闇堕ちゲームは斬新な雨と共に

    作者:のらむ


     札幌市地下鉄東豊線、豊平公園駅。
     当然この近くには、豊平公園がある。
     バラ園や野草園など自然豊かな上、プールやテニスコートも備え付けられてあるこの公園には、それなりの人が訪れている。
     そしてこの公園の中を駆け巡る、1人の少女の姿があった。
    「ランラランララ~ン、ラランラランララ~ン♪」
     日差しが眩しい昼間から、レインコートを被って傘を差し、鼻歌交じりにスキップしているこの少女の名は、雨木・歩夢(あまぎ・あゆむ)。六六六人衆序列五八三位である。
    「ん~、やっぱり子供は外で元気に遊ぶのが一番だよね♪ なんだか私、すごく清々しい気分!」
     晴れやかな顔でそう笑う彼女の顔は、返り血で染まっていた。
     彼女は公園内を駆け巡りながら、様々な雨を降らせていた。
     槍の雨。強酸の雨。炎の雨。
     公園内にいた人々はこの雨を浴び、全くまに死んでいった。
     そして適当に公園を一周した歩夢は、公園中央の芝生広場で足を止めた。
     血溜まりの中を長靴でピチャピチャと歩きながら、歩夢は周囲を見渡す。
     槍で抉られた死体、強酸で焼けただれた死体、炎に燃やし尽くされた死体。
     とにかく死体だらけの公園の惨状を改めて見ても、歩夢の表情は全く変わらない。
    「ん~、来ないな~、灼滅者。ここ数カ月はずっと雑魚の人たちの撃退に追われてたから、そろそろ序列上げたいんだけど……うーん、まだかなー。みんな死体になっちゃったからもう遊べないし、早く私の遊び相手になって欲しいんだけどな~、全然斬新なゲームじゃないけど」
     歩夢は退屈そうな顔をしながら、足元の死体の上をぴょんぴょん飛び跳ねる。
    「ん~……ま、いっか! もう一周しよ~っと」
     歩夢は笑顔に戻ると、再び公園内を駆け巡り始めるのだった。


    「六六六人衆序列五八三位、雨木・歩夢。以前皆様とも戦った事のあるこの六六六人衆が、札幌市地下鉄沿線の豊平公園で、斬新京一郎が裏で関わっていると思われる闇堕ちゲームを行います。皆様には、公園内で待ち受ける歩夢を灼滅して頂きたいのです」
     天野川・カノン(中学生エクスブレイン・dn0180)は灼滅者達にそう説明すると、移動型血液採取寝台『仁左衛門』に取り付けたモニターに、豊平公園の周辺地図を表示させる。
    「六六六人衆歩夢は、豊平公園内にいた一般人を無差別に虐殺した後、公園中央の芝生広場で一旦動きを止めます。このタイミングでのみ、歩夢に接触する事が可能となります。この時点で公園内にいる一般人は、全て死亡しています。彼らを助けることは不可能です」
     カノンはモニターのスイッチを押すと、歩夢の戦闘能力を纏めたファイルが表示される。
    「ご覧の通り……歩夢は槍、強酸、雨など、広範囲に渡る攻撃を得意としており、能力値は術式、神秘寄り。強力な範囲攻撃を皆様に浴びせかけてくる事でしょう」
     また、とカノンは説明を続ける。
    「歩夢は皆様を闇堕ちさせようとする気合は十分な様で、ギリギリまで撤退はしません。その分歩夢を逃す確率は減りますが……皆様が深い痛手を負う確率は上がります。十分にお気をつけ下さい」
     そこまでの説明を終えるとモニターの電源を切り、カノンは灼滅者達に向き合う。
    「説明は、以上となります。戦闘に勝利し、歩夢を撃退すれば、一応作戦は成功となりますが……可能な限り灼滅出来る様、尽力していただければ幸いです」
     そして最後に、カノンが説明を付け加える。
    「今回の事件では、なんらかの方法で六六六人衆の力が弱められている様です。それが誰の、何の為の策略かは分かりませんが、六六六人衆を灼滅する好機でもあります。どうかお気をつけて。皆様の健闘を、祈っております」


    参加者
    両角・式夜(黒猫ラプソディ・d00319)
    三兎・柚來(無垢な記憶の探求者・d00716)
    華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)
    丹生・蓮二(アンファセンド・d03879)
    桜庭・翔琉(徒桜・d07758)
    嶋田・絹代(どうでもいい謎・d14475)
    屍々戸谷・桔梗(血に餓えた遺産・d15911)
    一色・紅染(料峭たる異風・d21025)

    ■リプレイ


     六六六人衆序列五八三位、雨木・歩夢。
     彼女は闇堕ちゲームを行う為、豊平公園内にいた一般人達を何の躊躇いもなく虐殺した。
     そんな彼女を灼滅するべくこの公園に訪れた8人の灼滅者達は、芝生広場ヘ向かうため死体を転がる道をゆっくりと突き進んでいた。
    「地獄絵図だな」
     丹生・蓮二(アンファセンド・d03879)は辺りを見回しながら、静かに呟く。
     その眼は普段と変わらない様にも見えたが、その腹の奥はキリキリと熱くなっていた。
    「……どう足掻いても守れない命というのは、歯痒いな」
     一般人の死体を目の当たりにした桜庭・翔琉(徒桜・d07758)は、今は堪えねばと気合を入れる。
    「…………この、光景は、嫌い、です」
     一色・紅染(料峭たる異風・d21025)は目の前に広がる凄惨な光景に自身の忌むべき過去を思い出させられる気がして、無意識の内に目を逸らした。
    「公園内皆殺しとか、まぁード派手にやってくれたもんだねぇ、しかも可愛い女の子がお誘いして待っててくれてるんだから、行かなきゃ男として損だよね!」
     口元の笑みを全く崩さず、両角・式夜(黒猫ラプソディ・d00319)がそう言い切った。
     式夜は目の前の光景に、本当にあまり動じていないのだろう。
    「見えてきた……あの子、だよね?」
     三兎・柚來(無垢な記憶の探求者・d00716)が指さす先には、芝生広場に佇む歩夢の姿が。
    「ん~暇だなぁ…………あ、来た来た灼滅者!! お~い!! 私と遊ぼうよ~!」
     転がる死体を踏み越えながら、歩夢が無邪気に灼滅者達の元に走って行く。
    「ブフーッ! おいおい、ちょっとイタすぎねえか!?」
    「え? 痛いって何が?」
     思わず噴き出した嶋田・絹代(どうでもいい謎・d14475)に、歩夢は不思議そうに首を傾げる。
    「ま、いいや。それよりさ~、ここに来てくれたって事は、私と遊んでくれるって事だよね! 前回は嫌になる程殴られたけど、今日はそうはいかないよ!!」
     目を輝かせながら傘を構え、歩夢が戦闘の構えを取る。
    「ああ、良いぜ……遊び相手になってやるよ……」
     屍々戸谷・桔梗(血に餓えた遺産・d15911)は杖を構え、歩夢にまっすぐと向ける。
    「華宮・紅緋、これより灼滅を開始します」
     華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)がスレイヤーカードを解放し、全身に赤き霧のオーラを纏わせる。
    「それじゃあ、行くよ~!」
     歩夢が傘を天に掲げ、戦闘が始まった。


     歩夢が傘を天に掲げた次の瞬間、突如現れた炎の雨が灼滅者達に降りかかる。
    「いきなりだな……そう簡単に当たってたまるか」
     桔梗は魔力を込めた杖を掲げ、引き起こした雷と炎をぶつけ、相殺した。
    「おっ、お姉さんやるね~」
    「(やれやれ……私も人殺しだけどよ、こんな連中と一緒にされんにはゴメンだぜ)」
     屈託のない笑みを浮かべる歩夢に内心愚痴りながら、桔梗は再び杖に魔力を込め、そして振るう。
    「しょうがねえから、つき合ってやるよ……お前の『遊び』にな」
     そして放たれた竜巻が、歩夢の身体を一気に吹き飛ばした。
    「うわっと……危ない危ない……」
     吹き飛ばされながらも何とか地面に留まった歩夢に、桔梗は更に攻撃する。
    「一気に決めさせてもらうぜ」
     そして紡がれた美しき歌声が、歩夢の脳を直接揺らした。
    「頭痛い……」
    「その程度の、痛み、で、終われると、思わないで、ください」
     続けて紅染が放った鋭い蹴りが、歩夢の腹に突き刺さり吹き飛ばした。
    「雨木歩夢。その身体の本来の持ち主だった人の為にも、ここで灼滅しますよ!」
     紅緋は片腕を赤く巨大異形化させながら、歩夢に突撃する。
    「いやいや、本来の持ち主は私だったのかもしれないよ~?」
     歩夢はそう言いながら、鋼鉄の傘を紅緋に向けて突き出す。
    「悪いけど、そう簡単に通しはしない」
     一瞬で歩夢の前に飛び出した蓮二が攻撃を受け止め、雨木の肩に盾を打ち付け後ろに下った。
    「まずは一撃!!」
     無傷で歩夢の懐まで接近した紅緋は異形の拳を打ちつけ、続けて赤き霧のオーラを両拳に纏わせる。
    「あなたの得手は範囲攻撃。なら逆に、懐でラッシュを繰り出されるのは苦手なんじゃないですか?」
     そして放たれた無数の赤き拳が、歩夢の全身を打つ。
    「もう、鬱陶しいよ!!」
     歩夢は咄嗟に槍の雨を降らせるが、紅緋は冷静に回避し、片腕に赤が混じった影を纏わせ畳み掛ける。
    「六六六人衆序列五八三位、雨木・歩夢。殺された人々の敵討ちの為にも、あたなはこの場で灼滅します」
     ドン、と歩夢の腹に重い拳が抉り込み、赤い影が精神を浸食した。
    「……まだまだ。こっちの攻撃は終わってない……よ?」
     次の瞬間、柚來が撃ち放ったオーラの塊が歩夢の脳天を打った。
    「い、今のはクラッと来たなあ……!!」
     歩夢が呟き傘を掲げると、空から大量の強酸の雨が灼滅者達に降り注ぐ。
    「アツっ! そして色んな意味で痛い!!」
     絹代は皮膚を焼くその雨の中を無理やり突っ切りながら歩夢に突撃する。
    「傘で闘っていいのは小学生まででしょう。てか、あんたが降らすんかい!」
    「私は雨の中で傘を差すのが好きなんだよ!!」
     歩夢はそう言いながら軽く絹代を睨み、絹代は縛霊手を高く振り上げる。
    「さっさと地獄にでも落ちてろ!」
     放たれた打撃が歩夢の胸を打ち、放出された霊力の網が全身に纏わりついた。
    「序列が絶対に強い順ってわけでもないだろうけど、前回の風紀委員ほど苦労はしないっすよね」
     絹代は更に斬艦刀で斬り上げ、歩夢の腕を斬りつけた。
    「風紀委員の知り合いはいないけど、あんまり舐めないでほしいな!
    「あ、やっぱりそうっすか?」
     歩夢が放った炎の雨が、絹代を中心に降り注いだ。
    「さすがに強敵だな……無事か?」
    「超無事っすよ!」
     翔琉が防護符で絹代の傷を癒し、傷が塞がった絹代は戦場内を動き回っていった。
    「私が言うのも何だけど、ちょろちょろと……」
     再び絹代に攻撃を仕掛けようとする歩夢に、式夜が錬鉄の睡蓮の形をした盾を振り上げ、接近する。
    「ちょっとちょっと、俺にももうちょっと構って欲しいなー」
     そして突き出された盾が歩夢のこめかみを打ち、上手い事気を惹くことが出来た。
    「イタタタ……何? お兄さんはちゃんと遊んでくれるの?」 
     そして歩夢が放った槍の雨が、一斉に降り注ぐ。
    「やっぱり中々避けれない物だねぇ……でも、まだまだ耐えられるよ」
     手傷を負った式夜だったが更に仲間の前に飛び出し、その攻撃を受け持った。
    「お藤」
     式夜が一言そう言うと、式夜の霊犬『お藤』が斬魔刀を構えて駆け出し、その足を斬りつけた。
    「クッ…………」
     その斬撃によって生まれた一瞬の隙を狙い、式夜が足元の影を伸ばす。
    「こういう遊びは、あんまり嫌いじゃないよ? まあ、その結果君がどうなるかまでは責任持てないけどね!」
     放たれた巨大な影の腕が、一瞬にして歩夢の全身を飲みこんだ。
    「ウ……ゲホゲホ、こっちはなんかやっぱり楽しくないよ!!」
     嫌な記憶を思い出させられた歩夢は若干顔を蒼くしながら、式夜を睨み付ける。
     戦いは、中盤に差し掛かっていた。


     キャスターのポジションに入っていた歩夢に対し、最初はそこまで命中率を得ていなかった灼滅者であったが、足止めや捕縛のバッドステータスでそれを補おうとする灼滅者も多く、次第に歩夢に対し攻撃が当たりやすくなっていた。
     また、ディフェンダーの怒り付与による攻撃誘導も上手くいき、灼滅者達はかなり優位に戦いを進めていた。
    「グググ……何だかマズイ感じ……でも、今日は絶対誰か闇堕ちさせるよ♪」
     まだそれなりの余裕がある歩夢は炎の雨を降らせ、前衛の灼滅者達の体力を削って行く。
    「おれは、雨はもうちょっと穏やかなほうが好き、だな。だって、静かな雨の方が風情がある、でしょ」
     柚來はそう言いながら杖に魔力を込め、歩夢に向けて一気に突き出した。
    「ウグッ!! 何言ってるの……雨は人を殺す位激しのが良いに決まってるよ!!」
     爆発に巻き込まれた歩夢はそう言いながら、お返しとばかりに柚來が中心の槍の雨を傘を降り注がせた。
    「まあまあまあ、雨は好き好きって事で、ね?」
     2人の間に入った式夜が降り注ぐ槍から柚來を庇い、傷を抑えながらささっと後ろに退がった。
     それなりに疲弊してきたディフェンダー陣を眺め、柚來が歩夢に投げかける。
    「今度は、ちゃんと俺と遊んでよ……退屈、なんでしょ?」
    「何だかキミ超むかつくね~!」
     強張った笑みを浮かべながら歩夢は鋼鉄の傘を柚來に向けて振り下ろす。
    「効かない、よ……今度は、こっちの番」
     オーラを纏わせた拳で傘を弾き返した柚來は、異形化させたもう片方の拳で歩夢の顎先を打ち、思いきりぶん殴った。
    「グハァッ!! 子供に向かってなんの遠慮も……あ、いや、あの子も子どもかぁ……」
    「子どもだからって甘くするほど自分たちは温い覚悟で来てないっすよ! 多分!!」
     絹代は顎をさする歩夢の背後に回り込むと、麺切り包丁で思いきりグサッと突き刺した。
    「ああもう、鬱陶しいよ!!」
     癇癪を起こした様子の歩夢は炎の雨を滅茶苦茶に降らせ、一気に攻撃を仕掛けていく。
    「中々攻撃が激しくなってきたな。こっちの体力もそれなりに削れてきたが……もう一押しだな」
     翔琉は黄色くスタイルチェンジした標識で仲間たちの傷を癒すと、そのまま標識を赤く染め上げる。
    「六六六人衆は、絶対に灼滅する……だけどお前に大勢の人々が殺されたというなら、彼らの為にも戦おう」
    「前々から思ってたけど、なんで灼滅者の皆がそんなに怒ってるのかさっぱり分からないよ!!」
     雨木は傘を天に掲げ、激しい強酸の雨を後衛に放つ。
    「俺達とお前らは別の生き物なんだろうさ」
     その雨の隙間を器用にくぐり抜け、翔琉は歩夢の顔面に向けて標識を思いきり振り降ろす。
    「ブッ!! 痛い!! 今度こそ言わせて貰うけど子供に対して遠慮とか」
    「無いな。お前に対して情けがあるわけない」
     顔面を殴り飛ばした翔琉はそのままエアシューズを駆動させると、歩夢の鳩尾に蹴りを入れ思いきり吹き飛ばした。
    「華宮、任せた」
    「ナイスパス……って奴ですかね」
     翔琉が蹴り飛ばした歩夢が吹き飛んでくるのを待ち、紅緋は赤く異形化させた拳で地面に叩きつぶした。
    「グ……マズイな、本当にマズイ感じになってきちゃった、おかしいな……」
     弱体化されてることに気づいていない様子の歩夢は、自身の身体に違和感を覚えつつも、未だ戦いを続ける。
    「殺しがゲーム、ならば、殺される、ことも、また、ゲーム……君の、命も、賭けて、もらう、よ」
    「私が一方的に殺して、皆が殺されていくのが私の遊びなのに……ルールはちゃんと守ってよ!」
     理不尽な怒りをぶつける歩夢を無視し、紅染はふわふわとした尻尾の槍、『一尾』を構え、歩夢との間合いを測る。
    「それに……この光景を、作りだした、君は、嫌い、です」
     そして紅染は一瞬で歩夢との距離を詰めると、その心臓に目がけて鋭い尻尾を突き出す。
    「グゥッ……!! そんな怨念塗れの武器使わないでよ!!」
    「別に……僕は、気に、しません」
     紅染はそう言い返すと尻尾を引き抜き、勢いよく血が流れ出した。
    「回復を……!!」
     自身に回復を施し、歩夢の全身の傷が僅かに塞がった。
     しかし紅染は躊躇せず、畳み掛けるように攻撃する。
    「もう、そろそろ……終わり、です、ね」
     そして放たれた炎の蹴りに全身を焼かれながら、歩夢は地面に叩き伏せられた。
    「遊びはこれまで、って奴だな……」
     更に桔梗が一本の矢を放つと、歩夢の肩に矢が突き刺さり地面に縫いとめた。
    「痛い……どころの騒ぎじゃないよ、もう……なんでこんな事になっちゃったんだろう……」
     歩夢は痛みに顔を歪めながら矢を引き抜き、傘を構えて再び立ち上がった。
    「さあね。みんな、一般人を殺して周る君の事が許せないのか……もしくは単純に君の事が嫌いか」
     蓮次はそう言いながら両脚に炎を纏わせ、真剣な眼差しで歩夢と対峙する。
    「お前がいつか、俺の近しい人を殺す可能性があるなら、先行排除させてもらう。それだけだ。そして俺には、その力がある」
    「誰がこんな所で……!!」
     歩夢は今日何度も降り注いだ槍の雨を降らせるが、蓮次はその雨を冷静に盾で蹴散らし、歩夢の脳天に炎の蹴りを叩きこんだ。
     そして静かに着地すると、蓮二は更なる攻撃の機会を静かに伺う。
    「何で……何で……今日はいい天気だから、灼滅者達と遊ぼうとしただけなのに……何でぇえええ!!!!」
     血に塗れた歩夢は狂った様に叫びながら、傘を掲げる。
     しかし戦場に雨は降らず、その一瞬に灼滅者達は一斉に攻撃を叩きこんだ。
     絹代が霊力の網で全身を縛り上げ、
     柚來が指揮棒から送り込んだ魔力で体内を爆発させる。
     桔梗が放った竜巻で空に打ち上げ、
     跳び上がった紅緋が赤き影の拳で一気に地面に叩き落とす。
     式夜が落下してきた歩夢を影で飲みこみ吐き出すと、
     紅染が炎の蹴りを鳩尾に叩き込む。
     翔琉が赤い標識で全身を痺れ上がらせると、
     蓮二が縛霊手『夜行の手』を構える。
    「終わりだ」
     霊力を最大まで満たしたその手を開き地面に叩きつけると、衝撃と共に創り上げられた無数の霊力の網が、一斉に歩夢に襲い掛かる。
    「グ……動け、ない……」
     身体が痺れた歩夢に成す術は無く、その全身をあっさりと絡め取られる。
    「わ、わた、わたし、私、は…………」
     途切れ途切れに歩夢は何かつぶやいていたが、その全身を完全に覆い尽くされると、何も聞こえなくなる。
    「…………」
     蓮二は無言で開いていた手を閉じると、霊力の網が潰れ、収縮し、歩夢の存在ごと消滅していった。


    「……ま、こんなところだね」
    「案外あっさりと終わっちゃったねぇ」
     蓮二と式夜はそう呟くと、殲術道具を封印した。
    「誰も倒れず、誰も闇堕ちせず……わたしたちの完全勝利ですね」
    「……そう、ですね。灼滅、出来て、よかった、です」
     紅緋と紅染は、自分たちの勝利を静かに喜んでいた。
    「結局誰の遺体も残らず、か……せめて、弔い位はしてあげたかったな……」
    「……なんでこんな現象が起きてるか、分からないけど……今は、帰ろう。多分まだ、事件は終わってない筈だから」
     翔琉と柚來がそう言いながら現場を後にし、一同もそれに続く。
    「悪いな……閻魔さんに、そっちに行くのはもうちょっと先になるって言っといてくれや……」
    「地獄で待ってろ。そのうち自分も行くからさ。そんときゃ神経衰弱でもして遊んでやるよ」
     歩夢が消滅した地点を振り返り、桔梗と絹代がそう呟いた。
     戦いは終わり、忌まわしき雨は止んだ。
     あの雨が降る事は、恐らくもうないだろう。

    作者:のらむ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年5月13日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ