驟雨、ある日の帰り道

    作者:那珂川未来

     校舎から出れば、ほんのりと冷たい風。 
     今日の課題は一つ。左程量もないから、すぐに終わるだろうし。他に何か出来そうだなと思いつつ道を歩けば。少しずつ昼が長くなっていると感じていたこの頃を裏切る様に。見上げた空は暗くなってきている。
     雨が降りそう、そう感じながら。いくらも歩かぬうちに落ちてくる冷たい雫。それはみるみる激しくなって、シャワーのコックを捻ったかの様に。
     鞄を頭に、急いで雨宿りしよう。
     近くには美味しいカフェもあるし、ゲームセンターとハンバーガーショップもある。
     その中の、気がひかれた店へと駆けるきみ。
    「雨のマークは無かったのに……降水確率10パーセントとか言っていたのに……天気予報の嘘付きなのです……」
    「まあまあ。その10パーセントの確立で舞い降りた雨の時間を、逆に利用してやろうじゃない」
     雨に濡れてぶーたれているレキ・アヌン(冥府の髭・dn0073)。雨宿りがてら、ちょっと寄り道を楽しもうよと仙景・沙汰(大学生エクスブレイン・dn0101)の姿を近くに知り、もしかしたらあの人もここに来ているかも……きみはそんな予感をしたりもして。それに一人の時間だとしても、ゆっくりと学生らしい、雨宿りハプニングの放課後を楽しむのもいいかもしれない。
     何気ない時間、本当に貴重だとつくづく感じる瞬間。
     いつ何時訪れるかもわからない絶望と、生死紙一重の危険。それらと隣り合って生きてゆく青春というものが。
     だから、その時ならではの特別な時間も大事にしたいけれど。
     何気ない時間も大事にしたいと思う。

     夕方は、お店に学生がたむろしても、当たり前の光景だから。
     友達同士でおしゃべりしたり、美味しいものを食べたり、ゲームとか、テストに備えて勉強教わるのもいいし、趣味や製作の打ち合わせしたり……。
     ――驟雨。
     何気ない時間を過ごすのも、いかが?


    ■リプレイ

    ●雨宿り
     校門を出て、ぽつりと気付いたのは同時。天を仰げば、容赦なく降り出す雨。
    「およ? これって狐の嫁入りってやつかい?」
    「とりあえず走るよ!」
     留香は香流の手を取って。
     西日受けながらアスファルトに弾ける雨粒の宝石。きらきらのシャワーの中を駆ければ、まるで異世界に迷い込んだみたいに違って見えた。
    「仙景さーん! レキちゃーん!」
     風邪引かないでねーと香流が叫べば、
    「香流と留香もね!」
     ウインクしながら何処かに駆けこんでゆく沙汰と手を振るレキへと、留香も会釈して。香流が体調崩さないようにと留香が気遣っているのに、当の本人は強引に路地へと軌道修正。
    「折角だもん、そこの喫茶店行こ!」
     無邪気に笑うものだから、留香もつい。
    「まぁ……たまにはいいよ」
     甘いなと思いつつ。雨が上がるまで、姉弟水入らずの時間を。

    「傘を持っていない時に限って雨が降るんだよな」
     そんな不可思議な法則を大輔が言の葉として紡げば。まるで呪文であったかのように雨は勢いを増してゆく。
     雨空から街へと視線移しながら、見た目は平和に感じられる世界をどうしたいのかと自問自答。そして一つ息をつく。
     ――答えはもう少し先になりそうだ。

     実は軒先で雨宿り。タオルで雨粒拭って。
     人目のある場所だから、いつものようにクロ助を伴うことができない。傍らが空白のもの寂しさは、この雨の冷たさにも似ていて。
     もしもクロ助を抱っこしていたとして。そんな想像を巡らせながら、時の流れを見つめた。

     折り畳み傘広げ、アンリエルは雨の匂いを感じつつ雨音に足取り乗せて。だから急く様な足音は遠くからでも。
     打たれるまま、鞄を抱え走るひかる。ただ、知っている人には会いたくなかった。それなのに。
    「……あ」
     この意地悪な雨は容赦なく。
     消える足音に振り返る青の瞳に映るのは、何とも言えない表情。
     よろしかったらと傘を誘う視線をかわし、すぐ駅だからと断って先を急ごうとしたけれど。
    「どうせ駅には行くんですから」
     善意の押しつけですよと、微笑のアンリエルはスマートに彼女を傘へ迎え入れ。ひかるは優しさを断る事も出来ず。
     素っ気ないお礼も、いつかこの雨のようにしみ込むような言葉で返せたのならと。

     律と一緒に雨から逃げてきたこの場所で。ゆまは空を見ながら思う。この雨は、いい機会かもしれないと。
     不意に名前を呼ばれた律は、自然と身構えてしまう。此の声色が何を意味するのか、知っているから。
    「大切にするものを、間違えちゃ駄目だよ」
     ――わたしみたいに。
     言葉なき言葉が、律の頭の中に浸透するのも不思議なことでもなく。
     お義兄ちゃんと呼び、見上げて笑う。そんなゆまへかける言葉は一つしかない。
    「……ああ、そうだな」
     雨音が律の声をさらってゆく。
    「約束、だよ」
     ゆまの声も。
     互いが互いを思うが故の、すれ違う思い。重ならない想い。
     二人の間に降り続ける願いが、光と変わり、止むのはいつの日か。

     貴明からカフェへのお誘いに心躍っていた矢先、
    「え、雨?」
    「そのカフェまで遠くない。走るか」
     頷いて、貴明を追う様に直人は走りだしたものの。其処は遠くないハズ……なのだが。雨が激しすぎて距離を感じる不思議。
    「ヤバイな、失敗した」
     目測誤ったかもしれないと、貴明は思わず本音。もう雨を避ける意味もない程びしょ濡れになったものだから、吹っ切れたようにわざと激しい雨の中を走る貴明はとても楽しそうで。そんな彼を見ていたら、直人も一緒になって笑いながら、雨の中を駆けてゆく。
    「あーあ、下着までびっしょりだ」
    「……な、店には、また来よう」
     直人は笑って手を差し伸べ。
     やけに感じる温もり。手を繋いで帰るのも悪くはない。

     軒の下、そういえば掠めた雨の匂いは気のせいじゃなかったと、芥汰は今更ながらに。
    「あくたん、濡れテ無? 大丈夫?」
    「俺は平気だから夜深の方こそしっかり拭いて?」
     ハンカチを手に、一生懸命背伸びの夜深。そんな仕草に芥汰はくすりとしながら。
     足止めは困るけれど、一緒の時間もしあわせ。夜深の歌と雨音の和音。雨の日の歌、心地よい声色に芥汰は酔っていたら。
    「ケろけロ…っくしゅ!!」
     夜深の可愛いくしゃみ。
     風邪に捕まっちゃう前に、芥汰がぎゅと手を繋いで。見上げる夜深は照れ臭そうに。
    「雨、上がったら虹の見えるトコにあるカフェにでも行こっか」
     二人だけしかない世界を抜けだして、たくさんの大好きがある場所に戻ろう。

    ●ゲームセンター
     アームを絶妙に動かしている健の目つきは真剣。ひっかけ、最後に押し出せば。じらすように揺れつつも、ころりと落ちるぬいぐるみ。
    「よし、ゲット!」
     陽桜とレキが歓声上げる中、健は双子のホワイトライオンをハイどうぞ♪
    「やっぱり男の子はじょーず!」
    「もふもふ~♪」
     尊敬の眼差しで目をキラキラさせる陽桜。レキも幸せ顔。
    「ひおもちょうせーん。これがいーな! お菓子たっくさん!」
     狙ってボタンを押してみるけれど、取り出し口には飴玉三つ。レキはオモチャの宝石一個。お菓子ですらない!
     健もお菓子台に挑戦、掴んだお菓子を上手く落し込んで崩し大量ゲット――、
    「……とは簡単に行かないかー」
     互いに苦笑いの健とレキ。陽桜はにぱっとしながら、
    「お口開けてー、はいっ」
     放り込む飴玉。お口の中の甘さに皆でほんわりしながら。無くなる頃にはきっと、空には弧を描く七色。

     三月のライブカッコ良かったと、感想を改めて述べる沙汰。朋恵は彼と帰り道が一緒になったから、普段は一人での雨宿り先、今日は二人で。
    「沙汰さんは、普段どんなゲームするんですか? あたしはよく色んなリズムゲームをやるんですけど」
    「俺もそういうのはよくやるよ」
     なら早速二人でプレイしましょうと、朋恵はお気に入りの台へと。今日は二人だから、今日はなんだかうまく出来そうな予感。
     難易度合わせ、二人で演奏、ミニライブ!
     最後にプリクラ。雨の日の小さな思い出。

    「うぉぉ、雨振ってやがる! こんな日に限って!」
     新作稼働日だというのに、瑠音へと容赦ない通り雨の現実が。
     翠葉がどうしようかと尋ねる暇もなく。通り雨なんかに負けないゲーセン魂をフル動員し、瑠音は突撃を開始――したんですが。
     眼鏡に滝のようなものが出来て前が見えず、何とか連れてくんだと叫ぶ瑠音。翠葉は咄嗟手を引いて走る。
    (「どさくさ紛れで手を繋いじゃった……」)
     付き合って三カ月、翠葉は初めて握った手の感触にどきどき。
     到着なり、早く行くぞとせっつく瑠音は相変わらずで。
    「ほら、手が冷たいままだと音ゲーで良いスコア出せないから、ね」
     タオル取り出す翠葉。心配も勿論、もう一度彼女の手に触れたくて。

     クレーンがクマのぬいぐるみを捕まえて。
    「やったな!」
     朔之助にそう声かけられて、得意げな顔をして振り返ろうとした瞬間。
    「す、すげーな……」
     抱える程のクッション見せつけられたら、得意げな顔見たのは嵐の方だったり。
     プリクラ撮ったことのない嵐のため、朔之助はこれまた自信満々の顔付きで連れていったのだけど。
    「おお!? なんか秒読み開始したぞ。どんなポーズしたらいい?」
    「え? えーと」
     何故か浮かばず焦る朔之助。看板の子が手でハートマークしているのを見つけた嵐が真似をしたなら、ナイスと乗っかって。
     撮り終われば、花やスタンプでデコって書いて。名前に寄り添う友達の文字。完成したプリクラに、二人は自然と口元綻び。

     今日七緒は、玲仁と一緒にゲームセンターデート。未知の領域に、思わずキョロリ。
    「……といってもいわゆる音ゲーしか分からんのだがな」
     玲仁は音ゲーコーナーに七緒を連れて。ギターにドラム、音に纏わるゲームが好きなのはルーツ故?
    「このあからさまにギターなやつはやっぱぎゅんぎゅんして遊ぶやつですか?」
    「そう、ぎゅんぎゅんして遊ぶのだ」
     おるたなてぃぶくらっしゅと言いつつ、七緒はギターで天地ツンツン。玲仁は一通りの操作くらいは教えようではないかとお返しツンツン。
    「あれ僕、天地より上手いんでない?」
    「正直、楽器よりも歌う方が好きだからな」
     二人でプレイしながら、ゆくゆくは武道館ライブ、なんて。

     酷い雨。軽く湿った服を乾かすのも兼ねて。優奈と暁はゲームセンターで雨宿り。
    「そういえば、今まで遊んだ記憶はないのよ」
    「え、無いの? 楽しいぜ。但し、気づいたら財布が軽くなってる魔法の店だ……」
     遠い目で呟く優奈にくすりと暁は笑ったあと、連れられるようにクレーンゲームの前。優奈はもふもふな兎のぬいぐるみにロックオン!
     捕まらない兎と軽くなる財布を目の当たりにした暁は、へこんじゃった優奈をよしよししながら。
     さらりと入れた小銭。
     さらりと取り出し口へと滑る兎。
     初めてのはずの暁へ、どんな魔法と目をキラキラさせる優奈。
     お財布軽くなっても。あなたとの時間は重みを増して。

    ●喫茶店
     地下への階段降りた先、迎えてくれたBGMと珈琲の香り。葉はソファーに掛けて、飴色の照明に照らされたこの場所に、違う時の流れをぼんやりと思う。
    「仙景とまともに話すの初めてかな、ひょっとして」
     偶然出会ったのは、同じ学部の友(というのを今知った)。ハジメマシテというのもなんか違う気がして。寝顔とは良く顔を合わせてるなんて、沙汰はからかう様に。
    「ハードボイルド小説似合いそうな店だよなァ。なんか俺等探偵っぽくね?」
     秘密基地見つけたみたいな顔の錠を、葉は今にも小突いてやろうかみたいな顔で、
    「錠はさっきから探偵っぽいだのハードボイルドだのうるせぇよ」
    「俺はミルクコーヒー、砂糖ナシで! 葉はコレだろ、コーラフロート。仙景は何頼む?」
     テンション高めの錠。葉は呆れたように。沙汰は面白そうに笑いながら。雨の悪戯に乗っかってみるのも、たまにはいいものだな、と。

     恢の店の雰囲気に似ているからというのは、手招いたさくらえの談。レトロな喫茶店の堂に入った佇まいに、恢はそわそわと懐古を感じて。
    「そーいえば」
     身を乗り出すさくらえ。先日のスペシャルブレンドの種明かしを聞きたくて。
    「あの珈琲ですか??」
    「あれって企業秘密なの?」
    「そう興味を持たれると秘密にしたくなるは何故でしょう……」
     にっこりと笑う恢。
    「何気に意地悪だなぁ」
     奢るので好きなのどうぞ、と。君と向かい合うことそのものが嬉しいように、朗らかに笑うさくらえ。言いだしかけた遠慮の言葉をひっこめ、恢は冗談めかしたように、
    「じゃ、例の珈琲豆で後払いします」
     微笑みあう二人の前、楽しさ盛り上げる香りのご到着。

    「あまり濡れずに済んでよかった」
     雨宿りに飛び込んだ、落ち付いたカフェにて。誉は窓際の席へとジュガーをエスコート。
     アイスコーヒーをブラックで頼む誉が大人に見えて。シュガーはちょっと気恥ずかしそうにしながらカフェラテを。誉がケーキを勧めたのは、勿論奢る前提。
     旅行ガイドを広げながら、夏の計画。
    「キャンプなんてどうだ? テント張って料理食べて……夜は満天の星空なんてきっと綺麗だぜ?」
     初デートの計画に、誉も熱が入っているようで。そんな彼を見ながらケーキを一口、そしてふと。
    「……なんだかこの雨宿りも、初デートみたいですね?」
     ふわっと笑うシュガー。誉も微笑み返し、
    「二人なら、こういう雨宿りも悪くないな」

    「まさか雨とは思わなかったの」
     蓮二はそう鵺白に呼ばれて。相合傘の止まり木はカフェの窓際。珈琲の香り、ケーキの甘さに舌鼓打ちつつ、他愛のない話に花を咲かせ。
     最後のひときれを口に入れたなら、鵺白は思い出したように。
    「あのね、傘……本当は忘れてないのよ」
     目を丸くした蓮二の視線の先、見慣れた赤い傘も悪戯に笑った様に見えて。
     君に、とても会いたくなったのと悪戯っぽく笑う鵺白。
    「なんだそれ! そんな事しなくても会いに行くのに」
     このヤローと言いつつ、蓮二の眉は緩やかに下がっていて。仕返しとばかりに軽くつまむ頬。雨に冷えた頬はちゃんとあったまっただろうか――肌の温もり確かめながら。

     雨宿りを理由に御洒落カフェに突撃。
     大人っぽい店内に、遊と日生はちょっぴりそわそわしながら、けれど漂う甘い匂いに美味しい予感は止まらない。
    「苺や旬のフルーツが乗ったのも美味そうだし」
    「……んと……抹茶か紅茶……あ、黒蜜きなこも捨てがたい……」
     どれも美味しそうで、学校帰りのお腹は誘惑されまくり。選ぶこの時間も、スイーツ好きにはたまらない時間だ。
     遊はシンプルな基本のフレンチトーストを、日生は抹茶のフレンチトースト豆乳バニラアイス添え。
    「……はぅ。お抹茶濃厚…アイスも甘さ控えめで美味しい」
    「……ヤベ、マジ美味い」
     雨音に混じる、スプーンとフォークのハーモニーは至福の音色。

    「相変わらず広くてバラバラになっちゃうと会えないものよね」
     七と沙汰はカップ片手に。久し振りに顔を合わせた偶然はこの雨。
     過ぎ去ったものが懐かしくてか。七は一瞬目を伏せるも、すぐに楽しげな顔で。
    「仙景はどこの学部行ったの?」
    「七の秘密を暴くため、探偵のイロハというものを学びに」
     冗談交じりに返してくる沙汰。意外な学部に噴きだしそうになったりして。
     七はいつものように双眼細め。互いの大学生活の興味と、高校時代を懐かしみながら。
     ――雨がやむまで付き合って。

    ●雨宿り
     突然の雨は悪戯好き。奏夢はカフェの軒先に駆けこめば。聞き覚えのある愛らしい声がそこに。
    「紅子?」
    「奏夢!?」
     予想外に結構ビックリの二人。
    「あ、濡れてるやん。風邪ひくよ」
     自分のハンカチで奏夢の頭や頬を拭きつつ、約束もしていないのに会える雨の悪戯に、楽しげに笑う紅子。
     女の子らしい仕草と気遣い。その行く先が自分であるならば、嬉しいよな、少し気恥ずかしいような。
     クシュンと紅子。思わず笑み零す奏夢は、羽織っていたジャケットを掛けてあげつつ、
    「風邪ひくぞ」
     ふわりと抱きしめてくれる、奏夢の香りがするジャケットに、紅子は少しドキドキ。
     当り前のように手を重ね、そして互いの時も重ねて。

     雰囲気の良いアンティークショップで雨宿りを。
     自分が濡れないようにと傘代わりに使った上着をたたむ巽の様子を横目にしながら、時代のわすれものが並ぶ世界、霧夜は迷う様に。
    「古い品には魂が宿るとは日本の付喪神でしたか。こういった品は持ち主を呼ぶそうです」
     カンテラにしばし心奪われている霧夜へと、巽はそう声をかけ。
    「……物が持ち主を選ぶとは不思議な考え方だな」
     否定するわけではないけれど、確かめる方法が無い以上、それを信じることも難しい――。
     けれど雨が止むその時まで、霧夜の視線がカンテラへと向けられたことを巽は知っているから。
     幾日かの時の流れにのって、カンテラは霧夜の元へ、きっと。

    「やれやれ。せっかく皆さんと帰りが一緒になったのに、困った天気っす」
     今頃は菜種梅雨というのでよかったっすかね? なんて。ギィはおぼろげにある知識を確かめるように。
     ヘキサに導かれた雨宿り先は、レトロな佇まいの駄菓子屋さん。
    「わー! 駄菓子屋さんって初めてですー!」
     瑠璃花はプラスチックケースの中のお菓子に目をキラキラ。
    「ミニヨーグルトとかシガチョコとか、100円あれば結構買えちまうんだぜ」
     ヘキサが値段を指差せば、御値段にもキラキラ。
    「さてと、100円でどれだけ買えるかなー」
    「計算しながらやってご覧?」
     翔は上限を100円と決めて、わくわくしながら物色。それとなく弟が無駄遣いしないよう注意を回す、さすがはお兄さんの颯。
    「えーと、100円までだと……あれ、足りないですー」
     瑠璃花は物珍しさにあれこれ手に取っていたら、あっという間に予算オーバーでまさに塵も積もればを実感中。
    「駄菓子を買うのも久しぶりです」
    「少し高くなった気もするけど、それでも見知った駄菓子は多いね」
     子供の頃の記憶と照らし合わせるように、織久と颯は店内の中、小さな探検。これ夏かいしいよね、そんな会話も弾んで。
    「すいません。みぞれ飴はありますか?」
     織久が尋ねれば示される、色彩豊かなみぞれ飴が詰まった大瓶。
    「当時は口に入るか心配になっていましたね。こんなに小さい物だったでしょうか」
     当時は口に入るか心配でしたと、兄に買ってもらった思い出飴玉に重ね。紫色の飴玉お土産に。
    「変わり玉、ふ菓子、ソース煎餅にゼリー、その他色々……ンー、纏めて買っちまうか!婆ちゃんコレ全部くれッ」
     豪快に買えちゃう駄菓子ならではの快感。欲しいもの全部抱えて満足げなヘキサはにひひと笑って。
     かき氷は勿論、奥にはもんじゃ焼を食べられる小スペース。ヴァーリはそこで早速、買ったばかりの駄菓子ともんじゃの美味しい組み合わせを模索中。
    「って駄菓子でもんじゃ焼きも出来るんだ」
    「下町ではおなじみらしいっすね」
     俺も焼きたいと翔。ギィは慣れた手つきで土手を作ってゆくヴァーリに感心しつつ。
    「ふむ、もんじゃは駄菓子と組み合わせる事が多いとは聞いたが、ラーメン菓子が美味しいのは納得だがカツやポン菓子も意外といけるな」
     皆も食べてみるかと勧めるヴァーリ。
    「こうして過ごすのも悪くはないね」
     颯は駄菓子を手に空見上げたら、雨雲から差す西日に目を細め。

     ――さあ、雨が止んだら帰ろうか。

    作者:那珂川未来 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年5月21日
    難度:簡単
    参加:46人
    結果:成功!
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