摘みたて苺と春色カフェ

    ●春うらら、いちご色
     暖かな日差しが降り注ぎ、緑や花が喜ぶ季節となったこの頃。
     今ならば桜も見頃であるが、まだまだ苺も収穫時期真っ盛りなのだ。

     緑が繁る田園風景に浮かぶ、大きなビニールハウス。それが、苺園の目印だ。
     其処では、旬を迎えた苺が数多く栽培されている。
     現在はいちご狩りの為に一般にも開放されているようで、好きなだけ苺を摘むことができるという。
     もちろん、摘み取った苺はその場で食すことも許されている。
     口いっぱいに広がる豊かな香りと甘酸っぱい果肉の味。
     一口頬張れば、きっと誰もが虜になるに違いない。

     苺園のすぐ傍には、お洒落なオープンカフェが開かれている。
     天気が良い時は、パラソル付きのテーブルセットも用意されていることだろう。
     やわらかな春風に、ぽかぽかとした飴色の陽光。いちご狩りで疲れた体を癒やすにはうってつけだ。

     オープンカフェのメニューには、様々な苺のスイーツが用意されている。
     苺のショートケーキだけでなく、タルトやムース、ロールケーキ、パフェ、プリン、マカロンなどなど。
     どれも採れたての苺がふんだんに使われた美味しい品々だ。
     飲み物には珈琲や紅茶、各種ソフトドリンクなども取り揃えている。
     中でもお勧めなのが、喫茶店オリジナルの苺味の紅茶だ。
     薫り高くも仄かな甘味がアクセントとなっており、子供でも飲みやすい味となっている。

     花より苺なあなたにも、もっと春を満喫したいあなたにも。
     甘く熟した贅沢な一日を、春空の下で過ごしてみるのは如何だろうか――?

    ●春休みの過ごし方
    「いちご、イチゴ……! そういえば桜もだけれど、イチゴも食べ頃なのよね。
     ニッポンポンの春をもっとたくさん謳歌したいわ。ねえ、シラカバ先輩」
    「お、おう!?」
     唐突にも名を呼ばれて硬直する白椛・花深(高校生エクスブレイン・dn0173)。
     振り返ると其処には、いつにも増して薄紅の瞳をキラキラ輝かせるジョバンナ・レディ(中学生サウンドソルジャー・dn0216)の姿が。
     よく見ると彼女は、『イチゴ狩り』と大々的に記されたチラシを抱きかかえていた。それはそれは大事にそうに。
    「あのね、イチゴがイチゴで超イチゴみたいだから、ムサシザカの皆も誘って遊びにいきましょ?」
    「な、なるほどな! 超イチゴ狩りってわけか。なら皆でワイワイ楽しみたいよな!」
     ジョバンナの説明よりは、チラシに書かれていた内容を読んで理解したらしい。
     苺狩り。新学期に備えて、自然に触れ合って英気を養うのも良いだろうと花深は思う。

     春休み最後のひととき。
     赤く実った苺たちが、あなたを待っている。


    ■リプレイ

    ●摘みたて苺は頬染めて
    「桜さん苺です! 沢山沢山苺すげーのです!」
     これ全部食べていいんです? となこたは心を弾ませながら訊ねる。
    「勿論! この辺二人で食い尽くしてやろうぜ!」
     桜は笑顔を返し、今度は自分がなこたの袖を引っ張って。
     童心に帰って、賑やかな春のひとときを二人でこれから過ごすのだ。
     ふと郁は、大きくて真っ赤な選りすぐりのひと粒を修太郎の掌へ。
    「中学卒業と高校入学おめでとうと……今日、一緒に来てくれてありがとう」
    「え、これ貰っていいの? 有り難う」
     食べるのが勿体ないと笑いながら、写真を撮ろうと提案する修太郎。
     もちろん、郁も一緒に。
     苺狩りは初めてですか? ――執事はふと、そう訊ねる。
     てっきりカフェに行くものだと思っていた主人は、驚きつつも平常心を装って。
    「ぶどう狩りを見た記憶はあるのですが、苺は全くですね」
     初めての苺狩りに、マーテルーニェは花之介に教えてもらいながら苺を摘む。
     摘むことに集中してしまいがちだけれど――後に訪れるカフェのことも、忘れずに。
     悟が頬に苺をくっつけて差し出すと、想希は照れ臭くも頬に口付けるようにぱくりと一口。
     空いた手で写真を撮ろうとすれば、口の中で苺をもごもごさせて。
    「苺一笑(いちごいちえ)の味なんや。記念に一枚えぇやろ?」
     想希がペシペシと愛らしく抗議しても、へらりと笑顔で返して。
    「そりゃあ……記念なら勿論」
     ――カシャ、と響いたシャッター音。
     隣で黙々と苺を摘む藺生へ、甘い苺を食べさせてあげる灯夜。
     藺生もまた、お返しに苺を差し出し。
    「そういえばあっちゃんはお菓子作れるんだっけ?」
     色んなものと合わせて食べたいね、と言えば、灯夜は笑顔で応じて。
    「ふふ、帰ったら美味しいお菓子いっぱい作ろうね」
     希沙さん希沙さん、と近寄る小太郎。
     名を呼ばれて振り向けば、彼の両の掌には特別綺麗な赤い苺が。
    「ひゃーつやつや! き、きさが貰ってええの?」
    「どうぞ。今日のお礼です」
     そう促す小太郎の言葉に頷いて、そうっと頬張る希沙。
     自分の為にくれた苺は一番美味しく感じて。
     今度はきさから贈ろう。選りすぐりのひと粒を、大切なきみへ。
     九里が指さした小さな果実を口に運び、華月は思わず美味しいと零す。
    「ふふ、その御顔…余程甘かったように御座いますねェ」
     からかいの声にはっとなって、片手で口を隠しつつ、空いた手で九里の口元へ苺を差し出すが――一歩下がられて届かない。
    「……良いわ、待ってなさい」
     あんたのよく回る口も思わず言葉を忘れるくらい甘いのを見つけてやるから。
     華月の言葉にふ、と九里は口端を上げて。
     ――えェ、期待しておりますよ。
    「あ、ねぇ見て見て。この苺、ハートみたいじゃない?」
     巳桜が摘んだ苺を見て、なんだそれハートだ可愛い! とはしゃぐ鈴。
    「私もなんか面白い形の子さがそ!」
     鈴もまた、猫の様な形の苺を見つけて。二人して夢中になって、籠いっぱいに苺を集めた。
    「すげーいちごのいい香り…! 絶好のいちご狩り日和!」
     楽しげに語る民子はいつにも増してテンションが高い。
    「これだけ並ぶと、狩り甲斐あるなー」
     隣の民子に一際つやめく苺を差し出せば、彼女はそのままかぶりつき。
     驚きつつも照れ隠しする供助に、民子からもとっておきの苺をプレゼント。 
     彼女の笑顔を見やって、供助は今日という楽しいひとときを噛みしめる。
    「どうじゃ、これなら……!」
     ハゼリがお返しにととびっきりの一粒を差し出せば、紀人はそのまま口を開けて頬張った。
    「流石はぜりんチョイスの苺、すげえ美味い!」
    「ひゃあっ」
     素っ頓狂な声をあげるハゼリ。
     照れながら紀人は必死に言い訳をするけれど、互いに心はドキドキ。
     両片思いが赤く実る時は、いつしか。
    「あ。この苺…色艶といい、形といい完璧…!」
     感動の余り、「美味しそうじゃない?」と庚に見せる与四郎。
     けれど差し出された苺が美味しそうに見え、思わず庚はぱくりと一口。
     怒んなよーとへらり笑うけれど、対する与四郎はさっきより理想的な苺を見つけると意気込んで。
    「なら、どっちが理想の苺を見つけ出せるか、競争だな!」
     仄かに桃色がかった、美しい白苺。
    『初恋の香り』と冠された不思議な苺を見つけ、まりは興味津々にそれを口に運ぶ。
    「初恋ってこんな感じ、なんでしょうか…?」
     花深さんは恋、したこと、あります? ――訊ねられ、花深は白苺を一口齧り逡巡して。
    「俺もまだ、かなあ…けど、恋がこの苺みたいな感覚なら、そりゃまた素敵だよな」
     すると時生は最後の一口を頬張って、悪戯っぽい視線を向け。
    「そう言うまりはどうなの? 気になる男子いるんじゃない?」
     時生の言葉に頬を真っ赤に染めるまり。
     その時が来たら、ぜひ応援させてね、と時生は微笑んで続けた。
     瑞々しくもほろ甘い、そんな恋が訪れる日はいつしか――。
     ミラちゃん、これ美味しそうだよと苺を差し出せば、ミランダは礼を述べ、嬉しそうに口へ運ぶ。
     お返しにと、ミランダも苺を來地の口元へ。そうして二人で楽しく食べ合いっこ。
    「もし良かったら、今度からもっと色んなところ遊びに行ってみようかな」
    「そうですね、私も來地さんと色々なところに出かけてみたいです」
     初めてのデート。マルクトは普段のゴスロリとは違う、サロペットを身にまとって。
     慣れた手つきで真っ赤な苺を摘みとれば、
    「京介様。その…あーん、ですの」
     マルクトは隣の彼へ、苺を差し出し。対する京介は動揺を隠しつつ口を開く。
    「あ、あー…」
     ぱく、と一口。ただただ甘く、顔も心も幸せ色に満ちていく。
     持ち帰って何かを作ってくれるというさくらに、凍路は嬉しくなって。
    「…! うん、食べてみたいな、さくらさんの作るいちごのお菓子、とか」
     初めて呼んだ彼女の名前。さくらも何だか、それがくすぐったくて。
    「ん。早めに作って連絡しますね。…ええと、い。凍路くん…」
     呼び方が変わって、さらに距離が縮まったような気がした。
     お留守番中の三義の霊犬・ひとつには、食べ易い苺をお土産にあげようとはアネラの提案。
     美味しい苺の見分け方は、二人もいまひとつ分からないけれど。
    「まぁ全部美味しいからいーんじゃないっ? 幸せ!」
     苺を沢山詰め込んで、アネラはご満悦。
    「なんか変形して…、こう、ひとつみたいな形じゃない?」
     三義がひとつとよく似た苺を見つけると、「それお土産にしよー!」とアネラが明るく声をあげて。
     口を開いてお返しの苺を待つ夜奈を見て、叶世は微笑む。
     差し出す前、叶世はある事に気づき目を瞬かせる。
    「夜奈ちゃん、身長伸びたね!」
    「成長期、だもの。もっともっと、背、のびるよ」
     夜奈はちょっぴり得意げに。苺を頬張りながら嬉しそうに、ふと思う。
     ずっと一緒に居たいという気持ちは蓋にして。今この暖かく楽しい日々が過ごせるなら、それでいい。
     たっぷりと苺を収穫し、祠と祀は実食へ。練乳をかけ、二人で一緒に頬張る。
    「ん~♪ これは、練乳と苺の甘さが絶妙です!」
    「苺の爽やかさと濃厚な練乳…これは確かに王道ですね」
     その美味しさに頬を緩ませる二人。あの縁側でまた味わえるよう、さらに沢山採って帰ろう。
     摘んだ苺を光に翳せば、赤く艶めいて宝石のよう。
     いただきまーす、と百舌鳥が一口。甘酸っぱい果汁が口いっぱいに広がる。
    「他の人達にもお土産で、パックに入れて持って帰るのも良さそうですねぇ」
    「お土産にできるならオレも、オレも…!」
     風呂敷を広げる百舌鳥に、宵は微笑む。美味しい苺は、沢山食べても飽きないものだ。
     
     赤いサイドテールを揺らして、唯は黙々と苺を摘む。
     沢山採って持ち帰って、ビハインドの双子の姉と何を作ろうか。
    (「またこういうなんあったら、誰かと一緒に来よっかなー」)
     一夜もまた、ひとり気ままに苺狩り。楽しそうな来客の賑わいを眺めて。
    (「こんな日がずっと続くように、笑顔が広がるといいな」)
     憧れや微かな寂しさも苺と一緒に飲み込んで。そう、笑って大人ぶってみたり。
     肉焼き少女・クリスは激おこだった。とにかくそこに座れと言われ、アッハイと従う花深。
    「皆で焼肉パーティをした時、『焼肉王に俺はなる!』ってあんなに熱く語ってたじゃない!」
    「いつの間に世は大焼肉時代なったんだッ!?」
     しかし、今日は牛繋がりで練乳を持参してきたクリス。
     どうやらこの場は丸く収まった(?)のであった。
    「苺はちゃんと赤いのを選んでくださいねー」
     熟していない苺は残しておいた方が良いと律は【井の頭2-3】の面々に呼びかける。
    「これとか真っ赤だよー。美味しそー♪」
     弥勒は早くも、赤く熟した苺を見つけて上機嫌。
    「不恰好なものほど、甘かったりしますよ」
     歪な形は敬遠される故、完熟になっている苺が多いのだと、檀は摘みながら教える。
    「わ、ハート型だ。こんな形もあるんだねぇ」
     春希からハートの苺を受け取る鴇永。チョコのチューブを持参して、彼も食べる準備は万端。
    「後3つ探すんだっ! 手伝って! トキくんっ」
     律に弥勒、檀のハート苺も探すべく、春希は練乳チューブ片手に苺園を駆けまわる。
     門出の日はいつしか訪れるけれど――楽しい想い出は、いつまでも。
    「おーぃ、こっちに美味しそうな苺がなってるぞ~!」
     別方向からは、弥咲の声が。【部外者】一行も彼女の元へ向かって苺を探す。
     鏡花が取り出したのは、練乳と器だ。
    「そのままで食べるのとはまた一味違って良いわね」
     すると、人が摘んだ苺は美味しそうに見えるな、とひょっこり顔を出す弥咲。
     自分で食べなさいと呆れつつも、鏡花は練乳を入れた器を差し出して。
    「…えと、ハガネくんも、あ、あーん、なんて…っ」
    「うぇっ!?…あ、あーん?」
     頬を染めながらも、こっそり苺を差し出すたまき。
     ハガネは一口でそれを頬張れば、口に広がる甘酸っぱい味に、気恥ずかしくも「美味ェや」と照れ混じりに笑う。
    「ふわぁ、すごいよ、苺だらけだよ! …ゆ、夢じゃない、よ、ね?」
     【夜天薫香】のましろの瞳は、いつにもましてキラキラ。
     さっそく、二人に贈るべく美味しそうな苺を探し始める。
     ましろの様子を微笑ましげに眺めつつ、優志は鮮やかに実った赤い一粒を軽くつついて。
    「ほら、美夜…これ、お前の瞳の色に似てる」
    「あたしの目はこんなに美味しそうな色してないわよ?」
     美夜はそう言って紅の瞳を細め、優志の口元へ赤く色づいた苺を押し付けた。
     【フィニクス】の靱は次々とタッパーに苺をしまい、ときには口に放り込み。
    「苺がこんなに大量に食べられるなんて…神様ありがとう!」
    「蔕を取って、頭から…。んー、美味しい!」
     昭乃はテレビで覚えた、苺の美味しい食べ方を実践。
     最後の先っぽは糖度たっぷり。口いっぱいに甘さが広がる。
    「苺には思い入れありますよ。義兄弟の分も取らねば…」
     昨年の苺狩りを想い返しながら、双調はお土産にと大量の苺を腕に抱えて。
     一方、実は上白糖やグラニュー糖で苺に味付け。さくらえや勇弥、そして靱へ「あーん」をしてあげると、新妻とのツッコミが。
    「あ、ごめっ、ちが、苺おいしいから…」
     そして勇弥も「こっちは旦那さん役か!?」と慌ててむせそうになり、とんとんと胸を叩いたのち。
    「ふう……苺も美味しかったし、この後の敵情視察―という名のカフェ訪問―も楽しみだ」
    「スコーンとタルトと、ゼリー、ムースと…シャーベットもあるかな?」
     特製シロップをかけた苺を頬張りながら、ショートケーキは必須ですよねと恢はグッと拳を握って。
    「ふふ、持ち帰ったら、とりさんに苺スイーツも作ってもらおうね」
     皆でカフェへと足を運ぶ際、さくらえがワクワクしながらそう微笑む。
    『Café : Phönix』に新たな春スイーツが追加される日も、そう遠くはないようだ。
    「部活のお友達と明日の私たちへのお土産も忘れずに、ね」
     甘いものが大好きな【糖分は神】の三人も揃って苺狩りへ。
     普段はやる気の見えない聡介も、今回ばかりは目が爛々。
     摘みたての味や皆とのひとときに、詩奈はうっとりして。
    「部活のお友達と明日の私たちへのお土産も忘れずに、ね」
     来れなかった子達の為に、お菓子作りをしようと聡介が提案すれば、詩奈も嵐も頷いて。
    「よし、摘むのは女子におまかせしよう。帰ったら皆で苺パーティーだ」
     プリンやパウンドケーキ等々。想像を巡らせば、嵐の常の無表情にも、微かな笑みが滲む。
    「日暮にはお菓子をいっぱい、作ってもらうカラな」
    「ハウスの中が苺の香りでいっぱいですね」
     誘ってくれた【木苺】のシャンティに礼を述べ、苺の甘やかな香りを楽しむこのみ。
    「真っ赤で、艶があって…甘い香りがするのが美味しいのよ♪」
     苺を探しながら、百花はお姉さんらしく皆へレクチャー。
    「皆、苺はどうやって食べるのが、好き? 私はやっぱり、生クリームが、好き」
     甘酸っぱい苺に、ふんわり真っ白な甘いクリーム。
     考えるだけで幸せになっちゃう、とシャンティは双眸をとろんと緩める。
    「私はそうねぇ、苺ジャムかしらっ」
    「へえ、生クリームにジャムか…どれも美味そうだ」
     アフタヌーンティを催すのも良さそうとエアンが提案する。
     すると儚はすかさず、「素敵ね、素敵ねっ」と銀の瞳を益々きらめかせ。
    「その時には、各自のお勧めを食べ合うのも面白いね」
     勿論、国崩しも一緒かな? ――そう奏が訊ねれば、このみはにっこりとそれに頷き。
     これからもきっと、皆と過ごせる愛しい時間は続いていく。

    ●晴天、春色カフェ
     苺の紅茶を一口すすり、そわそわとした様子で優奈から本題を切り出した。
    「こ、恋人が出来まして…」
     服装の相談等で話を聞いてもらっていたからこそ、ずっと礼を言いたかったのだという。
    「本当っ? 良かったねぇ、ゆんちゃんおめでと!」
     心から喜び、祝福する千巻。
     ちぃも誰か居ねーの? という問いには、何かあったら必ずゆんちゃんに報告するねぇ、と笑ってみせた。
     【LEAVES】の健や勇介たちからも声を掛けてもらえば、ジョバンナや花深は手を振り返してそちらへお邪魔することに。
    「今年は西暦20『15』、苺の付く年だもんな?」
     面子的にも、苺の紅茶は外せないことだろう。
    「特製苺紅茶? 面白いわ、茶葉専門店の娘として、探求心が騒ぐわ!」
     曜灯も例外でなく、興味津々な様子。
    「甘くて美味しいイチゴミルクティー♪ あと、パフェ!」
     多彩なメニューに悩みながらも、陽桜はビシッとパフェに決定!
    「どれも魅力的で迷うけど…苺のショートケーキは外せないかなあ」
     最後に一樹がケーキを選び、程なくして紅茶やメニューも出揃って皆で乾杯!
    「いちご狩りも張り切らないとね。帰ってからも苺尽くし、だねっ」
     勇介が笑顔でそう言えば、皆の茶話もさらに弾んで。
     ――去年の春、夜桜を観に行った時。
     その話題を香乃果が挙げれば、あの時の苺大福は本当に美味しかったと花深は微笑んだ。
    「またお菓子を作ったら、お届けしても良いですか?」
    「ああ、勿論。久々に、香乃果の新しいお菓子も食べてみたいしな」
     彼の言葉を聞き、少女のアズライトの瞳は安心したようにふわりと緩まった。
     大人数でテーブルを囲うのは、【哲学部S】の面々だ。
    「ひーふーみー……よし、全員いるな?」
     香艶が人数を確認。
     運ばれてきたのは――『20』と模られた蝋燭を立てたショートケーキのホールだ。
     そう、これは有無と香艶の誕生祝いを兼ねた盛大な茶会だ。
    「流石に蝋燭40本立てるのはキツいかのぅ」
     ババロアを味わいながら、中央のケーキを凝視するルティカ。
    (「紅茶の香り、甘いな。けど息抜きには丁度良い」)
     紅茶を一口啜り、シグマは外の景色と共に周囲を眺める。
     幾つものテーブルの上に、様々な苺のスイーツを並べた様は壮観だ。
    「安土さん、こっちもおいしいですよ!」
     ムースを頬張れば、梔子は香艶にパフェとシェアをして。
     その間に桃はこっそり、香艶用のデザートを注文する。
     ブリギッタは紅茶を注いだりケーキを切り分けたりと、周囲を気配っていた。
     廊下に出やすい端っこに座る遥も、口許を隠しつつケーキを味わって。
    (「生クリーム美味しい。あ、苺も」)
    「ウムさん、いっしょにおいしい苺、たべましょうねっ」
     有無の腕を引っ張り、無邪気に笑う空。テーブルからやや離れた処からキィンの視線も感じる。
     イーッと歯を見せる相棒に、有無はふ、と笑みをこぼして。
    (「感傷はやめよう。恵まれると立ち止まりたく成る」)
     気乗りせぬなどと口にしても、それは一種の天邪鬼。
     形の違う両の目を伏せ、有無は賑やかな場でも常のまま。
    「あーれ。有無じゃん、来てたんだー」
     後方へ振り返れば、かれんがこちらへ向けて手を振っていた。
     思わぬ再会に、かれんは口元緩ませて。他愛無い話でもするかと彼の元へと向かう。
     こうして苺を交換していると、恋心を交換しているかのよう。
     苺って、ハートの形に似ている気がするのです――なんて。
    「――じゃあもっと食べる?俺の恋心」
     メルキューレからのロマンチックな話には、瑞樹は顔が熱くなるのを感じつつも、意趣返しにとそう囁いて。
    「……でも、やはり先輩が作ってくれるお菓子が一番だなとも思うのです」
     メルからの素直な言葉に、欲目でも嬉しいよと先輩は微笑んだ。

    作者:貴志まほろば 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年4月20日
    難度:簡単
    参加:93人
    結果:成功!
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