春宵絢爛―しだれ夜桜を愛でに

    作者:志稲愛海

     東京を代表する文化財庭園の一つ、『六義園(りくぎえん)』。
     歴史や和歌の逸話に溢れたこの大名庭園に、再び春の季節が巡ってくれば。
     見事な薄紅色のしだれ桜が、流れ落ちる滝の如く咲き誇る。
     勿論、晴天に枝垂れる桜花もとても美しいが。
     昼とはまた雰囲気の異なる、ライトアップされた薄紅色の桜の滝が夜空に浮かぶ景観は圧巻だ。
     そんな幻想的で美しい夜桜を、美味しいものでも食べながら、愛で楽しんで。
     美しい日本の春を、堪能しませんか。

    「ね、ライトアップされた、夜のしだれ桜を観に行かない?」
     そういつもの如く、教室にいる皆にふと声を掛けるのは、飛鳥井・遥河(中学生エクスブレイン・dn0040)。
    「夜桜か、風流でいいな」
    「東京も、そろそろ桜の時期なんだな」
     そして綺月・紗矢(小学生シャドウハンター・dn0017)や伊勢谷・カイザ(紫紺のあんちゃん・dn0189)のように興味を示した皆を見回した後。ぱらりと、遥河はある情報誌を広げ、続ける。
    「今年はね、ライトアップされた夜のしだれ桜を観に行ってみようかなって。ほら、こことか良さそうじゃない?」
     そう彼が指しているのは、情報誌の夜桜スポット特集。
     その中でも、しだれ桜の名所として知られている『六義園(りくぎえん)』であった。
    「桜は桜でも、しだれ桜か。光に照らされた滝の様な桜花は、なんか想像しただけでも幻想的な感じだな!」
    「大名庭園としだれ桜か、日本的な美を堪能できそうだ」
     六義園の名物は、高さ約15メートル、幅約20メートルにも及ぶ見事なしだれ桜。
     そしてこの時期、夜になると、滝の様に枝垂れた桜花がライトアップされる。
     大名庭園や瓦屋根、それに夜空に浮かび上がる滝の如き桜の風景は、まさに日本的美の象徴といえる美しさを誇るという。
     そして――花見と言えば、やはり!
    「おお、六義園内の『さくら茶屋』には、美味しそうなものがたくさん売っているんだな! しょうゆと味噌のふたつの味が選べるもちもちした炭火焼団子に、辛味玉こんにゃく、口触り滑らかな桜や抹茶のジェラート、それに豚汁や豚角煮入ちまきに……どれも美味しそうだな……! それに『抹茶茶屋』では、お抹茶と上和菓子のセットがいただけるのか」
     食いしん坊幼女の紗矢がキラキラと瞳を輝かせるような、春らしい美味しいものも沢山。
     シートを敷いた宴会はできないが、このライトアップの時期、園内の茶屋は夜も営業している。茶屋から美しい夜のしだれ桜を愛でながら、美味しい団子やジェラートなどに舌鼓を打つのも、また良いのではないか。それに桜染めの小物やスカーフなど、桜にちなんだ土産なども買えるようだ。
     遥河は、それぞれ夜桜鑑賞に思い馳せる皆を見回しながら、へらりと笑んで。
    「名物のしだれ桜は勿論、風流な大名庭園内には、沢山の桜が咲いてるみたいだからさ。春の夜の幻想的な風景を、大切な人とのんびり歩いて堪能するも良し、わいわい大勢で美味しいもの食べながら茶屋から観るのも良し、ひたりでただひたすら眺めて日本的美を噛み締めるも良し……誰とどんな愛で方をしても、きっと素敵そうだよね!」
     だから、もしよかったら六義園に夜桜を観に行かない? と。
     改めてそう、皆を誘うのだった。


    ■リプレイ


     桜が、何故しだれるのか。
    「だらーんの理由知ってますかっ?」
     そう訊いたユーリヤに薀蓄語った山吹は。
    「ところで頭に血が上らない? 大丈夫?」
     桜の様な逆さまポーズの彼女に、声を。
     二人と桜を見ていたら……花弁とは逆に、夜空に落ちそうで。
     少し怖くなったユーリヤは、繭と山吹の服をぎゅっ。
     そんな彼女の幼さを垣間見た繭は、自分の方がお姉さんみたいだと、微かに表情を和らげて。
     ユーリヤに笑み、【天文部】らしく。山吹は、今度は皆既月食と桜の共演を話題に。
     ――今な噺御存知ですかい?
     そう万鬼が語るは、枝垂桜の妖しき御話。
     それを聞き、思わず茶碗を滑らせそうになる遼平に。
    「――嗚、桜は人を惑わすと云うな」
     ゆえに、遼平も魅入られぬようにな、と……優京も、言の葉の悪戯を。
     そして、優しき枝垂れ桜は遼平に似ているとも、続けて。
     相変わらずよく動く万鬼の口から出た、お代わりの催促に便乗しつつも。遼平は【黒虎隊】の皆と共に、花も団子も楽しむ。
    「ならば散るまでの間だけでも魅入られていようか」
     出鱈目な騙りも……春の夜桜の前では、これまた一興。
     滝の様に枝垂れ、光に照る夜桜は新鮮で。
     和の風情に心落ち着くロビン。
     でも――何より素敵なのは、この景色を共有できる人がいること。
    「はい、じゃあ笑ってくださいね」
     ロビンをこっそりくすぐりつつも、ぱしゃりシャッターを切った美奈は。
    「もう一枚、いいかな?」
     照れながら言った彼女に、にっこり笑んで。特別な思い出をもっと沢山、写していく。
     昼と夜で印象変わる桜の様に、藤乃にも、別の面があるのだろうか?
     そして時々寂しげなのは気のせいか……なんて。
     思っていた希沙を引き戻したのは、お団子!
     学園に来て経験する事は、藤乃にとって楽しいことばかりで。
    「これからも、皆で。偶には、こうして二人で。楽しく過ごせれば良いですわね」
     いいのですよ、偶にはで、と。花も団子も堪能しつつ、希沙に、うふふと笑むのだった。

     藍花の初めての和装は、眼前の春夜の様な濃紺に桜柄。
     その姿を褒めつつ、緩んだ帯を茶屋で直してあげた後。
    「ん、桜の花ってね……人を迷わせるみたいだよ?」
     七葉に咲くのは――桜の悪戯心。
     誘われそうな程のしだれ桜。でも、藍花は七葉の元へ歩き、紡ぐ。
    「……ですが、私達にはまだ帰る場所がありますから……」
     また宿題を手伝って欲しいですし、と。
     すごいね、すごいね……と。
     興奮咲かせる与四郎と共に見上げた奏哉の瞳にも、神秘的で妖艶な夜桜が。
     ふと、舞う一片を追えば。
    「よっちゃん、ナイスキャッチだ!」
     その行方は、与四郎の掌の中。
    「ほ、ほら。春、とは言え身体……冷えたでしょう?」
     並んで食べる豚汁は、温もりとお腹を満たして。
     互いに積もる花弁を摘み合い、短い春の幸せを、一緒に。
     春のデートスタイル満開な響は、普段通りの綾乃の手をはしゃいで引いて。
     枝垂れる桜を眺め、感嘆の言の葉を零す。
     でも。
    「……あ、綾乃さんも、負けないくらい綺麗ですからっ!」
     響はハッとして、ぐるんと振り返ると。綾乃の腕に、ぎゅーっ。
     そんな響とのんびり桜を愛でながら、綾乃は返す。
     私からすると響さんの方がずっと綺麗、なんですけどね、と。
     ……綺麗、ですね、と。
     紡いだ麗華が描く世界にも、輝く桜が満開。
     そんな彼女と会話は交わさずも、共に桜を眺める紅詩。
     そしてスケッチを終えた麗華に渡したのは、買ってきた紅茶。
     花冷えする中、ふわり掛けられた上着から、麗華は温もりを感じて。
    「……誘っていただいて、ありがとうございました」
     色々な辛い事も、今は全部忘れられる。
     カイザと桜舞う茶屋で一服する水花が頼んだのは、豚角煮ちまきと桜ジェラート。
    「桜を眺めつつ桜のジェラートを食べるのは何だか贅沢な気がします」
     そして、まだ何にしようか悩むカイザに。二倍楽しめるよう、半分この提案を。
    「いやはや、この季節の桜、それも枝垂桜とは……」
     流希も春の夜に美しく流れ落ちるその桜を、目に焼き付けるように眺めて。
     来年もまた見れるといいですよ……と、そう紡げば。
     カイザや遥河や紗矢と言葉を交わし、妖美に枝垂れる桜を見上げた後。
    「どれにしよう……!! すっごく迷っちゃう!!」
     茶屋で頼んだお抹茶で一息。千巻も、桜色に染まった春に浸る。
     珍しいこともあったもの、と。
     隣で醤油味の団子を食べる供助の奢りの桜ジェラートを食べながら。
     依子は、日本庭園に咲き誇る見事な夜桜を眺める。
     双子でも、綺麗なものの愛で方は、相変わらず似ていないけれど。
    「適当な飯食うなよ、お前自分用だとそゆとこあるし」
     ただ、それだけ送って。
     何言ってるんだかと渡された部屋の鍵を、供助は受け取った。


     気に入ってくれるといいんだけど、と。
     レニーがみせた一片は、桜の首飾り。
    「よかったら、つけるよ」
     そう正面から手を回されれば、思わず色づく逢紗の頬。
     ドキッとする程に……顔が、近くて。
     そしてゆっくりと彼女の首元を飾ったレニーは。
    「どうかしら……ね」
     くるり、夜桜と舞う逢紗に微笑む。
     綺麗だよ。よく似合ってる――と。
     連れて行ってあげるよと、マッキが優希那を誘った先は。
    「ゆきな、真上を見上げてごらん」
     幾層にも折り重なった――桜の花だけの世界。
     そんな夜桜の景色は幻想的だけど。
    「えへへ、なんだか桜を2人で独占してる気分になりますねぇ」
     幻想ではない、二人だけのもの。
     それから、散策を楽しみつつ。
    「桜餅おいしいだろ?」
     のんびり、和菓子も頂きます!
     優美という花言葉は、しだれ桜にぴったりだと。
     感嘆する楽多の横顔を、晶子は頷き見つめて。
     夜空に舞う薄紅眺め、自分の串団子を差し出せば。ぱくり、幸せに咲いた思った通りの楽多の微笑み。
     そして。
    「本当に、綺麗だね……」
    「あ、え、えっと、そ、そうですね…」
     俯く晶子の頬を一番綺麗な桜色に染めたのは――握り合った、手の温もり。
     桃香の掌が追うのは、掴むと恋の願い事が叶うという薄紅の一片。
     桃香が頬で掴まえた花弁を摘んで、浮気願望あんの? と。
     遊はそう、からかって笑むも。
    「私が好きなのは遊さんだけだし、今だって遊さんのことを……っ」
     今にも泣きそうな眼差しに、降参のポーズ。
     ……でも。
    「桃香の願い事ならオレが叶えてやんよ」
     桜のおまじないなんて、不要だから。
     夜の様に凛としているけれど。
    「ん、桜は堪能したし……後は……」
    「甘味処、寄ってくか?」
     そう先回りすれば、返るお姫さんの反応に、笑みこみ上げる。
     そんな優志に、子供扱いしないでと、美夜は拗ねるも。
     来年も一緒に見ような? ――桜舞う夜に囁く彼と、帰る場所は同じ。
     でも、二人の家に帰る前に。
    「甘味食べたら……ね?」
     美夜はそう、くすり。
     同じなはずなのに、どこか違う嬉しさ。
     それは、恋人になって、初めてのデートの所為。
    「ゆっくりとした時間を過ごしたいですね」
     結城と静かに眺める夜桜の香りが、血生臭さを消してくれるような気がして。
     彼といられる穏やかな春を、大切に過ごす夕。
     そして桜降る夜はまだ少し冷えるけれど。
     温かいお茶と……肩寄せ合うお互いの体温が、あったかい。
     真琴のジェラートは桜風味、七波は抹茶味。
     でも両方の味を楽しむべく、食べさせあいっこすれば。
    「ええっと、これからもずっとこういう風に出来ると良いよね」
     照れる二人の頬も、桜色に。
     そして真琴は、また一緒に――と。
    「これからきっと、もっと沢山いろんなことがありますよ」
     そっと七波が挿してくれた天然の桜簪に触れつつ、微笑む。
     少し食べる? と眞白に差し出した桜ジェラートのお返しは、抹茶味のあーん。
    「……初めて一緒にお花見をしたのも、夜桜だったねえ」
    「盛大に咲き、美しさを保ったまま散っていく……。咲く桜も散る桜もどっちも見事だ」
     そう、しだれ桜の天蓋を見上げる緋織に、眞白も頷くけれど。
     でも、多少潔くなくても――こうやって手を繋いで。一緒に、長く咲き続けたい。

     手をパタパタ、すってん転んだましろに手を差し出した後。
     ふと屈んだ倭の額に舞い降りたのは……桜色の唇。
     そして。
    「だって暫く離れてたから寂しかったんだ、も……んっ」
    「……いつも貰ってばかりだからな、その……ふ、不公平だろ?」
     これで公平、お返しのキスと。繋いだ手の中にある幸せがふたつ。
     桜の花弁を掴まえたら――良い事があるらしいから。
     春の夜に流れる、薄紅色の桜の滝。
     風に舞い囁く桜から感じる、命の鼓動。
    「前から思ってたんだけど、夜桜は暁に似てると思うんだ」
     綺麗で儚げな暁は、どこか夜桜に似ているけれど。
     ずっとあたしだけの夜桜でいて――そう暁を引き寄せた優奈は、不器用に彼を独り占め。
     暁もそれに抗わずに。
    「ええ、アンタのよ」
     薄紅色の天蓋の下、静かに、唇を落とす。
     夜桜も綺麗だけど。この世で一番綺麗なのは、隣にいる恋人だけ。
     でも今その瞳を独占している雪の様な桜に、桃夜は嫉妬して。
     こっちを、向いて欲しいから。
     桜花弁が入る余地もない――不意打ちのキスを。
     そんな柔らかな感触残る唇を押さえ、桃夜を嗜めるクリスだけど。
    「ね、もう一回してもいい?」
     やっぱり僕は君に甘いな……と。目を閉じて、返事を。
     一緒に見る、3度目の桜。
     でも……夜の花霞に消えるかの様に。エアンの腕からするり、温もりが失われて。
    「えあんさん、こっちこっち」
     ハッとして追いかけた百花を掴まえたのは――薄紅色の滝の裏側。
     それでも安心が欲しくて、その手を引き寄せて。
     どこにも行かないと、二人きりの世界で笑んだ百花にエアンが与えたのは……花びらよりも、甘いキス。

     少し不安気な里桜に似合ってると、カメラ構え返す勇騎。
     今日は制服姿での、卒業記念デート。
     特定した好きな花こそ勇騎にはないけれど。
     季節感ある桜の様な花は……こうして外出する切欠を作ってくれるから。
     そして――ふと足止めた里桜の掌には。
    「……勇騎、良かったら第二ボタンを私にくれないか?」
     好きな人から貰う、世界で一つだけの、卒業の証。
     花に興味のない月人でも、桜は特別だと、そう思うし。
     それはすぐ隣の春陽も同じで。
     夜空に掲げた、桜花弁舞う左手の円環も――二人お揃い。
     そして降り積もる桜花弁の様に、ずっと一緒に思い出を重ねたいと思いながらも。
    「お腹空いた! 炭火焼団子が超気になるっ」
    「俺もちまき買ってくるから桜眺めながら食うか」
     でもやっぱり自分達は、花より団子。
     繋がれた紫桜の手を見つめ、嬉し気に顔緩む燈。
     今日は――恋人になって、初めてのデート。
     一緒に眺める薄紅色の世界は、確かに美しいのだけれど。
    「桜も綺麗だが……、隣にいる人がいい」
     紫桜の瞳に映るのは、ぎゅっと腕に抱きつく、大切な花謡の姿。
     そして、燈が次に大事に抱き締めたのは。
     今宵の夜桜を閉じ込めた様な、桜柄のちりめん手鏡。
     組んだ腕から伝わる、恋人の体温。
     綺麗な枝垂れ夜桜を眺め歩いた後、零桜奈と瑠威は茶屋で休憩を。
    「はい……瑠威……あーん……」
     そう差し出したお菓子を、ぱくりと口にし笑んだ後。
    「ほら、お口開けてー」
     瑠威が返したあーんに、味も分からないほど照れる零桜奈の顔は、一面桜色に。
     でもそれも、瑠威には予想通り。楽し気に、食べさせ合いこ。
     逸れぬ様にと繋いだ震生の手を、硝子は離さず握り返して。
    「里の桜とは違うけれど。この桜は凄く、綺麗だ」
     伝わる温もりに、懐かしさを感じる震生。
    「それに、その……硝子も凄く、綺麗だな、って」
    「……ぁ、あり、がと?」
     彼の言葉に顔を桜色に染め、そうはにかみ笑いを返した硝子だけど。
     照れて俯きつつ……先程よりも近い距離で、彼と歩き始める。
     はらはら落ちる薄紅は、何だか涙の様で。
     宗佑が零した真意を知りたくて、そっとその手を取る日和。
     そして小さく咲いた本音は――二人、一緒の感情。
     でも。
    「寂しいの飛んでけ!」
     ふわり、思わず蹲った宗佑の頭に舞い降りる掌。そして耳馴染む言の葉に。
    「今日だけじゃなくて、ずっと、一緒にいたいです……」
     普段は言わない我が儘を、そう、一つだけ。


    「遠目ならではの光景ですね。綺麗……」
     茶屋から眺めるしだれ桜は光に照り、より綺麗で。
     紗里亜に頷きつつも、さやかが見つけたのは。
    「あたしはこれ♪ 桜のパフェ♪」
     【星空芸能館】の皆で、頼んだスイーツの交換こ!
     でも、桜と甘味だけではありません。
     女の子が集まれば……話題は勿論、桜色の恋バナ!
     心桜は桜の様に頬を染めつつ、皆をちらりちらり。
    「わらわの理想のタイプは今の彼氏様! 以上!」
     これ以上ない惚気を披露!
     さやかと紗里亜も桜色全開、幸せな惚気話を。
     そして紗矢とジェラートを分け合う、えりなの気になる理想のタイプは。
    「わ、私は……優しくて引っ張ってってくれる人……かな?」
     春の夜に咲く桜に負けないくらい皆で、満開の話の花を咲かせる。
     今年の桜をみる事ができた感動。
     辛味玉こんにゃくを食べつつ、【探求部】の皆と、茶屋でまったり桜を愛でる皆無。
     希紗も星空と桜の共演に興奮覚めやらぬまま、茶屋のメニューに目移りするも。
    「これで全部食べられる!」
     結衣奈と交換成立! むしろ結衣奈の奢り?
     そこですかさず豚汁を追加する皆無先輩。いえ、ちゃんと出すつもりです!
     そして通りすがりの遥河に記念撮影を任せれば。
    「ああ……、桜のジェラート美味しい! ……って、もう撮るの!? 待ってぇ!」
     桜舞う中――結衣奈の声と同時に、ハイチーズ!
     【七天】の4人で愛でる春は楽しく、一層桜も綺麗に見える気がする。
     奢ると言う緋頼の厚意に、鞠音と鈴乃は大きめジェラートを。でも、白焔も奢ってみたい側だから。
    「じゃあ二人で出すか、緋頼」
     それでも尚、何か物足りな気な彼に。
     緋頼が理由問えば……愛しいほどに彼らしい返答が。
    「殺しに行く時はついていくよ。でも、今日は4人で楽しもう」
     苦笑しつつもそう返す緋頼と白焔を、恋を知らぬ鞠音は不思議そうにじーっと見つめて。
     その口元を鈴乃が拭いてあげた――刹那。
    「ま、まりねさま……っ!?」
     ワンピースに足を取られた鞠音が、鈴乃を押し倒しました!?
     そして、思わず桜色に頬染めた鈴乃に。
    「すいません……どうかしましたか?」
     桜の花同様不思議の多い日、と。鞠音は再び首を傾ける。

    「枝に布がかけてあるみたい! 綺麗なドレープ!」
     春特有の桜の色彩に、民子は声を上げて。
     桜は木全体でその色を作り出すと言う静菜の話に、龍一朗も聞いた江戸時代の花見事情を語れば。
    「花は桜木、人は武士という言葉も残っているし桜はそれほど人を魅了するのだなと思ったよ」
     光に照る桜に感嘆しつつ、【美術学部一年】の皆に来てくれた礼を。
    「あ、私は炭火焼団子の味噌味が良いです!」
     茶屋でちゃっかり、そんな龍一朗の奢りに甘える静菜。
     むしろ、誘ってくれて嬉しかったから。
    「ほら、俺の桜ジェラートもお食べよ……!」
     一緒に財布を出しつつも、諒は龍一朗や静菜にも、お裾分けを。
     花より団子もまた良し。美しい春の芸術に触れながら。
     感性を刺激し合う、楽しいひとときを。
     さくら茶屋を訪れた【吉祥寺 4-蓮】の皆の目的は、美味しい甘味!
     シェスティンと瑠羽奈とフリルは、お揃いの桜ジェラートを。
     でも……空煌の抹茶も美味しそうだから。ちょっとだけ、取替えっこ。
     シェスティンと交換した空煌も、んー♪ と幸せそう。
    「これが、日本の名菓のお団子……味噌の香りが、とても香ばしいですね」
     エリカは味噌味の炭火焼団子を食べながらも。皆に、寒くないですか? と訊いて。
    「これがしだれ桜なんだね。綺麗……」
    「普通の桜とは、また違う、感じですね……凄い」
     美味しい甘味に、綺麗な夜桜。そして何より――共に春を楽しむ友が、傍にいて。
    「ふふふ、何だかとても幸せで夢みたいな一時ですわ」 
     瑠羽奈も級友達と仲良く、花も団子も楽しむ。
     みえなかったりするけれど……皆の瞳はキラキラ、実はとてもはしゃいでいて。
     フリルは一生懸命、級友達に気持ちを伝える。これからもよろしくお願いします、と。
     そしてまた来年も一緒に、夜桜を愛でる事ができれば、と。
     花も団子も勿論、両方欲張ります!
     錠の手には人数分の団子、時生は桜ジェラートとちまきを。
     抹茶ジェラートだけでなく、冷えた人の豚汁と甘酒を葉月が追加すれば。
    「甘いモンばっかだと飽きんだろ?」
    「ねえ、それわたしともシェアしてね?」
     ミルクソフトと焼き団子を手にする千波耶も、聖斗の口直しの辛味玉こんにゃくと当然シェア希望!
     幻想的に枝垂れ、白く照る桜から、幽玄の儚さを感じながらも。
     また来年も桜は美しく咲くから……わいわい皆で楽しく、今年の春を目一杯満喫して。
    「いっちょここで記念撮影でもすっかァ!」
     そうスマートフォンを構えた錠に、ちょっと待った!!
    「記念撮影するなら、ちゃーんと錠も入るのよ!」
    「どうせ写真撮るんなら、皆一緒のとこ撮りたいしな!」
     そして、じゃじゃーん! と登場するのは、自撮棒ー!
     これで全員で、記念撮影できるはず。
     桜は上手く撮れなくても――皆が揃ってこその、【武蔵坂軽音部】だから。

    作者:志稲愛海 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年4月15日
    難度:簡単
    参加:86人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 12/キャラが大事にされていた 2
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