●血の色
射干玉の黒。何処までも昏い漆黒。それは――闇の色。
その洋館の一室はアトリエになっているらしく、筆を握る男は闇を見つめていた。
彼の傍らに置かれた画架にはキャンバスが掛けられており、一面が黒一色に染められている。それだけではなく、アトリエの隅にうず高く積まれているキャンバスすべてが漆黒に塗り潰されていた。
「これも駄目だ……完璧な黒には程遠い」
男は長い髪を振り乱し、画架から漆黒の絵を外す。その眼は血走っており、彼は狂いかけた芸術家と表すに相応しい様相だった。
「檜扇様、私の血をお使いください」
その傍らに控えていた女性が一歩踏み出し、自らの手首を切り裂く。彼女から滴る血に目を遣る檜扇だったが、激しく首を振って答える。
「駄目だ、弥美。お前の血は薄すぎる。もっと濃い血を絵具に混ぜなくては……!」
「…………」
無表情の女性は残念ですとだけ答え、外された絵を慣れた手つきで部屋の隅に積む。
その様子を窓辺から窺っていた北南・朋恵(ヴィオレスイート・d19917)は男がヴァンパイアであり、弥美という女性が彼に従う強化一般人なのだと悟った。
そして、朋恵はヴァンパイアが自分が使う絵具に他人の血液を混ぜているのだと知り、その行為の恐ろしさを肌で感じ取る。
(「ロッテ、いそいで戻ろう。たいへんなのですっ」)
朋恵は傍らのナノナノにそっと呼びかけ、仲間の元へ戻ることを決めた。
きっと――このまま彼等を放置しておけば、付近の一般人が血を搾り取られてしまうかもしれない。そんなことは絶対にさせてはいけないと強く思い、朋恵は駆け出した。
●射干玉の闇
「芸術家さんのヴァンパイアがあぶないことをしようとしているのです」
朋恵は身振り手振りを交え、灼滅者の仲間達に話し始める。
現在、軽井沢のブレイズゲートには迷宮化の影響で甦ったヴァンパイア達がいる。自分が調査をしてきた光景を語り、朋恵は彼等を灼滅しなければならないという旨を告げた。
「ヴァンパイアのお兄さんはたしか……檜扇と呼ばれていました、です」
そして、彼の傍には強化一般人らしき弥美という女性が居る。
檜扇はどうやら血を混ぜた黒の絵の具で『完璧な黒』を描くことを夢見ているらしい。従者の血では完璧には遠いと感じている檜扇はおそらく、この先に付近の住民を攫うように弥美に願うだろう。
そうなってしまう前に向かい、それを阻止しなければならない。
「今から行けばまだ間にあいます。いっしょにダークネスをたおしにいってくれますか?」
朋恵は仲間達に問うた後、洋館とそのアトリエまでの道筋はしっかり覚えているから道中の心配はないと語った。
芸術を追い求めることは素晴らしいことだ。
しかし、其処に誰かの犠牲があるとなれば話は別になってくる。そのうえ相手がダークネスならば尚更。
そうして、灼滅者達はブレイズゲートに向かうことを決める。
血で描く芸術を壊し、闇を払う為に――今こそ、この力を揮うときだ。
参加者 | |
---|---|
万事・錠(ハートロッカー・d01615) |
一・葉(デッドロック・d02409) |
呉羽・律希(凱歌継承者・d03629) |
三条・美潮(大学生サウンドソルジャー・d03943) |
東郷・時生(天稟不動・d10592) |
北南・朋恵(ヴィオレスイート・d19917) |
興守・理利(伽陀の残照・d23317) |
鮫嶋・成海(マノ・d25970) |
●黒血
洋館内のアトリエの扉が蹴破られ、灼滅者の声が響き渡る。
「「こんにちは死ね!」」
重なった声の主は一・葉(デッドロック・d02409)、そして東郷・時生(天稟不動・d10592)のもの。確か、いつか倒したヴァンパイアの時も同じ文言を告げての奇襲から始まったのだったか。葉は一瞬だけ記憶を巡らせ、まぁいいかと短く息を吐いた。
突入と同時に時生達が狙ったのは、奇襲に気付いて身構えた強化一般人だ。
「檜扇様、此処は私が」
淡々と主人に告げ、弥美と呼ばれていた従者は二人が放つ螺旋槍と鬼神変を何とか受け止めた。だが、弥美は自分に向いた攻撃がそれだけではないことを悟る。
万事・錠(ハートロッカー・d01615)による魔帯の一閃、鮫嶋・成海(マノ・d25970)が放つオーラの一撃。灼滅者達は息を合わせ、間髪入れずに弥美を狙い打つ。
興守・理利(伽陀の残照・d23317)は攻撃様にアトリエの隅に積まれた絵をちらりと見遣った。色に血を求めるとはヴァンパイアらしい思想だ。
「人に害が及ぶ以上、此処で灼滅するしか無いのでしょう」
小さく呟いた理利は思いを確かに持ち、一瞬だけ瞼を閉じた。
三条・美潮(大学生サウンドソルジャー・d03943)も魔帯を展開しながら、奥に控えているヴァンパイア・檜扇を一瞥する。
「キタねぇ絵だな、コレじゃ死んだ人間も浮かばれねーわ」
「悪いことをするのはゆるしませんです!」
北南・朋恵(ヴィオレスイート・d19917)も敵をしっかりと見つめ、想いを言葉にする。
本物の黒の為に血で絵具を作る。なんて視野狭窄な狂気なのだろうか。
呉羽・律希(凱歌継承者・d03629)は相手に恭しく礼をした後、薄く口元を緩める。
「御機嫌よう、悪趣味な画家さん」
続けて、律希から告げられたのは皮肉を込めた挨拶。小馬鹿にした様子の美潮の言葉や、朋恵の視線を受けた檜扇の眉はそれによって僅かに歪められる。
「ノックもなしに現れ、剰えその物言いか……」
不躾な客人だと嫌悪をあらわにしたヴァンパイアは筆を振り翳した。その瞬間、膨大な魔力の奔流が成海へと向けられる。だが、その一撃は激しい駆動音を響かせて疾るライドキャリバーが代わりに受けた。
成海はキャリバーに視線だけで礼を告げ、自らは弥美が死角から放った封縛糸を障壁で以ていなす。成海自身は血も美術品も別に嫌いではない。だが――。
「いや、絵の具に混ぜんのは悪趣味極まりないですよね……」
「檜扇様への侮辱は許しません」
弥美は無表情のまま成海を睨み付け、鋼糸を瞬時に巻き取った。律希はその言葉を聞き、侮辱以前の問題だと首を振る。
「駄作は全て灰燼に帰しましょう。勿論、貴方がたも」
一瞬、弥美の意識が律希に向けられた。
その間に錠と理利が檜扇の元へ駆け、一気に布陣を整える。錠は口の端をにやりと歪め、青き世界と稲妻を示す標識を振り上げた。
「血のドス黒さになら自信はあるぜ。見せっこしようや!!」
刹那、鋭い光がヴァンパイアを貫く。
辺りを染めるのは黒と赤。そして、閃く青の彩。色濃い血の匂いが混じるアトリエは今、命を削り合う戦場と化した。
●紅色
「さぁ、戦劇を始めようか!」
律希が紡ぐ凛とした宣言によって、戦いは本格的に幕を開ける。
開幕直後に集中攻撃を受けたことで従者の力はかなり奪い取られていた。
本当は強化一般人を助けたいところだが、彼女はヴァンパイアに心酔しきっている様子だ。きっと、説得や交渉などは出来ない。
朋恵はナノナノのクリスロッテと視線を交わし、攻撃を合わせてゆく。
「他の一般の人に何か起こっちゃう前に……ここで止めますです」
決意の籠った少女の言葉と共に、赤く揺らめく炎の花が舞い飛んだ。クリスロッテもしゃぼん玉を飛ばし、標的を大きな泡で包み込む。
「信奉者はタチ悪いわね」
時生も続けて炎の蹴りを敵に見舞い、弥美と檜扇の姿を見遣った。
ヴァンパイア自身の探究心は結構。だが、そんな芸術は理解したくもない。弥美が痛みに呻き、檜扇が時生をじっとりと睨み付けた。
「退け。私の許可なく弥美を傷付けるのは控えて貰おうか」
だが、敵が動く前に錠がその眼前に立ち塞がり、赤い衝撃を放つ。
「……ざァんねん、こっから先は一方通行で通行止めだ。進ませやしねェよ」
碧の双眸を細めた錠は見事にその進路を塞ぎ、主人と従者の連携を断ち切った。檜扇が錠に気を取られている隙に理利は蛇咬斬を放ち、的確に痛打を与えてゆく。
だが、ヴァンパイアも紅蓮の斬撃で反撃に移る。
「――癒します」
律希は前衛の体力の懸念を抱き、光環に宿る防護の力を発動させた。舞い飛ぶ環は淡くひかり、錠や成海の身に力を与える。
成海は弥美へと真正面からの抗雷撃を打ち込み、相手の顔色を見遣った。
「アタシが言えることじゃありませんけど……。アンタほんと鉄仮面みたいだよなぁ」
「余計なお世話です」
弥美からも斬弦糸が放たれ、成海の身に痛みが走る。しかし、ライドキャリバーが横手から突撃することで弥美の身体が吹き飛ばされた。其処に終わりを見出した美潮は制約の弾丸を撃ち放つ。
「バカだな、ほんと。あんな奴に付き従うからこうなるんだ」
憐れみ交じりの溜息を零した美潮は、倒れゆく弥美に自分なりの別れの言葉を送る。
「申し訳、ありませ……檜扇、さま……」
戦う力を失った女は力なく呟き、糸が切れたようにその場に倒れた。成海は言い表せぬ思いを抱き、ぽつりと零す。
「従順なのも良いけどさ。もっと自分大事にしなよ」
だが、何もかもがもう遅い。伏した弥美から視線を外した成海と美潮は残る敵、ヴァンパイアへと向き直った。
「私の弥美を……よくも……」
筆を握り締め、わなわなと震える檜扇は怒りを覚えているようだ。
主従の間にも絆めいたものがあったのだろう。しかし、今は同情を覚える暇はない。葉は神霊の剣を敵に差し向け、挑発する。
「おら、こいよ。テメェの血で絵描き歌でも歌いながらナノナノ描いてやんよ」
「ロッテの絵も描いてあげますです」
ぐっと気合を込めた朋恵も葉の挑発に乗る形で灼滅への意志を強めた。シャルロッテ自身もこくこくと頷いて羽をぴこんと動かしている。
振われる刃にオーラが重なり、吸血鬼の身が穿たれてゆく。
しかし、怒りを滲ませる敵はまだ余力があるようだった。気を付けてください、と仲間に呼び掛けた理利は更なる攻撃に移る。
そして、理利はふと気になったことをヴァンパイアに問いかけた。
「おれの血は貴方の求める色ですか?」
「何を問うかと思えば、貴様等の血など求めるものか……!」
「良かった、闇色に溶けるのは御免です」
返されたのは怒りに任せたものだったが、檜扇から否定の言葉が聞けたことで理利は安堵を覚える。そして、思う。
芸術家で在る限り、創作への渇望は止まないもの。
ならばきっと、彼は何処までも満足することはないのだろう。
不思議な感慨を覚えた理利は僅かに俯く。その様子を見た錠は気を抜くなよと彼の肩を軽く叩き、再び得物を構えた。
葉や美潮もその通りだと同意し、魔帯を射出していく。
「胸クソわりぃヤツにも人並みの感情があるんだな」
「根暗ヤロウにゃ軽井沢は贅沢が過ぎるってもんよ。ほら、死の覚悟はできたか?」
黒い絵なら下水暮らしで十分だ、といって美潮は眼鏡の奥の双眸を鋭く細め、挑発を重ねる。目の前にいるのは命を軽く扱う外道だ。
故に容赦など出来ず、容赦をしてやる心算も更々なかった。
●漆黒
魔霧を生み出すヴァンパイアに時生は凛と視線を向ける。
「そんなに血が欲しいなら、私のをあげましょうか。絵ごと燃えるけどね!」
言葉と同時に体内から溢れる血は碧天の炎となって燃え上がった。刮目して消えなさい、と告げた時生はその炎を蝋燭に宿し、焔の花を咲かせる。
朋恵も魔道書から紡ぐ光線を敵に向けた。
「弥美さんのことを大切に思えるなら、やさしい気持ちもあるはずですのに……っ」
ヴァンパイアが怒りを覚えたということは、きっとそういうことだ。
朋恵は幼いながらも葛藤めいた思いを抱き、唇をきゅっと噛み締めた。クリスロッテが心配そうにしていることに気付き、律希も朋恵を気に掛ける。
「大丈夫、救いはきっと――!」
どんな形であれ、この戦いを終えた先にあるはず。律希は仲間へと祝福の風を吹かせ、補助を続けた。
そして、律希は檜扇がこの場から逃走してしまわぬように留意する。
いつでも敵を囲い込めるように布陣を固めようとする律希の意図を汲み取り、理利もまた警戒を強めた。
「……画家ならもっと筆を大切にしたらどうですか? それに――」
緋牡丹の花焔を放ち、理利は言葉を続ける。
黒を際立たせたいのなら光を描けば良いのでは、と。おれは闇に浮かぶ月の図などが好きだと語る理利だったが、ヴァンパイアから返ってきたのは荒々しい声だった。
「そんなもの、私の求める芸術ではない……!」
髪を振り乱し、血走った目を向ける檜扇の瞳は黒く濁っているように思える。
ライドキャリバーを疾駆させ、成海はそれなら、と敢えての悪態を吐いた。
「……その筆もクソみたいなテメェも全部折ってやるよ」
逃走を許さぬ布陣を整えたなら、後は全員で袋叩きにするだけ。成海が放った妖冷の弾は檜扇に氷の冷たさを宿し、魔力で蝕んでゆく。
相手が僅かに揺らいだ隙を狙い、錠は更なる一閃を突き放った。
錠が檜扇に抱く感情は少しの共感。
「血の色が黒ってのは概ね同感だぜ。そうだ、お前の視界に塗りつけてやるよ」
だが敵対している以上、言葉以上の肯定を与えてやることは出来ない。
仲間の放つ斬撃に合わせ、美潮はチェーンソー剣を激しく唸らせた。敵の狙いは先程から成海や葉にだけ向けられており、横から切り刻むには逆に好都合だ。
「視野狭窄はバカに見えるって教えてやるよ」
そうして、美潮は一撃を見舞う。檜扇が求める黒はどんなものなのだろうか。だが、そもそも光の吸収率が完璧な色などこの世にあるわけがない。
「そうかお前本当にバカなんだな」
煽りの言葉を投げ掛けた美潮は落胆したように、わざとらしく肩を竦めた。
すかさず朋恵がクリスロッテに呼びかけ、ふわふわハートで葉を癒す。朋恵自身も次の手に向けて身構える中、葉はふと漆黒について思う。
「完璧な黒、ねぇ……」
酸化してドス黒くなった血。幾つも混ざって重ねて淀んだ黒。ああ、それはきっと――。
頭の中で或ることに思い至った葉は一瞬で敵の死角に回り込んだ。
「アンタの絵、なんかに似てると思ったらあれだ。ドブ川のヘドロと同じ色だ」
「何だと……!?」
「テメェの血もヘドロと同じ色してるんだろうな」
憤る檜扇に容赦のない斬撃を見舞い、葉は相手からの鋭い視線を軽くあしらった。
時生も其処に続き、鬼神の力を纏う。
漆黒は大好きだ。己の髪も愛機もその色だから。けれど、だからこそ許せなかった。
「跡形も無くしてやるわ」
時生は変じさせた腕を大きく振り払い、力いっぱい檜扇を殴りつける。
その間に理利は皆の負担が少しでも減るように、と必死で妨害行動に移った。
戦いの端々に聞こえる皆の声は実に彼等らしい。自然と微笑み、頼もしさを感じた理利は錠と合わせてヴァンパイアを狙い続けた。
其処へ更に成海とライドキャリバーの連携が加わり、朋恵とクリスロッテも息の合った攻撃で檜扇を追い詰めていく。
「く……何故だ、如何してこんな――」
息を荒くして呻くヴァンパイアを見遣った美潮は、その力が後僅かだと悟る。
「まぁ、そうさな、この世にゃないならあの世あたりにゃあるかもしれねーし。せめてもの情けだ、送ってやるから行ってこいや」
あの従者の所に、と告げた美潮は制約の弾丸を撃ち放った。
そして、最期を狙った律希は双唇をひらき、歌声を紡ぐ。その声はしなやかに、それでいて物悲しく響き渡った。
歌が終わりを迎えようとした刹那。ヴァンパイアは膝から崩れ落ち、その場に伏した。
彼が死を迎えたのだと感じた律希はそっと目を伏せ、思いを言葉にする。
「完全に完璧な色なんて、何処にも在りはしないでしょう」
しんと静まり返ったアトリエ。最後に残ったメロディの余韻は宛ら、此処で死した吸血鬼達を葬送するかのような響きを孕んでいた。
●完全な黒
芸術家は常人と違う世界を抱いていると聞く。
ならば、きっと彼が見ていた世界も自分達が思う物とは違うものだったのだろう。
「ですが、削るのは自分の命だけにして貰いたいです」
理利は小さく息を吐き、悪趣味なヴァンパイアの末路を思った。成海もバツが悪そうに頬を掻き、死した男へと呟く。
「……胸糞悪ィ。テメェの血で満足しとけって話」
見つめるのは黒一色のキャンバス。
それに血が混ざらなければ、好きになれたかもしれない。なんて、と有り得なかったことを思った成海は傍らのライドキャリバーにそっと腰掛けた。
時生もアトリエの絵を見つめ、ぽつりと零す。
「黒だけなんて、寂しい世界ね」
いろんな色があることは素晴らしい。個性にあふれているからこそ自分は皆を好きになれた、と時生は笑みを浮かべた。
何処かしんみりとした雰囲気の中、美潮は景気付けに両手をぱしりと叩く。
「よし、遊びに行くぞ。こういう時こそ遊び倒すのが厄落としってもんよ」
場所は軽井沢、連休のプチバカンスには丁度良いだろう。大学生舐めんな、と免許証を取り出した美潮は観光ならまかせろと胸を張った。
「軽井沢にはどんなところがあるのです?」
朋恵がわくわくとした様子で問い、クリスロッテも瞳を輝かせる。
いつもの調子に戻った仲間達を優しく見つめ、律希も観光には賛成だと微笑んだ。葉と錠もたまには羽を伸ばすのも良いだろうと同意し、仲間を誘う。
そして、灼滅者達はアトリエの扉を閉めた。
残されたのは一人の吸血鬼と、それに寄り添うように横たわった女の亡骸のみ。ブレイズゲートに取り込まれた彼等はおそらくこのまま風化してゆくのだろう。
完璧な黒を望んだ男に錠達が見せたもの。
それは命が尽きる瞬間にだけ見える、光の消え失せた混じりけのない完全なる黒だった。彼が求めて已まなかった色はきっと死の先にしかない。
だからこそ、この結末で良かったはずだ。
只々、射干玉の黒よりも昏く――悪しき存在がまたひとつ、闇の淵に沈んだ。
作者:犬彦 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年4月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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