寒くて暗い小屋のすみ

    作者:海乃もずく

    ●いらない子
     郊外の古びた一軒家。小雨が降り、寒さがしみる夜の9時過ぎ。
     庭のプレハブ物置から、小学生くらいの男の子の泣き声がする。
    「……ひっく……ぐすっ……」
     閉じ込められてから数時間。もう時間の感覚もない。
     一宮・紘都(いちのみや・ひろと)は、昼ご飯中に行儀の悪さを怒られて、自宅のプレハブ物置に閉じ込められた。
     ――なんて出来の悪い子だろう! 顔を見るのもイライラするよ!
     憎しみのこもった、祖母の言葉。祖父は目を合わさず、そういう時は何も言わない。
     母は数年前からいない。両親が離婚した後、母は祖父母宅に紘都を置いて失踪した。
     祖母も母も、常にヒステリックで、理不尽に怒鳴り、しばしばに手をあげる。……紘都はそんな生活しか知らない。
    「うっ……うっ……」
     こみ上げてくる嗚咽をこらえ、さらに数十分。祖母も祖父も訪れる気配はない。
     暗闇に閉じ込められた恐怖。自己を否定された苦痛。空腹と疲労、寒さ、不安。それらがない交ぜとなり、紘都の中で何かが爆ぜた。
     ――ゆらりと紘都は立ち上がる。
    「Gruuuuu……Gaaaaa……!」
     プレハブ物置が大きくひしゃげ、内側からの衝撃に大穴があく。中から出てくるのは、青い異形のダークネス。
     デモノイドとなった紘都は、破壊の衝動のままに荒れ狂う。
     暴れて、殴って、壊して、殺して……その先に何があろうと、闇へと身を委ねた紘都には、もう関係のないことだった。
     
    ●闇への入り口
    「デモノイドに闇墜ちする男の子がいるんだよ」
     天野川・カノン(中学生エクスブレイン・dn0180)は移動型血液採取寝台・仁左衛門の上に、事件の資料を並べる。
     資料写真には、小学生低学年くらいの少年が写っていた。
    「一宮・紘都(いちのみや・ひろと)くん。このまま何もしないでいると、彼はデモノイドとなって暴れ回り、多くの被害を出してしまの」
     しかし予知を生かせば、デモノイドが事件を起こす直前に介入できる。
    「デモノイドになったばかりなら、多少の人間の心が残っている事があるよ。会話はできないから一方的な声かけになるけれど……」
     救出できるかどうかは、デモノイドとなったものが、どれだけ強く、人間に戻りたいと願うかどうかに掛かっている。
    「紘都くんが人間に戻りたいと強く思えば、灼滅後に、デモノイドヒューマンとして助け出す事が出来るかもしれないよ」
     介入タイミングは夜11時頃、紘都がデモノイドになった直後。
    「それ以前に介入すれば、その場の闇墜ちは防げるかもしれない。けれど、彼の精神はもうぎりぎりだから、別の機会に闇墜ちしてしまうだけ」
     予知外のタイミングで闇墜ちされると、被害を防ぐことは出来なくなる。
    「だから、紘都くんがデモノイドになるまで待ってから介入したほうが、結果的にはいいの」
     デモノイドになった紘都が、プレハブ物置を壊して出てきた時に、迎え撃ってほしいとカノンは続けた。
     プレハブ物置の前は、戦闘が可能な程度の庭がある。街灯があるので、光源は問題ない。会話程度の物音は小雨でかき消されるが、戦闘音への対策は必要だろう。
     戦闘になれば、紘都はデモノイドヒューマン相当のサイキックを使う。
    「あと、この言い方はよくないかもしれないけど――紘都くんは、『存在を望まれていない子』なんだよね」
     両親はどちらも連絡を断って久しく、祖父母は、紘都を厄介者だと思っている。世間体が悪いから育てているだけだという。
    「彼自身も自分はいらない子だと認識していて、生きる意欲を失いかけているの」
     そんな子にどう声をかければ、人間に戻りたいと思ってもらえるのか。難しいかもしれないが、心からの言葉ならばきっと通じるだろうと……通じてほしいと、カノンは言った。
    「灼滅するだけなら難しくないけれど、助け出せるかどうかはみんなにかかっている。完全なデモノイドになってしまう前に、どうか彼を助けてあげて」


    参加者
    天城・桜子(淡墨桜・d01394)
    彩瑠・さくらえ(望月桜・d02131)
    草那岐・勇介(舞台風・d02601)
    中村・琴緒(情け無い暗殺者・d02817)
    月原・煌介(白砂月炎・d07908)
    八重波・真忌(玉垣ノ篝火・d17933)
    大須賀・エマ(ゴールディ・d23477)
    九賀谷・晶(高校生デモノイドヒューマン・d31961)

    ■リプレイ

    ●デモノイドの子供
     人影のない、雨音だけが響く夜の住宅街。
     小さなプレハブ小屋を破砕し、中からデモノイドが現れる。やすやすとトタン板を引きちぎる、怪物じみた異様な巨躯。
     暴虐と殺戮の衝動に突き動かされ、理性を失ったデモノイドは腕を振り上げ――。
    「こんばんは、紘都」
     ――不意に、デモノイドのすぐ近くから声がした。
     首を巡らせるまでもなく、デモノイド――紘都の視線は、すぐ近くの人影を捉える。月原・煌介(白砂月炎・d07908)が、真摯な光をたたえた瞳を向けていた。
     草那岐・勇介(舞台風・d02601)も、優しい笑顔で紘都に話しかける。
    「こんばんは、紘都くん。俺、紘都くんと友達になりに来たんだ」
     いろんな話をして、いっぱい笑って。これからいっぱい、一緒に幸せになろうよ。
     デモノイドはちっぽけな人間を叩き潰すため、青い筋肉に力をこめる。振り下ろされる青い腕。
     その豪腕を、九賀谷・晶(高校生デモノイドヒューマン・d31961)が受け止める。ギィンと重い音が響き、青い腕と手甲の盾が拮抗する。
    「一旦下がってください、月原先輩! 勇介も!」
     今回の救出、チーム全体の士気の高さを晶は感じる。晶にとっても、紘都は同胞。いやがうえにも気合いが入る。
     助けたいと強く思う。それは、八重波・真忌(玉垣ノ篝火・d17933)も同じ。
    (「放っておけないんです。ですから、助けたいんです」)
     元は孤児だった真忌。道一つ違えばこうなっていたのかもしれない。
     紘都を囲むように陣形を整え、彼らはそれぞれの武器を構える。
    「前衛、踏ん張ってくわよ。私ら抜かれたら乱戦みたくなっちゃうし」
     天城・桜子(淡墨桜・d01394)は力強く宣言し、口調を変えてつけ足した。
    「みんな思うところあるんでしょうけど。入れ込みすぎて、やられたりしないでよ?」
     そんな事ないだろうけども、と苦笑交じりの桜子に、中村・琴緒(情け無い暗殺者・d02817)も唇の端を緩める。
    「心するぜ。俺達に怪我を負わせたことで、少年にショックを与えたくねぇしなぁ」
     紘都の闇墜ちは、『夜中までプレハブ小屋に閉じ込められた』ことが全てではない。
     自分はいらない子。
     必要とされていない子。
     存在してはいけない子。
     そんなふうに思うようになるに至った、そもそもの家庭環境こそ――。
    (「俺ぁ仕置人として、数多の敵を殺したから……あまり人のことは言えねぇけど。それでも、ちっせぇ子供がそう思っちまうほど追い詰められんのはおかしいぜ」)
     琴緒は日本刀のつばに手をかける。今日は、使うつもりはないものだが。
    「この世の闇の助け人、中村琴緒、いざ参る」
     大須賀・エマ(ゴールディ・d23477)は家屋を見やる。雨音に遮られたおかげ――というには大きな音がした直後だが、寝室の祖父母が起き出す気配はない。
     手間は一つ省けたが、周りの大人が、いかに紘都に無関心か。そのことがエマの気に障る。
    (「灼滅ではなく絶対に救出したい……待ってろよ、紘都」)
     その時、デモノイドが咆吼した。
    「Gruuuuu……Gaaaaa……!」
     空気が震える。彩瑠・さくらえ(望月桜・d02131)が音を遮断していなければ、声は近隣まで響いただろう。
     雨。さくらえが思い出すのは、雨の夜の事故。幼い自分を庇って死んだ母。母が死んだ原因の自分はいらない子なのだと。
    (「この子は、あの時の僕」)
     独りが怖くて寂しくて、どうしていいかわからなくて泣いていた、あの頃の。
     ……だから、伝えてあげたい。
     キミはいらなくなんかない。独りじゃないよと。

    ●閉ざされた心
    「親がいない悲しみは理解できるわ。私も、そうだしね!」
     先陣を切って桜子が走る。
    「でもその後の境遇は理解してあげられない。だからせめてストレス発散にくらい、付き合ってあげるわよ!」
     桜子の手元で回転する槍が、デモノイドの腕から生える刃とぶつかり、火花を散らす。
     エマは異形の片腕でデモノイドを殴りつける。注意を引きつけ、紘都、と呼びかける。
    「大丈夫だ。お前は今で十分すぎる程頑張ってる。……でもお前の周りの大人は、正直クソばっかりだ!」
    「お、おおい、大須賀」
     思わず琴緒がエマを見返す。口調を和らげてエマは続ける。
    「認められないってつらいのはわかる、でも、お前まで堕ちることはないんだ」
    「紘都さん。全て全て、ぶちまけてください。大丈夫、私たちが、受け止めますから」
     返答として真忌へ向けられたのは、鈍く光る砲口。太く束ねられた致死性の光線が、一直線に真忌の胸を貫く。
    「八重波先輩!」
     真忌自身の回復と、ナノナノの月白だけでは回復が足りず、勇介も回復に回る。傷をおさえながら、真忌は言葉を続ける。
    「紘都さん。紘都さんがいなくなると、悲しむ人たちがいます。私たちです」
     しかし、デモノイドはわずらわしげに暴れ回るだけ。
     ――手遅れなのか。声は届かないのか。
     そんな不安を振り切り、彼らは声をかけ続ける。
    「このままじゃお前はどこへも行けなくなる、お前はまだこっちで、自分の理想へ歩いていけるんだ!」
    「存在しちゃいけねぇなんてこたぁねぇ。ただ胸はって、背筋びしっと伸ばしてお天道さんを仰ぎ見りゃいいのさ」
     晶の声、琴緒の声。
     デモノイドの反応がなくても、紘都としての返答がなくても。
     戦いながら目を合わせ、名を呼び、語りかける。
     助けたいという思いを、近い将来にある希望を、寂しさへの理解を、共感を、いたわりを。
     何度も、何度も。
    「Gaaaaa……!」
     デモノイドの腕先から、強酸性の酸が噴射される。
    「いっつぅ……! 駄々こねる子供は手加減を知らないわね、もう!」
     上半身にかかった酸を振り払い、桜子は立ち上がる。
     防御寄りの布陣のため、桜子らがつくる防衛線は命綱に等しい。攻撃は前へ引き寄せ、全てここで受け止める。
     説得を長く続けるために。
     めき、と桜子は指をかき鳴らす。地を蹴り、相手の懐に飛び込む。力一杯拳を振り抜く。
    「硬い、けど――――通すわよ!」
     心臓を引っこ抜くかのような桜子の一撃。後方へ吹っ飛ばされるデモノイド。
     勇介は癒やしの効果を込めた矢を飛ばす。今は、攻撃に回る余裕はない。
    「紘都くん、寂しいことも、悔しいことも、泣きたい気持ちも、全部受け止めるよ! 嫌な気持ち、今日で終わらせよう」
    (「親に愛される幸せに気づかずに甘えるだけだった罰当たりな俺より、必死で頑張って来た紘都くんの方が、遥かに幸せになる権利がある!」)
    「……俺達、待ってる。君の帰りを」
     絶対に闇から連れ戻す。勇介の瞳に宿る決意の光を、デモノイドの硬質の体が弾き返す。
     さくらえは終始、紘都の『目』を見つめられる位置を意識し立ち回る。
     前線で攻撃を引きつけ、何度も呼びかける。
    「大丈夫、キミはもう寒くない。寂しくない。全部受け止めてみせるから」
     ――その唸り声は、泣き叫ぶ声。
    (「その身体がどんなに大きくて」)
     ――その暴れる体は、ずっと欲しかった、もらえなかった愛情を求めた形。
    (「叩きつける力がどれほど強くても」)
     ――なら、できることは一つ。
    (「デモノイドに変化したその身体ごと抱きしめてあげたい」)
     振り下ろされる巨大な刀は、体の半分をごっそり持っていかれそうなほど重い。まともに受ければ、さくらえの全身がきしむ。打ち合える時間はそう長くない。
     煌介の魔杖が、虹水晶の煌きを帯びてデモノイドの体へと打ち込まれる。
    「俺達には、君が、必要なんだ」
     自分はいらない子だと、泣く子供。
    (「俺も昔自分をそう思った、でも今は」)
    「今迄、頑張ったね」
     煌介を見下ろすデモノイドの瞳に、感情らしいものは見えない。
     青い怪物にしか見えない相手に向けて、煌介は呼びかける。
    「君がどんな子だって、大好きだよ。紘都」

    ●兆し
     弱い街灯の光と、持参した光源の中。デモノイドの体が、青く輝く。
    「Gaaaaa……!」
     雨に打たれながら、デモノイドは咆える。
     攻撃が集中する前線は3人とも傷が深い。治癒ができない傷が蓄積し始めている。
    「まだまだ! もっと暴れれても問題ないわよ?」
     桜子は自身の傷を癒やし、妖の槍を握りしめる。桜子の真横を、死の光線が通り抜ける。
    「九賀谷先輩、すぐに回復を」
    「いや、勇介は声をかけ続けろって。こっちには構うな」
     勇介への攻撃を代わりに受けた晶へ、たくさんのハートと共にナノナノの月白が飛ぶ。
     数え切れないほどの攻撃が飛び交い、双方の消耗が激しくなる中で。
    「さくら。紘都、が」
     煌介の呟きに、さくらえは頷く。
     ――本当に、ごくごくわずかではあるけれど。
     目が合う機会がふえて。
     名を呼ぶ声にも反応する。
    「お前が存在しなけりゃ悲しむやつだっている。あぁ、俺達だってそのうちの一部さ」
     武器を納め、琴緒は粘り強く語りかける。
     デモノイドの視線が琴緒を捉える。
     ……その瞳の中にわずかに見える、すがるような色。
    「他の人達はこれから見つける人たちのことだぁ。そいつらまとめて、友達っつーんだ」
     始めのうちは、琴緒の体力では2回受ければ危うかった。けれども今、2回目の攻撃を受けても琴緒は立っている。
     デモノイドの攻撃力が低下している。
     見た目は変わらない。けれど、紘都の心は、そこにある。
    「望め。人として、どう生きたいのか望め! どう生きたかったのか、それを俺たちに示せ!」
     晶はクルセイドソードを振り下ろし、強く叫び、さらに言葉を続ける。
    「お前のその辛さ、悲しみ、全部聞いてやる。ちゃんとこっちへくれば、そこからお前を別の未来へ道案内してやる!」
    「紘都くん、強く人に戻りたいって願って、信じて!」
    「今のつらさだってあと1年か2年だ、お前の心を支えてやるからなんとか乗り切ろう! 大人になってやつらを見返そう!」
     勇介のエアシューズが銀色の軌跡を描き、エマの蛇腹剣が急所を断つ。
     煌介はしなやかに跳び、拳にオーラを集束させる。
    「大丈夫、俺達は逃げない、置いてかない。紘都、君と泣き、笑う為だけに来たんだ」
     優しい気をまとう連打を打ち込み、煌介はこれまでのことを、今に至るまでの道を思う。
    (「6歳から独り彷徨ってた俺……けど今、俺は、皆も、この子の闇を抱き締められる」)
     心に痛みを抱え生きる者は少なくない。灼滅者の道を歩むならなおのこと。
    (「君も」)
     煌介の視線に気づいたさくらえが、かすかに首を巡らせた。……いつも戦うときは『女装』の彼が、今日は『男装』で来ている理由。
     一瞬だけさくらえと視線を合わせ、煌介は紘都への攻撃を放つ。
    「君は願うんだ。後は、任せて」
     無表情の瞳をかすかにうるませ、煌介はしっかりと瞳を合わせる。デモノイドの瞳の向こう、小さな子供が煌介を見つめ返す。
     さくらえの影が変化し、青い四肢を絡め取る。抱きしめるように。
    「もう大丈夫、独りじゃないよ。皆ここに居る。……だから、戻っておいで」
     デモノイドの体がふらつき、膝をつく。
    「頑張ってきた紘都さん。好きですよ」
     胸元にハートを浮かべた真忌が浮かべる微笑みは、慈愛。
    「今まで、よく頑張ってきましたね。もう独りじゃ、ありませんよ」
     真忌の両手に柔らかなオーラの光が集束する。
    「大丈夫ですから」
    「…………ん……」
     ほんのかすかな吐息が応えて。
     真忌の放ったオーラを受けたデモノイドは、倒れると同時に見る間に縮む。ほどなく、それは紘都の外見をとり戻した。

    ●おかえり
     デモノイドとして闇墜ちしかけていた一宮・紘都は、ギリギリのところで、闇からの帰還を果たすことができた。
    「……やっぱり心ってのは脆いな。それでも、俺は力ではなく心を選んだ……」
     晶は考え込むように呟く。
     ……心を選んだことが結果的に裏切りになっても、それは自分の意思だと、晶は改めて思う。
     雨を拭かれ、毛布にくるまった紘都は、両手でハーブティのタンブラーを持って、戸惑い気味の表情を浮かべている。
     桜子の見るところ、紘都は未だ、自分の身に起きたことを、明確に理解していない。
    「愛されない子供時代を送れないのは、辛いわよね……ま、私もそうだけどさ」

     暖かな毛布と、いい香りのするお茶と、おいしい食べ物と。
     そして、いくつものあたたかな手が、紘都に触れる。
    「ナノッ! ナノナノ」
     頭上を飛ぶ、人懐こいぬいぐるみのような生き物を、紘都は珍しそうに見上げる。
    「紘都、忘れるな。絶対に1人じゃないってことを」
    「紘都くん、学園に来ない? 俺の家に住んでも良いよ」
    「いろいろな人がいるんですよ、本当」
     『えま』さん。『ゆうすけ』さん。『まいみ』さん。一人一人の名前を、紘都は覚え込む。なぜだか、とても大切なことのような気がしたので。
     さっき、ぎゅってしてくれた人は『こうすけ』さん。おんぶは恥ずかしいから断ったけれど、少し残念だったかもしれない。
     『こうすけ』さんの隣にいた人が『さくらえ』さん。おいしい食べ物をくれた人は『ことお』さんというらしい。向こうにいる人は『あきら』さんと、『さくらこ』さん。
     『ガクエン』はよくわからないけれど、そこに行けば、この人達がいるという。
     暖かな毛布に身を委ね、紘都は眠気を感じて目を閉じる。少し休んでもよさそうだと思った。……ここはとても安心できるから……。
     ――紘都が今日のことを本当の意味で理解できるには、しばらくかかるだろう。
     今は心に沈んでいる、紘都が今日もらった、たくさんの言葉。
     その言葉の数々が、差し伸べられた手の全てが、これからの将来、紘都が生きていく上で自身を支える宝物になる。
     そのことに紘都が気づくのは、……まだ、もう少し先の話。
    (「君が必要だよ、大好きだよ」)

    作者:海乃もずく 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年4月30日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 3/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 2
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