ようこそ斬新カジノへ

■リプレイ

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　六六六人衆、荒巻・寛が支配人を務める、やたらおしゃれなクラシックが流れる地下カジノ。そのチップ交換所にて。
「１８歳未満では購入できない書籍を年齢を偽って購入しました。しかも大量に」
「…………そうですか」
　浅山・節男（勇猛なる暗黒の正義の使徒・d33217）が提出した犯罪ビデオの中身を確認しながら、受付のお姉さんが冷やかに応えた。
「…………査定が終了しました。刺激的な賭博をお楽しみください」
「これはどうも」
　お姉さんの冷やかな視線を華麗に受け流しチップを受け取った節男は、そのままカジノへと足を踏み入れて行った。
「次の方、どうぞ」
「俺だな……ビデオはこれだ」
　風間・小次郎（超鋼戦忍・d25192）が受付にビデオを提出する。
　そこに映っているのは、室内で大量の刀や手裏剣を手入れしている小次郎の姿だった。
「罪状は銃刀法違反。全て刃はついている。どうだ？」
「なるほど…………確かに本物なら中々の犯罪ですね。チップをどうぞ」
　先程よりもかなり多めのチップを受け取った小次郎もまたカジノへ進み、続いて現れた鳳桐・夜霧（大学生殺人鬼・d03143）がビデオを差し出す。
「まあ、割と無難にしたつもりだ……道のど真ん中でダンス躍るのと、最後まで迷ってたけどな」
　ビデオには、道のど真ん中に眩い光を放ちまくるバス停を放棄する夜霧の姿が映っていた。
「まあ迷惑加減はどっちもどっちですね」
　流れるようにチップを受け取った八切は、ブラブラとカジノの中を進む。
　そして最後に、５人の灼滅者達が一斉に姿を現した。
「ここか。マジであったんだな、小学生でも入店できるカジノって。最近のカジノは発展してるんだなァ」
　天倉・瑠璃（ツギハギの嘘とロストする日常・d18032）が呟きつつ、受付にビデオを軽く投げ渡す。
「ヒナ達、うんと頑張りましたのよ？　しっかり査定して下さいね？」
　周防・雛（少女グランギニョル・d00356）が小首を傾げながらそう言うと、受付は静かにビデオの中身を確認する。
「中身は、仲良し５人組で、万引きしたもの。ふふ、悪いこと、でしょ？　少し、楽しかった、わね」
　漣・静佳（黒水晶・d10904）がそう投げかけると、受付はチップを取り出し５人に等しい数のチップを配った。
「若干ややこしいですが、まあこんな所でしょう。それでは、刺激的なカジノをお楽しみ下さい」
　チップを手にした５人はそのまま一緒にカジノへ足を踏み入れた。
「それでは皆さん、精々楽しむ事にいたしましょうか」
「うう……カジノなんて怖いですけど……でもみんなが行くっていうなら、わたしも付いていきますですよ……」
　天神・緋弥香（月の瞬き・d21718）が迷いなくカジノの中を突き進み、か弱い少女風の演技をしている日野森・沙希（劫火の巫女・d03306）は、その背中にぴったり付いていった。

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「不合理に身を任せてこそギャンブル……！　面白い……狂気の沙汰ほど面白い……！！」
　何やらざわついた雰囲気とまるで顎が尖っているかの様な雰囲気を同時に発しながらブラックジャックで遊んでいる瑠璃。
「希望は僕らの手の中……！　そして今こそ攻め時……倍プッシュだ……！！」
「バストです」
　そしてごそっとチップを持って行かれた賭博士瑠璃であった。
「…………全然駄目ですね。漫画ならこれで勝ちまくれるんですが……と、もう全員カジノに入ったみたいですね」
　スロットでかなりの数のコインを消費した節男が、携帯で仲間たちにルーレットに集合する旨の連絡を入れる。
　そしてぞろぞろと1つのルーレットの周りに集まる８人の灼滅者。
「くそ、全然勝てやしねえ…………しょっぱい勝負はもうやめだ！　ここは男らしく一点賭けだ！」
　適当にルーレットで時間を潰していた夜霧が、唐突に声を張り上げ残りのチップを掻き集める。
「面白そう、ね……それじゃあ私は、００に全部賭ける、わ。皆も、そう、しない？」
「ドンと運張って一攫千金……嗚呼、トレビアン！」
　静佳が呼びかけるとノリノリで雛がチップを差し出し、他の灼滅者達も次々とチップを００に置いていく。
「みんながそうするなら…………うう～、でもこれで負けちゃったら、チップが全部無くなっちゃうよー」
　弱気風な声でチップを差し出した沙希を余所に、ルーレットは回りだす。
　灼滅者達が静かに見下ろした玉はストン、と２のポケットに入った。
　やはり早々一転賭けは当たらないという事だろう。
「おや、皆さま揃ってチップが無くなりましたか……」
　ディーラーが小さく合図を出すと、カジノ内にいた黒服ゾンビ達が灼滅者達の腕を掴み、薄暗い奥の部屋までズルズルと引っ張っていく。
　皆で同じルーレットに一点賭けし、同時に荒巻の所まで向かうという作戦は、とても理に適っていたものだっただろう。
「いよいよか……皆、気を引き締めるぞ」
　スレイヤーカードをこっそりと手に忍ばせながら、小次郎が小声で仲間たちに呼びかける。
　そして灼滅者達が部屋に通されたから数分後、標的である六六六人衆、荒巻・寛が姿を現した。
「随分と多いですね……まあいいでしょう。皆さま初めまして。わたくし当カジノの支配人を務めさせて頂いております、荒巻・寛と申します。早速ですが、チップを失った皆様は……」
「さっき提出したビデオ以上の犯罪を犯し、そのビデオを提出しなければその中身を公開させられる、でしたわね」
　堂々とした緋弥香の言葉に、荒巻の眉が僅かに動く。
「では、貴方達にとっては犯罪になるかも……ある意味殺人かもしれませんわね。灼滅させて頂きますわ」
　緋弥香はそう言ってスレイヤーカードを解放し、殲術道具を構える。
「装甲装着！」
　緋弥香に続き小次郎もスレイヤーカードを解放し、戦闘用の装甲を装着した。
「なるほどなるほど……あなた方は皆揃って灼滅者、という訳ですか…………いいでしょう。当カジノで騒ぎを起こした者は皆処刑。そういうルールですので」
　荒巻もまた両手に嵌めたメリケンサックじみた武器を構え、戦闘態勢に入る。
　そして戦いが始まった。

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「何でそんなにメリケンに盛り盛りかは知らないが、さっさと倒させて貰うぞ」
　夜霧は槍を大きく掲げながら、黒服ゾンビ達に突撃する。
「これは私の趣味です」
　荒巻は突撃してくる夜霧に向けてメリケンの銃口を向けると、放たれた散弾が夜霧に襲い掛かる。
「結構効くな……だが、この程度で俺は倒れないぞ」
　攻撃を正面から受け取った夜霧は、そのまま大きく槍で薙ぎ払い、ゾンビ達の身体を思いきり吹き飛ばした。
「いつもはカジノの皆さんがお客を騙してるみたいですけど、今日だけはお客がカジノを騙す斬新なカジノになりましたですよっ」
　沙希は吹き飛んだゾンビの顔面に鬼の拳を振り降ろすと、そのまま地面に埋め、そのまま二度と動けなくした。
「ウガガー！！」
　黒服ゾンビ達は狂った様な叫びを上げながら刀を振り上げ、前衛に突撃する。
「何匹集まろうが雑魚は雑魚なんだよ」
　放たれた斬撃を軽く避けながら、瑠璃は全身に闘気から練り上げた赤黒い電撃を纏わせていく。
「オレ達との格の違いって奴を見せてやるよ…………金糸雀」
　静かな呟きと共に瑠璃が放った鋭い突きが、ゾンビの心臓を抉る。
　そして同時に放たれた雷がゾンビの全身を焼け焦がし、一瞬にして灰へ変えた。
「最近の灼滅者が相当に強いというのは、本当だった様ですね」
　荒巻は拳を構えて前衛に突撃し、無数の拳を放っていく。
「今、何かなさったのかしら？　その程度の攻撃しか出来ないなんて……」
　荒巻の拳を避けた緋弥香はそのまま注射器を突き出し、荒巻から生命力を奪い取った。
「ふふ、結構斬新なカジノで、面白いけど。あなたが、六六六人衆、なら。灼滅させてもらう、わ」
　静佳がそう呟き片手を掲げると、部屋の中心に巨大な十字架が出現し、荒巻に向けて無数の光線を放ち始める。
　そして放たれた荒巻の前に飛び出したゾンビが光線に焼かれ、そのまま消滅していった。
「ゾンビは、あと一体、ね」
「所詮は眷属。大した戦力は期待していませんでしたが……ここまで役に立たないとは」
　荒巻は軽くため息を吐き、メリケンっサックぽい武器に取り付けた火炎放射器から炎を吐き出した。
「勘違いしないで下さいね。本当はこんな痛い役割嫌いなんですから」
　ぼやきつつもしっかりと仲間に向けられた攻撃を受け止めた節男が、即座に自身の傷を癒した。
「お邪魔よ……ご退場なさい」
　華麗に戦場を駆ける雛が糸を放つと、最後に残った黒服ゾンビの脚を絡め取り、その動きを大きく封じた。
　そして小次郎が、忍者刀型クルセイドソード『ブレードオンハート』の刀身に、業火を纏わせていく。
「我が刃を灼滅と成す！」
　振り降ろされた刃はゾンビの身体を綺麗に両断し斬り捨てられた身体は炎に包まれ燃え尽きていった。
　そして軽く刀を払いながら、小次郎は荒巻を見据える。
「俺達が倒したこのゾンビ達は、どこから調達した？」
「答える義理がありませんね。知りたければ、ご自分でお調べになってはいかがでしょう」
　まあここで死ななければ、と言って荒巻は僅かに笑みを浮かべた。

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　８人の灼滅者達が戦闘を繰り広げている間、サポートに訪れていた２人の灼滅者達も行動していた。
「あったあった……かなり大量です。ここのカジノだけで、これだけの犯罪が行われていたんですね」
　提出した犯罪ビデオに潜ませていたシグナルボタンを辿り、ビデオの保管場所を割り出した流美は、犯罪ビデオを回収していた。
「美味い話にゃ裏があって当然、命が惜しけりゃこんな場所、二度と踏み入れない事だ」
　カジノ内に潜入していた脇差は、一般人を逃がしつつ、軽く警告していた。
　そして一般人の避難が終わってもなお、灼滅者達は戦闘を繰り広げていた。
「さっさとくたばれ」
　瑠璃が思いきり杖を振って荒巻の顔面を殴り飛ばし、壁に叩きつけると同時に内臓を爆発させた。
「このまま押し切って、灼滅するです」
　沙希全身に纏った闘気を拳に集束させると、荒巻に向けて正面から突撃する。
「ふむ……灼滅者。よもやここまで強いとは」
　荒巻はメリケンチェーンソーを駆動させ、巨大な刃を沙希に向けて突き出した。
「だからその武器何がどうなってそうなってるんだよ」
　沙希の前に飛び出した夜霧がチェーンソーを受け止め、沙希に攻撃の隙を与えた。
「斬新という割に入店基準以外はありがち、しかも客を嵌める手段も典型的。こんなカジノは、叩き潰すのが一番なのですよっ」
　そして沙希が無数の拳を撃ち放つと、荒巻の身体が鈍い音を立てて軽くひしゃげた。
「グ……」
　痛みに顔を歪め膝を付く荒巻の前に、カンテラを掲げた節男が進み出る。
「このカンテラ、斬新なんですよ。拳に嵌めてメリケンに出来ますし、火も出せます」
「ほう……中々いい趣味でございますね」
　パンパンと足を払いながら立ち上がる荒巻を節男はじっと見据える。
「もちろん嘘です。あ、火は本当に出ますよ？」
　そして節男が構えたカンテラに灯された赤い炎が一段と強く光り、放たれた炎の花が荒巻の全身を包み込んだ。
「もうそろそろ、終わりそう、ね」
　静佳は呟きながら剣を振るうと、放たれた祝福の風が仲間たちの傷を癒していった。
「さて、それじゃあ……ディナーの時間よ」
　装着した黒仮面の中で僅かに笑みを浮かべながら、雛は霊犬の『ボンボン』に指示を出し、ボンボンは斬魔刀を構え駆け出した。
「アーレ・ドールズ！」
　直後、雛の声と共に足元の影が蠢き、人型となって荒巻の元まで一気に迫る。
「フフ……捕まえた。お遊びはお仕舞い……ボン・ニュイ」
　影と斬魔刀、放たれた二連の斬撃は荒巻の身体に深い傷を刻み、荒巻は傷を抑えながら後ろへ退がる。
「散れ、殺意にまみれた魂よ……」
　追撃を仕掛けた小次郎が、刃を非物質化させた刀を振るうと、荒巻の魂が真っ直ぐと斬りつけられた。
「グ……これはまずいですね……！！」
　荒巻は焦りをはっきりと表情に現しながら、戦況を見定める。
　既に戦闘開始からそれなりの時間が経っており、荒巻が負った傷も、蓄積されたバッドステータスも多い。
　いまさらながら、ゾンビ達が残っている間にさっさと徹底すべきだったと荒巻は歯噛みした。
「いくら悩んでも、あなたがここで灼滅されるという事実は変わりませんわ」
　緋弥香は紫蘭月姫【緋】という名の薙刀に緋色のオーラを纏わせながら、荒巻の動きを見定める。
「仕方がありませんね…………私はここで死ぬ様ですが、せめてあなた方の誰かは道連れにさせて頂きましょう……」
　瀕死の荒巻はメリケンサックを構えて突撃し、灼滅者達に無数の拳を放つ。
　しかし灼滅者達はその拳を避け、あるいは受け止めきると、荒巻に向けて一斉に攻撃を放った。
　雛が構築した糸の結界が荒巻の全身を蝕み、
　静佳が放った一筋の光条が胸を貫いた。
　沙希が振るった杖がこめかみを打ち、
　瑠璃が放った赤黒い雷を纏った拳が鳩尾に抉りこむ。
　夜霧が放った帯が全身を絡め取ると、
　小次郎が炎を纏わせた刀で一閃する。
　節夫が生み出した炎の華が荒巻の全身を焼くと、
　緋弥香が勢いよく薙刀を振り降ろした。
　放たれた斬撃は荒巻の身体を綺麗に斬り、刃に纏ったオーラが荒巻の身体に残った生命力を吸い尽くした。
「失礼！　これでも手加減したのですが……」
　そう言って緋弥香が薙刀を軽く振って血を払うと、荒巻の巨体はバッタリと床に倒れた。
「まさか……灼滅者に殺されるとは……」
　荒巻はそう小さく呟きと、荒巻の全身は跡形もなく消滅していった。

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「ここでの賭け事は、文字通り身を滅ぼすな……」
「まあ、なるべくしてなった、という所でしょう」
　小次郎と節男がそう呟きつつ、それぞれの得物をしまった。
「なんで六六六人衆にゾンビの配下がいるかは分かりませんですけど、ひとまずは勝てて良かったのです」
「噂の斬新ご一行様のアジト……中々興味深い場所でしたわね」
　沙希と雛がそう言いつつ、殲術道具を封印した。
「ここの資金は、学園に回収しておく、わ。学園に持ち帰りましょう」
「ん？　……んん、ああ、そうだな」
　静佳と瑠璃がマネーギャザを使用し、カジノに蓄えられていた資金を回収する。
　なんか瑠璃がその一部を自分の財布に突っ込んでいた気がするが、きっと気のせいだろう。
「それでは、撤収しましょう。ここにはもう用はありません」
「そうだな。分からない事も多いが、まあ調べて行けば何か分かるかもしれないしな」
　緋弥香と夜霧がカジノの出口へ向かい、一同はそれに続く。
　すすきのに現れた斬新の地下カジノ。
　眷属のゾンビや、すすきののアリエル・シャボリーヌとの関連性の有無、本社が潰れた筈の斬新京一郎にやたら六六六人衆の配下がいる事など、気になる事は多い。今後の調査や推理が重要になってくるだろう。
　六六六人衆、荒巻・寛を灼滅し地下カジノを1つ潰すことに成功した灼滅者は、それぞれ考えを巡らせたり巡らせなかったりしながら、学園へと帰還したのだった。

作者：のらむ	重傷：なし 死亡：なし 闇堕ち：なし
種類： 公開：2015年5月26日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 4／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 2
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