紅茶を其の手に

    作者:立川司郎

     午後のティータイムは、社長室の窓辺で神戸の町並みを眼下に眺めながら、ケーキと一緒にいただくのが日課だった。
     今日のケーキは、チョコレートムースである。
     ちょこんと上に乗った子熊の形をしたチョコプレートがかわいらしい。
    「いい香りね」
     社長は紅茶の香りに目を細め、口にした。
     ケーキを一番美味しく彩るのは、この一杯の紅茶である。社長はティータイムの度に、この秘書に言い聞かせていた。
     こくりと秘書の少女はうなずき、社長のティータイムが終わるのをじっと待つ。
     この秘書がここで働き始めてまだ数日。
     しかし、もう何年も勤めてきたかのように、少女は落ち着き払っていた。
    「社長、お仕事の方の話ですが」
     秘書がそう聞くと、社長はふと吐息をついた。
     ここ最近は問題なく。
     ただ、一つだけ気になる事があった。
    「そうね、『シャンパーニュ』はどうなっているの?」
     シャンパーニュは、彼女が口にしている紅茶の銘柄である。ここ最近、とある会社がインドで見つけて販売しはじめた。
     それを、何としても私が独占販売したいと女社長は言う。
    「シャンパーニュは、ウチだけが販売したいの。この紅茶はわたしだけのもの……分かるわよね?」
    「はい、そのように致します」
     秘書の少女は一礼すると、社長室から退出した。
     シャンパーニュを販売『出来なく』させる為に。
     
     皆が教室に揃うと、隼人は紅茶の缶を一つ目の前に置いた。それはどこにでも売られている、普通の缶紅茶であった。
     隼人にとっては、これで十分であるらしい。
    「さて、話を戻そう。ここ最近急にHKT六六六が地方勢力拡大に動き出しているのは知っての通りだが、その配下であるゴッドセブンの一人、ASY六六六の本織・識音の動きを掴んだ」
     識音は兵庫県の芦屋で動いており、古巣の朱雀門学園から女子高生のヴァンパイアを呼び寄せ、財界を支配下に置くべく秘書として派遣しているらしい。
     今回隼人が示したのは、神戸で紅茶をはじめとした輸入食品販売を行っている会社である。
     取り扱い商品は幅広いが、その会社の女社長が現在特に力を入れているのが紅茶であった。
    「中でも、インドから輸入しているシャンパーニュという紅茶の銘柄が人気らしい。所がこの銘柄、元々別の『レトロ』という小さな会社がインドで見つけて売り出したものだ。この女社長は、何としてもこの紅茶を独占販売したいらしい」
     そこで、秘書であるヴァンパイアに相手会社の社長を始末するように命じた。
     この秘書は配下とともに相手の会社まで赴き、殺害に及ぶ。それを阻止するのが、今回の依頼であった。
     秘書の少女は配下を2人伴い、深夜に会社に残っている社長を襲撃する。
    「相手は神戸市内にある『レトロ』という名前の会社で、小さなオフィスビルの2階にある。特に警備員は居ないから、進入は容易だろう。……むろん、ヴァンパイア達にとってもそうだろうな」
     ヴァンパイアの秘書は、深夜11時にやってくる。
     ただし彼女達は、灼滅者達の姿を発見すると即座に逃走を図る。もし彼女達の灼滅を試みる場合は、逃がさないように作戦を練る必要があるだろう。
    「ASY六六六の狙いは、ミスター宍戸のような才能を持った一般人を探し出す事にあるらしい。だが、俺達の目的はあくまでも襲撃の阻止だから、相手の社長を護るのだけは忘れてくれるなよ」
     隼人はそう話すと、缶に口を付けた。


    参加者
    東当・悟(の身長はプラス拾センチ・d00662)
    空井・玉(野良猫・d03686)
    碓氷・炯(白羽衣・d11168)
    マリナ・ガーラント(兵器少女・d11401)
    神乃夜・柚羽(燭紅蓮・d13017)
    雨時雨・煌理(南京ダイヤリスト・d25041)
    園城寺・琥珀(叢雲掃ふ科戸風・d28835)

    ■リプレイ

     深夜のオフィスビルには、ぽつんと灯りが灯っていた。二階にひとつ、そして四階と五階にも灯りが幾つか見える。
     この時間帯になっても、まだ人の出入りはあるようだった。
     オフィスビルの周囲は人の気配すら無く、闇が包み込んでいる。人の歩く音すら、その闇からは漏れてこなかった。
     エレベーターを使って、東当・悟(の身長はプラス拾センチ・d00662)と雨時雨・煌理(南京ダイヤリスト・d25041)がまずは三階へと向かう。三階で悟が旅人の外套を使用し、エレベーターの扉の開閉ボタンに手を当てた。
    「点検中の状態には出来ないだろうか」
    「あんま下手な事して、エレベーターの管理会社の人来られても困るやろ」
     中を覗き込んでいる煌理に悟はそう答えると、そのまま押し続けた。少なくとも、このまま待機していればもう間もなく襲撃者は来るはずである。
     片手で時計の時間を確認し、ハンズフリー状態で携帯を使用出来るようにセット。
    「……さて、万が一にそなえたが……上からや無いとええけどな」
     三階でエレベーターを止めておいたのは、即座に階下に移動する目的が第一であった。しんと静まり帰った三階に、微かに足音が響く。
     ひとつ、ふたつ……多分これは、二階に行った空井・玉(野良猫・d03686)と園城寺・琥珀(叢雲掃ふ科戸風・d28835)の足音だ。
     か細い声が、悟と煌理の耳に届く。
     -すみません……-
     玉の声を聞くと、そろそろかと煌理は呟いた。

     1階フロアで玉と琥珀は、二階に入っている会社を確認していく。『レトロ』……隼人が言っていた名前が、そこにある。
     二階に上がると、一つだけドアの隙間から灯りが漏れている会社があった。
     廊下の灯りは消えていたが、隙間から照らす明かりは廊下にくっきりと残っている。玉は琥珀を振り返り、意志を確認するとドアをノックした。
    「すみません。ビル内で落とし物があったので、御社の物か確認させて頂きたいのですが」
     しばらくして、中からはいという明るい男性の声が聞こえた。
     書類が何か落ちる音、あ~あ、と男性は呟き声をもらして歩き出す。その様子に聞き耳を立てながら、琥珀は準備をする。
     ドアが開くと、ぬうっとヒゲを生やした男性が顔を覗かせた。
    「何でしょう……ん? 今呼んだのは君達?」
    「はい」
     玉が中を見ると、彼以外の社員の姿は見当たらなかった。
     それにしても、どう捻っても二人とも午後11時にこんなオフィスビルを徘徊していそうな年齢には見えない。
     何か家出少女でも見つけたように、社長は困ったような顔をした。
    「こんな時間に、なんでこんな所を……」
    「すみません」
     琥珀が一言謝罪を口にすると、風を使った。
     そよ、と風が拭いた頃には社長の体は睡魔に襲われて崩れ落ちていた。眠りを誘った少女はしゃ社長をしっかりと受け止め、室内に横に寝かせる。
     3月といえどビル内はやや冷えていたが、このオフィス内は空調が効いていて温かい。
    「風邪をひく事もなさそうですね」
     琥珀はそう言って社長を見下ろすと、玉に視線を向けた。
    「あとは私がここで守りますから、玉さんは外をお願いします」
    「分かった。ドア、開けておいた方が良さそうだね」
     玉はそう言うと、開けたドアの外に立った。
     少し、部屋の中から流れ出る空気が暖かくて心地よい。

     そして一階には、碓氷・炯(白羽衣・d11168)、マリナ・ガーラント(兵器少女・d11401)、エリアル・リッグデルム(ニル・d11655)、神乃夜・柚羽(燭紅蓮・d13017)の四名が待機していた。
     マリナとエリアルはフロア内の入り口から見えない曲がり角に身を隠し、炯は蛇に変化、マリナは猫に変化して抱えられていた。
     柚羽の腕の中で猫の姿を取ったマリナは、落ち着いた様子で入り口の方に瞳を向けている。ペルシャ猫のふわふわとした毛が、柚羽の腕を撫でる。
    「……フロアは隠れる所が少ないですが、ここで大丈夫でしょうか」
     柚羽が、マリナに小さな声で話しかける。
     答える事は出来ないが、マリナは柚羽を見上げて瞬きをした。今回はレトロの社長を守るのが目的であり、姿を見せればヴァンパイア達は撤退すると聞いていた。
    「でも、ここで逃がすのは癪だからね」
     エリアルもカバンの中の炯を確認し、呟いた。
     真矢の背後に居るのが誰なのかは、隼人の話でははっきりとはしなかった。ただ、彼女達を動かしているのが真矢達である以上、ここで見逃してもまた別の事件を起こすだけであろう。

     夜は、そして11時を迎える。

     闇の中から、足音が響いてきた。
     ゆっくりと近づく足音……それは、入り口の自動ドアを開けると中へと踏み込んだ。前に二人、そのすぐ後ろにスーツ姿の少女が続く。
     エリアルは一つ呼吸をすると、まずは周囲の音を遮断する。そしてビルに踏み込み姿を確認すると、即座に帯を放った。
     放射状に広がった帯が、前に立ちふさがる男の一人を捕らえる。傍にいたのは真矢だろうか、かろうじて後方に飛び退いて回避した。
    「ここは逃がさないよ」
     飛び出して相手の進行方向に回り込もうとするエリアルだが、ビルの入り口を背にしているのは真矢達の方である。
     続いて柚羽は、胸の中から飛び出したマリナに続いて手拍子で仲間に応じた。
    「挟み撃ちです!」
     柚羽が、距離を保ったまま真矢へと駆けだした。
     放った帯を、真矢が躱す。
     エリアルと柚羽の攻撃を躱した身のこなし、真矢の身のこなしはこちらより一段上手だ。余裕を持って二人の攻撃を見送ると、真矢が口を開いた。
    「……撤退。灼滅者が居るなら、まだどこかに仲間が居るはず」
     真矢の言葉を聞いて、二人の男がエリアルと柚羽の前に立ちはだかる。真矢が踵を返し、歩き出した。
     蛇に変化していた炯と、猫に変化していたマリナ……いずれも、まだ戦う体勢が整ってはいない。真矢から視線を離さぬように、炯が走り出す。
     それは、逃走する真矢を追いかけようとする本能のように。
    「あなた達の好きなようにはさせませんよ」
     脇差を手の内に握り、呼吸を整える。真矢がビルから出た所で、炯のほうへとゆるりと振り返る。
     秘書は柔らかい茶色の髪をした、人形のような顔立ちの少女だった。
    「まだそんな事が言えるとはな」
     真矢はそう言うと、ふと炯の方へと身を傾けた。片手に持った槍を構えて、踏み込みながら突き出す。
     流れるような一連の動作は、炯の体を貫いた。
     追いかけた炯が体勢を整えて攻撃を繰り出すより、真矢がその隙を突く方が一瞬早かった。その様子は、入り口にいたマリナの目にも映っていた。
     傷を庇う事なく、炯は刃を振り抜く。
    「見送りに来たのではありません。……僕はここに、貴方を殺す為に来たのですから」
    「また会う事があれば相手をしようが、生憎そんな気分で無くてな」
     真矢はそう言いながら、炯の突きを受ける。刃には微かに手応えがあったが、真矢は動じる事はない。
     構え直した炯は、地を這う蛇のように真矢に迫る。
     真矢は動じず、槍から赤い閃光を放って炯を威圧した。傷口から、どくどくと血が流れていく感覚が伝わる。
     闇の向こうの真矢は、うっすらと笑って居る。
     やがて彼女は後退すると、闇に身を投じた。
     追いかけようとし、炯がはっと気付いて振り返る。
    「無事か」
     玉の声が後ろから聞こえ、炯が振り返った。
     ……と、よろりと体勢が崩れて炯は玉の縛霊手に支えられた。玉は鋭い眼光を闇の中に向けるが、追いかけるのは得策ではあるまい。
    「大丈夫です。……見た目より傷は深くありませんよ」
    「でも追いかけるのはもう無理だね。……追いかけたいけど、二人じゃ無理だ。それより……」
     玉は入り口フロアで戦う仲間を見て、炯から手を離した。今度はしっかりと立っており、炯はじっと真矢の消えた方を見つめていた。
    「……悪い、すぐ戻るよ」
     玉はそう言い残すと、仲間の元へと引き返しながら除霊結界を展開させた。入り口フロアに踏み込みざま、戦っている男の背後から結界で捕らえる。
    「向こうは逃がしたけど、こっちは逃がさないよ」
     本当なら、向こうの方こそ逃がしたくはなかったが……。

     配下に行く手を阻まれた柚羽とエリアルは、それでも仲間がすぐに駆けつける事を信じて攻撃を仕掛けていた。
     相手の隙を伺うエリアルはどうしても配下の男と距離を開けがちだが、配下も真矢が逃げるまではここを退くつもりは無いらしい。
    「真矢様撤退までの時間を稼がねばならんのでな」
     配下はそう言うと、ガンナイフを構えて柚羽に組み掛かった。柚羽の動きを押さえ込みながら、配下はナイフをねじ込んで来る。
     標識を赤く点灯させると、柚羽は相手が怯んでいる間に叩きつけた。
     ナイフの傷跡が、ざっくりと柚羽の袖と腕を切り裂いている。ちらりとそれを見下ろすと、後ろを振り返った。
    「……三階班はまだですか」
     だが、階段を駆け下りる足音が聞こえていた。ほっと息をついて、柚羽が怪談蝋燭を揺らがせる。玄関フロアの灯りの下で、鈍い光が揺れた。
     チリチリと、柚羽の手にした蝋燭から焔の華が散っていく。
     配下を逃がさないように、動きを見たまま華を送る柚羽。
    「あなた方も、ヴァンパイアに従う以上は覚悟をなさっているのでしょう」
    「でも、もう逃げられないんだおっ」
     横合いから、マリナが帯を放った。
     鞭のように撓る帯は、放たれたと同時に硬度を増して配下の体を貫く。柚羽の傷、そしてエリアルの方も視線をやりながらマリナは帯を手元へと戻した。
     その時、二階から駆けつけた玉の姿が目に入った。
    「ここは大丈夫だおっ! でも、すぐ外に炯お兄ちゃんと真矢が居るんだおっ!」
     マリナに言われ、こくりと玉は頷いて駆け抜けた。
     追いかけようと動いた配下の前に、柚羽が立ちはだかる。舌打ちすると、配下は柚羽の足元に弾丸を撃ち込んだ。
     やはり、攻撃しながらでは、相手の足止めをするのには限界がある。
     体勢を崩した柚羽に、マリナが符を放った時……エレベーターの到着音が聞こえた。
    「……くっ」
     エリアルにナイフを向けていた配下の一人が、身を翻した。攻撃の隙をついて、すり抜けようとする配下達にエリアルが帯を放つ。
     矢のように放たれた帯が、逃げようとした配下達を絡め取った。
     すう、と目を細めてエリアルが笑う。
    「逃がしたくない奴を逃がしてしまったんだ、せめて君達にはそれなりに責任を負ってもらわなければ、僕の気が済まないね」
    「餓鬼どもが……っ!」
     振り返り、配下は弾丸を浴びせた。
     雨のように叩きつける弾雨の中、エリアルがこちらも弾丸で迎撃しようとしたエリアルの視界に誰かが飛び込む。
     細い体が、エリアルの前に立って拳を叩き込むのが見えた。
    「挟み込んで逃がすな」
     低い声でビハインドの鉤爪に伝えると、煌理はエアシューズで滑り出す。生み出される焔は、軌跡のように足を彩り、ゆらりと揺れる焔が煌理の顔を映し出す。
     弾雨は既に読み切っており、煌理の体に致命傷を与えはしなかった。
     鉤爪の一撃が配下の体を穿つと、間髪入れずに煌理が身を詰めた。そこから、流れるような動きで、蹴りを繰り出す。
     焔の描く弧は、なめらかに鮮やかに。
     配下の男を焔で包むと、動きを永遠に止めた。
    「終わったな」
     煌理が言うと、同時にもう一体の配下の背後には悟が回り込んでいた。逃げ出した配下の前に回り込みながら、槍で切り上げる。
     体勢を崩した所に、蹴りを叩き込んだ。
     ふう、と息をついた悟の様子は訓練でも終わったかのように、いつものような落ち着いた表情だった。
    「……まあこいつらは片付けたけども」
     悟はそう言うと、入り口に歩き出した。
     確認の為に外を覗くが、そこには怪我をした炯が居るだけで真矢の姿はどこにもなかった。

     差しだされた缶紅茶を、炯は立ち上がりながら受け取った。
     入り口でしばらく座っていれば、傷は粗方治ってしまっていた。傷自体は大したものではなかったが、あのまま戦っていれば無事ではすまなかったはずだ。
     ただ、追い詰める事が出来なかった事への悔しさか……炯はあまり口を利かなかった。
    「紅茶は守られたんだ」
     玉は言う。
     終わってから事情を聞いた琥珀は、社長室をもう一度見張るべきかと思案していた。しかし、一度失敗した以上、今日はもう真矢は来ないだろう。
    「それにしても、襲撃を命じた女社長さんはこの事をご存じなんでしょうか。自分の指示で、どこかで他人が殺されているだなどと……」
     琥珀の声は、幾分沈んでいた。
     もし知っているのなら、こんな恐ろしい事はないだろう。柚羽はじっと自動ドアの所から外を眺めていたが、ぽつりと琥珀に答える。
    「貶めたり独占しただけで満足する人は、結局『それだけ』の人だと思うんです。ミスターのような人を探すなら、それだけでは駄目なんじゃないでしょうか」
     そう言うと、柚羽はゆっくり振り返る。
     それだけ、とは?
     琥珀が聞き返すと、柚羽は目を細める。
    「たとえば、何でも巻き込むようなでたらめな人ですよ」
    「そんな輩が増えたらたまらないな。……とにかくヴァンパイアと六六六が揃えば、ろくな事をしない」
     エリアルはそう言うと、缶紅茶を口にした。
     紅茶は冷めてしまっていたが、味は悪くなかったようだ。感情的になる方ではないが、エリアルの目と鼻の先で六六六とヴァンパイアは人間を巻き込んで事件を起こした。
     しかも、今回は逃がしてしまっていた。
    「……その紅茶って、そんなに美味しいのかおっ?」
     マリナが首をかしげて聞くと、エリアルはこくりと頷いた。
     ここで紅茶について語ってもいいが、マリナは紅茶の蘊蓄を聞きたいという顔ではない。どちらかというと、ジュースの方が良さそうだ。
     紅茶について語る機会を失ったエリアルに、玉が視線を向ける。
    「缶紅茶も悪くないよ」
     玉もまた、紅茶の善し悪しは分かるクチなのである。
     ぐるりと周囲を見回りして来た悟と煌理が、真矢は足取りは掴めなかったと話す。
    「……あの社長はどうやら今日は徹夜らしいから、夜が明ける前に帰ろうか」
     煌理はそう言うと、動かぬエレベーターの灯りを見つめた。口の中に飴を放り込んだ悟は、手の中に冷たい缶紅茶を抱えたまま外を見つめる。
     姿を消したヴァンパイアは、主の元に戻るのだろうか。
     ……また現れるのだろうか。
     それとも、別のどこで……。

    作者:立川司郎 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年3月31日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ