笑う巨乳、泣く貧乳

     杠・狐狗狸子(銀の刃の背に乗って・d28066)は、こんな噂を耳にした。
     『貧乳を鼻で笑う都市伝説がいる』と……。
     この都市伝説はモデル体型の上に巨乳で、胸元を強調するようにしてぽよんぽよんと揺らしながら、繁華街を歩いているようである。
     それを見た男達が鼻の下を伸ばして後をついて行っているらしく、百鬼夜行のような行列が出来ているようだ。
     しかも、貧乳の女性を見ると、一斉に鼻で笑うらしく、そのダメージもケタ外れ。
     そんな貧乳の女性に追い打ちをかけるようにして、まわりを囲んで『貧乳、貧乳!』と囃し立てるようである。
     そう言った意味で、都市伝説は存在してはならない存在。
     都市伝説は胸を使った攻撃を得意にしているようだが、それさえ気を付けておけば、苦戦する事はない。
     その事も踏まえた上で、都市伝説を倒す事が今回の目的である。


    参加者
    アルヴァレス・シュヴァイツァー(蒼の守護騎士・d02160)
    前田・光明(高校生神薙使い・d03420)
    清水・式(愛を止めないで・d13169)
    御剣・譲治(デモニックストレンジャー・d16808)
    星野・未来(仕組まれた運命・d26796)
    樹雨・幽(守銭奴・d27969)
    杠・狐狗狸子(銀の刃の背に乗って・d28066)
    朝臣・姫華(姫番長・d30695)

    ■リプレイ

    ●平らな胸
    「……この都市伝説、いくらなんでも血も涙も無さ過たぎない?」
     杠・狐狗狸子(銀の刃の背に乗って・d28066)は魂の抜けた表情を浮かべながら、仲間達と共に都市伝説が繁華街された場所に向かっていた。
     都市伝説はモデル体型の巨乳美女で、貧乳女性を見つけると鼻で笑って、馬鹿にしているようである。
     そのため、貧乳女性とトラブルが絶えず、場合によっては殴り合いの喧嘩になる事もあるようだ。
     しかも、都市伝説の後ろには百鬼夜行の如く、鼻の下を伸ばした男達がついてきており、一緒になって『貧乳、貧乳!』と囃し立てるようである。
    「まあ、胸に惹かれるのは男の性だしな。ある意味、仕方ねーわな」
     樹雨・幽(守銭奴・d27969)が、ある程度の理解を示す。
     そもそも、こういった都市伝説が生まれたのは、噂として広まったためである。
     つまり、こういった女性を望む者がそれだけ存在しており、都市伝説として生み出された事を意味していた。
    「その点、妾は大人になれば、ぼんっ、きゅっ、ぼんになる訳じゃから、さほど気にしておらぬが……お主らには……辛い戦いになりそうじゃのう……」
     朝臣・姫華(姫番長・d30695)が、仲間達に視線を送る。
     その途端、突き刺すような視線を向けられたため、姫華が思わず仰け反った。
     まるで底なし沼にハマった亡者の如く無数の手が伸び、姫華を貧乳の世界に引きずり込むほどに強烈な視線。
     間一髪でその呪縛から逃れる事が出来たものの、あのまま逃げる事が出来なければ、どうなっていたのか分からないほどの恐怖を覚えた。
    「ええと……胸の大きさって、そんなにコンプレックスになるものなんでしょうか? 僕は男ですし、ユエファが居るので……大小は特に気にならないんですよね。男性も女性も気にされる方多いですけど……人それぞれなんだから良いんじゃないんでしょうか? ……と思うのは僕だけでしょうか? まあ、無いとは思いますが……ユエファのこと笑ったりしたら、灼滅よりも……」
     アルヴァレス・シュヴァイツァー(蒼の守護騎士・d02160)が、言葉に詰まる。
     おそらく、女性達も同じ気持ちでいるのだろう。
     そう言った意味で、都市伝説を倒さなければならない必然性を、何となく理解する事が出来た。
    「胸が大きい、小さい。これはひとつの特徴としてみるべきなのではないかと思う。どちらが良い、というものではないはずだ……というのは、やはり建前だよなぁ。手術や矯正下着で大きくしたいという事はあっても、大きくて嫌だから小さくしたいという女性はいない気がするし……。ちなみに男の場合、多数派でなくとも貧乳派も確実に存在するんだが……というか、そんな単純には分けられんよな」
     前田・光明(高校生神薙使い・d03420)が、険しい表情を浮かべる。
     光明はここ2年ほど、乳より尻派(大きい)寄りで、胸に関しては熟女垂れ貧がマイブームであった。
     最近は少し落ち着いてきたものの、胸がどうこうと言うよりも、熟女が最高と言うのが本音であった。
    「まあ、あれだよね。女性の胸が好きな男性って、最低。女性の本質は、あんな脂肪の塊じゃなくて、その人の志だと思うんだ。だから、胸が好きな人の気持ちがよくわからないな」
     清水・式(愛を止めないで・d13169)が女装姿で、自らの考えを述べる。
     そう言った意味でも、都市伝説を倒さねばならない。
     これ以上、悲しむ女性達を増やさないためにも……!
    「こういうのって、女性ばっかり可哀想な目にあってる。男は普段見えないから。でも大丈夫。俺にいい考えがある。とりあえず、繁華街で都市伝説を探そう。多分すぐ見つかるはず」
     御剣・譲治(デモニックストレンジャー・d16808)が大胆な水着姿で、誰かに気づく。
     その視線の先にいたのは、単身囮となって先行していた星野・未来(仕組まれた運命・d26796)が、男達に囲まれ言葉責めにあっている姿であった。

    ●揺れるモノ
    「やーい、貧乳、貧乳!」
     男達は未来のまわりを囲み、小馬鹿にした様子で飛び跳ねていた。
     姫華も釣られて『ぺったんこ、ぺったんこ』と楽しそうに踊っている。
    「おーっほっほっほっ、イイザマね。胸が小さい癖に、堂々と道の真ん中を歩くから悪いのよっ! 貧乳は道の隅だけ歩きなさい!」
     都市伝説はその光景を満足げに眺め、大きな胸を揺らして高笑いを響かせた。
    「私だって努力したんだああああああ! 大きい胸がなんだってんだああああああああ! ……と言うか、鼻で笑うしか脳がないの!? その豊かな胸に育てる方法を広めれば、みんな幸せになれるのに!」
     未来が涙を流して叫び声を響かせた。
     男達も『ぺったんこ、ぺったんこ』と囃し立て、未来のまわりを跳ね回る。
    「……滅びろ、世界」
     狐狗狸子がこめかみを激しくピクつかせ、恨めしそうに都市伝説達を睨む。
     それに気づいた男達が、今度は狐狗狸子のまわりでぺったんこ。
    「貧乳! 貧乳! 狐狗狸子のまな板! 貧乳! 貧乳!」
     その間も姫華が男達と一緒に、狐狗狸子のまわりを飛び跳ねた。
     これには狐狗狸子もイラッと来たのか、鋭く尖った視線を送る。
    「わ、妾が大きい胸になっても、ずっと仲良しじゃぞ……?」
     姫華が態度を一変させ、ダラダラと汗を流す。
     まるで喉元に鋭い刃物を当てられているような感覚。
     その状態で背中をザクザクと刺されているような気持ちになった。
    「なるほどな。……戦闘力の差は大きそうだ」
     幽が都市伝説と仲間達を見比べ、自分なりに納得する。
    「貧乳には貧乳の、巨乳には巨乳の良さがあるというのに……」
     姫華が狐狗狸子をチラ見しつつ、小さくコホンと咳をした。
     それでも、狐狗狸子の機嫌は治らず、姫華達の背中をザクザク。
    「胸なんて、女性の価値になりませんよ……というか、脂肪の塊でしょ。……と言うか、あれだよ。お腹の脂肪に興奮するのと同じ」
     式も嫌悪感をあらわにして、都市伝説を非難。
    「あーら、それって嫉妬? 羨まし過ぎて、本当は悔しいんでしょ! あまりにも胸がなさ過ぎて!」
     都市伝説が鼻で笑う。
    「貧乳で当たり前ですよ……というか、胸があった方が問題です」
     式がキッパリと言い放つ。
    「あらあら、そんな事を言っても無駄よ、今更ね」
     都市伝説が小馬鹿にした様子でクスクスと笑う。
     どうやら、式を勝手に女の子だと思い込んでいるらしく、何を言っても自分の考えを曲げようとしなかった。
    「まさか、今と同じように熟女も……」
     光明が都市伝説をジロリと睨む。
    「だったら、どうなの? アタシを殺す」
     都市伝説が含みのある笑みを浮かべる。
     おそらく、貧乳であれば年齢に関係なく、からかっていたのだろう。
    「もちろん、この場で灼滅する」
     光明が何の躊躇いもなく、スレイヤーカードを解除した。
    「おい、こら! 彼女を傷つけるつもりなら、俺達が黙っちゃいねーぞ」
     途端に男達が殺気立つ。
    「……ちょっと来い!」
     すぐさま、譲治がクールな表情を浮かべて、ラブフェロモンを使う。
     その影響で男達が瞳にハートマークを浮かべ、譲治に言われるがまま物陰までついていく。
     それからしばらくして、男達の野太い悲鳴が辺りに響き、譲治がスッキリとした表情を浮かべて戻ってきた。
    「う、嘘!? 一体、何があったの!?」
     都市伝説が驚いた様子で声を上げる。
     だが……、既に逃げ道はない。
    「女性型……と言うのは戦い辛い物ですね……まあ灼滅しますが……」
     アルヴァレスが複雑な気持ちになりつつ、都市伝説に螺穿槍を仕掛ける。
     それに気づいた都市伝説が大きな胸を揺らして、アルヴァレスの攻撃を何とか避けるのだった。

    ●大は小を
    「おーっほっほっ! やれるものなら、やってみなさい。それが出来るのならね」
     都市伝説がこれみよがしに胸を揺らす。
     それだけで狐狗狸子達はイラッとした。
    「早急に退治してしまいましょう。……女性陣の我慢が限界にならないうちに」
     アルヴァレスが仲間達に声をかけながら、警戒した様子で間合いを取る。
     ただでさえ、背後から殺気を感じるため、速めに決着をつけねば、自分達の身まで危うくなってしまう。
    「そんな事を言ってもいいの? あたしって色々な意味で、凄いわよぉん!」
     都市伝説がわざとらしく胸の谷間を作って、アルヴァレスにウインクした。
    「すみませんが、大きかろうと小さかろうと彼女以外目に入らないので」
     アルヴァレスが軽く流す。
     それでも、都市伝説はぼよんぼよんと胸を揺らして、自分の魅力を全面的にアピールした。
    「神夜……。こころなしか、怒ってる?」
     式が神夜(ビハインド)に視線を送る。
     気のせいか、神夜が殺気立っている、メラメラと。
    「……!」
     次の瞬間、神夜が都市伝説の胸を切り落とす勢いで迫っていった。
    「あらあら、随分と感情的になっているわねぇ。でも、無駄よ、無駄、無駄っ! それじゃ、動きが丸わかり」
     都市伝説がひょいっと後ろに飛んだ。
    「もう勘弁ならぬ!」
     それに合わせて、姫華が一気に距離を縮め、鬼神変を放って都市伝説の胸を抉り取った。
    「きゃああああああああああああああ、アタシの胸がァァァァァァァァァァァァ!」
     都市伝説が青ざめた表情を浮かべて悲鳴を上げる。
     自慢の胸を抉り取られた事で、頭の中がカラッポになった。
    「熟女を敵に回した時点で、お前の運命は決まっていた」
     光明が都市伝説に冷たい視線を送り、フォースブレイクを仕掛ける。
    「そ、そんな! あぎゃあああああああああああ!」
     そして、都市伝説が納得のいかない様子で消滅した。
    「お、終わった……」
     未来がホッとした様子で溜息をもらす。
     何とか都市伝説を倒す事が出来たものの、未来の慎ましい胸には虚しさしか残らなかった。
    「でも、心にポッカリと穴が……」
     狐狗狸子がその場に俯いて、ワンワンと泣き出した。
    「そ、そんな泣かんでも……。む、胸はないが、お主には妾がおるじゃろ? な、妾の家来になろう?」
     姫華が狐狗狸子の肩をぽふぽふと叩く。
    「まぁ、なんだ。てめぇにもきっと未来があるさ。…………いや、もうねぇか」
     幽も何となく狐狗狸子を慰め、小声でボソリ。
    「ひーめぇ、アンタ……一緒に煽ってきたわよねぇぇぇ? それとも、許してもらったつもりでいたの? 背が伸びなくなって、ついでに胸が育たない呪いをかけてやる!!!」
     その途端、狐狗狸子が姫華の首をガシッと掴み、そのままホールドを決め、拳の尖ったとこでつむじをグリグリ。
    「んじゃ、俺もこの辺でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
     幽も背中を向けたところで狐狗狸子に蹴られ、海老ぞり状態でブロック塀に激突した。
    「やれやれ、一難去って、また一難だな」
     譲治が苦笑いを浮かべて、男達と一緒に物陰から現れた。
     男達はすっかり譲治の虜。
     まるで借りてきたニャンコの如く、譲治にゴロニャンである。
    「あ、あの、アイスでも奢りましょうか! ほら疲れた時には甘いものが効くといいますし!! ……コクリコ先輩は3段のヤツ頼んでもいいですよ?」
     そう言ってアルヴァレスが、女性陣に対して精一杯のフォローをするのであった。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年4月13日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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