静かなる殺戮。そして斬新な闇堕ちゲーム

    作者:のらむ


     札幌市地下鉄東豊線沿線に、元町図書館という図書館がある。
     図書館は静かにするのが当たり前の様の場所ではあるのだが、この日はその静けさがより際立っていた。
     本を片手に椅子に腰かけた老人、絵本を持った数人の子ども、司書、清掃員。
     この場にいた全ての人間は、眠ったかのように全く動かない。
     その中央に立つ1人の男を除いては。
    「…………これで、全員か。誰にも気づかれず、恐怖させる事も無く終えられたのは幸いだったな……あとは、彼らを待つだけか」
     老人の背に突き立てた非物質化させた刃を引き抜き、静かに呟いたこの男の名は、宇城・和義。六六六人衆序列五七五位である。
     この図書館にいた全ての人間は、宇城の手によって殺害されていた。
     しかし、この図書館には一滴の血も流れてはいない。
     何故なら宇城は自らの殺人技術の糧となる一般人に敬意を表しており、恐怖も痛みも与えずその内なる魂のみを破壊するという殺しに拘っていたからである。
    「武蔵坂学園か……前回会った時も唯者ではないと思ったけれど……まさかここまでとはね。前回殺されなかった自分の幸運を喜べる程だ」
     宇城は机に腰かけると、拳銃を手で弄びながら何となく天井を眺める。
    「灼滅者を闇堕ちさせる、斬新なゲーム、か…………正直彼らの強さを知っている身としては、かなり危険な賭けだとは思うが……」
     それでも宇城は、灼滅者と再び戦う事を選んだ。
    「前回負けたのは結構悔しかったしな…………今回は、絶対に俺が勝つ」
     死と静寂に包まれた図書館の中で、宇城は強く言い切った。


    「コックリさんが言っているわ……『六六六人衆序列五七五位、宇城・和義が、札幌市地下鉄沿線の元町図書館で、闇堕ちゲームを行う』……って」
     灼滅者達を教室に集めた遥神・鳴歌(中学生エクスブレイン・dn0221)が、10円玉を超高速で移動させながら説明を続ける。
    「『例の斬新社長が関わっていると思われるこの闇堕ちゲームは、既に札幌の地下鉄沿線の各地で起こっているが……これもその1つだ。六六六人衆は図書館内の人間を全て殺害した上で、灼滅者達を待ち受けている』…………やっぱり、介入可能なタイミング的に、一般人達を救うことは不可能の様ね」
     灼滅者達は宇城が図書館内の全ての人間を殺害した後、一階の図書室内に佇む宇城の元へ向かう形となる。
    「『宇城は、肉体を全く傷つけないサイキックの身を使用してくる。そして能力はかなり攻撃に偏っていて、その分防御の面はそれなりに脆いが……宇城の最大の特徴である、高威力のドレイン攻撃。これによって、その弱点を補っている形となる』だそうよ。攻撃強い癖に継戦能力もそれなりって。嫌な相手ね」
     鳴歌は更に10円玉を動かしていく。
    「『それと、宇城は前回灼滅者達と戦った時に碌な戦果を上げられなかった事を悔しく思っている様で……ギリギリまで撤退しようとしない。本気で殺しにかかってくるだろう』……まあ、本気なのは皆も一緒よね。宇城の全力に本気でぶつかるのよ」
     そこまでの説明を終え、鳴歌は灼滅者達に向き合う。
    「これでコックリさんからの情報は全部よ。それと今回の事件では、なんでか知らないけど敵の戦闘能力が弱められているみたい。最低限の目標は、宇城を撤退させることだけど……可能な限り、灼滅を目指してみて。六六六人衆を灼滅することの出来る、絶好のチャンスだもの。頑張って」


    参加者
    阿々・嗚呼(剣鬼・d00521)
    由井・京夜(道化の笑顔・d01650)
    希・璃依(桜恋う星灯り・d05890)
    香坂・颯(優しき焔・d10661)
    桜井・夕月(もふもふ信者の暴走黒獣・d13800)
    黒姫・識珂(エクストラブライブ・d23386)
    冬城・雪歩(高校生ストリートファイター・d27623)
    月影・瑠羽奈(夜明けを探す月影・d29011)

    ■リプレイ


     六六六人衆序列五七五位、宇城・和義。
     一般人に対し恐怖や痛みを与えない事を信条としているこの六六六人衆は、死と静寂に包まれた図書館で、静かに灼滅者達を待ち構えていた。
    「始めまして宇城さん。嗚呼です」
     刀の鞘に手をかけたまま、阿々・嗚呼(剣鬼・d00521)が宇城に軽く一礼した。
    「始めまして、宇城和義です。六六六人衆をやっています……どうやら見知った顔もいるね、久しぶり」
     軽い口調ながらも、宇城は灼滅者達に対する警戒を全く緩めず、銃と剣を構えたまま灼滅者達と向き合う。
    「宇城・和義……決着を付けましょう。血を流さず、静かに殺しを行う貴方の凶行……ここで止めさせていただきましょう……!」
    「前回見逃したのを後悔してるよ。だから今度は、絶対に逃がさない。この場で確実に灼滅してやる……それが、僕の償いだ」
     過去、宇城が行う大量殺人を阻止した月影・瑠羽奈(夜明けを探す月影・d29011)と香坂・颯(優しき焔・d10661)が、宇城にそう言い切った。
    「戦いや殺しなんて力が全てだろう。殺しに拘りや美学なんて、逆に悪趣味だな……今回で決着をつける」
    「何が一般人への敬意だか……魂を汚しておいて言うことじゃあ無いわね……今まで殺された人たちの分、徹底的に叩き潰してやるわ!」
     希・璃依(桜恋う星灯り・d05890)と黒姫・識珂(エクストラブライブ・d23386)の言葉を、宇城は静かに聞いていた。
     そんな頃、冬城・雪歩(高校生ストリートファイター・d27623)は、椅子に腰かけたまま息絶えている老人の懐にこっそりと携帯を忍ばせ、静かに呟く。
    「この戦いが終わった後上手くやれば……もしかしたら」
     館内はピリピリした緊張感に包まれ、いよいよ戦いが始まるであろう事をその場にいた全員が感じ取る。
    「まあ、穏やかな会話はもう終わりかな……今日は、必ず私が勝つ」
     そして、宇城は引き金に指をかける。
    「ん、誰も救えないのはやるせないけど……兎角全力でびつかるのみですかね。終わらせましょう」
    「縛りゲーとか、何の斬新さも無いし、バカにされてる気すらするけど……倒せる可能性があるっていうなら、ここで仕留めきろう」
     桜井・夕月(もふもふ信者の暴走黒獣・d13800)と由井・京夜(道化の笑顔・d01650)が殲術道具を構える。
    「それじゃあ……始まりだ」
     そう言って、宇城は引き金を引いた。


     放たれた非物質化された弾丸が灼滅者達に襲いかかり、戦闘開始の合図となった。
    「痛た……確かに傷は出来ないけど、結構キツイ攻撃だね」
     雪歩は仲間に放たれた弾丸を受け止めながら身体を抑えながら盾を掲げ、自身と仲間たちの傷を癒した。
    「宇城・和義。貴方は前回の戦いで言いました。魂砕きに拘るのは自分の犠牲になる相手に敬意を払いたいと」
     瑠羽奈はエアシューズ『蒼月風姫』に、激しい炎を纏わせながら、宇城に投げかける。
    「ああ、言ったね。今でもその考えは変わらない」
    「しかし……結局貴方は、私利私欲のために殺しを行っていたのですわね……決着を付けましょう。貴方はやっぱり生かしておけません」
     そう言って瑠羽奈が熱い炎の蹴りを叩きこむと、宇城の身体に大きな焦げ跡が刻み込まれた。
    「……決着をつけるというのは同感だけどね。私が人を殺すのは私が六六六人衆だからだよ」
    「何とでも言ってくださいませ……どの道貴方が人々に厄災を撒き散らす存在だというのは、変わり無いのですから」
     瑠羽奈は桜色の殺戮帯を刃へと変え、宇城に放つ。
     放たれた刃は弧を描きながら宇城に迫り、宇城の胸を斬りつけた。
    「…………」
    「残念ですが、こちらの攻撃はまだ終わっていませんよ」
     無言で銃を構え瑠羽奈に銃口を向けた宇城だったが、いつの間にか背後に回り込んでいた嗚呼が刀を振りおろし、背を斬りつけた。
    「おっとこれは失礼」
     宇城は片手に黒き殺気を纏わせると、嗚呼に向けて拳を静かに放つ。
    「させないわよ!」
     嗚呼の前に飛び出した識珂の身体に拳が当てられ、そこから生気を一気に奪い去られた。
    「やれやれね。どうやらたっぷりとお灸が必要みたい」
     識珂は片腕を異形化させると大きく振り上げ、宇城の鳩尾に勢い良く叩きつけた。
    「グッ……やはり強いね、灼滅者。それでこそだ」
    「余裕そうな台詞吐いてる所悪いけど、今回はあんたが死ぬ番よ。ただし魂だけなんて遠慮はしてあげないけどね!」
     識珂は片腕に纏わせたデモノイド寄生体を砲台に変え、宇城に狙いを定める。
    「肉体も魂もか。随分と物騒な事だね」
    「あんたのしてきた事の報いにしては軽すぎる位よ!」
     そして放たれた死の光線が、宇城の身体の中心を貫いた。
    「中々の攻撃だ。回復を……」
    「これ以上好き勝手されてたまるかよ」
     颯は再び片腕に殺気を纏わせた宇城に向けて鞭剣を伸ばし、その腕に巻きつけながら切り裂いた。
     そして夕月が無敵斬艦刀を構えながら、宇城と対峙する。
    「なるべく苦痛を与えない様にという考えは嫌いじゃありませんが、それでも相容れませんね」
    「私は六六六人衆で、君達は灼滅者だからね。形が似ていたとしても、そもそものベースが違う」
    「まあ、相手を理解しようとする気もあまりなさそうですしね。お互いに」
     夕月はそう言いながら駆け出すと、低めに構えた斬艦刀で勢いよく薙ぎ払う。
     巨大な刃は一瞬にして宇城の両足を斬り、その動きを鈍らせた。
    「くっ……」
     宇城はそのまま剣を突き出すが、夕月は軽く身体を逸らし回避する。
     そして宇城の腹を蹴りその反動で跳び上がると、斬艦刀の切っ先を宇城に向ける。
    「苦痛を与えてばかりですが、これが私たちの戦い方です」
     そして足元の影が斬艦刀を通して放たれると、宇城の全身を包み込み、その精神を傷つける。
    「…………今のは、かなり効いたね」
     宇城は心臓を抑えながら銃を構え、夕月に向け銃口から黒き瘴気を放った。
    「鉄壁リイガード!」
     物凄い勢いで飛び出した璃依が飛び出すと、放たれた瘴気をその身で受け止め、かなりの量の体力を奪い取られた。
    「残念。そんな簡単に仲間を倒れさせるつもりはないんだよね」
     京夜は即座にダイダロスベルトを放つと璃依の身体を包み込み、その傷を癒した。
    「さて、と。ちょっと聞きたいんだけどさ。何でそれなりのランカーが、斬新なゲームやってるのかな?」
     回復を終えた京夜は、宇城に向けそう問いかける。
    「……灼滅者と再び戦ういい機会だというのが、一番大きいな」
     京夜はその返答に首を傾げながら、更に問う。
    「ふーん……だけどさ。アンタぐらいの実力なら、斬新に関わらずとも普通に事件起こして誘き出す事も出来たでしょ」
    「それなりの数の六六六人衆が参加しているであろうこのゲームに参加した方が、君達の目に留まると思ったんだよ……君の質問に律儀に答えてあげるのはこれで最後だ」
     宇城は軽く肩をすくめると、京夜に向けて引き金を引く。
     放たれた弾丸が京夜の魂に突き刺さり、全身に激痛が走る。
    「グッ……!!」
     一瞬意識を奪われそうになった京夜だが、何とか踏みとどまると糸を宇城に放ち、その全身を切り裂いた。
    「…………まだだ。まだ、負けはしない」
     宇城は全身に刻まれた傷を癒しながら、銃と剣を構えなおした。
     戦いに終わりが近づき始めている。


     宇城は再び引き金を引く。
     放たれた実体のない弾丸が、灼滅者達に放たれる。
    「くっ! 痛いぞ。痛みを与えないのが拘りなんだろ? 例外があるなんて中途半端な拘りだな」
     仲間を庇った璃依は攻撃に耐えきり、エアシューズ『星轍』で戦場を駆ける。
    「その点に関しては非常に申し訳ない。いつか君達も一瞬で殺せるくらいに強くなりたいものだよ」
     宇城は迫ってくる璃依に向けて曲刀を突き出す。
    「残念だが、そんな機会は絶対に訪れない……オマエはココでゲームオーバーだ」
     璃依は突き出された曲刀をヒラリと避け、そのまま軽く跳ぶ。
     『星轍』の星のチャームが、静かに揺れる。
    「星まで飛ばしてやろうか」
     そして放たれた跳び蹴りが宇城の胸を打ち、そのまま壁に叩きつける。
    「まだだ……行けふりる!」
     ぶるるん! ぶおーん!
     続けて璃依のライドキャリバー『ふりる』が機銃を発射し、宇城の全身に弾丸を叩きこんだ。
    「楽に死ねるなんて思わない事ね!」
     更に識珂が異形化させた拳を振るい、宇城の全身を叩き潰した。
    「グ……!! 本当にやる……だが、今日は絶対に誰かを殺す……」
     宇城は拳から黒き殺気を纏わせ、灼滅者達に突撃する。
    「ボク達はそう簡単に死なないよ!!」
     そして飛び出した雪歩がその拳を受け止めた。
     生気が抜け体内に殺気が放たれた雪歩の全身に激痛が走るが、未だ倒れない。
    「前衛もそろそろ危なくなってきたね……」
     京夜は身体から浄化の風を放ち、仲間たちの傷を優しく癒していった。
    「まだまだ動ける……これ以上の犠牲者を出さない様、キミを絶対に灼滅するよ!」
     雪歩は大きなスカートで予備動作を隠し、不意に宇城に向けて跳ぶ。
    「速い……」
     宇城はその雪歩の動きを見切れず、一瞬にして放たれた蹴りを鳩尾にくらってしまう。
    「こんなもんで終わりと思って貰っちゃ困るよ!」
     宇城が一瞬よろめいた隙に後ろに跳んだ雪歩は、本棚の上から再び宇城に強襲する。
    「此処で終わりだよ、魂砕き! ボクの拳でキミを打ち砕く!」
     そして放たれた盾の一撃は、宇城の額に突き刺さり、殴り飛ばした。
    「貴方は、ここで終わりですわ……貴方を灼滅するためならば、わたくしは闇の力を借りることも辞しません」
     それだけの覚悟を持ってこの戦いに臨んでいた瑠羽奈が殺人注射器を宇城の首筋に突き立て、サイキック毒を一気に流し込む。
    「ガ、フ…………!! ゲホ、本気で僕を殺す気で戦ってくれてるのなら、僕としても本望だ」
     宇城は床に血を吐きながら曲刀を構え、再びしっかりと立つ。
     その宇城の前に、圧壊刀『かいしん』を構えた嗚呼が進み出る。
    「正直な所、あなたの殺し方や信念については共感できますね。好意すら感じる所ではありますが……生憎私は灼滅者なので、ダークネスの行動を見過ごせません。感情と理性は別物というわけですね」
    「君達には君達の、私には私の生き方がある……こうなるのは当然の事だろうね」
     宇城はカッと目を見開くと嗚呼との間合いを一気に詰め、刀を振るう。
     その一撃に魂を斬られた嗚呼だが、一歩も退かず、そのまま黒き刃を振り降ろす。
    「……言葉を交わさずとも。殺し合いで伝わるものもありますよね」
     放たれた斬撃は宇城の胸を深く抉り、血飛沫が上がる。
     宇城は痛みに耐えながら銃を嗚呼に向けるが、嗚呼の身体が一瞬で視界から消える。
    「終わりです」
     一瞬にして死角に潜り込んだ嗚呼は振り降ろした刃を返し斬り上げる。
     脚を深く斬られた宇城は、力が抜けたように膝を付く。
    「もう……終わりですね」
     その隙を突き、夕月は影で創り上げた無数の鎖を放ち、宇城の全身を締め上げる。
    「グ……グオオォオオ!!」
     全身の力を込め、鎖を無理やり引きはがした宇城は、度重なる灼滅者達の攻撃により、ギリギリまで追い詰められていた。
     宇城の攻撃力とドレイン攻撃は確かに厄介だったが、灼滅者達は防御がやや厚めのバランスの良い構成で対峙し、宇城の攻撃を耐えつつも確実にダメージを与えていた。
    「撤退は…………無理だな。イタタ……」
     自らの状況を冷静に分析した宇城は死を確信し、軽く笑みを浮かべながら首を振る。
    「前は被害が出なかった、だから見逃した。けれどその結果がこれなら、僕はあの時お前を見逃すべきじゃなかったんだ……今度は間違えない。必ずこの場でお前は灼滅させる!」
     颯はそう言いながら両脚に炎を纏わせ、攻撃を仕掛ける。
     ビハインドの『香坂綾』が霊力の塊を放ち宇城の脚元を打つと、次の瞬間放たれた颯の炎の蹴りが宇城の胸を抉った。
    「ガッ!! ………………いくら好青年ぶっても、私……俺は六六六人衆だ。人を殺さないように心変わりすることもなければ、そもそも君達が何故そこまで怒ってるのかもあまり理解できない。そういう生き物だからな」
    「どんな理由があろうと、なかろうと……誰かを死に追いやっていい筈ない。誰かの命を奪うなら、奪われる覚悟位あるんだろうな?」
    「お前達と同じだよ、多分な」
     颯の問いにそう応え、宇城は引き金を引く。
     放たれた弾丸を耐え、あるいは避けながら、灼滅者達は宇城へ一斉に攻撃を放った。
     璃依が放った跳び蹴りが肩を砕き、
     夕月が振り下ろした斬艦刀が腹を切る。
     識珂が放った炎の蹴りが全身を焼き、
     瑠羽奈が放った斬撃が全身を斬り刻む。
     京夜が影を纏わせた拳で顎先を打ち、
     雪歩が勢いよく放ったかかと落としが宇城の脳天を打つ。
     嗚呼が刀で静かに一閃し、
     颯が炎を纏わせたウロボロスブレイドを振るう。
    「このフザけたゲームは、お前の負けだ……対価として、お前の命を貰う」
     颯が放った刃が宇城の全身に巻きつき、切り裂く。
     そして刃に纏った炎が一気に勢いを強めると、宇城の全身を包み込んだ。
    「本当に悔しいが、私の負けか…………改めて、君達の強さに敬意を表するよ…………グ、オオォオォオォオオオ!!」
     最後に大きな雄叫びを上げながら、宇城は炎に包まれたまま遺体も残さず消滅していった。
     後に残ったのは、やはり静寂のみだった。


    「僕は、まだ甘いのかな? こうならなきゃ、ダークネスですら始末出来ないんだから」
    「さようなら。良い眠りを」
     颯と嗚呼が、誰に言うでもなく静かに呟いた。
    「終わりましたわね……これで、彼の手によって人々が殺される事は、二度と無いでしょう……」
    「誰も深く傷つかず、事を終えることが出来た。アタシ達の完全勝利だな」
     瑠羽奈と璃依がそう言いながら、殲術道具を封印した。
    「やっぱり死体、残らなかったね……六六六人衆を灼滅しやすいのはいいけど、遺族にとっては最悪だし、どうにかしたいよね」
    「助けられなくて、ごめんね」
     雪歩が、亡くなった一般人の遺体が全て消滅した館内を見回し、夕月が静かに手を合わせていた。
    「……さて、帰るわよ。ここであたし達に出来る事は、もう無いわ」
    「その方がいいかもね。しかし、消えた死体はどうなるんだろうね? アンデッド? 本当疑問だらけだよね」
     識珂と京夜がそう言い、一同は図書館を後にした。
     未だ、様々な謎や疑問がこの事件には多く残っている。
     だが、何かを考えたり行動を起こすのは、学園に帰ってからでも出来る。
     今は六六六人衆を灼滅したという戦果を手に、学園へ帰るとしよう。

    作者:のらむ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年5月12日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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