りに来た者達だ、と。それと共に無手だった左に注射器を出現させ、不意をついてシルヴァーナを刺しエナジーを吸収。
     だが。
    「バルタンさん!」
     即座に桃香とまっちゃからシールドリングと淨霊眼が飛びシルヴァーナの傷を癒したのだった。

     淫魔の攻撃は想像以上だった。神秘特化のクラッシャーは油断できない。だが、それで攻撃の手を緩める灼滅者達ではなく。
    「嫉妬するなら爆破せよ……しないのならば、デストローイ!」
     そう言いながら向かってくる刑一に対し、その手に持つ蝋燭を警戒したのか持ってない方からすれ違って回避しようとする淫魔。だが、すれ違うと共に太股に痛みが走る。
    「人気の1つであろうその綺麗な脚を斬り、指名率も下げる作戦!」
     ダイダロスベルトから延びた刃帯によって斬られたのだ。
    「チィッ!」
     汚く舌打ちし淫魔がチラリと路地を見渡す、即座に逃走経路をふさぐ灼滅者達。
    「本気にさせないでよね……」
     淫魔が低く呟くと同時、艶めかしく体を揺らす。それは捕らえ所のないダンス、そのまま前衛達に鋭い爪を突き立て切り裂き回る。
    「させないよ」
     雷が悠一を庇う。だが、ギィの前には誰もおらず――。
     ガッ!
     だがその一撃がギィに被弾する事なく、その目の前には静瑠の姿。
    「どうやら、モエって子は避難させれたようっすね」
    「はい。あとは……この場で目の前のダークネスを打ち倒すだけです」
     急いで戻ってきたのか一呼吸置いてから決意を口にする静瑠、その横をブンッと火の神の名を冠した戦槌が振り抜かれ、淫魔の横腹に命中、吹き飛ばす。
     その戦槌を肩に担ぎ悠一が皆に言う。
    「出来るだけ手早く仕留めれば、結果的に被害は少なくなるもんだ! 一気に行くぜ!」


     ドレイン効果で傷を癒しつつ闘う淫魔のせいで戦闘は予想よりは長引いていた。さらに踊りと共に自己エンチャントを行う淫魔はじわじわと力を増大させる。だが、そこに歯止めをかけたのは桃香だった。天魔降臨陣によりエンチャント破壊を付与された仲間達が淫魔の術アップを剥がしていく。これが無ければもう少しピンチになっていただろう。
    「だったら、仲間に引き込むまでっ!」
     淫魔が誘い込むように甘えた声で歌い出す。だが咄嗟に動いた静瑠が狙われた桃香を庇う。
     ダメージは受けた……だが、静瑠が振り払うよう首を振り。
    「貴方の声は……不快です。甘いけれど人を誑かす毒を含んでいます。そんな声に……騙されるわけにはいきません」
     そのままダイダロスベルトを操りかつて自身の命を救ってくれた病院で教わった見極め術で淫魔の急所を斬りつける。
     吹き出る血を手で押さえつつ淫魔がバックステップで距離を取ろうした……瞬間、背後から「フォッフォッフォッ」と不敵な声が響き、咄嗟に背後に注射器を投げつける。
     カカカッ!
     だがそれはすべて壁に突き刺さり、上空からシルヴァーナが強襲。先ほど静瑠が斬りつけた急所をさらに摘出するように傷を広げる。
    「アァアアアアアッ!?」
     たまらず悲鳴をあげる淫魔。う、あ、と膝をつき呻くと、目の前に誰かの足が見え思わず見上げる。そこには悠一が立っていた。その目は同情ですらなく、呆れるような……。
    「何よその目は! 自分たちが優位だからって、余裕ぶってんじゃないわよ!」
     叫びつつ逃げ道は無いかと視線を振る淫魔に悠一が言う。
    「それは、俺たちが苦難に立ち向かって、それに乗り越え努力して来た今があるからだ……楽な方に逃げようとする奴に負けてやる様な、ヤワな鍛え方はしてねぇんだよ!」
     閃光、爆発。
     百もの拳が淫魔を宙に浮かべ吹っ飛ばす。
     弧を描いて飛ぶ淫魔の肩を誰かが宙で掴んで止める。
     ホッとした瞬間、そんな仲間はいないと淫魔が気つく。ギョッとして相手を見れば、それは天牙だった。咄嗟に注射器を構えるが革製のプロトタイプダイダロスベルトに叩き落とされる。
    「行くぜっ!」
     体勢が崩れた淫魔の背に天牙がピタリと手を添え、同時に光りが収束していく。
     ドッ!
     ゼロ距離でのご当地ビーム。
    「ッッッ!!!」
     声にならない悲鳴を上げ、反対側のビルの壁まで吹き飛ばされ張り付けになる淫魔。さらに追い打ちのように張り付けになった淫魔の周囲に、ボッボッボッと七つの炎が灯る。それはサバト服を着た刑一だ。
    「妬み、恨み、嫉み……これが嫉妬の炎で作った花弁です!」
     あと4つはどうした? とツッコミが入りそうだが、思いつかなかったので省略。炎が中心の淫魔に伸び炎の花と化す。
    「燃えるべし!」
     炎に包まれドサリと路地に落ちる淫魔。
     だが。
    「私は……こんな程度で……殺される、わけには……!」
     瞳に狂気を宿し、右手に注射器を取り出し突撃してくる淫魔。
    「あははっ、やァん怖ァい」
     挑発しつつ雷が我先に淫魔に向かい仲間を庇う。ガッシと注射器を持つ腕を掴み。
    「やっぱ堕ちちゃうと強いなァ、素敵ィ!」
     気合い一閃地獄投げ。淫魔を頭から路地のコンクリートに叩きつける。
    「ガッ……!?」
     指一本動かす力のなくなり仰向けに倒れる淫魔の顔に、影が落ちる。
     それは黒い炎を刃に乗せたギィ。
    「これで終わりっす。せめて最期くらいは、血の花を綺麗に咲かせて逝くっすよ」
     ズドッ。
     その血飛沫を綺麗な花だと感じる間もなく、その淫魔の命は散ったのだった。


    「ったく、あっちこっちで面倒事を起こしやがって。やっぱり軍艦島で叩いておければ……って、愚痴っても仕方ないか」
    「いや、その通りっすね。軍艦島であの男を捕まえられなかったのがつくづく悔やまれるっすよ」
     消滅した淫魔がいた場所を眺めつつ言った悠一のセリフに、ギィが同意する。
    「このすすきのはSKN六六六って言ったっすか? ここ以外にも厄介の種が全国へ散った感じなんすかねぇ?」 
    「ったく、本当に面倒な事ばかりやらかしてくれるぜ」
     ため息をつく悠一に、元の姿に戻った桃香も強く頷き。
    「早く元凶を見つけて、これ以上被害者が増えないようにしないと……」
    「どっちにしろ『ザ・人間の屑』の企みは片っ端から潰すに限るっす」
     ギィの言葉に仲間たちが頷く。
     と、そこで周囲を偵察しに行っていた者達が戻ってくる。
    「特に怪しい奴はいなかったね」
    「右に同じです」
     雷と刑一が言う。
    「早いとこ根本を叩かないとマズイぜ」
     天牙が右拳を左でバシンと受けとめ言うが、簡単に偵察しても周囲に黒幕が潜んでいる様子はなかった。
    「アリエル・シャボリーヌですか……人の弱みに付け込んで、というやり方が淫魔らしいです。本当に、許しがたいです」
     静瑠が静かにつぶやく声が路地に響き渡る。
    「もっと高い場所や、水辺を重点的に探すべきでござるか?」
     シルヴァーナの案に天牙等も同意はするが、これ以上の調査は後で行動する必要があるだろう。事件はまだ……始まったばかりなのだから。

    作者:相原あきと 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年3月28日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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