ハゲたハゲタカ

    作者:のらむ


     山奥に建てられたとある大きな屋敷。
     つい先日までは隅々まで手入れされており、常に黒服の人間たちが内外を巡回していた物々しい屋敷であったが、今は全く人気が無い。
     しかしある日の夕方、夕日が眩しいこの時間帯に、屋敷の三階の奥、扉が吹き飛ばされたとある大部屋の中で、ギャーギャーと煩い誰かの喚き声が響いていた。
    「何てことだ……何てことだ!! 私の完璧なビジネスを壊滅させられ、手持ちの幹部の大半が殺されたと思ったら、いきなり出てきたあのスレイヤー共に楓さんも私も殺されてしまった!! 何て奴らだ、全員くたばってしまえばいいのに!!」
     部屋をうろつき回りながらバサバサと羽根を広げたり閉じたりしながら部屋中に羽を撒き散らしているこのスーツ姿のハゲタカ人間の名は、グレイ。
     先日灼滅者達が灼滅することに成功したソロモンの悪魔であり、この場でわめいているのはその残留思念である。
     残留思念ではあるが、過度の怒りとストレスによって、頭部を中心に自慢の羽毛がポツポツ抜けていた。少し哀れだった。
    「奴らには血も涙も無いのか……!! そうは思いませんか、そこの貴女!」
     折れたくちばしを開きながら、グレイは部屋の中央に立つ少女、慈愛のコルネリウスへ投げかける。
    「今迄やってきた事を考えれば、あなたも十分血も涙も無いと思いますけどね……」
     そのコルネリウスの言葉を完全に無視し、グレイはまくしたてる。
    「大体8人がかりって何なんですかこっち2人だったんだから2人で来るのが筋ってもんでしょう! それにしたってあのボケ共私の足の骨砕くわ翼もぎ取るわくちばし折るわ全身チェーンソーでぶった斬るわ…………あの野蛮人共、いつか皆殺しにしてやる!!」
     とにかく怒り心頭といった感じで、グレイは罵詈雑言を並びたて続ける。
     そんなグレイの様子を無表情で眺めていたコルネリウスは天井を仰ぎ、静かに呟く。
    「……プレスター・ジョン。この煩い禿げ……タカをあなたの国にかくまってください」


    「よくかくまおうと思いましたね。いや本当に……という訳で色葉さん、『コルネリが哀れなハゲ経営者を復活、プレジョン国送り』というあなたの推理、当たりましたよ。予想以上に禿げてました」
     神埼・ウィラ(インドア派エクスブレイン・dn0206)はそう言って赤いファイルを開き、事件の説明を始める。
    「慈愛のコルネリウスが、ダークネスの残留思念に力を与え、プレスター・ジョンの国に送る事件はもう皆さんとっくに知っているかと思いますが……まあ、これはその事件の内の1つですね。皆さんは奴が怒りに任せ暴れる前に現場へ向かい、復活したグレイを灼滅して来て下さい」
    「この間の禿げたハゲタカ経営者……グレイが復活させられようとしている、と……敵は奴1人ですか?」
     舞坂・色葉(デッドマンウォーキング・d31920)の問いにウィラは頷く。
    「前回は配下の強化一般人幹部もいましたが、今回は全くいません。奴を全員でよってたかって叩き潰す形になるでしょう」
     ちなみに灼滅者達は、慈愛のコルネリウスがグレイの残留思念が現れた後に、グレイへ接触する形となる。
     事件現場にいるコルネリウスは幻の様なもので戦闘能力もなく、かつ交渉等も行えないので、気にする必要は無いだろう。
    「戦闘能力は以前と変わらず。ポジションはクラッシャーで、雷系の魔術と、残り少ない大切な刃の様な羽を使った攻撃などをしかけてきます。ソロモンの悪魔なので、戦闘能力はぶっちゃけ他のダークネスに比べれば弱いです。それでもまあ、油断しすぎればザクッとやられても不思議はありません」
    「戦場は以前戦った屋敷の大部屋……でいいんですよね。人払いなどは必要ありますか?」
    「全く必要ありません。そもそも山奥に建てられた屋敷ですし、今はほったらかしにされてる状態なので、好きに騒いでも誰もやってこないでしょう」
     色葉の質問に答え、ウィラはファイルをパタンと閉じた。
    「説明は以上です。残留思念といえど、知略に長けたソロモンの悪魔を逃せば、厄介な事になりかねません。ここで、確実に灼滅して下さい」
    「私たちに怒りを向けるのは、逆恨みも甚だしいと思いますが……また私たちに殴られたいというのですから、期待には応えてあげなければいきませんね。何度でも叩き潰してやりましょう」
     色葉がそう言って締め、灼滅者達は現地へ向かう準備を始めるのだった。


    参加者
    遠藤・彩花(純情可憐な元風紀委員・d00221)
    泉・火華流(自意識過剰高機動装甲美少女・d03827)
    山田・菜々(家出娘・d12340)
    那梨・蒼華(蒼氷之華・d19894)
    アムス・キリエ(懊悩する少年聖職者・d20581)
    月代・蒼真(旅人・d22972)
    鴻上・廉也(高校生ダンピール・d29780)
    舞坂・色葉(デッドマンウォーキング・d31920)

    ■リプレイ


     時刻は午後5時を回った頃。場所は山奥のとある大きな屋敷。
     慈愛のコルネリウスの手によって力を与えられるグレイの残留思念を灼滅するべく、灼滅者達はこの屋敷に訪れていた。
    「人を殺すことに金額を付けていた事件の黒幕か。あのやり口は気に入らなかった、直接相対する機会をもらえたのはありがたいな」
     鴻上・廉也(高校生ダンピール・d29780)はそう呟き、屋敷正面の扉を開け放つ。
    「驚くほど早い残留思念の回収だったな……よっぽど悔しい気持ちが強くてコルネリウスの目に留まったのか?」
    「煩い禿げも復活させるなんて、さすが「慈愛」のコルネリウスってとこっすね。前にアンブレイカブルの女の子に再会させてもらったときは少し感謝したっすけど……コルネリウスにとってはどうでもいいんすね」
     月代・蒼真(旅人・d22972)と山田・菜々(家出娘・d12340)がそんな事を言いつつ、屋敷の階段を静かに昇って行く。
    「コルネリウスに関しては、あまり楽しくない思い出があるからねー……どうにかガツンとやってやりたいところだけど、まずは残留思念を灼滅しないとね」
    「何にせよ、思い通りにさせるわけにはいきません」
     泉・火華流(自意識過剰高機動装甲美少女・d03827)と遠藤・彩花(純情可憐な元風紀委員・d00221)がそう言った頃、一同は屋敷の三階へ辿り着いた。
     そして廊下の突き当りの部屋からは、ギャーギャーとわめき散らすグレイの大声が響いていた。
    「随分と元気な事だな……行こうか。羽が全部抜け落ちる前に」
     那梨・蒼華(蒼氷之華・d19894)が仲間たちに投げかけ、一同は一気に部屋の中へ突入した。
    「な、なな、な、ななな、何ですか君達は!! というかまた現れたなこの野蛮人共!! そこのお嬢さんお願いします、こいつらを殺す力を!!」
     滅茶苦茶驚いたグレイだったが、すぐに敵が誰かを理解し、戦闘の構えを取る。
     そしてその場に存在していたコルネリウスの幻影は頷き、グレイに力を与えるとそのまま掻き消えていった。
    「案外早く再開できましたね、元経営者さん。まだ斬られ足りない様ですし、今度こそ満足させてあげますよ」
     舞坂・色葉(デッドマンウォーキング・d31920)がチェーンソー剣をグレイに向けて言い放つ。
    「魂の救済さえなくコルネリウスの手に落ちるなんて……せめて新たな罪を犯さないよう、現世の楔から解き放ちましょう」
     アムス・キリエ(懊悩する少年聖職者・d20581)は静かに神へ祈りを捧げると、スレイヤーカードを解放する。
    「ごちゃごちゃやまかしいんですよこの腐れスレイヤー共!! 私を殺した奴も何人か混じっていますし、今日という今日は絶対ぶち殺してやりますからね!!」
     グレイは翼をバタバタ広げながら、全身に魔力を込めていく。
     そして戦いは始まる。


    「死になさいこのボケ共が!!」
     グレイは初っ端からエンジン全開の様子で、灼滅者達に無数の刃の羽根を撒き散らす。
    「話には聞いてたっすけど……思ったよりも随分と禿げてるっすね。今また禿げたっすけど」
     菜々は放たれた無数の斬撃を軽やかなステップで避けると、片腕を異形化させながらグレイに突撃する。
    「誰が禿げですか小娘!! こんなもん一週間もすれば恐らくきっと多分絶対生えてくるんですからまるで一生このままみたいな風に言わないでもらえま」
    「うるさい! はげ!」
     菜々はグレイの言葉を遮り、その顔面に異形の拳を叩きつける。
     地面に叩きつけられたグレイは折れたくちばしを抑えながら立ち上がり、菜々を睨み付ける。
    「そのままずっと黙ってればいいっす」
     菜々は杖をグレイの鳩尾にフルスイングすると、グレイの身体は爆発しながら壁に思いきり叩きつけられた。
    「よし、このままこのまま続けていこう」
     蒼真が足元の影を変形させて放つと、グレイの身体に纏わりついたまま壁に押さえつける。
    「結局、あの羽は使い切ったら元に戻らないだろうか……? いやはや、身を削ってまで禿げを加速させるとは。その覚悟に敬意を払おう」
    「だから誰が禿げダグァッ!!」
     壁に押さえつけられたグレイの腹に、蒼華が長剣をグッサリ刺した。
    「どこまでも失礼な奴らめ……纏めて捕えてやる!」
     影から抜け出したグレイが右手の爪を振り上げると、そこから電撃を纏った魔法の網が放たれ、前衛を痺れ上がらせる。
    「確かに皆でよってたかって禿げ禿げと罵るのはどうかと思いますが……グレイさんがやって来たことはそれとは比べ物にならない程非道で劣悪ですよ!!」
     彩花はシールドを大きく展開させると前衛を包み込み、受けた傷を瞬く間に癒していく。
    「やかましいわ腐れスレイヤー!」
     グレイはそう叫びながら彩花に向け、雷の弾丸を射出する。
     しかしその弾丸よりも素早い速度で飛び出した廉也が、その弾丸を身体で受け止める。
    「残念だが、仲間を狙うのは俺を倒してからにしてもらおう……もちろん、そう簡単に倒れるつもりはないがな」
    「ありがとうございます、鴻上君……次は私が!」
     彩花は自らの闘気を雷へと変換すると、グレイとの距離を一気に詰める。
    「たかが一般人の命と私の名誉なら、後者の方が大事に決まっているでしょうが!」
    「なんて身勝手な理屈……やはりあなたは、確実にここで倒させてもらいます!」
     彩花は拳をグレイの顔面に叩きつけると、その激しい雷で焼け焦がしながら思いきり吹っ飛ばした。
    「とっくに分かっていた事ではありますが……やはりあなたは悪魔なのですね……」
     アムスはそう呟きながら祈りを捧げると、部屋の中心に巨大な蒼き十字架が出現する。
     そしてその十字架から眩い光が放たれたかと思うと、無数の光線がグレイに向けて放たれる。
    「チッ!! 鬱陶しい!!」
     光線を避けようと飛び跳ねるグレイだったが避けきれず、瞬く間に全身を光線によって焼かれていく。
    「私の邪魔をするな!!」
     グレイが雷を纏わせた拳をアムスに向けると、そこから巨大な雷で出来た拳が放たれ、アムスに襲い掛かる。
    「悪魔の手にかかる程、私達は弱くありません」
     アムスはダイダロスベルトで自身の身体と包み込み、雷の拳を消滅させる。
    「主よ、導きたまえ。救済なき魂に神の御慈悲を」
     そしてアムスが杖を振るうと、魔術によって生み出された竜巻がグレイに襲い掛かり、部屋の隅まで吹っ飛ばした。
    「ますます禿げ散らかした上にこの有様……惨めの極みです。どうせですから羽毛を全て抜き去って、御仏の様なこう神々しい頭部であの世に叩きこんであげますよ」
    「灼滅者如きが生意ブゴッ」
     立ち上がるグレイに色葉は容赦なく引き金を引き、狙撃銃から放たれたビームが頭部を焼いた。
    「いい加減1人くらい死になさい!!」
     グレイは頭を押さえながら翼を広げ、羽の刃を放っていく。
    「無駄無駄、全然当たる気がしないよ!!」
     火華流は駆動させたエアシューズで室内を高速移動し、斬撃を華麗に回避していく。
    「ちょこまか動くな!」
    「残念だけど動きは止めないよ! ……焼き鳥にしてあげるっ!!」
     火華流はグレイの目の前をスライドしながら引き金を引き、炎が纏った弾丸を全身に浴びせる。
     そのままグレイの死角まで回り込んだ火華流は、身体を捻りながら跳び上がり、錐揉み回転をしながらグレイに突撃する。
    「まだまだ、私の勢いはこんなもんじゃないよ!」
     更に片腕に嵌めたバベルブレイカーのからジェット噴射を放つと、ものすごい加速がついた蹴りが放たれる。
    「ちょっと気が早いけど……グレイさん、あっちに行っても頑張ってね♪ ……以上、私より励まし(禿げ増し)の激励&気合注入ね♪」
     火華流の足がグレイの頭部に叩きつけられた瞬間エアシューズのホイールが高速回転し、唯でさえ少なくなってる頭の羽毛が毟り取った。
    「ウギャアアア!! 私の貴重な頭髪がァァ!!」
     甲高い悲鳴を上げながらグレイは頭を抑え、灼滅者達を殺意満点の瞳で睨み付ける。
    「もう許さん絶対許さん!! 絶対血祭りにしてやりますよクソが!!」


     とは言ったものの、グレイの戦闘能力はやはり並のダークネスのそれよりも低く、かなりの勢いで追い詰められていた。
    「仲間がいないんじゃ、悪巧みも効果半減以下だな。また何か企む前に、終わらせてもらうよ」
     蒼真はそう言いながら、手に嵌めた指輪に自身の魔力を充填させていく。
    「殺したのは貴様らでしょうが!! 私の有能な部下たちをことごとく……思い出したらまた腹立ってきましたよ!!」
     グレイは指先から、雷の弾丸を蒼真に向けて撃ち放つ。
    「よっ……と、悪いね。あんたの攻撃は前回の戦いで大夫見慣れてるんだよ」
     蒼真は標識で弾丸を打ち返すと、指輪をグレイに向ける。
    「そっちはどうでもないみたいだけどね」
     そして放たれた呪いがグレイの全身を蝕み、肩の一部が石と化した。
    「援護するよ!」
     火華流はすぐさまバベルブレイカーを構えグレイに接近すると、巨大な杭を叩きこみ、その身体を壁際まで吹き飛ばす。
    「まあ、何度でも引導を渡してやるよ。悪知恵が回るあんたは厄介だし、叩ける機会があれば何度でも叩いてやる」
     そのままグレイに接近した蒼真は鋼鉄の拳をグレイの肩に叩きこみ、一気に打ち砕いた。
    「グゥ……何故私がこんな目に……」
    「それだけの事をしてきたからっすよ!!」
     よろめくグレイの顔面に菜々は鬼の拳を叩きこみ、地面に叩き伏せた。
    「ウグオオ……」
     低い呻き声を上げながら再び立つグレイの前に、蒼華が進み出る。
    「随分と酷い目に合っている様だな。まあ私もその一部を担っているのだが。……そんな訳で、育毛剤のプレゼントだ。遠慮なく受け取ってくれ」
     蒼華はグレイに言い放つと、自らの寄生体から生み出した強酸を、グレイの頭部に思いきり叩きつけた。
    「ウギャアア!!」
     あまりの痛みに地面を転げるグレイに、蒼華は淡々と続ける。
    「うむ、溶けた。良く考えれば増毛剤などもっていなかったな。忘れてくれ」
     そう言いながら蒼華が部屋中に糸を張り巡らせた事に、グレイは気づかなかった。
    「なにするんですかあなた!! マジぶっ殺しますよ!!」
    「まあそんなに怒るな。ちょっとした勘違いじゃないか。口に出すのもはばかられる程哀れな感じになってしまったその頭では、どの道育毛剤もなんの意味もなさないだろう?」
     そして蒼華は剣を大きく振り上げてグレイに突撃する。
    「黙らっしゃ……グ!!」
     剣の攻撃を避けようと後ろに退いたグレイの全身に、蒼華が仕掛けていた糸が絡みつく。
    「悪いが、こっちが本命だ。それにしても……鳥、糸、縛る……これは火で炙りたいな」
    「そういう事ならまかせろ」
     蒼華に続き廉也が、炎を纏わせた弓と矢で攻撃を仕掛ける。
    「立派な羽はお前にはもったいない。今の方が良くお似合いだが……」
     廉也はそう言いながら、グレイの片翼に狙いを定める。
    「サービスだ、変に残っている羽を燃やしてやる」
     そして至近距離から放たれた炎の矢はグレイの翼に深々と突き刺さり、一瞬にして炎で包み込んだ。
    「ウギャアアア!!」
     グレイは暴れ回り、何とか糸から解放される。
    「貴様らはどこまでも私をコケに……!」
     グレイはそのまま雷の網を生成し、灼滅者達に放つ。
    「そんな攻撃では、まだまだ俺は倒れないぞ……そして、俺の攻撃はまだ終わってはいない」
     廉也は仲間を庇うと即座に仲間へ癒しの護符を放ち、庇いきれなかった仲間の傷を癒す。
     そして両足に炎を纏わせると、廉也はグレイに一気に飛び掛かる。
    「まだ羽が残っているな……最後までしっかりと、燃やし尽くしてやろう」
     廉也はグレイの翼の根元に熱い蹴りを放ち、更に炎を与えてグレイの翼を燃やす。
     最早その翼のほとんどが燃え尽き、骨が剥き出しになっている状態だった。
    「私のなけなしの翼が……!!」
     グレイが自身の傷を癒すと、翼が僅かに修復され、頭や体の羽毛もちょっぴり元に戻った。
    「皆さん、あと少しです!」
     彩花は黄色くスタイルチェンジさせた標識を掲げると、傷を受けた仲間たちの傷を癒し、加護を与えていく。
    「もうすぐ、あなたは現世より解放されます……その後あなたがどうなるかは、あなた次第です」
     アムスはダイダロスベルトをグレイに向けて伸ばし、その全身を締め付ける。
    「グフ……クソ……私はまだこの腐れスレイヤー共に殺されるのか……」
     恨めしげにつぶやくグレイの足元に大きな影が伸びると、その全身を一気に飲みこんだ。
    「さて、あなたはどんな記憶を思い出すんでしょうね」
     影を放った色葉がそう呟くと、影の中から顔面蒼白のグレイが吐き出される。
    「クソ……クソ……!! 」
    「いい表情ですね。己の惨めったらしい最期を思い出しているのですか?」
     そう言ってチェーンソーを構える色葉の表情には特に変わりが無い様にも見えたが、若干活き活きしている様にも見えた。
    「さて、そろそろ終わりの様ですね。別に聞きたくありませんが、最期に言い残すことはありますか?」
    「殺す……絶対に殺す……!! どんな手をつかってでもいつか貴様らを地獄の淵に叩き落として永遠の苦しみを与え続けてや」
    「時間切れです」
     色葉はそう言ってチェーンソーのエンジンを激しく駆動させ、灼滅者達は一斉に攻撃を叩きこむ。
     廉也が放ったダイダロスベルトが全身を串刺しにし、
     アムスが放った無数の光線で更に全身に穴を空ける。
     火華流が放った回し蹴りがこめかみにクリーンヒットし、
     菜々がフルスイングした杖が反対側のこめかみに叩きこまれる。
     蒼真が伸ばした影が足元を縛り付け、
     彩花が振り下ろした標識が脳天を打つ。
     蒼華が滑らかな動きで袈裟斬りを放つと、
     色葉が真正面からチェーンソーを振り上げ、グレイに接近する。
    「現世との係わり、この機械鋸で完全に断ち切ってあげますよ……!」
     色葉は激しく震える刃を、何の迷いもなく脳天に振り下ろす。
     そしてそのまま身体を削りながら、グレイの身体を真っ二つにした。
    「ア……ガ…………!!」
     悲鳴を上げる間も無く両断されたグレイの身体は、次の瞬間光の粒子となり、そのまま消えて行った。
    「今度こそ、さよならだ……まあ、また出たとしても何度でも叩き伏せてやるけどな。あんたの発想はおおよそ人間社会に害悪過ぎる」
     蒼真はグレイが消滅した地点を眺めながら呟き、殲術道具を封印した。
    「全く……煩い禿げというのなら、コルネリウスも放っておけばいいものを」
     廉也がやや呆れ気味に呟いた。
    「彼の者の魂が、いつか救われますよう……」
     アムスは静かに祈りを捧げていた。
    「ここは、こんなに静かな屋敷だったのか……いや、あのハゲ鷹が煩かっただけか」
     蒼華はそう言いつつ屋敷を後にし、一同もそれに続く。
    「あの世ではこれを使えばいいですよ」
     立ち去り際に色葉が安物のヅラをお供えしていた。

    作者:のらむ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年5月5日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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