魔のコーヒーカップ

    ●静岡県某所
     コーヒーカップの遊具を売りにしている遊園地があった。
     この遊園地にあるコーヒーカップは、ハンドルを回す事によって回転数を調節する事が出来たらしく、調子に乗って回し過ぎると地獄を見るほど凄かったようである。
     そのため、いつの頃からか『ハンドルを回さなくても、高速回転するコーヒーカップがある』と噂されるようになったらしい。

    「サイキックアブソーバーが俺を呼んでいる……時が、来たようだな!」
     今回の依頼を語るのは、神崎・ヤマト。
     相変わらず、薄ら寒い。

     今回、倒すべき相手は、コーヒーカップに擬態した都市伝説だ。
     この都市伝説は普段コーヒーカップに擬態しており、本物と見分けがつかない。
     おそらく、お前達が行く頃には、コーヒーカップに擬態した都市伝説が高速回転し、お客達を恐怖のどん底に叩き落している頃だろう。
     そのため、まずは被害者達の救出を優先してほしい。
     ただし、最悪の場合はリバースするから、その事についてきちんと対策を練っておけよ。
     また、都市伝説は獲物を見つけると、体当たりを仕掛けて相手をふっ飛ばし、、そのままコーヒーカップに入れるプロ。
     最悪の場合は地獄のような展開が待っているから、気を付けてくれ。


    参加者
    月代・沙雪(月華之雫・d00742)
    玖珂・双葉(黒紅吸鬼・d00845)
    アンカー・バールフリット(ルーンマスター・d01153)
    城・ファーラ(忍城の守り手・d01537)
    スィン・オルタンシア(ピュアハートブレイク・d03290)
    緋野・桜火(高校生魔法使い・d06142)
    及川・翔子(剣客・d06467)
    榊・開耶(殴り巫女・d08259)

    ■リプレイ

    ●遊園地
    「確か遊園地って、楽しい乗り物とかあるところっすよね?! 初めてだからワクワクするっす♪ そんな場所での事件、ずばばっとみんなで解決しちゃうっすよ!!」
     ワクワクと期待に胸を膨らませ、榊・開耶(殴り巫女・d08259)が都市伝説の確認された遊園地に向かう。
     都市伝説の確認された遊園地は、ほんのり昭和の雰囲気漂う古風な造り。
     その分、気兼ねなく遊ぶ事が出来るため、それなりに受けがいいのかも知れない。
    「やっぱり、遊園地はテンションが上がりますねー! 静岡に来るのも久々ですし、全国各地のご当地パワー、いーっぱい頂きますよー!」
     楽しそうにスキップをしながら、城・ファーラ(忍城の守り手・d01537)が園内を歩いていく。
     依頼とは言え遊園地に来ているせいか、自然にテンションが上がっていく。
     さすがに依頼なので不謹慎だと思ったが、なかなか気持ちを抑える事が出来なかった。
    「せっかくですから、終わった後に少し遊んでいきたいですね~」
     危うく依頼である事を忘れそうになりつつ、スィン・オルタンシア(ピュアハートブレイク・d03290)がニコリと笑う。
     本音を言えば……、遊びたい。
     てっとり早く都市伝説を倒して、遊びに専念したいというのが本音。
     もちろん、そのためにも都市伝説を探さねばならないのだが、コーヒーカップがある場所までは、まだまだ先。
     しかも、無駄に混んでいる。
    「どうして遊園地にソロで来なくてはならないのか……!」
     納得のいかない様子で、アンカー・バールフリット(ルーンマスター・d01153)が愚痴をこぼす。
     どこを見ても、カップル、カップル、いちゃつくカップル!
     その上、女の子達がみんな可愛い! 胸が大きい! 脚が綺麗!
     彼氏と思しき男性にアピールする気満々の恰好!
     思わず見とれてしまった自分自身を呪いつつ、アンカーが拳をギュッと握り締めた。
     正直……、羨ましい。
     何故、あの横にいるのが自分じゃないんだ、と言う気持ちになりつつ、遊園地の入り口で見栄を張って買ってしまった2枚のチケットを眺める。
     別に悔しくない。悔しくはないが、瞳から流れ落ちる水は何だ状態。
     そんな気持ちを振り払うようにして、酔い止めの薬を口の中に放り込む。
     こんな状態でコーヒーカップに乗ったら間違いなく、吐く! 吐きまくる!
     辺り一面レインボー。いや、それ以上の大惨事!
    「あら……、コーヒーカップが絶叫マシーンになってるわね」
     唖然とした表情を浮かべ、及川・翔子(剣客・d06467)が汗を流す。
     明らかに一台だけ猛スピードで回っているコーヒーカップがあった。
     それに乗っているカップルは、しがみつくだけで、やっと。
     あと数分も放っておけば、そのまま何処かに吹っ飛んでいきそうな勢いで回っている。
    「……回っているですね。あの回転量、最早苦行の域に達しているのです。兎も角、早く何とかしないとです」
     念の為に紙袋に2重にしたビニール袋を入れ、月代・沙雪(月華之雫・d00742)が覚悟を決めた。
     だが、この状況では近づけない。近づける訳がない。
     既にまわりのお客は自己判断で避難したようだが、このままカップルを見捨てる訳にもいかなかった。
    「なんというか、噂話が本当になるってのは、怖いなぁ。ちょっとした噂話が元で都市伝説に化けるんだものなぁ。……たく! 厄介だよなぁ、噂話が力をもって都市伝説にってのは……」
     しみじみとした表情を浮かべ、玖珂・双葉(黒紅吸鬼・d00845)が都市伝説と思しきコーヒーカップを眺める。
     カップルが見えなくなるほど……、回っていた。
     そして、男性が飛んだ。
     豪快に、派手に、弧を描くようにして。
    「……頼む。間に合ってくれ!」
     祈るような表情を浮かべ、緋野・桜火(高校生魔法使い・d06142)が全速力で走り出す。
     そして、男性をキャッチ。
     しかし、勢い余って、男性を落とす。うっかり、落とす。
     それでも、大事には至らなかった。
     桜火が何となくキャッチしたおかげで、幸い軽傷。
     何とも言えない気まずい雰囲気を残したまま、桜火がコホンと小さく咳をした。

    ●女性
    「つーか、あっちも助けないとマズイだろ」
     さらにコーヒーカップの回転速度が増したため、双葉がハッとした表情を浮かべて唇を噛む。
     コーヒーカップの強度が分からない以上、迂闊に攻撃すれば女性の命を奪う事にも成りかねない。
     だからと言って、このまま放っておいたとしても、女性の安全を保障する事は出来なかった。
     だが、やらねばならない。やるしかない。
    「こっちに興味を持って、中の人をポイしてくれたらいいっすけど……」
     コーヒーカップに視線を送り、開耶が険しい表情を浮かべる。
     もしかすると、先程の男性はポイされたのかも知れない。
     そこにどういった意味が含まれているのか分からないが、男性は口元を押さえてオロオロしていた。
    「袋……、使うですか?」
     心配した様子で、沙雪が男性に袋を渡す。
     男性はそれをもぎ取ると、まるで恋人のように抱きかかえ、茂みへと姿を消した。
    「少しでも動きを止められれば……っ!」
     覚悟を決めた様子で助走をつけ、スィンが高速回転しているコーヒーカップの根本に刀を差し込んだ。
     次の瞬間、スィンが弾き飛ばされて宙を舞ったが、そのおかげでコーヒーカップの速度が先程よりも、ほんの少しだけ遅くなった。
    「楽しいアトラクションのふりをして、人を驚かすとは許せないな。私が射的ゲームの的にしてやろう」
     予め預言者の瞳で命中率を高めた後、桜火が狙いを定めてバスタービームを放つ。
     それと同時にコーヒーカップが派手にバランスを崩し、その中に入っていた女性が投げ出されるようにして宙を舞った。
    「今……、助ける!」
     すぐさま箒に飛び乗り、アンカーが女性の救出にむかう。
     もしかすると、此処から恋が始まるかも知れない。
     そんな淡い期待を胸に秘め、救出に向かったが。
     ……間に合わない!
     どうやら、妄想に時間を取られ、速度が遅くなっていた模様。
    「ま、任せて!」
     女性の落下地点を何となく計算しつつ、翔子が後先考えずに走り出す。
     ここで一歩間違えれば、グシャリ。
     最悪の場合は、目の前でグシャリ。
     血溜まりの中、呆然とする可能性もあったが、何とかキャッチ!
     その反動で両腕にズッシリと痛みが走ったが、女性を無事に救出する事が出来たのだから、文句は言えない。
    「ええい、純粋な童心を悪心に変える不届き者め! わたくしが成敗致します!」
     コーヒーカップ……、都市伝説と対峙しながら、ファーラがご当地オーラを漂わせ、カメラ女子から雰囲気をガラッと変え、戦国の姫っぽくなった。
     その間もコーヒーカップは回っている。
     ……次なる獲物を求めて、グルグルと……。

    ●都市伝説
    「さて……、始めましょうか」
     その場で都市伝説を迎えうち、翔子が居合斬りを叩き込む。
     しかし、都市伝説が激しく回っていたため、巻き込まれるようにして翔子の体が宙を舞った。
    「あちゃー、あれに捕まったらやばいなぁ。あんまり乗り物には強くねぇんだよ」
     色々な意味で身の危険を感じつつ、双葉が二段ジャンプで都市伝説のタックルを避ける。
     だが、都市伝説は急にUターンすると、再び双葉に襲い掛かってきた。
    「やるしかないって事か」
     自分なりに納得しつつ、アンカーが上空から都市伝説めがけて、バスターライフルを撃ち込んだ。
     その一撃を喰らって都市伝説が他のコーヒーカップに直撃し、再び回転が弱まって狙いを定めやすくなった。
    「回りすぎなのです! そのまま止まってください!」
     都市伝説の死角に回り込み、沙雪が結界符を投げつける。
     次の瞬間、都市伝説の動きが封じられ、勢いあまって別のコーヒーカップに激突した。
    「動けなければ、こっちのものっす!」
     一気に間合いを詰めながら、開耶がハンドルを持って地獄投げを放つ。
     その一撃を喰らって都市伝説が派手に舞い、落下と同時に跡形もなく砕け散った。
    「まあ……、勝って当然だな」
     都市伝説が完全に消滅した事を確認し、桜火がホッとした様子で溜息をもらす。
     その途端、先程助けた男性が現れ、ガッチリ握手!
     一瞬、『コイツ、手は洗っていのか!? リバースした後、口をぬぐっていたよな、その手で、オイ!』と思ったが、この状態では後の祭り。
     なるべく、リバース的な何かがあった事を、記憶の彼方にすっ飛ばす。
     そのせいか、笑顔が引きつっているが、無事で何より。
     ……考えたら負けである。
    「せっかくですし、少し遊んでいきませんか♪ 楽しまないと損ですよっ☆」
     満面の笑みを浮かべながら、スィンがその場にいた仲間達を誘う。
     その言葉を聞いた桜火が『とりうえず、手を洗ってからな』と言って、近くにあった女子トイレに向かう。
    「だったら、せっかくだから皆さんで記念写真を撮りませんかー?」
     楽しそうにはしゃぎながら、ファーラがピエロを指差した。
     どうやら、ピエロが持っているカメラで、写真を撮ってくれるらしい。
     しかも、今ならサービス期間中で、半額。
     これは撮っておかないと、損だろう。
     そんな事を考えながら、ファーラが仲間達をつれて、ピエロに駆け寄るのであった。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年9月14日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 10/キャラが大事にされていた 4
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