地獄合宿~地獄のキッチンスタジアム?!

    作者:カンナミユ

    ●疑心暗鬼の幕開け
    『大阪といえば食い倒れ。
     日本各地のご当地名物を実際に作って食べて、ご当地への理解を深める強化合宿を行います。
     ここで得られる実体験を伴った知識は、ご当地怪人や都市伝説との戦いに有利になるかもしれません』
     
     4月も終わりにさしかかり、新たな学年に慣れはじめたそんな頃。
     毎年恒例である地獄合宿が発表され、大阪会場の内容を知った灼滅者達は疑心暗鬼に囚われた。
     
     これのどこが『地獄』合宿なのか?!
     ――と。
     
     ある者は『ご当地名物作りに必要な食材は全てそのご当地から調達して大阪の会場まで持って行くのでは?』と首を傾げ、またある者は『武蔵坂から大阪までマラソンしてから料理を作るのでは?』と言葉を交わし、『会場にはゾンビやバスターピッグがぎっしり詰まっていて、戦いながら料理を作るのでは?』と話す者までいる。
     しまいには、
    「これは武蔵坂が仕込んだ暗号に違いない! きっとご当地に存在する強大なダークネスを食べる……つまり、倒してこいって事なんだ!!」
     とか言い出す始末。
     あまりにも地獄っぽくない内容なもんだから灼滅者達は何かウラがあるのではないかと疑いだしたのだ。
     そんな中、
     
    「地獄合宿如きでうろたえるとはお前達それでも灼滅者か!」
     
     ばーんと勢いよく教室のドアを開けたのはエクスブレインの結城・相馬(超真面目なエクスブレイン・dn0179)。
    「数多の修羅場を経験し、数え切れない程の地獄を味わってきたお前達灼滅者が、ご当地名物を作って食べるだけの合宿で何故そんなに不安になるんだ! むしろここは『うわコレ天国じゃね?』とか言って喜ぶべきだろ!」
     先に断っておくが、相馬はこんな性格や口調ではない。
    「っていうかお前達、もしかして地獄合宿と銘打ってあるからには地獄っぽい合宿じゃないとダメなのかそーなのかそーなんだなハイわかりました」
     早口でまくし立てるように言いながら相馬はずかずかと教室に入って教卓の前に立ち、眼鏡のブリッジをくいっと上げると、
    「……よろしい、では地獄合宿の説明をしよう」
     ぱらら、と音を立て全員に配られた合宿のしおりを開いた。
     
    ●天国か地獄か
     まずはご当地名物作り。
     文字通りご当地の名物グルメや郷土料理、スイーツ等を作る。
     広い会場には特設キッチンが用意されており、食材や器具は全て揃っているから調理に困る事はない。
     灼滅者であれば不眠不休でも大丈夫だろうが、会場には仮眠室があるので仮眠をとりつつ作りまくって欲しい。
     なお、料理が苦手だからといってサーヴァントに手伝ってもらう事は不可だ。一人、もしくは仲間達と協力して作る事になるだろう。
     
     そして食事。
     ご当地名物を作って食べるだけならただの調理実習である。
     大阪といえば食い倒れ。
     作った食い倒れる程のご当地名物を食べなければならない。
     残したり、持ち帰って食べる事は許されない。
     ご当地の味をしっかりかみしめ、作ったご当地名物を完食しよう。
     
    「やっぱり地獄っぽくないなあ」
     相馬の説明を聞く灼滅者の一人はぽつりと言うが、果たしてそうかな、と相馬は言う。
    「お前達全員が調理の腕に秀でている訳ではないだろ? そんな者にとってこの合宿はまさに地獄だと言える。そして――」
    「相馬先輩、オレも頑張って料理作るんで食べてくださいね!」
     言いかける言葉を遮ったのは三国・マコト(正義のファイター・dn0160)。
    「仮眠を取りながらご当地料理かあ……。何作ろうかなー」
    「……あ、いや、お前は作らないでいいぞ?」
     資料を目に何を作ろうかと思案するマコトを目に、相馬の表情が強張ったような。
    「え? でも参加する人は全員作るんですよね? オレ一生懸命頑張りますから!」
     美味しいのを作りますね! と、にっこりといい笑顔のマコトの言葉に相馬の顔が凍りつく。よく見えれば、つと冷や汗も流れているような。
     人によっては食べる事が地獄、というのもあるかもしれない。多分。
    「ああ、忘れてた。お前達もこのしおりに目を通しているから分かっていると思うが、今回の合宿は『会場で作り、会場で食べる』合宿だ。
     予め作ってきたものや買ってきた料理を持ち込んだ場合は即没収、わざと少なく作ったり自分は食べないで仲間達に食べてもらうなど不正をはたらこうとすれば地獄より恐ろしい罰が待っている。どんな罰が待ち受けているかは俺も知らん。
     まあ、お前達は不正など絶対にしないだろうから、そんな事知らなくても問題ないよな」
     やめてくださいそんな恐ろしい事言い出すの。
     
    ●いざ参ろう、大阪合宿!
    「まあ、天国だろうと地獄だろうと合宿は合宿だ。俺もお前達と一緒に参加して出来る限りの事はするつもりだ」
     ぱん、と音を立てしおりを閉じる相馬は灼滅者達を見渡し言葉を続ける。
    「皆で作り、皆で食べる。ご当地をより良く知る為、限られた時間の中で全力で挑もうじゃないか。……では会場で会おう」


    ■リプレイ


     大阪某所。
     毎年恒例の地獄合宿に参加すべく武蔵坂の生徒達は集まった。
     ご当地グルメ作り、食す――地獄のキッチンスタジアム。
     果たしてこの会場は地獄か、天国か。
     
    ●地獄の幕開け
    「……ん、こんなもんか」
     サラダに牛乳、チャツネを添えて、大鍋に完成したのはオヤジ直伝、横須賀の海軍カレー。
     雷歌は振り返り紫電を見れば、その様子からは味は問題ないだろうともう一皿用意すれば、
    「ってやばい、焦げる焦げるっ! あ、くそ、うまく回せない」
     嘉哉は初たこ焼き作りに苦戦中。
    「ま、まあやってるうちに出来るよな」
     皿の上に乗る焦げたそれを目にしてくるりと回すと、衛生面に気をつけ沙雪が作るのは桐生市グルメ子供洋食。
     大量に作るのも楽だが、ぶっちゃけポテトのソース炒めだな……。
    「おあがりよ?」
     大皿にどーんと作れば、肉球柄のエプロン姿のイーライはアメリカのご当地名物マカロニ&チーズと沖縄のご当地おにぎり作り。
    「簡単で沢山作れるから皆にも食べてほしいなー」
     ふにゃりと笑えばいい匂いが鼻腔をくすぐる。
     見れば雄哉が作るのは皿の真ん中を仕切るようにご飯を盛り、両端は別々のカレーという桑名カレーだ。
    「他の方の料理も美味しそうだね」
     料理の勉強も兼ねて食べてみようと見渡し、目に留まるのは明海が持ち込んだ有明海のエイリアンことワラスボ!
     巨大水槽から取り出しぶつ切りにしたそれを大胆頭ごと唐揚げにし、そして捌く。
    「有明海の味、ご賞味下さい!」
     どーん!
     
    「とりあえずなんかつくってみるんだうわぁ!」
     羽和はすごい勢いでカレーパフェを作る。
    「これを作ってみんなに食べさせてあげるんだウワァ!」
     また一つ作ると、赤ん坊の頭ぐらいの蒟蒻芋を洗い終えた陵華は早速蒟蒻作りに取り掛かる。
    「この練る作業手を抜いたら美味しいこんにゃくにならんぞ」
     完成した蒟蒻を高の爪に砂糖と醤油で炒め、陵華は使いたい人にも蒟蒻をおすそ分け。
    「僕の生まれた所は地獄で、この程度じゃない! いつか本当の地獄を見せちゃんわ」
     地獄の番犬ケルベロスこと神楽は大分の関アジを使ったりゅうきゅうと備前の赤鶏の唐揚げを作っていると目に留まるのはお握りだ。
     新潟といえばやっぱりお米だと舞子は丹精込めてお握り作り。
     好きな具材の野沢菜漬けやオーソドックスに鮭や梅、昆布もあれば飽きないだろうと握れば、
    「地獄かどうかは分からんが、久方振りに作ってみるか」
     久遠は水炊き作り。
    「そのまま食べても良いが、薄味が気になるならば何かつけると良いだろう」
     火力や灰汁に気を付け、水炊きは出来上がる。

    「マコトは何作るんだ?」
     さつま芋を用意し、鹿児島の芋餅を作るイオが見ればマコトは北海道のいももちを作るようだ。助言しつつ二人の芋餅は完成。
    「あー、沢山良い匂いしてきて腹減った!」
     鼻腔をくすぐるのはスレイルの料理。
     鮮度の良い鯖をタレに漬け込み、牛モツとキャベツは鍋の中へ。
    「ほい、福岡名物のモツ鍋と胡麻鯖だ」
     おかわり自由のそれをテーブルに置く。
     一見地味だけどお腹に優しい具材が多いバラ寿司を実は作っていたが、ふとバラのような綺麗な巻き寿司が目に留まる。太巻き祭り寿司だ。
     勉強の為に食べ比べさせてもらうと思っていると、愛用の品々を持ち込んだ來鯉もお好み焼き対決に身を投じる。
     鉄板の上でソースが香り王道から故郷の呉焼き、豚や牛挽肉を使ったものやそばの変わりにお米を使う変り種まで様々なお好み焼きが焼きあがっていくがまだまだこれからだ。
     
    「月夜さん、ネギ切るのは大丈夫です?」
     包丁を使わせて貰えないという月夜は調理用はさみを手にするが、アレクセイから包丁の使い方を教わり慎重にネギを切る。
     完成したのは食べる人の負担も考え鳥取の白ネギ鍋。
     ハマチの刺身に青ネギを和え、ポン酢も忘れずに。
     さっぱりしそうだと月夜の提案で刻んだ梅も沿えていると、
    「さすが地獄合宿……作る方まで地獄だ……」
     クリスとラーメンを茹でる桃夜は汗だく意識朦朧だ。
     桃夜の希望で辛口あんかけを作るクリスもただ黙々と埼玉のスタミナラーメンを作り続けているのは暑い。とにかく暑い。
    「あとで賄いの冷製スタミナ激辛ラーメンを作ってあげるから……」
     クリスの手作りを食べるまでは死ねない!
     
     【烈華】の三人は柚月と柳をメインに料理作り。
     気が付けばモツが増え、コロッケの種類も増え、茨城のクリームコロッケと山梨の鳥もつ煮が完成!
    「おぉ! 鳥もつ煮ってこんな感じなのでござるね」
    「うむ、いずれも美味である! 自分達で作るとまた格別だね?」
     柚月と柚羽は言葉を交わし、ふと見ればもの並ぶのはものすごい量。何人前あるんだこれ。
    「まあ……楽しみ尽くしてやりましょう!」
     嘗ての味との勝負はそれとして、柳の言葉と共に三人は地獄へと突き進みだす。
     
     あなごめしが完成し、嘉月は静岡イカメンチを揚げる。
    「冴凪君にコルチェット君、何かそちら手伝えることはありそうですか?」
    「いや、こっちは大丈夫だ。……後は焼くだけだから、そっちは食器の準備を頼む」
     手が空き嘉月は尋ねるが、アインは手間取る事なくピザを持ち込んだ簡易型かまどに入れ、ちゃんぽんと枇杷ゼリーを作り終えた勇騎は長崎名物ミルクセーキの完成が間近だ。
     さすが【料理学部一年】、手際がいい。
     程々に休み、楽しみ、勉強しつつ料理の完成は間近だ。
     
     想い人の手料理はいい匂いだが、目に刺激が!
    「我ながら自信作ですよっ」
     大鍋には札幌発祥スープカレー。
    「如何ですか?」
     辛党のいちごが作ったのは当然、激辛。
     悲しむ顔を見たくない由希奈は意を決し、真っ赤なそれを一口。あ、何だか意識が遠く……。
    「大丈夫です?!」
     いちごは意識が遠のきふらつく由希奈を慌てて支える隣では相神姉弟は会場にちなんで大阪の料理作り。
     蟹の創作料理を作り終えた千都は鴨肉を手に取り治部煮作りに取り掛かかり、ちらりと見れば雪火がタバスコとかハバネロを入れてアレンジお好み焼きとたこ焼きをいっぱい作っている。
    「からいものは食欲がわくからいいよねぇ……楽しみだなぁ」
     どうやら弟の料理のフォロー中心になりそうな予感だ。
     
     七波が好きだという事で、真琴と作るのは様々なご当地唐揚げ。
     揚がるいい匂いに最初は味見はダメだと言われてしまうが、
    「えと、少しだけですよ?」
     その言葉に手伝いをしていた七波は味見し感想を言えば、真琴は沢山の唐揚げを作る。
    「うん、今回は天国合宿だね。ありがとう、真琴さん」
     にっこり笑顔に思わず真琴もにっこりすれば、
    「やべぇ、なにこれ超楽しい」
     ご当地甘味作り放題マジ天国でレシピを見ながら大量の材料使って千尋は次々と作る中、円理のリクエストの下が粗目のカステラが完成だ。
     やはり俺もチャレンジもしたい。
     沢山作ったので仮眠に入った様子を目に円理は立ち上がるとこっそりキッチンへ。
     仮眠から目を覚ました千尋の枕元には……。
     ご当地焼きそば……?
     
    「師匠いくよー!」
    「よし、きた!」
     食材を持つ闇子に呼応し、宥氣は包丁を手に動く。
     カットした食材が生地に混ざると二人でかき揚げを揚げ、盛り付けを済ませると闇子はデザート作りに取り掛かる。
     冷やしておいた器にかき氷を作り、トッピング。
    「おあがりよ!」
     宥氣が悠士と小夜に渡すのは師弟コンビ作、桜海老のかき揚げ丼と宇治金時!
    「……うん、サクサクしていてすごく美味しいな!」
    「さくさく……♪ 美味しい……」
     悠士はかき揚げ丼を口にし、宇治金時ばかり食べる小夜も小さく一口。悠士に微笑み、宥氣と闇子に笑んで礼を言う。
    「……小夜は寝てるのか? 風邪引くなよー?」
     気付けば小夜は宇治金時を片手に寝ているので悠士は毛布をそっとかけてあげた。
     
    「あっ。チロルちゃーん! 泡立て手伝うから生地分けて~」
     その様子を目にクラレットは声をかけるとチロルと二人で生地作り。
    「わ、クラレットありがとー、生地どーぞ、ダヨ!」
     完成した生地をフライパンに入れ、チロルはカイザーシュマーレンを作るとクラレットもずんだクレープ作り。
     そして鼻腔をくすぐるのは新が作る小倉トーストと味噌カツのバターと味噌のいい匂い。
    「オーストリアのデザートなんだ。美味しそう!」
     新はチロルに言い、奈穂を見ればクジラの琥珀揚げにめはり寿司、しらすごはんが完成していた。
    「しらすが傷みやすいから早く食べてね♪」
     全部食べられるかと【井の頭1-7】の四人は不安になるが、何とかなるだろう。
     
     鉄板の上で焼けた焼きそば器に盛ってトマトソースをかけたら新潟グルメ、イタリアンの完成!
    「味見をお願いしてもいいですか?」
    「味見させてくれるの?」
     ホワイトソースを作る一夜は休憩中、桜から渡され一口。
    「うん、美味しい」
     その言葉に桜はにこりと微笑み今度は一夜のホワイトソースを味見。
     二人はわいわいと楽しく作る中、千葉といえばコレかなとなめろうを作っていた遊は桃香の味噌カツ作りを目に固まってしまう。
     メモを見ながら想像を斜め上を行く桃香を手伝い味噌だれが完成すれば、お次はカツ作り。
    「きゃぁぁあ~~!!」
     桃香のスキルに遊は命の危機的なドキドキが止まらない!
     ……合宿、生き残れるかなぁ。
     灼滅者だから大丈夫! ……きっと。
     
    「ねね、これ良い?」
     曜灯は蒟蒻入りのたこ焼きを焼いていると、勇介が作ったぼっかけをタコのかわりに入れて焼き、ソースと出汁をかけるとぼったこが完成した。
    「勇介面白い組み合わせするのね」
     美味しそうなそれを目に曜灯も関西出汁を用意し明石風味を作る。
     新たな可能性の広がりを見た健は手延素麺を茹でソーミンチャンプルーを作ると陽桜もイカスミたこ焼きを焼き上げる。
     テーブルには皆が作ったご当地グルメに焼き林檎とフルーツ蒟蒻のたこ焼き、そしてお薄。
    「ゆーちゃんの淹れてくれるお茶も一緒にゴーカな食い倒れだね!」
    「全部食い尽くすぞ!」
     陽桜はマコトを呼び、健の言葉に【LEAVES】の皆は食い倒れに突入した。
     
    ●作りしもの、食しもの
    「美味しいですね」
     腕前はそこそこだけど胃の要領には自信がある。
     様々なお好み焼きを作り、それを全て食べ終えためぐみは会場で聞いた料理を作って舌鼓を打っていると、慣れた補給品を没収された純也は鹿児島郷土菓子げたんはを少量ずつ割って水で飲む。
    「合宿期間中のご当地料理飲食以外の補給は認められないと……、……」
     地獄合宿なので仕方がない。
     ギィが作るのはボルドーのあるアキテーヌの郷土料理の数々だ。
     ひたすら時間がかかるがご当地料理なので仕方がない。食べ終えまた作る頃には空腹だとローストビーフにとりかかる。
     
     我が嫁こと樹の手作り料理が食べ放題と楽しみに待つ拓馬の前にはフランス料理と東京の西の名産の数々。
    「もちろん全部、食べられるわよね?」
     持参した食材を使った料理を差し出す樹。
    「う、うん……それにしてもいっぱい作ったね! すごく美味しそう!」
     あーんとかしてもらい、この身尽きるまで食べ続けようと決意する中、
    「ねぇ、九音、見てみて、生地が薄く出来たよ」
     助言通り京が作るのを目に九音も蕎麦を打ち、まずは二人分を作る。
     水加減に注意し作った信州の蕎麦と慎重に味見したつゆは美味しい出来で、食べ終えれば時間はまだ十分ある。
    「じゃあ、会場分ぐらい蕎麦作っちゃう?」
    「会場の分作るのは……大変だよ?」
     二人は広い会場を見渡した。
     
     色々な料理を楽しみにしていたが、どんなに美味しい料理でも無理矢理食べていると味が分からなくなってくる。
    「す、少し休んでくる……」
     仮眠してこようと友衛が移動するといい匂い。
     紅緋が作る南紀のご当地料理、クエ鍋の匂いだ。
    「うー、お腹がいっぱいに」
     眩暈がしそうなほどの鍋に作り、食べるのは紅緋。
    「私にだってご当地愛はありますから、投げ出したりはしません」
     締めのうどんを投入する中、様々な串カツを作る蒼騎は白豚に食べられ怒り心頭だったが、
    「手間かけた分美味く感じるよな」
     物量作戦で勝利し、ようやく揚げたての串カツにソースをくぐらせた。
     
    「お腹いっぱい召し上がれ☆」
     テーブルの上には北海道の旬。にこりとひなこの顔を目に、善之はラーメンに手をつける。
     用意したのは焼トウキビと海の幸味噌ラーメンにカスベの唐揚げ、ジンギスカン!
    「タレも美味ぇし、白飯が欲しくなるな」
     ピリ辛うまダレでジンギスカンを食べる善之は炊き立て北海道米をぱくりと食べると、新鮮な魚や玉子の見分け方をメモするディアナはアドバイスを受け調味料作り、翼と作るのは興味があったひゅうが飯が完成する。
    「あ、すごくおいしい……」
     ディアナは味見し、盛り付ける。
    「やはり一人で作るよりも二人で一緒に作ったもののほうがよりおいしく思えるな」
     二人で作るのはとても楽しい。
     もちろん二人で食べるのも。
     
     【ARCANUM】の三人は芋煮作りの最初の難関、里芋の皮剥きにぶつかっていた。
    「だあっ! 無理に皮を一枚に繋げようとか考えるな! 少しずつ削ぎ落とせ!」
    「そんな、いきなり注文付けられても分かんないよ!」
     二人がヒートアップする中エリスフィールは他の作業を進めれば、騒がしくも芋煮は完成。
    「ほれ、努力。お前さんが作った初めての芋煮だ。食ってみ」
     星希は朱音から受け取り、里芋を一口。
    「ん~、お芋美味しい! 味付けして煮込まなくても味染みるんですね!」
     その様子に目に二人も箸をつけた。
     
    「宇宙に羽ばたけっ! ご当地名物の中のご当地名物!」
     【宇宙部】部長が生み出すそれは仲間達の前へ。
    「……とゆーわけで、登場ですっ!!!」
     ジックリ溜め、宇宙焼きの登場!
    「あの、希紗さん、何凄いメニュー作ってるの?」
     それを目にヴィントミューレは言い、お茶を準備し新しい発見に期待する菜々乃と自称美食家としてキッチリ評価する亜綾と共に食べていく。
     一回りし様々なご当地グルメを食べた面々。これで終わりかと思いきや、
    「さぁ、気を取り直してもう一回りしますよぉ」
     亜綾は言えば、足元には見上げる呆れ顔。宇宙焼きも待っている。
     大阪制覇の道は始まったばかりだ。
     
    「部長ーええ腕やわぁ。おかわり!」
     全国スイーツ食べ放題にハート目で乃麻は堪能していたが、部長が作るひゅうが丼に舌鼓を打つ。
    「ほらほら、みんな遠慮せずに食べてね!」
    「ご当地のグルメって一度はご当地で食べてみたいけど、なかなかそんな機会無いからこういう場で食えるとうれしいぜー」
     プロ級腕前のまぐろはマグロを使った塩焼きやステーキ、頭の煮物とひじき飯を振舞えば、ヨークシャープディングをローストビーフとローストポテト添え完成させたマサムネもぱくり。
    「紅輝くん、とてもお料理が上手ですね」
    「どんどん食ってくれよ」
     紅輝が作ったいがめんちと豚辛焼をいるかは平らげると武蔵野うどんも完食し、まぐろや皆が作った料理も遠慮なくがっつり食べていく。
     【光画部】メンバーは美味しく味わい、ご当地メニューを堪能するのだった。
     
     大きな寸胴鍋で煮ぼうとうを作るゆまは【刹那の幻想曲】メンバーを見ると、叶流が危なっかしい手つきで昔作った鬼饅頭を作っていた。
    「あれ? なかなか切れない……っと危ない!」
    「大丈夫ですか? 気をつけてくださいね?」
     部長から声をかけられ紙カップを蒸し器に入れると師将は焼き餃子と水餃子を作る。
    「メニューは焼き餃子と水餃子のみ、がデフォだと思うのです」
     野菜メインで作りつつ、つまむのはたこ焼き。
    「……で、出来上がりやでー。日々音ちゃん特製ロシアンたこ焼きー」
     初めて作る、様々な具のそれは上手く丸くならないが、ゼリーフライを揚げる律がもぐもぐ。
    「葉真上さん……綺麗にできてるやん」
     皆の料理を食べ、自分の完成品を味見し気付けば空の皿を目に鼻腔をくすぐるのはペーニャが作るジョルのいい匂い。
     日本人に合わせてスープはとろみをつけ淡水魚は鶏肉、そしてご飯……結局ただのチキンカレーだ!
    「さあ、美味しく出来ましたよ♪」
     それぞれ作った料理は皆で美味しく頂きます!
     
     【無銘草紙】メンバーが分担して作るのはあすかの地元、石川の治部煮。
    「うわ、花形の人参とか、白星器用なんだなぁ」
     材料を切る南守が言うと、手際よく野菜を切る夜奈はほんの少し得意げに笑い視線を部長である梗花へ。
    「……とり肉に、小麦粉って、ふしぎ」
     手を止めずの言葉と視線を受けた梗花は小麦粉をまぶして下拵えをすれば、つんと匂う山葵の気配。
     見れば出汁を作り終えた迦月が山葵をすり下ろしているが、無心ですったそれは少し多すぎたかも。
    「え、駄目? やっぱり駄目か」
     四人からの視線に全部使うのは諦め、皆が作る様子を見ていたあすかに手渡し味見をしてもらう。
    「うん、わたしの知ってる味。でもちょっと辛いかも……」
     皆が作った治部煮は山葵がちょっぴり多い?
     完成した治部煮は配られ梗花は皆を見渡した。
    「腹八分目なんて知りません、いただきます!」
     
     【月恋&月夢】もキッチンという戦場に立つ中、高科・アリスも材料運びや下拵えとフォローをしていた。
     料理が苦手という訳ではない! 日本の料理を知らないだけなのだ。
    「美味しくできればいいですね」
     その言葉に七葉も頷き、料理を食べる事や体重計との戦いに備えて釜揚げしらす丼を作る。
     ちらりと隣を見れば、紫音は大鍋で横須賀の海軍カレーを作っていた。
     持ち帰る事はできないが、皆なら大丈夫! 皆なら食べ尽くしてくれる!
     辛い物や酸味のある料理も無いと大阪合宿は攻め難いと雅も作れるキムチマイグッス作りに取り掛かっている。
     手早く作れるのであっという間に出来上がる。
    「……ちなみに、結構辛いですよ? お気をつけを」
    「みなさん、いっぱい食べてくださいね♪」
    「皆、お残し禁止、だよ」
     雅と紫音、七葉の料理を配膳し、ミルフィは英国料理を一口。
    「アリスお嬢様の料理も、皆様の料理も、どちらの料理も残せと言う方が無理ですわ♪」
     アリス・クインハートが作ったそれは『モダン・ブリティッシュ・キュイジーヌ』。作り方も見直され、とても美味しい。
    「エルさんようこそ♪ 是非食べて下さいね。いくらでもおかわり自由ですから」
     餅料理研究の為に食べまくりおなかを大きくしたエルはモカからずんだ餅を10個もらうと全て平らげる。
    「程よい甘さでとても美味しかったです。私も今度ずんだ餅作りを練習してみようと思います。御馳走様でした」
     無表情のまま一礼し、一回り大きくなったお腹のモカは次なる場所へ。
     雅から料理の手ほどきを受けたバンリは汗と涙とご当地への情熱が込められた料理に一礼、お手合わせ開始!
     ご馳走の大群を皿一枚、スプーン一掬い、箸一摘み残さぬ気概と感謝の念で平らげると、
    「残さず食べてくださいね」
     藍の前には地獄合宿にちなんだ純が作った地獄のように辛い台湾ラーメンと、この機会に色々な料理を勉強しようと普段作らないものに挑戦した弥勒の甘いちんすこう。
     悪戯心で作ったラーメンは真っ赤で明らかに辛そうだが、ちんすこうには食べやすいように牛乳も用意されている。
     苦手を克服するにはまず料理から!
    「……まさしく地獄合宿です……」
     一生懸命食べる藍だが、果たして克服なるか。
     そして華夜はひたすら食べる。皆が作った料理を何でも食べ、そして調理前の食材までも胃の中へと納めていくが……。
    「……恐るべし地獄合宿……けど、来年こそは」
     ばたり。
     
    「へー、エビフライをのせたイカのカレーなんだね」
     イカの塩辛でもいいのだろうか。具はバナナやパイナップルでもいいのだろうかと亜樹は思案するが、
    「ルーはシーフード、ごはんは岩のカタチに盛る、エビフライをのせる」
     にゃるほどこれがとポンパドールはイセエビでエビフライを沢山揚げる。
    「あ、疲れたなら休んでていいわよ。皆順番に休んでいいもの作りましょ」
     巫女の言葉に休憩しつつ、カレー作り。
    「折角だから、個人的にも1つ作ろうかな……」
     寸胴鍋を見ながら静音は豊橋のご当地カレーうどんの準備。一生懸命作りながら手伝いも忘れない。
     この格好だと何かの儀式と思われるだろうか。ニコは思いながらかき混ぜ、味や具が違うのを作ろうと考えながらも完成。
     気遣いながらりねが盛り付け、ミニトマトの上にお子様ランチよろしく慧が爪楊枝の旗をさせば、
    「よっし完成!」
     白崎海岸ご飯、そしてカレー海を泳ぐエビフライ。
     サラダを彩るミニトマトには龍天の『龍』の旗がはためき【龍天道場】作、部長監修の和歌山ご当地カレー完成!
    「……流石に作りすぎちゃったわねぇ」
     特盛りを目に巫女は口にするが、大丈夫。
    「これならきっととっても美味しい、よね……!」
    「皆で食べるカレーは多すぎてもきっと美味しいと思うのです」
     弥々子は嬉しそうに言い、りねの言葉に静音も頷くと、皆でカレーを食べるのだった。
     
    「は、初めて、作ったん、ですが……味は、どう、でしょうか? 変、じゃない、ですか?」
     作れるだけ休まずに作ったルクセンブルグの料理を食べるラハブにルクリアは聞くと、
    「ん、がーでぼうねん? 美味しい」
     ジュッド・マット・ガーデボウネンを食べ、グロンプラツァロットを食べ、
    「ひぁあああっ!?」
     手にした皿ごとラハブの口の中に納まってしまった遥香は声を上げた。
     あっという間に食べられてしまった上州名物やきもちだが、清美が作る長野のおやき同様にいっぱい作ったから大丈夫!
    「沢山……作りすぎましたね」
    「えーと、遥香姉ちゃんと、秋山さんと、良太の作った料理の量は何? 明らかに人間の体積を超えてるよ!」
     野沢菜の油炒めに茄子の味噌炒め、粒餡を具材でおやきを作った清美だが、その量を目の当たりにした登は良太からほうとうを受け取り、食べる。
     わんこそばの如く食べても食べてもお椀にお代わりが入ってくるほうとうわんこ。蓋を閉める暇すら与えられない恐ろしさ。
     明日の体を作るための大切な戦いに流希も身を投じ、【TG研】メンバーの料理を食べ続け、
     引かぬ! 媚びぬ! 帰りたくなってきましたが……?
     
    「……あっ……つ、潰れちゃった……難しい……です……」
     たこ焼きの生地を作り終えた渚は手際よく生地を返す実季と一緒に焼けた生地を返すが、難しい。
    「焼けたの一口頂戴?」
    「よ、杳さん? つまみ食いですか? 良いですけど熱いので気を付けて下さいね?」
     あっという間にできていくたこ焼きを目に具材作りを担当した杳へは実季から一つ受け取り口にし、ふと視線は悠へと向く。
    「どうして、僕に聞かないんだろう……僕の存在、忘れてるんじゃ……」
     おやきの作り方を一騎に聞き、念の為にと携帯で確認する翔也への小声。悠はこの地獄合宿で料理だけでも天国でありたいと手伝うが。
    「……どうやら雪下が1人だけ楽しているようだな」
     藍凛の様子を目に翔也は肉と野菜、餡子入りとは別におやきを作り、そして、
    「……翔也君? どし……ぶはッ何コレ辛いぃッ!」
     味見を頼み振り向く藍凛の口へ押し込むのは激辛おやき。味見をしまくり、杳の口に小倉トーストを突っ込んだ藍凛に慈悲はない。
    「できたてもちもちー」
    「んん! もっちもちー、大成功だね!」
     できたての生八つ橋を早速食べた栢からあーんしてもらい、歩良も生八つ橋をぱくり。いい感じの小倉トーストと共にとても美味しくできた。
     普通とは違う具材をおやきに入れようと一騎は向かい、栢と求肥の切れ端と餡子を綺麗にできたおやきとトレード。
    「どうぞっス!」
    「どっちもうまうま」
     おやきを口にしていると、テーブルには【チームタケノコ】の皆が作った料理が並んでいく。
     全て揃うと皆でしばしの味見タイムに突入した。
     
     【西久保3-D】皆でお好み焼きとたこ焼き作り!
     味見で食べていいかと聞かれ、ひっくり返すのを失敗した櫻のお好み焼きはリュータの口に。
    「うまいぞ!」
    「……ありがと」
     喜んで食べるリュータだが、
    「大阪にはツーテンカクっててタワーがあるんだっけ?」
     ふと思い出して焼きだすと、自作ソースを作った耀の前には『お好み焼きツーテンカク』がどん! ヒノと櫻もそれを見つめていたが、
    「たこ焼きタワーも作りたいですよーうっ」
     ヒノは皿にどんどん乗せ、たこ焼きタワーの完成!
    「ふふ、写真に残しましょうか」
     どうやって食べるかはともかく耀の提案でタワーと一緒に皆でハイ、チーズ!
     
    ●挑むは限界
    「食らい尽くしてやるわ……!」
     ぎらつく瞳で食べる速度はどんどん上がり、リリアの食欲は底無しだ。
    「まだ食べ足りないわ。おかわり、貰えるかしら?」
     おかわりを貰い、腹の音を盛大に響かせると、
    「みなさんがつくってくれたご当地愛がつまった料理の数々、無駄にはしません!」
     星も勢いよく飛びつき次々と料理を胃袋に収めるが……もう駄目かも!
    「まだまだ私にはいけます! 秘密兵器投入します」
     愛とカレーは星と全てを包み込む!
     
     戦場を共に駆けるのもいいが、こんな日々を過ごすのも悪くない。
     二人分の甘味を手に黎嚇は戻ってくると、桃が用意したジンギスカンのいい匂い。
    「料理のコツは食べる人のことを考えて作ることだと聞いたんです」
     学校に着てから少しずつ練習した料理を黎嚇はかみ締める。丹精込めて作ってくれた、女の子の手料理。
     様々な思いを心の内に平らげていく黎嚇を目に桃はシメのうどんを肉の出汁を絡め、一口。
     
    「よっしゃドロシーの料理だ! 超楽しみ!!」
     新の前には恋人が作ったローストビーフとプディング。
     食欲中枢を刺激してくる料理に新たは舌鼓を打つ。
    「んー、やっぱりドロシーの淹れてくれた紅茶はおいしいね……」
     食後はミルクティーとたっぷりのお菓子。
    「お粗末さまデシタ!」
     にこりと笑顔にまた一口食べれは、熱いスープで脂を流し、キャベツを食べる武流の隣にはメイニーヒルト。
     一人より二人で食べた方が楽しいし、心許せるパートナーと共に地獄を乗り越える事は合宿の意義にも沿っている。
     二人は共に美味しい料理をシェアし、食べていく。
    「メイニー、次はどこに行こうか?」
     覚悟は決まっている。
     腹と心が満たされるまでこの地獄を食べ尽くす……!
     
     智優利の好みが分からず嶺滋は皮から作った普通の辛さの餃子を焼きだせば、隣からは味噌とソースが絡み合ういい匂い。
     テーブルにはどーんと作った岡山県のご当地焼きそばと静岡のご当地餃子。
    「レージ君のあーんなら私いつもよりいーッパイ食べれる気がする!!!!」
     天真爛漫な笑顔にあーんとすれば、望とクレンドは食滅者として想像を絶する戦いの真っ只中。
    「お、俺には……食滅者としての才能が……うぅ……! 無いというのか……!」
     誓いを立てたと言うのに徐々にペースが落ちる弟子を尻目に師匠は作った分を食滅してしまう。
     その勢いはそれこそ学園の予算をオーバーしかねない程。
    「まだ腹3分目ってところでしょうか。おかわりください♪」
     恐るべし師匠。
     
    「念入りに葛練ったさかいかなり弾力でたんや」
     でかどらやきの説明を始める悟だが、むせる想希へ茶を差し出した。
     想希のホールケーキ大の水無月と巨大生八つ橋の味見し、悟はドデカ級の美味さに感動する中、
    「お、俺のはもうえぇから! 想希死ぬでー!」
     もう1口摘もうとする想希を抱きしめ止めた。
     
    「明石焼きを作ッたンじゃ。食すかえ?」
     作った明石焼きを手に言う恩だが、既に命の口の中。
    「んぐ……もう突っ込んでんじゃねぇか」
    「拒否権? 知らぬのう」
     ふふと笑う恩。
    「ほれ、お前ぇさんも食え食え」
     その様子を目にお礼とばかりに命は筑前煮を恩の口へ。
     二人は互いが作った料理を口にする。
     
    「ヒャッハー!」
     狼煙が半狂乱で作り上げた山盛りタコ焼きとピザみたいなサイズのお好み焼きの隣にはマヨネーズで大阪城を描いた広島焼き。作ったのは圭一だが、
    「アァァチィィイ」
    「流石私の彼氏様! 素敵よー!」
     お好み焼きをキャッチし、愛しの劉麗からハンカチで拭いてもらう。
    「これは……最高のご当地グルメだよね!」
    「これは大きくなるわね!」
     小豆に拘ったあんころもちを食べるシスティナは劉麗の言葉を黒い笑顔で好意的にとり、もう一つ。
     世の中色々な愛情表現があるものだと、納得しながらミハエルは作ったたまごせんにかじりつき、九十九が用意した岡山のフルーツパフェも確保。
    「これ、フルーツ名産ならどの土地でも――」
    「OK九条、少し黙れ」
     出来上がった大量のそれを見て言いかける九十九の口は狼煙は塞がれてしまう。何故だ。
    「よろしければ、どうぞ」
     狼煙はミハエルから温かい緑茶を受け取り、【残念教室】の皆はご当地料理を食べていく。
     皆で無事にご馳走様ができるように。
     
    「わ、力作ばかりですね! 少しずつ頂きますね」
    「どれもおいしそうです……!」
     宇都宮の餃子をテーブルに置き、颯音は皆が作った料理の数々を見渡した。
    「鯛にたこ焼きに……豪勢! 炭水化物多い気がすげーするけどきりたんぽ鍋も石狩鍋も汁物だから飲み物ダネ!」
     食紅を使い甘納豆で赤飯を炊いた佐藤・司は冬崖のきりたんぽ鍋と七の石狩鍋へと目を向けると色的にライバルっぽいビーツを使ったサラダを作ったオリガもその数々を見る。
     囲炉裏のかわりにコンロで焼いたきりたんぽ、石狩鍋にはぷりぷりのいくら。具沢山のお鍋はとても美味しそう。
     鯛めしを作った嵐も並ぶ料理の数々に見た事のない笑顔でキラキラさせると、
    「蕎麦だけで満足だけれど鯛もたこ焼きももんじゃも捨て難い。きりたんぽ鍋も暖まりそうだし」
     唐揚げは絶対食べると狭霧はできたての蕎麦を並べながら決意する。
    「おー! すっげぇどれも美味そうじゃん!」
    「なんか良い感じ! おい、残さず食べろよ」
     調理過程で不思議味物体と化したトルコライスを手にする朔之助と、指を切ったりしながらも頑張って作ったちょっぴり半生っぽいたこ焼きを作った風間・司も料理をテーブルへ。
     手伝った天ぷらを蕎麦に乗せようと思いながら葵はもんじゃを焼くためのホットプレートを温める。どれも美味しそうなものばかりだが、一部手遅れもあるような……。
    「……トルコライスってお菓子なの?」
     魯肉飯を用意した櫂は食べた事のない料理に作り方を教えてもらったりと興味津々でいると、雫が作った一口アップルパイが目に留まる。故郷の林檎で作った一口サイズの綺麗なバラがテーブルに咲いている。
    「しかしぎょうさん作ったな」
    「で、でもこれだけあったら食べる時が大変そうなのですね……!」
     手打ちから麺を作り、天かすではなく揚げたホルモンが乗るかすうどんを手に薫と、手伝いもありエビやホタルイカなどの天ぷらを作った朋恵は言うが、皆がいれば大丈夫!
    「こうして色々楽しめるのが素敵ね!」
     はふはふしながらたこ焼きを食べていると、
    「あたしも面白そうなデザートがあったカラ追加しとくね」
     こ、これは……!
     それは異彩を放つ、メンバーの心に刻まれた懐かしいもの。
    「……個性的な味ですね……」
     一口食べた雫の体と心が冷えていく。
     嵐が用意した【宵空】名物超個性的なパフェと共に、皆で楽しく料理を食べるのだった。
     
     仮眠を取りつつ英国料理と倫敦の裏名物を作り食べたアリス・バークリーだが、合宿の終了時間は刻々と迫ってくる。
     そして――、
    「これでこの会場もお仕舞いね」
     完食。
     周囲を見渡せば死屍累々、死して屍拾うものなし。
     ……かと思いきや。
    「ごちそう様! さてと……帰る前にどこかの食べ物屋さんいってみようかな? 一緒に行く人~!」
     片っ端から様々なグルメを食し、レポートしたカーリーはまだ余裕のようだ。
     
    ●幕は閉じる
     こうして地獄合宿、大阪会場の幕は閉じる。
     文字通り地獄を見た者もいれば天国を見た者もいるだろうが、今回の合宿を通して得るものも多かっただろう。
     
     さて、しおりにも書いてあった『不正をはたらこうとした者が受ける地獄より恐ろしい罰』。
     誰が罰を受けたか、どんな罰だったかを知る者はいない。
     ――罰を受けた者以外は。

    作者:カンナミユ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年5月14日
    難度:簡単
    参加:166人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 22
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