お持ち帰りはビニール袋にIN

    作者:黒柴好人

     栃木県宇都宮市の玄関口、宇都宮駅。
     その西口を出てすぐの場所に『宮の橋』と呼ばれる橋がある。
     東京でいえば日本橋に相当するそれは、県内でも随一のおしゃれ橋として地元の人々に親しまれている。
     そんな橋の下で人知れず集う不審な影が3つ。
    「我々を招集するとは、何事か」
     3つの内、頭がやきそばみたいな事になっている1人が重々しく口を開いた。
    「うむ。知っての通り、我らが悲願を打ち砕かんとする者どもが現れて随分と経つ」
     既に幾人もの同胞が逝ったと、もう1つの影――頭がやきそばみたいな事になっている男が流れる川の流れを見つめながら呟く。
    「彼奴らも無視できぬ程に強さを増したと聞くな。が、我らが崇高な理念には及ぶまい」
    「まこと笑止よ」
     最後の1人、頭がやきそばみたいな事になっている男が不遜に笑い、最初の男もつられて口角を上げる。
    「ンの、でれすけが!!」
    「ぬぐう!?」
     突如激昂した2番目の男が最後の男を殴りつけた。
    「おまっ、取って付けたように『でれすけ』なんて……いや、ゲフン。何をするか!」
    「その甘き考えこそ我らが敗因となぜ気付かぬ!」
    「……う、む。では勝利を得るには――貴殿、何か考えがあるようだな」
    「…………ばいい」
    「何?」
     2番目の男は胸を張り、堂々と布告する。
    「1体が無理なら3体で挑めばいい!!」
    「なッ!」
    「にィ!?」
     聞いた2人は「それはお約束に反するのでは」とうろたえるが、
    「先頃は3人バトルも流行っていると聞く。問題ない!」
    「問題ないなら……」
    「問題ないな!」
     巧みな2人目の話術により、すっかりと納得した様子。
    「ならば往かん、『宇都宮やきそば』で世界を我らがものにすべく!」
    「「応!!」」
     コシのある漢気を振り撒き、宇都宮やきそば怪人たちは太陽に向かって歩き出した。
     
    「……少しずつ暖かい日が増えてきましたが、いかがでしょう」
     武蔵坂学園の最上階の教室で、高見堂・みなぎ(中学生エクスブレイン・dn0172)は灼滅者たちを温かく迎えた。
    「……いかがというのは、冬服に別れを告げるのを喜んでいないかという話です。もっふりとした冬服に包まれたカラダを眺めるのもまた趣き深いものがありますのに」
     時たま奇妙な言動がなければいいのだが、それがみなぎという少女である。
    「さて。皆さんは以前に比べて大分力を付けてきた事かと思います」
     それはダークネスも同様であり、新たな強敵と刃を交える日々が続いている。
     とはいえ、全てのダークネスが一様に強くなっているかというとそうではない。
    「……ゲームで例えるとボスモンスターもいればザコモンスターもいる、という事ですね。弱小ダークネスはそのまま倒される事も多いですが……このままでは終われないと思ったのでしょうか、複数体が手を結ぶケースも見られるようになりました」
     今回は栃木県に宇都宮やきそば怪人を倒してきてもらいます、とみなぎは続ける。
     以前はロシア化して出てきた事もあったが……それはそれこれはこれ、だ。
     ちなみに宇都宮やきそばとは、やや太い麺に、トッピングの有無はあるが多くは目玉焼きが乗り、そして一番の特徴は卓上のソースで自分好みの味付けに出来る点であろうか。
    「怪人は頭がやきそばみたいな事になっていて、それぞれ赤、青、黄色の全身タイツみたいな事になっている何かを着ている事になっています」
     事になりすぎだった。
    「現状では特に被害は出ていないようですが……放置しておくのはやはり危険です」
     灼滅者にとっては大した脅威ではないが、甘く見過ぎると痛い目に遭うかもしれない。
     ソースが目に入ったり。
    「……怪人たちは宇都宮駅の近辺、ビルや建造物が入り組んだエリアに現れます」
     普段から人通りが多いわけではないので大掛かりな人払いは必要ないだろう。
     持てる力の殆どは戦闘に費やせそうである。
    「……宇都宮といえば餃子ですけど、最近また浜松にしてやられたそうですね。そこを狙っての発起かもしれません。やきそばと言えば麺にソース……麺とソース、ですね」
     みなぎはチラチラと灼滅者たちに奇妙な視線を送っている。
    「そんな感じで……よろしくしてくるとよいと思います」
     そう言い、彼女は深々と頭を下げた。


    参加者
    イオノ・アナスタシア(七星皇女・d00380)
    宮瀬・冬人(イノセントキラー・d01830)
    葉月・十三(高校生元殺人鬼・d03857)
    流鏑馬・アカネ(紅蓮の射手・d04328)
    淳・周(赤き暴風・d05550)
    ポルター・インビジビリティ(至高堕天・d17263)
    一色・紅染(料峭たる異風・d21025)
    奏川・狛(獅子狛楽士シサリウム・d23567)

    ■リプレイ

    ●餃子敗れた地にて
     多くの車やそこそこの人が通る大きな通りから数本路地に入ると、そこはまるで別世界のように静かで、そして薄暗かった。
    「まだ昼間だってのに、確かに人通りはほとんどないみてえだなー」
    「完全な生活道路でもなさそうですが、観光客はまず来ないような場所ですね」
     殺界形成を使う淳・周(赤き暴風・d05550)に続いてサウンドシャッターを張る葉月・十三(高校生元殺人鬼・d03857)は、ぐるりと周囲を見渡す。
     目ぼしいものはないが、ちらほらと商店や飲食店は存在するようだ。
     開店時間ではないようで閉まっているが。
    「人払い、感謝、です」
     一色・紅染(料峭たる異風・d21025)は周と十三に頭を下げると、ふと思いついたように鼻をひくひくとさせた。
    「どうかしましたか?」
     その所作に首を傾げる奏川・狛(獅子狛楽士シサリウム・d23567)に、紅染は表情を変えないまま応える。
    「……香りで、怪人たちの、位置が、分からない、かと……」
    「なるほど、それはその通りです。ではわたくしも一緒に」
     狛も一緒にくんくんと辺りを嗅いでみるが――。
    「少し、埃、っぽくて……」
    「油の焦げたような臭いが強くて分からないですね……」
     マッドな街、宇都宮は多量の排気ガスと軒を連ねる餃子店により、大気はカオスと化しているようだ。
    「それにしてもやきそばか~……美味しいよね!」
     匂いの話で思い出したのか、流鏑馬・アカネ(紅蓮の射手・d04328)は嬉しそうに語る。
    「宇都宮じゃないけど、前に屋台で食べた焼きそばが美味しくてさ」
    「屋台の焼きそばっていいよね。特別なものは入っていないけど、どうしてだか美味しく感じるのが魅力かな」
     宮瀬・冬人(イノセントキラー・d01830)にアカネは「そうそう!」と何度も頷く。
    「やっぱりソースが肝心なんだね。あと屋台で美味しかったものといえばお好み焼きと、タコ焼きと、焼き鳥と、それから――」
    「『焼き』ばっかだな!?」
    「いやあ、焼いたものって美味しいからさ」
     周のツッコみに照れ笑いを浮かべるアカネ。
    「早速料理の話題が立て続けに出てきますね。今の会話だけでも食べ物のイメージが3つ4つと……これは作監は大変ですよ! 勿論、料理専用の作監をお願いします」
     食べ物回ですからねと明後日の方向を注視しながら念を押すイオノ・アナスタシア(七星皇女・d00380)。
     そっちに何があるのだ。
    「それは重要ですね。食べ物回で作画崩壊とあっては一斉に叩かれ、その画像は永遠にネットの海を漂う事になりますし」
     十三が深刻そうに頷いている。
    「しかしこのクオリティを維持するとなると負担が一極に集中しすぎませんかね」
    「そこは万策尽きる前に手を回して……」
     彼女たちは一体どこに向かっているのか。
    「屋台とかに関わらず最近アタシ、焼きそば食ってねえんだよなー」
    「大丈夫です。これから3体出てきますから」
     周の呟きに、狛が親指を立てる。
    「おいおい、それじゃまるでやきそば怪人を食えって言ってるようなもんじゃねえか」
    「えっ?」
    「えっ」
    「まさか狛……」
     その答えを聞く前に、ポルター・インビジビリティ(至高堕天・d17263)が「……あれ……」と小さな声を発した。
    「……噂をすれば……というのは……本当みたい……」
     ポルターの視線の先、そこには路地を闊歩する不審な3人衆の姿が。
    「この餃子が落ち目の時こそ我らが好機よ」
    「うむ。しかしなにゆえかような人のいない場所に?」
    「路地裏から攻めるのは美徳とも言えよう……ぬう!?」
     どうやら向こうも気が付いたようだ。
    「かような場所に若者が8人も!」
    「かような場所……」
     相手は宇都宮やきそば怪人のようだ。
    「丁度良い。ここで宇都宮やきそばを知らしめ、存分に味わって貰おうぞ!」
    「なるほど」
    「丁度いいのはこちらもです」
    「何?」
     やきそば怪人の前にイオノと狛が歩み寄った。
     刹那、イオノはやきそば怪人の横をすり抜けるようにして駆け抜けていった。
     同時に何やら粉末のようなものが辺りを覆う。
    「貴様、一体何を……」
    「待て、見よ! この色、そして香りは!」
    「気付いたようですね。『それ』が何か」
     イオノの両手には金属製の筒が握られている。
    「青のり、です、か……?」
    「少しでも食べ物が関わると総出で調味料を用意する。灼滅者とは、そういうものだとうかがいました」
    「明確な味の違いが知りたいので一口で良いので……かじらせて貰えませんか?」
     2人の少女の笑顔は怪人、そして仲間たちも忘れる事はできないだろう。
     それはそうと「そういうもの」だとイオノに教えた者は素直に手を挙げてほしい。先生怒らないから。
    「食べ物系ご当地怪人が食べられるのは調べが付いてますから」
     狛の口元は、既に大洪水だった。

    ●業火の麺
     そこはやきそばと青のりが入り混じった香りに包まれ、灼滅者たちの胃を刺激してくる。
    「……ところであれは食べられるって……本当かな……? ……美味しそう……」
     ポルターは興味に満ちた視線を宇都宮やきそば怪人へと送り続けている。
    「食べようと思えば食べられるんだろうけど、ちょっと遠慮したいよね」
     冬人は苦笑しながら目を逸らす。
    「それに俺、宇都宮焼きそば食べたことないから、あんなの口にしたらなんか変な印象つきそうだし……」
    「……最初の印象は……大切ね……」
    「貴様ら、割と失礼な物言いをしているな!」
    「だが、我らとて頭を失うわけにはいかぬ!」
    「宇都宮やきそばを食したいのならば用意する!」
    「言ったな?」
     それを聞きたかったとばかりに周は口元をイタズラっぽく吊り上げた。
    「なら美味い宇都宮焼きそばの店はどこだそこの顔面麺助!」
    「麺助!?」
     指を突き付けられた怪人の1人はふむと思案顔になる。
    「それは無論、元祖の」
    「いや、あの離れた」
    「いやいや」
    「じゃ、どれが1番かプレゼンを――」
     意見の対立を引き金にそのコンビネーションを破壊すべく、周は更なる追い討ちを掛けようとするが。
    「否、全て甲乙付けがたし!」
    「宇都宮やきそばに貴賎無し!」
    「故に全ての味を喰らってもらおう!」
    「うわ……」
    「いやー、思った以上の焼きそばバカだったね」
     いっそ清々しいとアカネは笑った。
    「もう我慢の限界です。転身っ!」
     狛が叫ぶと、その身体は一瞬にして重装甲に包まれる。
     シーサーの顔にシークヮーサーの装甲。そう、獅子狛楽士シサリウムへと変身したのだ!
     同時に他の灼滅者たちもスレイヤーカードから殲術道具を展開し、武装を完了させる。
    「貴様ら……よもや、我々の仲間を次々と屠ってきた者共か!」
    「その通り。食べ物怪人ならば食い散らかし、そうでないならば殲滅し尽くしてきたのが私たちです!」
    「その言い方だと確実に俺たちの方が悪人だよね、イオノ……。間違ってはいないんだろうけど」
     イオノにツッコみながら除霊結界を張り、怪人らの咄嗟の動きを阻害する冬人。
    「ぐぬあああ!」
    「何事!!」
     何となく分かっていたがこの怪人、いちいちうるさい。
    「……『3人集えば文殊の知恵』……だっけ……?」
    「この場合は『3人よればやかましい』ですね」
     隙が生まれたところを逃さずポルターと十三が接近し、それぞれの得物を見舞う。
    「ところで。餃子も落ち目ですが、焼きそばはそこまで知名度無いですよね……」
     十三の一言に、怪人はぴくりと身体を震わせる。
    「確かに他の街では見たことないような気がするよね」
    「ああ、宇都宮は餃子だけじゃねえとはな!」
    「僕、は、よく、わかりません……」
    「マイナーってやつだね! わっふがるは知ってた?」
     アカネの霊犬・わっふがるも「わう?」と首を傾げている。
    「愚弄するか! 許さんッ!!」
    「喰らえい、ソォォスレイザァアアア!!」
     銃のような形に改造されたソース瓶を抜き、3怪人は灼滅者を銃撃もといソース撃する。
    「良い匂いだけど、ソースを被るのは勘弁かなっ!」
     身を翻し、それを避ける冬人。
     しかし冬人はそのソースの味付けが気になる模様。
    「濃厚そうだけど粘性が少なくてさらっとしているね。なるほど、これなら麺とからめやすくていいかも」
     ついつい料理好きの面が出てしまったが、しっかり攻撃も避けている器用っぷりである。
     同様に狙われたイオノと十三は武器で防御し、ソースをいなすが……問題がひとつ。
     得物がソース臭を纏うのだ。
    「栃木でソースって言ったらいもフライだろ!! いい加減にしろ!!!」
    「いもっておまぐあああ!?」
     ライドキャリバーのシェリルと共に突撃、怒りのスターゲイザーをブチ込む。
     ちなみにいもフライとは栃木県では主に佐野市で食される、小さく切ったじゃがいもに衣を付けて揚げ、ソースをたっぷり付けていただくおやつ、あるいは主食である。
    「食べ物で遊んじゃいけないって教わりませんでしたか? ならば今教えてあげましょう!」
    「青のりを我らに振り掛けておいてその言い様は――グハァ!」
    「あれは遊びじゃありません。本気です!」
     閃光百裂拳を怪人の頭上に陣取る目玉焼きに向けて放ちまくるイオノ。
    「彼奴め、何とエグい真似を……!」
    「私は目玉焼きは潰す派ですから! 今のは挨拶代わりで餞別です。気前よく入院見舞いも兼ねていますよ!」
     ドヤァ、とポーズをキメるイオノ。
    「入院見舞いどころか香典じゃねえか!?」
     黄色く染まった怪人を見つつ、周は容赦無い攻撃にある種感服していた。
    「……大丈夫……?」
     ポルターが彼女のウイングキャット・エンピレオに指示を出して、十三たちが受けた傷を癒やす。
    「助かります、ポルターさん。ところで、その光るリングに消臭効果はありますか?」
    「……ない……と思うわ……」
    「そうですか。ではソース風味のバトルオーラで戦闘を再開するしかありませんね」
    「……ちょっと……美味しそう……」
    「オーラって匂い染み付くのかよ!?」
     真相はさておき。
    「スーツの、色は、何か意味が、あるのでしょう、か」
     ふと紅染の頭をよぎる疑問。
     怪人がそれぞれ着用している3色のスーツの事だ。
    「赤は辛いやつでグース」
    「黄色は……やっぱりマヨネーズかなっ」
     疑問にお答えするのは狛とアカネ。
     納得の回答だが、しかしそれではブルー、青とは。
    「青……青は…………あ。青のり、でしょう、か」
    「「!」」
     やはり全て焼きそばに関係した色だったのだ!
    「そうだったのか?」
    「いや」
    「さあ」
     謎はここに解明された。
     本人らが当惑しているが、それは瑣末な事に過ぎない。
    「じゃあ上下関係ってあるのか? 今まで生き残ってるって事は強いんだよな。なら、宇都宮やきそば怪人の中で最強ってあんた等の中の誰かなのか?」
     続いて試すように周が問い掛ける。
     怪人はお互いを見やりながら「それは……」と答えあぐねている様子。
    「この場合の最強は戦闘力ではなく味でグース」
    「そうか! つまり一番美味い面の怪人が最上って事で……」
    「その通りグース」
     周と狛はじーっと怪人の頭部を見つめて。
    「ええい、見ただけじゃわかんねえ! 食べ比べさせろ! むしろ焼かせろ!」
    「こっちはとっくに空腹のピークを超えてるでグース!」
    「お、おいやめ……のわあ!?」
     2人の執念とも思える攻撃に逃げ惑う青の怪人。ついでに「焼く」という言葉に過剰に反応したアカネも参戦。
     しかし逃げた方向が悪かった。
    「すっきり、した、ので、倒します、ね」
     待ち構えていた紅染がフォースブレイクで怪人の身体を強打。膨大な魔力を注ぎ込む。
    「しまっ……ぬがああああ!」
     大きくふっ飛ばされた青の怪人は、遠くで爆発しながら散っていった。
    「今の奴は一番不味い、と。次は……どっちだ?」
     一体がやられた事で残存怪人もソースを飛ばしたり麺を伸ばしたりと攻撃が激しくなってきた。
    「こっちにもいい女がいるのですから余所見はいけませんね!」
     イオノや十三が狙いを自分に向けさせ、どうにか損害を最小限に留めようとする。
    「お前が治して! あたしが狙う!」
     前衛を担う仲間たちの回復をわっふがるに任せ、多少の流れソースを物ともせず、アカネは豪快にガトリングガンを唸らせる。
     異世界人と熱い友情が育めるように、アカネとわっふがるの相性もバッチリ。
    「いいソースを使ってるようだけど、どうしてレーザー?」
    「レーザーの格好良さを知らぬとは、小童よ!」
    「素直にビームでいいんじゃないの?」
    「断固レーザー!」
     何やら拘りがあるらしい。
    「どっちにしてもソースには変わらないよねっ。焼けば大抵のものは美味くなる!」
     問答を打ち切ると、アカネは弾丸に爆発力を加えたブレイジングバーストで黄色の怪人を炎上させた。
    「火力の調整が、なって……おらんッ!」
     最期の言葉を残し、爆散する怪人。
    「……特製ソースなら私も持っているわ……」
     ポルターの味付けは、
    「……溶けるどろソースよ……。……蒼き寄生の強酸……対象溶解……」
    「こ、これではスープになってしまう!」
     少々酸味が強すぎるようだ。
    「味が落ちなければいいグース。では、調理開始グース!」
     狛による島唐辛子のオーラを纏ったコーレーグースキック、後に柑橘系の香りたっぷりなアームドシークヮーサーでグラインドファイアを叩き込み、そして。
    「グッ、やるなら一思いにやれ! ただし宇都宮やきそばは……」
    「当然、頂くグース」
    「え、あ……」
     ――路地裏に悲鳴と爆発音が轟いた。

    ●大変おいしゅう御座いました
    「ビニール袋で持ち帰りって袋入りジュースとかリスペクトなんですかね?」
     戦いが終わり、空腹すぎて「焼き、そば……」と今にも彷徨い出しそうな紅染を見た灼滅者たちは、宇都宮やきそば巡りの旅に出ていた。
     既に2軒程まわり、十三が持ち帰りをした所、焼きそばはビニール袋にダイレクトインされていた。
    「それは分からないけど、でも適当に入れているわけでもなさそうだよね。ちゃんと綺麗に収まってる」
     同じくお土産として買った冬人も中身を確認する。
     こうして見ると違和感がないのが不思議だ。
    「お腹、いっぱい、です……」
     紅染も腹が満たされ、どこか満足そうだ。
    「何言ってるんだ。まだまだこれからだろ。な!」
    「はい。次はこの店に行きましょう。ついでに餃子も見ていきましょうか」
    「……楽しみね……」
     周の言葉に狛とポルターが頷く。
    「えっ、まだ食べるの!?」
    「そりゃもう、近くの焼くもののお店は行っておかないと! あ、わっふがるはあんまり濃い味のもの食べ過ぎないようにねっ」
     アカネもまだまだ元気そう。
     信じられないといった顔をする男衆に、イオノは自信溢れる顔で言うのだった。
    「女の子には別腹という機関が搭載されているのですよ」
     この後、体重増加という恐ろしい敵を目の当たりにするとも知らずに。
     とにかく、またひとつ平和になった宇都宮でのグルメツアーはまだまだ続いていく。

    作者:黒柴好人 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年4月1日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 6
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