最上川・耕平(若き昇竜・d00987)は、こんな噂を耳にした。
『行き過ぎた痛絵馬により廃れた神社に都市伝説が現れた』と……。
この神社は色に関するご利益があるらしく、以前は芸術関係の参拝客が訪れていたようだ。
しかし、いつの頃からか、色=アダルト的な発想を持った参拝客が増えていき、ヒット祈願なども含めて行き過ぎた痛絵馬(無修正)が奉納されるようになったらしい。
それが原因で一般の参拝客がドン引きしてしまい、あっという間に廃れてしまったようである。
しかも、神社が廃れてしまった後も、痛絵馬を奉納する参拝客が後を絶たなかったため、神主が亡霊となって夜な夜な現れているという噂が広まった。
この亡霊は都市伝説で痛絵馬を奉納にやってきた参拝客の前に現れ、『この愚か者がっ!』と叫んで痛絵馬に描かれていた絵柄を相手の身体に浮き上がらせる事が出来るらしい。
この絵柄は油性マジックで描いた程度のもので、念入りに洗えば簡単に消えてしまうのだが、二度と痛絵馬を奉納しようとは思わなくなるため、それなりに効果を発揮しているようである。
それでも、しつこく神社にやってくる参拝客に対しては容赦なく、思わず赤面してしまうほど卑猥な絵柄を身体に浮き上がらせ、色々な意味でトラウマを植え付けているようだ。
どちらにしても、体を洗えば済む事だが、神社から家に帰るまでの間、笑いものにされてしまう事は確実だろう。
その事も踏まえた上で、都市伝説を倒す事が今回の目的である。
参加者 | |
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黒咬・翼(キルイズム・d02688) |
月雲・彩歌(幸運のめがみさま・d02980) |
夏炉崎・六玖(夜通し常識外れのシミュレータ・d05666) |
明鶴・一羽(朱に染めし鶴一羽・d25116) |
灰慈・バール(魂の在り方を問う彷徨いし者・d26901) |
大神・狼煙(リグレッタブルジンジャー・d30469) |
白川・雪緒(白雪姫もとい市松人形・d33515) |
飴宮・凛子(超獣の片割れ・d33606) |
●町外れの神社
「無害なのかそうでもないのか、よくわからない都市伝説ですね……」
白川・雪緒(白雪姫もとい市松人形・d33515)は複雑な気持ちになりながら、仲間達と共に都市伝説が確認された真夜中の神社に向かっていた。
都市伝説は神主の姿をしており、痛絵馬を奉納にやってきた参拝客を、恐怖のどん底に陥れているようだ。
「痛絵馬で廃れる神社など遅かれ遠かれ廃れる運命だったのかもな。だが、それが原因で余計な奴が出て来たのは面倒だ。さっさと始末してくるとしよう」
黒咬・翼(キルイズム・d02688)が警戒した様子で、神社の境内に足を踏み入れた。
いまのところ、神社の境内に人気はなく、痛絵馬が奉納されている様子もない。
「ある意味、かわいそうですが、一応灼滅せねば……ていうか、まずは私が普通に参拝したい! 書き手として、芸術とは少し違うかもしれませんが、やはりご利益にあやかりたい!! 小説を書いている身としては何としても!」
大神・狼煙(リグレッタブルジンジャー・d30469)が、四十五円を賽銭箱に放り投げ、普通にお参りした後、土下座をして文才を願う。
それこそ、地面に顔を擦りつける勢いで!
既に廃れているとは言え、元々は神様を奉っていた場所。
必死に祈れば、必ずご利益があるはず。
なければ、困るっ!
(「アイドルに会えますようにアイドルに会えますように……!!」)
その横で灰慈・バール(魂の在り方を問う彷徨いし者・d26901)も、祈る。
……と言うよりも、祈って、祈って、祈りまくった。
「しかし、行き過ぎた痛絵馬ですか……。何らかのキャラクターが描かれている、さらに上……?」
月雲・彩歌(幸運のめがみさま・d02980)が、不思議そうに首を傾げる。
何となくは理解しているつもりだが、微妙に想像がつかなかった。
「痛絵馬……? それって、どういう……」
飴宮・凛子(超獣の片割れ・d33606)もまったく意味が分からず、ハテナマークを浮かべている。
「痛絵馬ねぇ……どこだったか忘れましたけど、町おこしとかで見た気はしますけど、度が過ぎればこの有様ですか。TPOは大事ですよね。……と言うか、されて嫌な事を返す都市伝説と言うのも、どうなんでしょう」
明鶴・一羽(朱に染めし鶴一羽・d25116)が、深い溜息をもらす。
色々と思うところはあるのだが、考えるだけ時間の無駄。
都市伝説は噂から生まれた存在。
それ故にツッコミどころ満載であっても、仕方がないのである。
「まあ、とりあえず痛絵馬は沢山あるから、どれか反応すると思うけど……」
夏炉崎・六玖(夜通し常識外れのシミュレータ・d05666)が厚着姿で、痛絵馬に視線を送る。
この痛絵馬はネットで検索して出てきた人気アニメや、ゲーム等を参考にした上で、ゴーストスケッチを駆使して作ったもの。
若干、色彩感覚が独創的でシュールな感じもするが、都市伝説にとっては些細な事のはずなので、大した問題にはならないだろう。
●痛絵馬
「うふふ、ブロディ様、ブロディ様~」
凛子は都市伝説を誘き寄せるため、『憧れのブロディ様と夜明けの新宿をホテルから眺めたい!』と絵馬に書いた。
そこにはブロディがいい笑顔で、親指を立てている絵が描かれており、凛子はとてもルンルン気分。
もともと、スポーツや芸術に情熱を燃やしているため、恋愛事にはやや疎いせいか、他の痛絵馬と比べて大人しめであった。
「廃れてしまった……と、言いますけれど、ニーズがあったのならその方面に再生していく……のは、プライドが許さなかったんでしょうね……」
彩歌が複雑な気持ちになりながら、友人や知人に描いてもらった痛絵馬を奉納していく。
痛絵馬に描かれていたのは、昔話のアニメや、世界の名作物語などのイラストで、こちらもある意味、大人しめ。
「やっぱり……、俺も出すしかないんだね」
六玖が覚悟を決めた様子で、痛絵馬を奉納していく。
そのどれもが地雷であるかのように思えたが、いまさら引き返す事も出来なかった。
「ひええええ!? そ、それなにー!?」
凛子が顔を真っ赤にして驚愕する。
「こらァァァァァァァァァァア! 貴様っ! それは何だっ!」
次の瞬間、都市伝説がボンヤリと現れ、顔を真っ赤にして怒り出した。
「出たな悪徳神主め! 正義のオタクパワー、受けるが良いで御座る!」
それに気づいたバールが都市伝説の前に陣取り、スレイヤーカードを解除する。
「こんな都市伝説が出るようなら、参拝客がいなくなるのも遠くはないな……」
翼が皮肉混じりに呟いた。
「なんだと! 貴様……、私にそんな事を言っていいのかな?」
都市伝説が邪悪な笑みを浮かべる。
それと同時に翼達の身体に卑猥な絵柄が、ボンヤリと浮かび上がってきた。
「おお、拙者の体に……萌が…!?」
バールが驚いた様子で声を上げる。
「はははははっ! 見たか、これが俺の力っ! どうだ、ショックだろう! 今にも泣きたい気分だろう!」
都市伝説が高笑いを響かせた。
「か、感激した……! 勲章を大事にするぞ! 一生洗わないぞぉ! 神主ー!!」
バールが都市伝説と両手を取り合い、大絶賛!
「な、なんだと……!」
これには都市伝説も驚き、気まずい様子で汗を流す。
「俺に文才をくれぇええ!!」
しかも、狼煙が興奮した様子で、都市伝説に迫ってきた。
「ま、まさか、この状況で動揺しないヤツが、こんなにいたとは……。だが、その心意気……、気に入ったァ! その願い……、叶えてやろう!」
都市伝説がムムムッと表情を険しくさせ、『えいや!』と狼煙に気合を入れる。
その途端、狼煙は何となく文才を手に入れ、次々とアイデアが浮かんできた。
「……と言うか、お前ら、もっと動揺しろっ! 体中に卑猥な絵が描かれているんだぞ!?」
都市伝説が信じられない様子で、狼煙達に問いかけた。
「そもそも卑猥だと思う人のおつむが卑猥なのですわ、コレとか単なるアートでしょうどう見ても!」
雪緒があえてヤバイ絵馬を指さし、都市伝説にキッパリ!
「お、お前ら……、正気か!?」
都市伝説が唖然とした。
だが、雪緒はまったく気にしておらず、まるで他人事のようにサウンドシャッターを発動させる。
「さぁ、鮮血の結末を」
それに合わせて、一羽が眼鏡を外してスレイヤーカードを解除し、殺界形成を発動させた。
●神主の亡霊
「暑いー。絵馬作りすぎて地味に重いし、着込みすぎた暑いー」
そんな中、六玖が全身汗だくになりながら、青ざめた表情を浮かべた。
あまりにも暑過ぎて、既に戦闘どころではなくなっている。
「こうなったら、お前達の身体中に、痛絵馬の絵柄を浮かび上がらせてやる!」
都市伝説が殺気立った様子で、痛絵馬の絵柄を浮かび上がらせた。
「……所詮は絵だ」
一羽がまったく動じず、都市伝説に黒死斬を放つ。
「ば、馬鹿なっ! あり得ないっ!」
それでも、都市伝説は信じられない様子で、グッと唇を噛み締めた。
「……では、色に因んだ話でも……」
雪緒も七不思議奇譚を使い、色を生業にする女が恋をした話を語る。
その間も都市伝説が卑猥な絵柄を、雪緒達の身体に浮かび上がらせていたが、動揺する者はひとりもいなかった。
「それを幼女の身体に浮かばせますか。とんだ変態ですこと!」
雪緒が嫌悪感をあらわにした。
「な、なんだとォ! 俺は変態じゃない!」
都市伝説が顔を真っ赤にして怒る。
「いや、変態だ。しかも、ただの変態じゃない、ド変態だ!」
六玖がキッパリと断言をする。
絵馬を描いてる内にエロからカップルだとかリア充だとか連想し始めて、機嫌が悪くなっていたためか、都市伝説に対して八つ当たり。
しかも、ゴーストスケッチを使い、都市伝説の顔に落書きをした。
「な、何故だァ!」
都市伝説が納得のいかない様子で叫ぶ。
「お主には分かるか!? 俺達がなぜこうも戦えるかを! それは【愛】だからだ……」
バールが戦神降臨を使い、都市伝説に言い放つ。
「あ、愛だと……!? 馬鹿な! あり得ん」
都市伝説が納得のいかない様子で吐き捨てた。
確かに、今まで襲った相手も、作品に対する愛を口にしていたが、それを認めてしまうと、自分がしてきた事をすべて否定するものである。
「そう時間をかけるのも惜しいからな。……さっさと片付けさせてもらうぞ」
次の瞬間、翼が七不思議奇譚を使い、鴉の群れを召喚して都市伝説を襲わせた。
「ぐがっ、ぐがああああああああああああああ!」
都市伝説が鴉の群れに襲われ、狂ったように悲鳴を上げる。
そのまま地面に突っ伏すと、溶けるようにして消滅した。
「少しだけ、掃除していきましょうか。 なんというか……気の毒な話ですし」
彩歌が苦笑いを浮かべる。
おそらく、都市伝説にとっては予想外の結果。
都市伝説としては、身体に浮かんだ卑猥な絵柄を目の当たりにしてパニックに陥る彩歌達の姿を見たかったようだが、みんな反応が薄かったため、かなりショックを受けていたようだ。
「そうですね。都市伝説が倒された事で、身体に浮かんでいた絵柄も消えたようですし」
狼煙がコクンと頷き、テキパキと掃除をし始める。
「ああ、私のブロディ様が……」
そんな中、凛子が魂の抜けた表情を浮かべて、明後日の方向を眺めていた。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年4月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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