かりゆし殺戮マーケット

    作者:湊ゆうき

     多くの観光客や修学旅行生などで賑わう、沖縄県・国際通り。
     沖縄そばや海ぶどう、スパムにサーターアンダギーなど、沖縄食材や食品が並ぶ沖縄物産の店にも多くの客が訪れていた。
    「人間の笑顔って気持ち悪いよね」
     通りを行き交う人々の顔に浮かぶ笑顔を見つめながら呟いたのは、年の頃は大学生ぐらいの男。
    「そ、そうか……? 美味しいものを食べれば笑顔になるのは当然だから、悪いとは思わないが……」
     その隣に立つのは、頭がシークヮーサーの形をした沖縄のご当地怪人。シークヮーサーを使った料理で世界征服を企み、活動していたところ、この男――スマイルイーターと出会った。
    「料理で笑顔にしたいなんて全く理解できないね。……まあ、笑顔にしたところで全て殺してくれるならいいけど?」
     シークヮーサー怪人としては、シークヮーサーを使った料理を広めるために、料理を食べた人に喜んでもらえれば世界征服に近づけるというのに、それを殺せと言われるのは本来は納得いかない。だが、近くにいるだけでこのスマイルイーターがどれほど恐ろしい存在なのかをひしひしと感じるので、逆らうこともできない。
    「じゃあ、そこの店にいる気持ち悪い人間達を皆殺しにしてきてくれる?」
     スマイルイーターが指し示したのは、目の前の沖縄物産の店。
    「シークヮーサーの普及活動がしたいならしてもいいよ。……せっかくしたところで、みんな死ぬんだけど」
     スマイルイーターの言葉にシークヮーサー怪人は無言で頷き、手にしていた大鎌をぎゅっと握りしめた。
     数分後――店内は血の海と化した。
     
    「みんな、集まってくれてありがとう」
     橘・創良(高校生エクスブレイン・dn0219)は、全員に優しく微笑みかけながら説明を始めた。
    「軍艦島の戦いの後、HKT六六六に動きがあったのは、もうみんなも知ってると思うけど……」
     ゴッドセブンと呼ばれる有力なダークネスが地方に派遣されて、勢力を拡大しようとしていると創良は説明した。
    「沖縄では、KSD六六六が仲間に引き入れたダークネスと共に、那覇市の国際通り周辺で一般人を虐殺する事件を起こしていると聞きましたが、まさか……?」
     沖縄のご当地ヒーローである奏川・狛(獅子狛楽士シサリウム・d23567)が故郷での卑劣な事件に眉をひそめる。
    「うん、今回狛さんからの報告を受けて、シークヮーサー怪人が活動していないかと思っていたら、ゴッドセブンのナンバー5、スマイルイーターと共に事件を起こすことが予知できたんだ」
     ありがとう、と創良は言葉を添えるが、その表情はいつもより暗い。
    「スマイルイーターは、楽しそうな笑顔の一般人を配下のダークネスを使って虐殺しようとしている……これを阻止するため、みんなには急いで沖縄に向かって欲しいんだ」
    「沖縄でそんな暴挙……許しておけません」
     狛も拳を握りしめ、強い怒りを露わにした。
    「うん、でも今回スマイルイーターの灼滅は我慢して欲しい。スマイルイーターは、沖縄の各地に爆弾を仕掛けていて、自分が灼滅されたら大きな被害が出るように仕組んでいるから……悔しいけど、今は一般人の安全を優先して欲しいんだ」
     戦闘になれば、スマイルイーター自身は戦闘に加わらず、シークヮーサー怪人を戦わせるので、一般人を逃がしつつ、シークヮーサー怪人の灼滅をするようにしてほしいと創良は説明した。
    「接触できるタイミングは、二人が沖縄物産店に踏み込んだあと。1階は物販のお店になっているけど、2階はレストランになっていて、シークヮーサー怪人は2階でシークヮーサージュースを振る舞ったあと、店内の客に攻撃を仕掛けるよ。ジュースを振る舞う前に介入してもいいけど、ジュースを提供している時に介入すると、少し隙ができるかな。二人が店に入る前にお客さんを逃がそうとすると、感づかれてしまうので気をつけて」
     ただし、先に店に入って客の振りをして待ち伏せをしておくことは大丈夫だと創良は付け足した。
     2階のレストランには、客が15名と店員が5名。1階にも数名の客と店員がいるが、2階から避難する人を見れば無理にやってくることはないだろう。
    「シークヮーサー怪人は、ご当地ヒーローのサイキックと、咎人の大鎌に似たサイキックを使ってくるよ。シークヮーサー怪人自体はお客さんへの攻撃は本望ではないみたいだけど、スマイルイーターの配下になった今、お客さんの命を本気で奪ってくるから充分注意してね」
     創良の顔からもいつの間にか笑みが消えていた。
    「スマイルイーターのような卑劣なダークネスは許せないと思うけど……まずは一般人への被害を防ぐことを第一に考えてほしいんだ。大変な戦いになると思うけど……どうか、みんな無事で帰ってきてね」


    参加者
    北斎院・既濁(彷徨い人・d04036)
    小沢・真理(ソウルボードガール・d11301)
    桐ヶ谷・十重(赤い本・d13274)
    幸宮・新(二律背反のリビングデッド・d17469)
    一色・紅染(料峭たる異風・d21025)
    奏川・狛(獅子狛楽士シサリウム・d23567)
    モカ・フラージュ(ほんわかにあわわさん・d25212)
    七識・蓮花(人間失格・d30311)

    ■リプレイ

    ●国際通りに潜む悪
     国際通り――観光客で人通りが絶えないこの通りは、買い物や食事を楽しむ人々の笑顔であふれている。その笑顔を奪おうとするスマイルイーターによって起こされる事件を食い止めるため、灼滅者達は沖縄の地へと降り立った。
    「去年、修学旅行で来ましたがやっぱりいいですねー開放的で」
     モカ・フラージュ(ほんわかにあわわさん・d25212)は楽しかった思い出を振り返りつつ、南国らしい日差しの強い太陽を眩しそうに見上げた。
    「このような形で沖縄に来ることになるのは複雑です……それに、宿敵とはいえ、望まぬ殺戮を強要されていると知ると……」
     沖縄のご当地ヒーローである奏川・狛(獅子狛楽士シサリウム・d23567)は、スマイルイーターの配下となったシークヮーサー怪人を灼滅せざるをえないことにも複雑な心境だった。
    「現状無害な怪人を殺すのは気が進まないけど……僕達に開放する力はない」
     幸宮・新(二律背反のリビングデッド・d17469)の言うとおり、できることならスマイルイーターを倒したいというのが皆の気持ちでもあるが、沖縄各地に爆弾をしかけられているというので、そうもいかない。
    「爆弾、ハッタリかは知らんが、国際通りばっかに出るのはどーにも怪しい気がするがね」
     辺りを注意深く観察しながら北斎院・既濁(彷徨い人・d04036)は言う。スマイルイーターがここを離れられない理由があるのではないかと考えているのだ。
    「シークヮーサー怪人はお気の毒です。しかし、同情もしてはいられません。スマイルイーターを殺すことでたむけとしましょう」
     今はまだ、そのときではないにしろ、近いうちに必ず……そう七識・蓮花(人間失格・d30311)は決意を込めて宣言した。
    「……無理矢理、こんなこと、やらせる、なんて、ひどい。被害が、出るなら……僕達、も、対処、せざるを、得ない、から……」
     一色・紅染(料峭たる異風・d21025)も、スマイルイーターの非道な仕打ちに憤っているのだろう。表情には乏しい紅染だが、その言葉からやるせなさが感じられた。
     予知に従い、八人は沖縄物産店の2階のレストランで待ち伏せをすることにした。店内はこれから惨劇が起こるとは全く思えないような、笑顔あふれるのどかな様子だった。
     怪しまれない程度に何人かに分かれて席に着き、そのときを待つ。
    「スマイルイーターと相見えるのは二度目。その顔は憶えていますよ」
     桐ヶ谷・十重(赤い本・d13274)は前回しっかり記憶したその顔が現れるのを待つ。
     ほどなくして、シークヮーサー怪人とスマイルイーターが2階のレストランにやって来た。シークヮーサー怪人の手にはジュースの入った大きなピッチャーが握られていた。

    ●殺戮の阻止
    「シークヮーサージュースはいかがかな? 爽やかな酸味が美味しく、美容や健康にもいい。サービスなので是非飲んでいってくれ」
     スマイルイーターは怪人から離れた隅の方で壁に背を預け、怪人の様子を伺っていた。それを怪しまれないように目で追いながら既濁が一般人を装い呟く。
    「へえ、よく出来た着ぐるみだなー」
    「シークヮーサーのゆるキャラですかあ。とってもかわいいですねー」
     モカも観光客を装いバカっ娘を演じる。
     シークヮーサー怪人がジュースを振るまいはじめると、小沢・真理(ソウルボードガール・d11301)は席を立ち、怪人のそばにジュースをもらいに行く。さりげなく数人で怪人を囲い込むように立ち、一般人への被害を出にくい状況を作り出す。
    「ジュース美味しいね」
     ジュースを口にし、笑顔になった真理の心からの賛辞に、怪人は嬉しそうに何度も頷く。
    「その言葉が最後にもらえれば……」
     怪人がそう呟き、何かを決意したような様子を見て、攻撃に転じると予測した灼滅者達は介入を開始する。
    「転身っ!」
     狛がスレイヤーカードの封印を解除し、沖縄のシーサーのご当地怪人「シサリウム」の姿になる。そしてシークヮーサーの皮とみまごう帯でマントアーマーを形成、守備を固める。
     それが合図のように、皆が一斉に足止めと避難誘導を開始する。
    「なっ! シークヮーサーだと? お前達は……!?」
    「……灼滅者か。また邪魔しに来たのか」
     驚くシークヮーサー怪人とは対照的に、スマイルイーターはまたかとばかりにつまらなそうに呟いた。
    「誘導に従って避難して下さい! … …ここにいたら、死にますよ!」
     新が割り込みヴォイスを使用し、ざわつくフロアにしっかりと声を届け、一般人の避難を促す。
    「皆様はお守りしますゆえ、落ち着いて迅速に行動してください」
     スタイリッシュモードを使用した十重が2階から1階へ続く出入り口前に陣取り、目印になると共に、安心感を与える役目を請け負う。
     モカはプラチナチケットを使用し、店員に扮して注意と誘導を促す。紅染は王者の風を使用し、事態に混乱している客を順次避難するよう命令する。
    「店から、出て、避難、して」
     人々が慌てて逃げ出す間、真理は怪人をロケットハンマーで殴りつけ、一般人に被害が及ばないよう少しでも敵の攻撃を当たりにくくする。ライドキャリバーのヘルツシュプルングは車体を盾にし、一般人を攻撃から守る。
    「早く殺さないと。みんな逃げちゃうけど?」
     戦闘が始まったところで傍観を決め込んでいるスマイルイーターの言葉に、はっとしたようにシークヮーサー怪人は逃げ惑う人々を見やる。禍々しい大鎌を握り直すと、鎌に宿った負の力が黒き波動へと変わり、人々に襲いかかる。
     怪人の攻撃が一般人にいかないように気を配っていた狛が身を挺して庇う。
    「望まぬ殺戮を強要されてる貴方を……手に掛けざる得ないなんて。ごめんなさい……せめて怨みと想いは……引き継ぐグース……!」
     怪人が攻撃したあとの隙を狙い、既濁が死角から斬撃を放ち、足取りを鈍らせる。だが、その鋭い視線は未だ動かないスマイルイーターに向けられていた。
    「食わず嫌いの変質者クン。大好きな笑顔は食えたかい? 最も、そう簡単にゃ食わせねぇけどよ」
    「怪人さん覚悟!! 皆さんは早く避難して下さい」
     モカが封縛糸で動きを鈍らせ、あと少しの避難を急ぎ完了させようとする。
     ラブフェロモンを使用した蓮花も順調に避難を進めていく。普段は無表情な蓮花だが、安心させるように穏やかな表情で事に当たる。避難を進めながらも、蓮花は怪人とスマイルイーターの動きに常に気を配っていた。
     一般人に大きな被害を出さずに無事避難を完了させると、真理がサウンドシャッターを、狛が殺界形成を使用し、戦闘態勢を調える。
    「さあ、遊ぼうか」
     蓮花がそう言いながら、武器を構える。
     第2ラウンドが始まった。

    ●支配と信条
    「あーあ、結局逃げられちゃったじゃないか。まあでも挽回の機会はあるよね、目の前に」
     スマイルイーターがシークヮーサー怪人に囁く。つまりは、目の前の灼滅者達を殺せと言っているのだ。
    「くっ……全てはシークヮーサーによる世界征服のために……!」
     怪人は大鎌を振りかざし、虚空に無数の刃を召喚させると一斉に解き放った。
    「あいつが強くても必ず倒すよ。こうなった今、あなたとは戦うしかないけど、あいつも道連れにと思うなら、私たちにスマイルイーターのことを教えて」
     真理は攻撃を受け止めながら、シークヮーサー怪人にそう訴えかける。
     ダークネスがより強いダークネスに支配されて信条に反する事をさせられているだけだというのに、不思議と切なさを感じるのだった。真理がシークヮーサージュースを美味しいと言った時、怪人が喜んだように思えたからだろうか。
     だが、シークヮーサー怪人は何も応えない。いや、応えられないのかもしれない。
    「……スマイルイーターに比べたら、自分で思うさま殺す普通の六六六人衆の方がまだ善良だね。君をあいつの手から解放できれば一番よかったんだけど、僕にそんな力はないんだ」
     本当に倒したい存在が別にいるというのに、そうできない現実に新も悔しさを押し殺して腕に装着した殺人注射器『鬼ノ爪』を怪人に突き刺す。
    「笑顔が気持ち悪い? それでどうしようっていうんだ。人は殺せばどうせ一緒だ。何も変わらんよ、笑顔だろうが何だろうが」
     既濁が今までこのナイフで手にかけてきたモノ達の呪いを毒の風に変え、怪人に解き放つ。――殺意だけはスマイルイーターに向けながら。
    「長いものに巻かれることを悪いとは言いませんが、それであれば、納得出来ないことに従った結果がどうなるか……どんな形であれ貴方は選んだのですから因果を受けて頂きましょう」
     怪人に同情するところがないではないが、十重は毅然とした態度でそう告げると、構えた槍から冷気のつららを生み出し、撃ち出す。スマイルイーターの行いを二度も目の当たりにした経験からも、これからも同じことが起こることが予想される。いちいち同情してばかりでは何の解決にもならないと悟ったのだ。
    「そうだ。これは自分で選んだ道……ならばシークヮーサーに誓って、恥じない闘いをしよう!」
    「沖縄のご当地ヒーローとして、貴方の生き様を決して忘れないグース……!」
     ポジションをスナイパーに変えた狛が、そっと呟く。
     望まぬ闘いだとしても、スマイルイーターの配下となった怪人を放置してはおけない。紅染はダイダロスベルトから帯を射出し、怪人の身体を貫く。真理は流星の煌めきと重力を宿した跳び蹴りで、怪人の足止めを図る。そのタイミングでヘルツシュプルングが機銃掃射で追い打ちをかける。
     モカは殲術執刀法で急所に斬撃を繰り出すが、これは上手くかわされてしまう。
    「くぅっ! やっぱり矜持に反していても怪人は強いですね!」
     スマイルイーターがそれでも動かないことを確認しつつ、蓮花はどす黒い殺気を放出し、怪人を覆い尽くす。
     客のいないレストランで、しばらく激しい攻防が続く。
    「みなさん、大丈夫ですか?」
     声を掛け合い、十重は優しき風を招いて味方を回復させる。
    「スマイルイーター、てめぇが嫌いな笑顔で最後まで笑って戦ってやろうじゃないか」
     多少消耗したものの、新が好戦的な笑みを貼り付けつつ異形巨大化させた腕で怪人を殴りつける。蓮花は妖の槍に螺旋の如き捻りを加えて突き出し、敵を穿つ。
    「うぬう……まだまだ……!」
     シークヮーサー怪人は渾身の力でシークヮーサーキックを放つ。攻撃を受けたモカはすぐさまドーピングニトロで回復を図る。
     紅染が螺旋の捻りを加えて突き出したのは狐の尻尾に見える武器。ふわふわとしているが凄まじい怨念に塗れており高い攻撃力を発揮している。
    「……ごめん、ね。また、いつか、美味しい、シークヮーサー、ジュース、飲ませて、ね」
    「ああ、美味かった」
     助走をつけ、ローラーダッシュの摩擦を利用して炎を纏った蹴りを怪人に見舞いながら既濁。
     真理は影を宿した攻撃で、怪人の精神に潜むトラウマを引きずり出す。
    「どんなトラウマが見えているのかな……あなたを追い込んだスマイルイーター、絶対灼滅するよ」
    「怨みと想いは……わたくしたちが引き継ぐグース」
     すっかり疲弊したシークヮーサー怪人の急所を見いだした狛は、指先から伸びる島唐辛子の爪で怪人の身体を切り裂いた。
    「ジュース、おいしかったよ。 ……君が征服する世界なら、見てみたかったかもしれない!」
     新の声が耳に届いたのか否か。
     倒れ、くずおれていく怪人の顔が心なし安堵しているかのように見えたのは、灼滅者達の気のせいだったのだろうか。

    ●卑劣な笑み喰らい
    「ほんとに邪魔ばっかりしてくれるよね」
     スマイルイーターは倒れたシークヮーサー怪人に一瞥をくれることもなくつまらなさそうに言った。
    「どうせ逃げるのでしょう?」
     十重が挑戦的に問えば、スマイルイーターが逆に問い返す。
    「どうせ殺せないんだろう?」
    「爆弾をしかけてそれを盾にしているんでしたね」
     モカは卑怯者と言わんばかりに鋭い言葉を投げかける。
    「一般人をたくさん殺したいならそうすればいいよ。今までもできなかったんだから、できないだろうけど」
     あざ笑うかのような言葉を残し、スマイルイーターは窓から逃走した。
    「爆弾がハッタリかわからん以上、動けないのは歯がゆいな」
    「早く、爆弾、見つけ、ないと……」
     既濁の言葉に紅染も頷く。
    「スマイルイーター、絶対灼滅するよ」
    「それが、シークヮーサー怪人さんのたむけになるのなら……」
     真理は更に強い決意を持ってそう宣言する。狛も儚く散った怪人を偲びながら頷く。
     全員がしんみりしていると、甲高い悲鳴が聞こえた。急いで店の外に出ると、修学旅行生と思しき少女が首から血を流して倒れていた。
    「今、さっきまで美味しいねって笑いながらアイス食べてたのに……」
     そばにいた少女が血まみれの友人を力なく支えている。
    「……どこまで外道なんだよ……」
     怒りを通り越した新の呟きがむなしく響く。
    「ん? 待て、まだ息があるぞ。急げば間に合う! 早く救急車を!」
     通行人の一人がそう叫び、応急処置を行っている。おそらく、医者か何かなのだろう。
     ほっとしたのも束の間。灼滅者達にあるのはスマイルイーターへの怒りだけだった。
    「とりあえず学園に戻って報告しよう。情報は少しでも多い方がいいだろうから」
     蓮花の言葉で怒りに固まっていた皆がようやく歩き出すことができた。
     悔しさと怒りで、スマイルイーターの望む通り笑顔を一時的に失った灼滅者達は、学園に戻り、爆弾の在処がわかったと知るのだった。

    作者:湊ゆうき 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年4月24日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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