デュエル・スタート!

    作者:るう

    ●繁華街の一角
     失意の少年は、繁華街をさまよっていた。
     学校では無敵を誇ったトレーディングカードゲーム。だが彼は、新学期に現れた転校生にあっさりとやられてしまったのだ。
     そんな彼に声をかける、黒ローブの女がいた。
    「そんなカビの生えたようなゲームで負けたから、何だと言うのです。ここに、私たちの開発した新作カードゲームがあります。あなたはその第一人者となり、彼を見返せばよいのです……いいえ、そのようにする『義務』があります」

    ●武蔵坂学園、教室
    「謎のカードゲームを配り人々を強化一般人にしている、ソロモンの教団が現れた!」
     神崎・ヤマト(高校生エクスブレイン・dn0002)の未来予測によると、強化一般人たちはカードの能力を反映したサイキックを使い、対戦と称して他人を傷つける。しかも彼らはその事に疑問を抱くどころか、血塗れた勝利を尊びさえするのだ!
    「まずはカードを持つ配下を倒して正気に戻し、その後、配下の異変に気付いて現れる布教役の女を灼滅してくれ!」

     事件が起こるのは、とある繁華街。現地に行けば、明らかに禍々しいカードを持った配下がちらほらといるのにすぐに気付くはずだ。
    「彼らが何人いるかは不明だが、三人も倒せば怒った教祖の女が現れる! 配下の強さはお前たちとほぼ同等なので、二人……安全を期すとしても三人でかかれば、女との戦闘で困る事はないだろう!」
    「もし人手が欲しければ、私も手伝うね」
     姶良・幽花(中学生シャドウハンター・dn0128)も協力するので、強化一般人が増えすぎないうちに女を誘い出して灼滅して欲しいとヤマトは言う。

     こうして女さえ灼滅すれば、倒せなかった配下もじきに普通の一般人に戻る。もちろん、カードにも何かの力が残る事はない。だが、それまでに彼らが事件を起こす可能性を少しでも減らすためには、繁華街中をしらみ潰しに探し、配下を倒しておくのも有効だ。
    「敵は、カードを引くまでどんな攻撃をしてくるか判らない、厄介な相手だ! が、お前たちならそんな事は関係なしに、邪悪な陰謀を叩き潰してくれる……そう俺は信じている!」


    参加者
    四天王寺・大和(聖霊至帝サーカイザー・d03600)
    銃沢・翼冷(深淵覗くアステルバイオレット・d10746)
    片桐・公平(二丁流殺人鬼・d12525)
    十文字・天牙(普通のイケメンプロデューサー・d15383)
    山田・透流(自称雷神の生まれ変わり・d17836)
    儀冶府・蘭(正統なるマレフェキア・d25120)
    壱風・アリア(光差す場所へ・d25976)
    不破・九朗(ムーンチャイルド・d31314)

    ■リプレイ

    ●ゲームセンターの戦い
     音と光が氾濫するゲームセンターの中を、少年はゆっくりと見て回っていた。
    「嘆かわしい。ここにいるのは皆、この素晴らしいTCGを知らない哀れな奴らばかりだ」
     その素晴らしさを、皆に伝えねばならない。少年はきっと、そう思ったに違いない。だから彼はカードを取り出し、その名を呼んだ。
    「出でよ……『魂狩りの咎人』」
     少年に憑くかのように現れた死神が、その鎌を掲げる。下らぬアーケードゲームなど……この世から全て取り除いてしまえ!
    「待ちなさい」
     その時カードを構えて現れた壱風・アリア(光差す場所へ・d25976)へと、少年は値踏みするような目を向けた。
    「ほう……どうやら話のわかる奴が来たようだ。だが、たった一人で俺のデッキに歯向かうつもりか?」
    「いいえ。もっと楽しませてあげるわ」
     指を鳴らすアリアの後ろには、山田・透流(自称雷神の生まれ変わり・d17836)、そして儀冶府・蘭(正統なるマレフェキア・d25120)の姿。いずれもやはり、手にカードの束を握っている。
    「一回勝負……アンティ・ルールでの対戦を申し込む!」
    「……アンティ・ルール?」
     実はTCGは初めての蘭が、自信満々に対戦宣言した透流の耳元でこっそり訊いた。
    「つまり、勝った方が負けた方からカードを奪える賭けゲームって事。でも今回の場合、賭けるのは自分の命になるのかな」
     透流の耳打ちに絶句する蘭。透流の、実際に殺すつもりはないけれど、という言葉も聞こえない。
     その間にも、敵はカードを灼滅者たちに向けた。
    「命か……面白い。ならいくぞ……デュエル!」
    「デュエル!」
     初手はアリア! 早速、ライドキャリバー『フリューゲル』を召喚し、二回攻撃を可能としてからのパンプアップ!
    「『偽りの黄金郷(エルドラード)』を発動。禁断の秘境に立ち込める黄金化の呪いが、相手を黄金郷の一部へと変えようとする……」
     透流がカードのフレーバーテキストを読み上げると、死神の動きが徐々に鈍った。
    「だが甘い……『漆黒の波動』!」
     少年のカードから闇がほとばしった。儀冶府さん、と呼びかけたアリアの声に、蘭は慌ててカードを引く!
    「え、えっと……『黒魔術の結界』! 場に出ている間は皆のライフを回復します!」
     こんな感じの事言いながら戦えば大丈夫かな、と夜霧を放った蘭が少年を見ると、どうやら彼は、彼女の言葉をすっかり受け入れていたようだ。
    「あのダメージの大半を打ち消されるとは……だが次はどうかな!」
    「次なんて、あるのかしら?」
     少年がその声に顔を上げると、彼のすぐ目の前にまで、アリアとフリューゲルが迫っていた。
    「私のデッキはビートダウン。次のターンになる前に、直接殴り倒してしまうわ」
    「私も……『雷神印の閃光弾』!」
    「『穿ち貫く魔力の光芒』!」
    「そんな……馬鹿な……!」
     死神ごと吹き飛ばされた少年は、壁に頭をぶつけて気絶する。その手から零れ落ちたカードには、最早何の力も宿っていなかった。

    ●カードショップの戦い
    「かかったな!!」
    「ぐわーっ!」
     その叫びを聞きつけた時、雑居ビルの狭い階段を登る四天王寺・大和(聖霊至帝サーカイザー・d03600)と片桐・公平(二丁流殺人鬼・d12525)の足は速まった。
     TCG愛好会の二人が見慣れたロゴの扉を潜ると、デュエルスペースの天井から、一人の少年が吊り下げられている。
     それをにやにやと見上げる若い男。手にしたカードは妖しく光り、男を吊る糸のようなものを吐き出している!
    「では、とどめだ……むっ!?」
     糸に巻き付き引き千切った影に、男は憎々しげに振り返った。闇のマントを背に広げ、暗黒の玉を抱いた影の巨人を足元の影から生み出していた公平は、それに気付くと大和に道を譲る。
    「ざっとこんなところでしょうかね、部長」
    「ああ、いつもながら完璧なサポや。お蔭で手遅れにならずに済んだ……さてお前。デュエルしろや」
     大和が腕を掲げてデッキを見せると、男は望むところとほくそ笑んだ。
    「果たして、この俺に勝てるかな? 何人来ようとも同じ事、全て返り討ちにして血祭りに上げてやる!」
    「そうか……なら行くで、このデッキのエースカード……!」
     大和がカードを掲げると同時、足元で光る魔法陣! 氷の力を宿して現れたライドキャリバー『カイザーサイクル』が、氷獣と化して男を襲う!
     だが男は動じない。
    「そこだ……トラップカード発動!」
     再び光る糸が伸び、氷獄の獣を絡め取る……かと思われた瞬間!
    「同じ手を二度も受けるとは、もう一度基本からやり直すべきではないでしょうかね」
     六芒星を描いた公平の影がその糸を捕らえると、男は氷獣に跳ね飛ばされ意識を失った。
     え? 一緒に来てたはずの姶良・幽花(中学生シャドウハンター・dn0128)はどうしてたかって?
     そりゃあなた、デュエリスト同士の戦いに口を挟むなんて野暮な事できるわけないじゃあないですか。

    ●路地裏の戦い
     一見賑やかな繁華街も、人目の届かぬ路地裏の空き地ともなれば、闇のデュエルにこの上なく都合の良い場所となる。
    「馬鹿な……カードの力を現実にできるなんて……」
     今、一つの戦いが終わった。闇のデュエリストの少年は倒れ臥した男を蔑んだ目で見下ろし、男の手に握られたカードをもぎ取ろうとする。
     だが少年は、突如聞こえてきた別の少年の声に、思わずカードを奪う手を止めた。
    「ゲームを楽しむのは悪い事じゃない……でもゲームというのは遊びであって、人を傷つけるためのものなんかじゃ、絶対にない」
     壁際に声の主、不破・九朗(ムーンチャイルド・d31314)の姿を見つけると、少年はにやりと口元を歪める。
    「そういうのは、デュエルでキミが勝ってから言って欲しいね」
    「デュエル? まったく君は、決闘を何だと思ってるんだい? 人を殴っていいのはハンムラビ法典に書いてある内容だけでだろうが」
     実に下らない、といった態度を少年に向けて、銃沢・翼冷(深淵覗くアステルバイオレット・d10746)は組んだ腕からちらりとカードを見せた。虐殺の対象が増えた――その時点では、少年はそう思っていたに違いない。
    「御託は結構だ。やるのか? やらないのか?」
    「答えは……『徹底的に乗ってやる』だぜ! 俺たちとデュエルだ!」
     室外機や雨どいの間を跳躍し、十文字・天牙(普通のイケメンプロデューサー・d15383)の炎の身体が飛び込んでゆく! 空中でデッキからカードを抜き取ると……迷わずそれを投げつける!
    「いくぜ、『聖天使ガブリエル』を召喚……デッキから『聖天使ウリエル』をサーチ&召喚してアタックだ!」
     天牙の蹴撃が少年に炸裂! だが、両手をクロスして受けた少年のカードからは……タールのような闇が滲み出た!
    「光は確かに闇に強い……だが闇もまた、光には強いんだ」
    「でもそれは、炎にはどうだい?」
     蠢く闇を、炎を纏った九朗がブロック。だが闇は追加効果を発動し、九朗に悪夢を植え付ける!
    「ははは、莫迦め!」
     だが少年の顔色は、すぐに変わった。
    「ちょっとちょっと、いくらなんでも甘いんじゃない? 戦略練ろうよもっとさ」
     翼冷の黒い立方体が伸び、闇を九朗から切り離したのだ。
    「じゃあ、後はお二人さんで片付けてね。俺ちっと疲れたわ……」
     翼冷、一つ欠伸をして舐めプ。少年は苛立ち憎悪するが……実際には彼に、そんな余裕は残されていない。
    「ここで、『FireWall』だよ」
     九朗の炎が広がって、天牙に、闇に抗う心の炎を灯す!
    「俺の『聖天使ラファエル』で、お前は永劫の眠りに閉ざされる事となる!」
     少年の再びの闇を弾き、九朗は闇のデュエリストに引導を渡した……その時だった。

    ●闇の教祖
     ぱち、ぱち、ぱち。
     路地裏に、乾いた拍手が鳴り響く。飽きて爪先で割れたアスファルトを掘り返していた翼冷も、思わずそちらに顔を向ける。
    「貴方たちですね? 私の計画を邪魔するのは」
     闇のカードと同じ気配を全身から放つ、黒ローブの女。それは僅かに除く口元を吊り上げると、袖から一つのカードケースを取り出した。
    「どうやら他にもお仲間はいるようですが……まあいいでしょう。まずは、貴方たちだけでも先に血祭りに上げるとしましょうか」
    「そんなゲームは辞めて貰おうか。臭い敵は元から断つ……ってね」
     反抗的な九朗の言葉に、女は勝利を確信して声色を変えた。
    「まさか貴方たち……お仲間もいないのに私に勝てるとお思いですか?」
     だが天牙は、そんな女にデッキを突きつける。
    「お前……TCGで一番大切な事って知ってるか?」
    「勝利。それ以外に何があると言うのです?」
     瞬間! 低いエンジン音が鳴り響き、教祖の背へと何かが迫り来る! 余裕の笑みを浮かべたまま、振り向きもせずにカードを後方へと掲げようとした彼女だが……その指先は重く変質し、思うようにカードを取り出せない!
    「ナイスサポート、儀冶府さん。お蔭でいつもよりよく効いた気がする」
     女が夜霧を纏った透流を振り返るよりも早く、カイザーサイクルは教祖を突き飛ばして着地する。そして、天牙たちを守る位置には別のライドキャリバーが……フリューゲルだ。
    「い……いつの間に!?」
     戸惑う教祖にカードを突きつけると、公平は言った。
    「TCGで最も大事なこと。それは『己と仲間(デッキ)を信じること』じゃないでしょうか……ありきたりですが、その楽しみを忘れたら辞め時じゃないんですかね?」
    「先に言われちまったぜ」
     天牙は頭を掻き、それからデッキに炎を纏う。
    「いくぜ……」
    「「「デュエル!」」」
     教祖を取り囲んだ灼滅者たちの声が、ビルの谷間で共鳴する!

    ●対決、トラウマデスデッキ
    「TCGを悪用するお前だけは許さん……! 今日ばかりはサーカイザーではなく、大和としてお前を倒す!」
     大和がカードを引き抜くと、激しく風が渦巻いた。今日の大和が纏うのは、堺ヒーローのサーカイザーのコスチュームではなく、翼状の剣を両手に構えた天使のイメージ!
    「真の偉大さの前には全てが平伏す! 食らえ、俺の剣……!」
    「そんなものが何だと言うのです! 出でよ、『神黄金竜ギガステラギャラクシー』!」
     金色に輝く鱗とブレス! アリアはそのまばゆさを直視せぬよう目を逸らしつつ、『運命の槍』を突き出した……が!
    「これで私の攻撃力もアップ……しない!?」
     それはフリューゲルの召喚の代償。神の黄金竜は嘲笑うように彼女を蹂躙する。
     アリアは容易く、竜の足の下に姿を消した。だが、その足が……見る間に持ち上げられてゆく!
    「わ、私の神黄金竜が!?」
    「気付かなかったのかい? 僕が彼女に『FireWall』を使ってた事を。その程度のカードなんかに負けるものか」
     狼狽する女へと、九朗は鋭い視線を向ける。
    「くっ……ならばこれで!」
     女の二枚目のカードから、今度は闇の力が滲み出た。それは青紫のローブを織り成し、骸骨とその眼窩で光る赤い点を生み出し、そして宇宙の果てよりも暗い色の鎌を作る!
    「この『妖神魔ダークデステラー』の鎌で、貴方たちの運命を全て刈り取ってみせます」
    「運命だと!?」
     唐突に、天牙の体から力が抜けた。
    「そうだ、どんなに緻密な作戦を組んだところで、運命に見放され、引くべきカードを引けなければ……」
     愕然として膝をつく。幽花が必死に声をかけるが、聞こえている様子すら見られない!
    「『投了』なさい」
     教祖が命じると、天牙は青い唇でうわ言のように呟いた。
    「ああ、わかった。投りょ……」
     その時翼冷の苛立った声が、彼の言葉を掻き消した!
    「待てよ。勝手に決めないでくれねーか? 正直、期待外れだね」
     翼冷は黒い立方体で天牙の頬を叩くと、今度は教祖の女も睨みつけた。
    「だが期待外れはそっちこそだ。下が下なら上も上か……俺らが、本物のトラウマってのを見せ付けてやるよ。……そうだろ?」
     翼冷がちらりと透流に視線を向けると、透流は全身を光の中に包まれていた。吹き上げる風の中、透流は一枚のカードを掲げ、力強く宣言する!
    「『雷神覚醒』を発動。私自身――『雷神の生まれ変わり、トール』を手札に戻し、『究極雷神トール』を場に出す!」
    「それは……究極進化!」
     全身から雷電を放出し、両の篭手を巨大化させた透流! 女は慌てて次のカードを引こうとするも、それよりも早く、蘭の攻撃が女を貫く!
    「何故です……まだ貴女のターンは回ってきていないはず!」
    「私のカードは『風神の魔風』! 『雷神』の究極進化時、コンビネーション効果で攻撃ができます……!」
     さっきの戦いの時よりは、ちょっとこのノリが解ってきたような気がする。ルールにはうるさい公平も、大きく頷いて納得の様子だ。
    「さてどうします?」
     公平の問いに、女は答えた。
    「どうやら、この呪文を使ってやらねばならない時が来たようですね」
     そして両手でカードを恭しく掲げ、何やら大きな身振りで祈りを捧げ始める……。
    「天地を統べる究極のカードよ、今、汝の主が命ずる……」
     そこまで呪文を唱えたところで、女の指が黒い何かに引っかかった。印が解れ、呪文が一時停止する!
    「邪魔をしましたね……!」
    「これくらい造作もありません。敵を知り己を知る。それがコントロールデッキの基本ですから」
     教祖の指に巻き付いた公平の影が膨れ上がり、次第に彼女の体を包み込んでゆく! これでは呪文の続きなど、唱えようが……!
    「ええい!」
     いや女は、影の中で強引に指を折り曲げる! 再び始まる呪文詠唱……だが!
    「それ以上、唱えさせはしないよ」
     九朗の剣がきらめいて、影をすり抜けるように女の肺にだけ穴を開けた。それでも口を動かし続ける女。
     それを押し込めるように、影が増えた。女が体を揺らす瞬間を見逃さぬ翼冷の、影を纏った拳のストレートだ。女はもがき、影を纏めて弾き飛ばそうとするも、蘭の夜霧を埋め込んだ影たちが、容易に剥がれる事はない!
    「『追跡する魔力の波動』!」
     今度の蘭の宣言には、迷いは篭もっていなかった。
    「『雷鎚ミョルニル』!」
    「『天降石の煌き』!」
     さらには究極形態の透流、神黄金竜の脅威を克服しきったアリアが、女を左右の上空から襲う!
    「こ、この私が……レジェンドカードを統べるべき私が……!」
    「……そんなもの」
     大和は吐き捨て、天牙に手を差し伸べた。ガシッとそれを掴んだ手には、闘志の炎が蘇っている。
    「皆……お蔭で俺のなすべき事を思い出したぜ……皆の力を今一つに!」
     大和だけでなく、九朗が、翼冷が。アリアが、蘭が、透流が、幽花が。そして公平も、天牙がカードを引く手に自らの手を重ねる!
    「召喚……『極聖天使アスファエンデ』! カードに正しき姿を知らしめせ……インフィニティコズミックフレイム!!」
     一際大きな炎が輝いて、女も、女のカードも全て呑み込んでゆく!
    「そんな……この私が……馬鹿な……!」
     灼滅者たちの視界を覆う光が消え失せた時、女は最早、塵一つ残さず消滅していた。

    ●片付けまでがゲームです!
    「なんと言うか、努力の方向を間違えてる気がする相手だったな……」
    「でも、力抜きにカードだけでダークネスさん達と戦えるなら、もっと平和なのに……」
     しみじみと呟く蘭と透流。だが彼女らに、休める時間は多くなかった。
    「他の配下たちも、放置するわけには行かないわ」
     アリアがフリューゲルに跨ると、翼冷も武器を担いで歩き出す。
    「んじゃ、ちゃちゃっと残りも倒しに行きます?」
    「TCGは皆の笑顔のために……俺は、それを護る!」
    「お供しますよ、部長」
     大和と公平もその後に続く。
    「ああ……他の奴らにも、大事なことを思い出させてやらなくちゃな!」
     天牙が、笑った。

     そんな彼らに負けまいと、街の各所では、一斉に他の灼滅者たちも動き出していた。
    「キミ達を自由にさせてはあげられないんだ」
     ギルドール・インガヴァン(d10454)が召喚獣を氷に閉ざせば、
    「『魔法剣レーヴァテイン』を僕自身に装備……そしてアタック!」
     鴻上・巧(d02823)は炎の剣で敵を断つ!
    「何故だ……カードの力が大幅に弱まっている!?」
     混乱し、逃げ惑うデュエリスト達。だが空中のアルディマ・アルシャーヴィン(d22426)は、その行く先に降り立ち属性魔法を振るう!
    「馬鹿な! あんな文房具のカードなんてあったのか!?」
    「温故知新……まさか、そんな物でもカードバトルができたとは!」
     常儀・文具(d25406)の消しゴム着ぐるみ召喚獣(霊犬)。百人一首を詠んでサイキックを放つ志賀神・磯良(d05091)。そして……。
     夢幻・天魔(d27392)の喚んだ『最強騎士国グレートナイト』の精鋭騎士たちの力が、最後のデュエリストを蹂躙した。

     かくして一つの戦いは、全て終わった。
     だが、それを生み出した張本人であるソロモンの悪魔は、この騒動から何を得、そして次は何を企むのだろうか?
     その答えは、九朗にはまだ、デッキの中に伏せられたままであるように思えてならない。

    作者:るう 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年4月27日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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