決戦、スマイルイーター! 密室客船潜入作戦! 

    作者:海乃もずく

    ●沖縄を後にして
     那覇港に停泊する、一隻の豪華客船。
     大型のクルーズ船は、不思議と誰の目も引かず、港の人々はその横を通り過ぎる。
     密室化し、人目をくらませたクルーズ船の船長室にいるのは、スマイルイーター。
    「KSD六六六など、灼滅者にくれてやりますよ。それなりに楽しめましたしね」
     沖縄県内の爆弾はもったいなくもあるが、灼滅者への牽制には十分に役立った、と。
    「どのみち、灼滅者の剣がこの僕に届くことは、絶対にありえない。なぜなら、この密室客船ほど完璧な密室は存在しないのだから」
     そう――ここは、密室化した大型客船。
     甲板には沖縄のご当地怪人達が、客室にはHKT六六六から連れてきた配下達が配置されている。これだけの手勢があれば、万が一の侵入者がいても容易に排除できる。
    「まずは、松戸のアツシ君と合流し、次は、首都圏で同じ事件を起こしてあげましょう」
     スマイルイーターが独りごちた時、船長室をノックする音が響いた。
    「なあ、俺達はやっぱり沖縄を離れたくないんだが……」
     入ってきたのは、かりゆしを着た大柄な羅刹を代表とした、何人かの沖縄ダークネス。
    「頼むよ、帰してくれよ。出口が見つからないんだ、どうすればこの船は出られるんだ?」
    「……」
     無言の視線にたじろぎながらも、さらに一歩踏み出そうとした羅刹を、次の瞬間、言語に絶する痛みが襲いかかる。
    「心外な言葉を耳にした気がしますが、気のせいですかね。よく聞こえませんでした」
    「ぐぅぅおおおおおっ!! あがっ、ぎゃ、ぐっ、ぐあああああ!」
     激痛。
     羅刹の体を、赤熱した何本もの太い鉄串が貫いている。
     傷の深さもさることながら、正気を失わんばかりの痛みに羅刹はのたうち、全身をこわばらせ、絶叫する。
     慌てて、沖縄ダークネス達の中から、シークワーサーの頭をしたご当地怪人が飛び出してきた。
    「やめてくれよぅ、このままでは死んでしまうよぅ!」
    「嫌ですね、この程度では死にはしませんよ」
     何でもないことのように答えるスマイルイーター。
    「しかし……まあ、このくらいにしておきましょう。皆さん、持ち場に戻ってください」
     圧倒的な力を見せつけ、にこやかに告げるスマイルイーターに、沖縄ダークネス達は逆らえない。
     ――船はじきに出航する。目的地は、千葉県松戸市。
     
    ●密室客船のスマイルイーター
     この日、教室に集まった灼滅者は、いつもより多い30名。
     天野川・カノン(中学生エクスブレイン・dn0180)は、表情を引き締めて彼らを出迎える。
    「スマイルイーターが沖縄各地に仕掛けていた爆弾は、全て解除に成功しました」
     ベッドにきちんと座り、居ずまいを正して、カノンは言葉を続ける。
    「爆弾解除に尽力された皆さんに、深く感謝を。大任、お疲れ様でした。そして、ありがとうございました。皆さんの活躍がなければ、未だにスマイルイーターは沖縄での活動を続けていたことでしょう」
     ふぅ、と一つ息をつく。
     ……そして、カノンは満面の笑みで身を乗り出した。
    「――でね、それでね! 見つけたよ、その後のスマイルイーター!」
     丁寧語が瞬時に消えた。
    「周ちゃんが掴んでくれたんだよ! 間に合ってよかった、タッチの差で見逃すところだったよ!」
     『爆弾を失ったスマイルイーターは、那覇港から沖縄を脱出しようとするのではないか』。
     淳・周(赤き暴風・d05550)の予想は見事にはまり、那覇港を出港間際のスマイルイーターを見つけることができたのだという。
    「スマイルイーターは、『密室化された豪華クルーズ船』を脱出に使っているの」
     松戸の密室と同じ性質のものだろう、とカノンは言う。
    「爆弾で一般人を人質にとり、失敗すると逃げ出す。本当に卑怯な人だよね。わたし、予知で見るたびに、この人に点滴針を投げつけたくなっちゃう」
     カノンは資料を黒板に貼っていく。それは、そこそこ豪華なクルーズ船の間取り図だった。
     このクルーズ船は密室の効果があり、たとえ目の前にあっても、一般人は存在すら気づかない。
    「周ちゃんが発見してくれなければ、わたし達にも知る事はできなかっただろうね。……でもでも、存在を知った以上、イニシアチブはこちら側にあるよ! 絶対に攻略しようね!」
     目的は一つ、スマイルイーターの灼滅。
     ただし、船にいるのはスマイルイーターだけでなく、スマイルイーターが沖縄から連れてきたダークネスや、爆弾の守護を任されていた六六六人衆と同じような、笑顔を奪われた六六六人衆がいる。
     対して、潜入できる灼滅者側の戦力は30人。船内にいるダークネスより少ない人数だ。
     現在、密室客船は那覇港に停泊しており、スマイルイーターは配下のダークネスに集合をかけている。しかしバベルの鎖で灼滅者の襲撃を知れば、残りの配下を見捨てて船は出港するだろう。ひとたび出港されれば、客船自体を見失ってしまう可能性が高い。
    「だから、潜入できるのはこの30人。船内のダークネス達と真正面から戦える戦力じゃないけど、これが限界の人数だよ」
     そのため、今回の作戦では、スマイルイーターのもとに行くまではできるだけ戦闘を避け、スマイルイーター撃破後は、速やかに客船から脱出する必要がある。
     
    「それで、潜入方法なんだけど。密室化された客船へは、船べりをよじ登って甲板に上がってね。夕闇に紛れて潜入することになるよ」
     登るための用具はなくとも、灼滅者の身体能力なら船べりを登ることはできる。多少は手間取るだろうが。
    「それで、船内の状況なんだけど――」
     船自体は外国かどうかで購入したもので、沖縄などを就航している船とは形状が異なっている。乗客200人を収容できる、200mほどの船だという。
     甲板および甲板に近い場所には、沖縄のダークネス達がいる。
     客室や廊下には、爆弾を守護していた者と同様、笑顔を奪われた六六六人衆がいる。
     船長室にいるスマイルイーターのもとに行くには、客室や廊下を通り抜けるか、窓から侵入する必要があるという。
     沖縄のダークネスも、笑顔を奪われた六六六人衆も、スマイルイーターの命令には従っているが、自分の意志でスマイルイーターの為に働く意思はないようだと、カノンは言った。
    「だけど、スマイルイーターは船内放送を通じて、船内の全てのダークネスに命令を出す事ができるの。……これがかなり厄介だよね……」
     仮に正面から突入しても、スマイルイーターのもとに着く前に六六六人衆に足止めされ、そこに放送で命じられた沖縄のダークネスが集まってきた時には、絶体絶命になってしまう。
     
    「スマイルイーターさえ灼滅できれば、残党のダークネスも、そう大きな事件は起こせなくなると思うよ」
     そこまで言って、カノンは思い出したように付け加えた。
    「……そういえば、もう少しで修学旅行だね。去年と同じ、楽しい沖縄の修学旅行ができるように、あのスマイルイーターの首根っこを押さえて、決着をつけてきてね!」


    参加者
    泉二・虚(月待燈・d00052)
    加藤・蝶胡蘭(ラヴファイター・d00151)
    伊丹・弥生(ワイルドカード・d00710)
    外法院・ウツロギ(百機夜行・d01207)
    羽柴・陽桜(はなこいうた・d01490)
    花藤・焔(魔斬刃姫・d01510)
    神門・白金(禁忌のぷらちな缶・d01620)
    忍長・玉緒(しのぶる衝動・d02774)
    識守・理央(オズ・d04029)
    敷島・雷歌(炎熱の護剣・d04073)
    村山・一途(硝子細工のような・d04649)
    淳・周(赤き暴風・d05550)
    銀・紫桜里(桜華剣征・d07253)
    ルリ・リュミエール(バースデイ・d08863)
    吉沢・昴(ダブルフェイス・d09361)
    鈴虫・伊万里(黒豹・d12923)
    丹下・小次郎(神算鬼謀のうっかり軍師・d15614)
    時坂・綾子(黒百合の誓・d15852)
    安藤・小夏(折れた天秤・d16456)
    流阿武・知信(炎纏いし鉄の盾・d20203)
    桜乃宮・萌愛(閑花素琴・d22357)
    天霧・佳澄(大学生殺人鬼・d23566)
    清浄・利恵(華開くブローディア・d23692)
    水無月・詩乃(無間の拳聖・d25132)
    炎帝・軛(アポカリプスの宴・d28512)
    透間・明人(殺意の火・d28674)
    凪野・悠夜(朧の住人・d29283)
    竹野・片奈(七纏抜刀・d29701)
    小鳥遊・劉麗(漆黒のカルマンフィルタ・d31731)
    椎名・涼介(煉獄の刀・d32045)

    ■リプレイ

    ●序章――突入
     スマイルイーターの密室旅客船は、那覇港の港湾内に碇泊していた。
     そこに船があると認識できるのは、ここにいる30人限り。スマイルイーターの灼滅を目的とする、武蔵坂学園の灼滅者達しかいない。
     集結した30人に、凪野・悠夜(朧の住人・d29283)は改めて目を向ける。
    「まさか、こんな大規模な作戦に参加する事になるなんてね……」
     普段の活動と比べれば、大人数には違いない。しかし今回の灼滅対象であるスマイルイーター、そして攻略が必要な船上のダークネス達のことを考えれば、少数不利は否めない。
    「……まあ、やる事は変わんないけどね」
     悠夜を含む16人の討伐班は、スマイルイーターのいる船長室を目指す。その間、陽動班は甲板のダークネス達を引きつけることになっている。
    「敷島先輩、何かあったらすぐに連絡しますから」
    「こちらからも情報は極力共有する。いい知らせを待ってるぜ」
     討伐班の流阿武・知信(炎纏いし鉄の盾・d20203)と、陽動班の敷島・雷歌(炎熱の護剣・d04073)は、互いの連絡先を交換している。他にも連絡先を交わす者はいるが、作戦中の連絡は知信と雷歌が要となる。
    (「ジャマー1つに3万円……経費とかってでないのかなぁ、武蔵坂」)
     知信はハンディタイプの電波妨害機をビニール袋におさめ、潜入の順番を待つ。
     30人の灼滅者は静かに敵船へ近づく。まずは陽動班の14人が船を登る。
    「追いついたよ、スマイルイーター!」
     ルリ・リュミエール(バースデイ・d08863)は、巨大な客船を前に、拳をぎゅっと握りしめる。
    「卑怯なことばかりして本当に許せないんだよ! 絶対に、みんなと一緒に灼滅してみせるんだから!」
    「うん、ここで絶対決着をつけようね……!」
     羽柴・陽桜(はなこいうた・d01490)も表情を引き締め、藍の瞳で船を見上げる。
     陽桜が以前に戦ったダークネスの中には、スマイルイーターにいいように扱われていた者達もいた。
    (「沖縄のためにも、ひお達が灼滅したあの子達の無念を晴らす意味でも。絶対ここで倒してみせるよ…!」)
     炎帝・軛(アポカリプスの宴・d28512)も平時と変わらぬ無表情ながら、大規模作戦特有の昂揚感を感じている。
    (「敵地に乗り込むとは心が躍る。頭を討ち取り土産としたく」)
    「軛さん、これを」
     討伐班の泉二・虚(月待燈・d00052)から、出発間際に紙袋を手渡される。軛は不思議そうに虚を見返した。
    「虚、これは何だろうか?」
    「ちんすこうだ。余裕があれば皆で食べるといい」
     ぱちりと目を瞬かせる軛へ、虚は捉えどころのない表情で言う。
    「せっかく沖縄まで来たのだ、これくらいの役得があってもいいだろう」

    ●陽動班1――最初の齟齬
     甲板上に到着した陽動班は、たちまち沖縄ダークネス達に囲まれることになった。そのつもりで行ったからには、予測の範囲内ではある。
    「何だこいつら、どこからやってきた!?」
    「待ってくれ。僕たちは戦いに来たわけじゃない。交渉したいんだ」
     識守・理央(オズ・d04029)は両手を広げ、戦闘の意思をないことを示して近づく。
    「僕達は武蔵坂学園だ。戦うつもりはない。まず、こちらの話をきいてほしい」
    「話だァ!? 何を悠長なこと言ってやがる!」
     琉球空手のアンブレイカブルが、馬鹿にしたように吐き捨てる。
    「僕達が倒したいのはスマイルイーターだ。だから、あんた達が手を出さないでくれれば、僕達もあんた達に何もしない」
    「俺達は一時停戦の呼びかけに来たんだ。悪い話じゃないはずだぜ」
     理央に続き、吉沢・昴(ダブルフェイス・d09361)も言葉を添える。
     異変を聞きつけ、ぱらぱらとと沖縄ダークネス達が集まってくる。非戦の態度を崩さない理央や昴に、意図を計りかねている様子が見て取れる。
     透間・明人(殺意の火・d28674)は陽動班の集まりから、少し離れたところにいた。
    (「依頼だから灼滅しないが、次があればこのダークネス共も灼滅だな。顔は覚えておこう」)
     内心の思いを顔に出すつもりはないが、交渉に水を差す要素は少ないほうがいいと明人は考えている。
     そんな明人へと、清浄・利恵(華開くブローディア・d23692) がそっと近づいた。
    「……透間くん。船首側のあそこ、どう思う?」
    「どうされましたか、清浄さん」
    「さっき討伐班が動き始めたんだけどね。甲板のあの場所に、沖縄ダークネスがいるだろう? 今のままだと、討伐隊の動きが見えてしまわないか?」
     奇襲を警戒していた利恵は、甲板上に広く目を配っていたという。
     理央や昴の呼びかけに集まったダークネスもいるが、こちらに気づかず、あるいは気づいていても、来ない者もいる。そういう者の何人かが、討伐班に攻撃を仕掛けたりはしないか。
    「ありゃあ、まずいな」
     利恵と時を同じくして、雷歌も同じことに気づく。
     雷歌は最初から沖縄ダークネスの人数と位置関係を気にかけていた。その上で、船長室の方を気にする敵がいれば優先して対処するつもりだったのだが。
     雷歌は隣の村山・一途(硝子細工のような・d04649)と視線を交わす。船内のスピーカー位置を確認していた一途も、状況のまずさに気づいていた。
    「……まあ、仕方ないですね」
     一途は苦笑に似た表情をひらめかせる。
     戦わずしての説得が理想だったが、一番の目的は、『討伐班を可能な限りスマイルイーターとの戦いに集中させること』。
     それを阻む者がいるなら、何としてでも――戦ってでも――排除するしかない。
     にわかに、船首甲板側の沖縄ダークネスの動きが慌ただしくなる。危惧していたとおり、甲板を登り始めた討伐班を見つけた動きらしい。
     雷歌と一途の会話を耳にとめていた軛も動く。軛自身、全体方針と外れる行動をとるつもりはなかったが……。
    「討伐班を邪魔しようとする奴らがいる以上、計画の変更はやむをえない」
     決断すれば行動は早い。陽動班の数人は、スレイヤーカードの解放に踏み切った。

    ●陽動班2――予期せぬ戦いへ
     陽動班は、沖縄ダークネスの説得が済む前に、想定外の事態に陥っていた。
     甲板には、何人もの沖縄ダークネスが点在する。討伐班が壁面を登る手はずになっているため、その動きは、甲板にいるダークネス達から丸見えになってしまう。
    「『あの壁を登る彼らには一切手を出さず、皆さんは船尾に集まってください』とは、いかないかな?」
     そう独りごちながら走る一途の目の前には、討伐班にガトリングガンを向けるサングラスの羅刹。
    「待ってください!」
     一途は声をかけるが、羅刹は構わず引き金を引こうとする。……もう、言葉でどうこうする状況でもない。
    「話し合いですませる余地は、なさそうだよね」
     一途は影を広げ、羅刹を背後から呑み込む。そしてそのまま、羅刹を床に叩きつける。
     続く明人が結界糸を広げ、討伐班の移動が見える範囲の敵3人を絡め取る。
    「侵入者だ! スマイルイーターに知らせろ!」
    「こっちにも不審者がいるぞ、敵は2手に分かれているぞ!」
     いくつかの叫びが交錯する中、明人は指先に絡めた鋼糸を強く引く。明人に向けられた攻撃を、盾と呼ばれている明人のビハインドが阻む。
    「決断の時ですね」
     事前に起こりうる事態を想定し、方針を共有してはいた。しかし結局、説得前に戦わなければいけないようだった。
    「何が起きたんだ!?」
     説得へと精神を傾けていた理央が、思いがけない事態に声をあげる。
     理央の隣にいた昴の反応はそれより早い。状況を認めるや否や、納めていたスレイヤーカードを展開。船尾のスピーカーをバスターライフルで破壊する。
    「貴様、やっぱりやり合うつもりだったんじゃねえか!」
     アンブレイカブルが、琉球空手で昴へと殴りかかる。砲身で打撃を受け止める昴。
    「お前達が俺達全員に手を出さないでくれれば、こっちだって何もしないんだ!」
     言い返しつつも、それが状況的に難しいことは、昴自身も理解している。
     討伐班の移動経路がよく見える場所へ、雷歌と軛はまず駆け込む。
    「少なくとも、この辺りだけは制圧する。オヤジ、行くぜ!」
     ビハインドの紫電は、雷歌の呼びかけに応え、沖縄ご当地怪人に霊撃を放つ。雷歌の無敵斬艦刀『富嶽』がふるわれ、重い一撃に海ぶどう怪人の粒がはじける。
    「『護り刀』の本領、見せてやるぜ!」
     軛の影からつくられる狼の群れは、三線をかき鳴らす淫魔や、ユタのような外見のタタリガミへと猛然と食らいつく。
    「目的のためならば作戦変更もやむなし。これもいくさばの習いよ」
     沖縄のダークネス達は、にわかに始まった戦闘に騒然となる。
    「こいつらを先に潰せ!」
     甲板上は乱戦になり始めている。全身に海ぶどうを巻きつけた怪人が磯臭いビームを放つ。利恵は怪人の前に身を投げ出し、全身を鎧のように同化して攻撃を阻む。
    「攻撃はこの身に引き受けてみせる!」
    (「笑顔を奪うあの男を絶対逃がしはしない。そのためにも、雑兵はこちらで引き受ける」)
     利恵は自身の魂から冷気の炎を削り出し、周辺の敵をまとめて凍てつかせる。
     時坂・綾子(黒百合の誓・d15852)も、いち早く戦場へ移動し、援護の黒煙を流す。
    「戦わなくて済むなら、それが一番良かったのだけれどね」
     それでも、綾子にとっての優先事項は、誰1人欠けずに目的を果たすこと。黒衣と黒髪を海風にはためかせながら、綾子は怪談蝋燭を高く掲げる。
    「雷歌おにーちゃん、回復するよ!」
     陽桜は声をかけ、援護と回復に向かいながら、戦場全体に目を向ける。
    (「どこかで、説得のきっかけがつかめれば……!」)
     甲板の一角、討伐班へ攻撃が届く位置。ここさえ制圧できれば、討伐班は安全に先に進める。この場所さえ確保できれば。
     陽桜は諦めずにチャンスをうかがうつもりだった。

    ●討伐班1――まずは甲板へ
     陽動班の移動からしばらく後、討伐班も移動を開始する。
     小鳥遊・劉麗(漆黒のカルマンフィルタ・d31731)は先んじて、空飛ぶ箒で哨戒する。同乗するのは忍長・玉緒(しのぶる衝動・d02774)。
    「監視カメラは……見た限り、ないわね」
    「これだけ甲板や船内にダークネスがいれば、監視カメラは不要なのかも」
    「ナノナノー」
     劉麗と玉緒だけでなく、ナノナノのイクさんも哨戒に余念はない。劉麗は無意識に桜のネックレスをぎゅっと握る。
    「絶対にスマイルイーターを倒して帰らなきゃね……。忍長さん、頼りにしてます」
    「こちらこそ。頑張りましょう、小鳥遊先輩」
     虚は慎重に外壁を登る。海風や波の音で足音はかき消され、壁歩きの移動に支障はない。船長室の場所はおおよそ当たりがつけてある。
     甲板に到着した淳・周(赤き暴風・d05550)と加藤・蝶胡蘭(ラヴファイター・d00151)は、目指す船長室の位置を目視で確認する。
    「あそこだな、スマイルイーター。気付けたのは幸い、ならこの機会を逃す訳にゃいかねえよな……本土は踏ませねえぞ」
    「淳先輩、ロープはここから下ろすぞ、問題ないか?」
    「ああ、手早くいこうぜ」
     周の返答に頷き、蝶胡蘭はロープを投げ下ろす。他にも壁歩きで甲板に到達した何人かが、ロープを下ろしたり、怪力無双を使って後続勢を引き上げる。
     16人の討伐班が甲板に上がるのを待つ間、虚の目は甲板上の1体の羅刹を捉えた。
    (「あいつの場所は、ここまで攻撃が届く距離か?」)
     虚の危惧どおり、サングラスの羅刹はこちらに向けガトリングガンを構える。刹那、背後から迫る影に呑み込まれ、羅刹は転倒した。
     それを皮切りに、陽動班から戦いの音が響き始める。
    「交渉から入ると聞いていましたが、想定外でも起きましたか」
     着物の裾を乱さずにロープを登りきった水無月・詩乃(無間の拳聖・d25132)が、音の方向を見ながら言う。
    「彼らが頑張ってくれているうちに、わたくし達はスマイルイーターを倒さなければ」
     静かな決意を瞳に宿す詩乃に、桜乃宮・萌愛(閑花素琴・d22357)も深く頷く。
    「弱者を力で押さえつける……更に道具として使う。そんな人は許せません」
     萌愛は後続の神門・白金(禁忌のぷらちな缶・d01620)へと手を伸ばす。萌愛の手を握り返し、白金は甲板へと到着する。
     初めての大人数での仕事。相手は強敵。しっかりしないと、と白金は気を引き締める。
    (「……すまいるいーたーか……あいつの笑顔は誰が喰うんだろうな」)
    「これで全員だな。よし、行くぞ」
     人数を確認した周が声をかける。
     甲板上の戦闘を避け、討伐班は船長室へと移動する。スマイルイーターを目指して。

    ●陽動班3――相手の望むもの
     陽動班の頭上から、突如、スピーカーのハウリング音が響く。
    「スマイルイーターの船内放送か」
     天霧・佳澄(大学生殺人鬼・d23566)が顔をしかめる。
    『船内に灼滅者が侵入しました。見つけ次第殺しなさい。好きにして構いません』
    「灼滅者を殺せ!」
     勢いを得る沖縄ダークネス達。豆腐よう怪人と並ぶ海ぶどう怪人が、ぷちぷちダイナミックで佳澄を壁に叩きつける。佳澄は怪人の胴にチェーンソーをぶつけながら言う。
    「スマイルイーターの爆弾で、沖縄の人間の笑顔だとかは奪われてたんだぜ? そんなやつの命令に全面的に従うってか。てめぇらのご当地根性も食われてたか!」
    「うるせぇ、命が惜しけりゃ仕方ねえことがあるんだよ!」
     額の血をぬぐう佳澄へ、豆腐よう怪人とかりゆしの羅刹が拳を振り下ろす。安藤・小夏(折れた天秤・d16456)は佳澄の前に割り込み、縛霊手で羅刹の拳を受けとめる。そこへ、すかさず霊犬のヨシダが斬りかかった。
     佳澄を癒やそうと駆け寄る綾子の背が、緋牡丹の炎で焦がされる。怪談蝋燭を捧げ持つユタに似たタタリガミを蹴り上げる小夏。流星の煌めきが散らばる。
    「敵大将についていって、それで命が助かるとでも!?」
     蹴りと共に、小夏はダークネス達へと言葉を投げかける。
    「心折られた六六六のように唯々諾々と従い生きるだけ。違う?」
     思い当たる節でもあるのか、タタリガミが怯む。その間に綾子はリングスラッシャーに回復の光を灯す。
    「っ……今のはちょっと熱かったわね。佳澄、お待たせ。今、治すわ」
    『灼滅者は甲板で交戦中です。1匹残らず根絶やしにするように』
     鳴り続けるスピーカーを、一途は縛霊手で破壊する。機能するスピーカーが減る度に、スマイルイーターの命令は聞こえづらくなる。
    「あんた達だって気乗りしていないんだろ? 本当は今すぐ降りて帰りたいんだろ?」
     エイサー淫魔の太鼓をサイキックソードで押し返し、理央は強く問いかける。
    「! それは……」
     淫魔の力がゆるむ。自分の指摘があながち的外れではないことを、理央は確信する。
     理央の隣から一途が言葉を添える。
    「戦う必要はないんですよ。戦闘でスピーカーが壊れ、命令は聞こえなかったんです。……それでは、だめでしょうか?」
    「それは……それで、いいなら……」
     エイサー淫魔の目が泳ぐ。一途は呼吸を整える。
    (「……正念場だね」)
     竹野・片奈(七纏抜刀・d29701)はサイキックバンブー斬りでシークワーサー怪人を打ち据え、灼滅する。昴の広げるどす黒い殺気が、手負いの琉球空手アンブレイカブルにとどめを刺す。
    (「帰りを待ってくれてるやつがいるんだ。こんな相手に死んでられるか!」)
     昴は退路を意識しながら、戦場を見渡す。討伐班の動きが見える場所は、もうすぐ制圧できる。
    「押さえるべき場所は押さえた。この辺りでうまく、一時停戦といきたいもんだがな」
     ……実のところ、敵の殲滅を想定していない陽動班は、火力不足の懸念がある。
    「消耗戦は避けたいですし、落としどころを探るのが妥当でしょう」
     昴の言葉に頷く丹下・小次郎(神算鬼謀のうっかり軍師・d15614)は、沖縄ダークネスへとおもむろに切り出す。
    「改めて尋ねましょう。あなた達は、本当にスマイルイーターに付き従っていていいのですか?」
    「何を今更……!」
    「はい、人の話は最後まで聞いてね」
     三線の淫魔ののど元に、片奈は竹刀をつきつける。片手を挙げて片奈に謝意を伝え、小次郎は話を続ける。
    「ウチナーの魂とは、自然と共に、自然のように生きること。その生き方へ弾圧を強制する輩には断固とした気概を見せること。……さて、あなた方は、いつまでスマイルイーターに従うのですか?」
     ウチナンンチューとしてあなた方の取るべき行動……なんなのでしょうね?
     小次郎の話に、沖縄ダークネス達は顔を見合わせる。
    「ご当地なのにご当地を離れて、従いたくない奴に従うのを良しとする。そんな信条だったら、このままでいるといいよ」
    「てめぇら、今が反旗を翻すときじゃねぇのかよ!」
     片奈と佳澄の発破に、明らかに何人かが動揺を示す。
    「あんた達にとっては奴が倒れた方が都合がいい。僕らは奴を倒したい。考えてみてくれ。利害は一致してるはずだ」
     理央の言葉は、沖縄ダークネスの心を揺さぶったようだった。

    ●陽動班4――ひとつの示唆
     先刻まで、全ての沖縄ダークネスが戦闘に参加していた。しかし今では、理央や小次郎を中心に、戦闘をやめる者が出始めている。
    「あんた達は僕らを利用して自由の身になれる。あんた達にリスクはない」
    (「命を張るのは僕らだけ」)
     理央の呼びかけに、かりゆしを来た羅刹が反応する。
    「お前らは、俺達に何をさせたいんだ。言っておくが、お前らがスマイルイーターを倒すほうに賭けるなんてのは、分が悪すぎて賭ける気になれん」
     拒絶の言葉のようにも見えるが、こちらの話に乗ってきていること自体、興味を引かれていることには変わりない。
    「それは……」
     答えかけ、理央は逡巡する。『手を出さないでほしい』というつもりだったが、こちらからも手を出してしまった今となっては、今さらのようにも思う。
    「私達は、船からの脱出方法をお教えすることができます」
     そんな中で、声を発したのはルリだった。
    「貴方達がスマイルイーターに協力することなく船を降りてくださる事、それが私達の望みです」
     かりゆしの羅刹にぴたりと視線を据え、ルリは丁寧な態度で言葉を切り出す。
    (「丁寧語って難しいー。でも、沖縄のダークネスさんとの交渉を成功させなくちゃ!」)
     内心はどきどきものだが、ルリは内心で深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる。
    「船から脱出できるのか!?」
     ルリの言葉に、沖縄ダークネス達がどよめく。
    「撤退してくれるなら、あたし達はそれでOKなんだよ」
     いまだ隙をつこうとするシーサー怪人を除霊結界で牽制しながら、小夏が言葉を挟み込む。
    (「敵大将に虚仮にされて、尻尾巻いて逃げる感じになるけどね」)
     小夏としては色々と煽る言葉も想定していたけれど、今、沖縄ダークネスの反骨心を刺激しても、ここから、スマイルイーターに対する共闘は難しいだろう。
     説得に耳を傾ける者もいるが、何人かはまだ納得していない。戦闘再開の気配のある沖縄ダークネスを、利恵は視線で強く牽制する。
    (「この均衡はいつ崩れるかわからない。いざとなれば、体を張ってでも攻撃を食い止める。僕ら全員の笑顔もまた、必ず守り抜いてみせる」)
     小次郎は、あえてストレートな言葉を使わずに、沖縄ダークネス達を誘導していく。
    「あなた方の心の中には、既に答えが浮かんでいるのではないですか?」
    「ああ……そうだな」
     かりゆしの羅刹が、小次郎の言葉に頷いた。
    「俺達は、これ以上スマイルイーターには従わない。船から脱出し、沖縄に帰る」
     小次郎の目がわずかに細まる。
    (「生き物は他人の意見より、自分の考えに従いやすい。相手自身に答えを出させることで、納得づくで動いてもらう」)
     1人が方針を決めたことで、沖縄ダークネス達は、口々に自分の考えを言い始める。
    「けど、ここから逃げても、捕まるんじゃ?」
    「そしたら、今よりもっとひどい目に遭わされて……」
    「いや、スマイルイーターは沖縄を脱出するんだぞ。わざわざ俺達を追うか?」
     考えを切りかえる者もいるが、何人かは煮え切らない態度のまま、迷いを見せる。
     だん、と佳澄は縛霊手の手を床にたたきつけた。
    「どうすべきかは、自分の頭で考えろや!! 嫌々従って俺らと無駄な潰し合いをするか、この場でてめぇ賭けててめぇのしたいことをするかだ!」
    「このままスマイルイーターに従っていたいなら止めないけど、でも、私らはその柵をぶち壊す風に動いてるんだってことは分かって欲しい」
     ――佳澄や片奈に対し、大っぴらな反論の声はない。
     スマイルイーターには従わない、船から脱出するという方向に、沖縄ダークネス達の意向は固まりつつある。
     交渉の山場を越えたことを、片奈は実感していた。

    ●討伐班2――壁登り
     船長室をめざし、壁面を登りきる討伐班。
    「いよいよ黒幕とのご対面だ! 待ってろよスマイルイーター!」
     伊丹・弥生(ワイルドカード・d00710)は手頃な場所にロープを引っかけ、後続のための足場をつくる。そして改めて、周囲を見回した。
    「上からの監視もなし、監視カメラもなし、外からの侵入に対しては甘い船だな」
     弥生に続き、外法院・ウツロギ(百機夜行・d01207)が建造物の屋根へとたどり着く。弥生の言葉にウツロギは肩をすくめた。
    「こいつは密室客船でやすからね。侵入者はないと思ってなかったようで」
    「油断だな。たるんでいるぜ」
     すぐ横のスピーカーから、スマイルイーターの放送が大音量で響く。
    『灼滅者は船長室に向かっている。全員船長室に集結しなさい。……いや、何人か甲板に回り、奴らを壁から引きずり下ろせ』
     弥生とウツロギは急ぎロープを投げ下ろす。ここから先は隠密性より早さがものを言う。
    「窓越しに見える六六六人衆の動きが慌ただしいわ。みんな、急いで」
     空を飛び屋内の様子を探る劉麗が、戻り状況を伝える。
    「虚さん、一緒に頑張りましょうね!」
     ウツロギに手を振り、劉麗は箒で大きく旋回する。
    (「私はまだ経験は浅いけれど、皆の足を引っ張らないように頑張らないと!」)
     劉麗の箒に同乗していた玉緒が、ふと下方へと視線を転じる。
    「小鳥遊先輩。私、一旦下まで降りるわ」
     玉緒は首から下げた両親の鍵を握りしめ、箒を軽く蹴って下へと身を躍らせる。
     壁を登る討伐班へ妨害の影業を飛ばす、HKT六六六人衆。その首へと、玉緒の鋼糸が絡みつく。
    「ぐっ……!?」
    「貴方のイトはここで終わり。疾くと消え去りなさい」
     鋼糸を引く玉緒の腹部を、敵の影が槍状に貫く。構わず、玉緒は広げる鋼糸をさらに増やす。
    「玉緒!」
     椎名・涼介(煉獄の刀・d32045)は日本刀を鞘走らせる。鋭い一閃で六六六人衆を斬りつける。
    「本体は一旦屋根まで登れ。こいつは俺達が片付ける」
     涼介の表情は張り詰めてかたく、普段の明るく活発な彼とは別人のようだった。
     討伐班16人のうち、5人は主に足止めと援護を担う。スマイルイーターのもとに無傷でたどり着く者は、最低でも10人が求められる。
    「今のうちに登ってください」
     壁面につかまりバランスをとって、萌愛は怪力無双で仲間をどんどん引き上げる。プラチナブロンドの髪が海風になびく。
     花藤・焔(魔斬刃姫・d01510)は片手で壁面をつかみ、片手で赤と黒の無敵斬艦刀を抜く。
    「ここでスマイルイーターを仕留めましょう。東京に出られたら厄介ですしね」
     そのためにも、討伐隊は確実に船長室に送り込んでもらわねば。
     焔は壁から手を離し、真下の六六六人衆めがけ落下する。
    「斬り潰します」
     六六六人の脳天めがけ、鉄塊すら叩きつぶす斬艦刀の一撃が繰り出される。

    ●討伐班3――船長室
    「……征きます」
     突入直前。銀・紫桜里(桜華剣征・d07253)は自分を奮い立たせるように呟いた。
     船長室の窓を割り、討伐班は中へと突入する。
     黒いスーツのスマイルイーターは、怜悧な面差しににこやかな笑顔で、灼滅者を出迎える。
     その笑みに動揺の影はない。――少なくとも、表向きは。
    「君達には驚かされる、壁伝いに窓から入ってくるとは。まるでサルの群れですね」
    「年貢の納め時だぞ、スマイルイーター!」
     指をつきつけ、宣言する知信。知信はスマイルイーターと周辺の機械設備に向け、バレットストームの弾幕を張る。知信に続き突入した萌愛に入ってくる。
    「やっと追い詰めました。その顔、二度とできないようにしてあげます!」
     船長室は機器類が多い。萌愛が一瞥した限りでは、通信機材の見分けはつかない。
    (「今は、討伐班本隊が室内に入るまでの時間を稼ぐほうが先決でしょう」)
     萌愛は両手に集めたありったけのオーラを、スマイルイーター目がけて放つ。
    「たとえここまで来ても、君達の刃はこの僕に届かない」
     萌愛の攻撃をやすやすとかわすスマイルイーターの手元に、黒々とした金属の輪が出現する。
     萌愛の背筋を冷たいものがすべり落ちる。……あれは、まずい。
    「萌愛さん!」
     直感的に危機を感じ取った焔が、萌愛を突き飛ばす。
     直後、焔の頭で、かちりと乾いた音が響いた。
    「っあ! あああああっ……!!」
     焔は目を大きく見開く。頭にはまり込む金属の輪。輪の内側には鋭い金属のトゲ。
     頭の骨が砕けてしまいそうなほどの激痛。痛みが直接生命力を削る。
     唇が勝手につり上がり、笑顔をつくろうとする。
    「……これ……しきの……ことでっ!」
     焔は己自身に強く暗示をかける。魂を燃え上がらせろ。痛みなどはねのけろ!
     スマイルイーターが驚愕に目を見開く。
    「しぶといですね」
     焔の頭蓋を締め上げていた拷問具は消えている。スマイルイーターが形成する力場の一種か。
    「焔さん、代わります!」
     紫桜里は小盾でスマイルイーターに殴りかかる。
     討伐班のうち、露払いと足止めを受け持つ5人は既に室内に到着している。今は続々と、残りのメンバーが船長室内に押し入るところだった。
    「あなたはどうして笑顔を拒絶するんですか? トラウマでもあるんでしょうか」
     紫桜里の問いかけの何かが癇に触ったか、スマイルイーターの口元がひきつる。
    「人の笑顔は気持ち悪い。嫌なものを排除したいという気持ちは、誰にだってあるでしょう?」
    「嫌なら見なければいいだろう。自分勝手なやつだな」
     横合いから口を挟んだ白金の封縛糸が、スマイルイーターの片腕に巻きつく。
    (「結局、細かい事は人任せになってしまった。その分、戦闘を頑張らねばな」)
     白金は指に絡めた鋼糸を操作する。煩わしげな光が、スマイルイーターの瞳に宿る。
     白金とほぼ同時に、詩乃と鈴虫・伊万里(黒豹・d12923)が戦闘に加わる。スマイルイーターの直接撃破を狙う、無傷の11人が続々と揃う。
    「引導を渡しにまいりました。覚悟はよろしいでしょうか」
    「スマイルイーター、貴方はここで仕留めます。今、ここで確実に!」
     詩乃は紫紺の傘を華のように開き、魔力を集め突き込む。伊万里は忍者のような体さばきで八極拳の打撃を繰り出す。
    (「強敵との闘争。ぼくの牙はゴッドセブン級に届くのか」)
     伊万里は疼く歓喜を押し殺し、目先の任務に集中する。
    「……バカな、灼滅者はもっと弱いはず……!?」
     2人の攻撃は浅いながらも確実に命中している。スマイルイーターの表情から、余裕が消えていく。
     合い間をぬって、萌愛と涼介は船内の機器類に目を走らせる。
    「あれでしょうか、船内の通信設備は」
    「そうだな。回りのものも壊してしまおう」
     萌愛のウロボロスブレイドが金属計器に二度、三度と振り下ろされ、涼介はマイクや配線設備を影業で寸断する。
    「敵増援が押し寄せるわ、足止め班は扉の封鎖を!」
     船長室へ集まる六六六人衆。先頭の相手を、玉緒は封縛糸で絡め取る。萌愛と涼介も扉近くに集まり、焔と知信も合流して出入り口を封鎖する。
    「ここは絶対に通さない。たとえ何があってもだ」
     廊下を駆けてくる六六六人衆に向け、涼介は静かに、しかし決意を込めて言い切った。

    ●陽動班5――ダークネスと灼滅者と
     話し合いは、ひとまずの結論に達した。
     1人、また1人。船ばたを降り、去っていく沖縄のダークネス達。
     綾子は船長室の方向を見上げる。沖縄ダークネス達を刺激しないように選んだ甲板の端からは、討伐班の様子はうかがい知れない。
     討伐開始の連絡は、つい先刻受けていた。
    (「もう、スマイルイーターとの戦闘が始まっているのかしら」)
     綾子の後ろでは、豆腐よう怪人がルリへと念を押すように尋ねている。
    「ここを降りれば、船から脱出できるんだな?」
    「はい、私達もそうやってこの船に入りました。出る方法も同じです」
     独特の匂いに後ずさりながら、ルリはつとめて丁寧な態度で言葉を続ける。
    「貴方達が船から降りて沖縄に戻れば、この船がスマイルイーターの墓標になるでしょう」
    「……あー、でかい顔していたあいつがいなくなるのはせいせいするが、別にそれは何でもいいや」
     あっさり答える豆腐よう怪人に、釈然としないといったふうに小夏が聞く。
    「奴は、沖縄のいろんな場所を破壊しようとした。戯れの殺戮でたくさん死んだんだぜ?」
     豆腐よう怪人は、胡乱げな視線を小夏に向ける。
    「縄張りを荒らされたのは面白くねえ。強引に従わされたのも腹正しい。だが、それだけだ」
    「でもさあ」
     まだ言い足りなそうな小夏を、豆腐よう怪人は片手で制した。
    「……そうやって、何かにつけ横やりを入れてくるお前らも、俺からすればスマイルイーターと変わりねえ」
     だから、あとはお前達で勝手にしろ。そう言い残し、豆腐よう怪人は船を出ていった。一番最後になったのは、かりゆしの羅刹だった。
    「あの……」
     陽桜は声をかけ、そこでためらう。
    「まだ、なんか用か?」
     とげとげしい視線で、羅刹は陽桜を見返す。羅刹のかりゆしは、羅刹自身の血で赤く汚している。
     陽桜は黙ってかぶりを振った。
     一緒にがんばれたらって思っていたけれど、今回はできなかった。互いに刃を抜き合っておいて、仲良くも何もない。陽桜にとっては、そのことが少し残念だった。
    「俺達は沖縄に戻って鋭気を養い、ダークネスとしての自分を取り戻す。そして、また元のように活動してみせるさ。お前達のいいようにはさせねえぞ」
     羅刹は捨て台詞のように言い残し、船から姿を消した。
    (「……こいつら、もう1人2人ここで灼滅しても、よかったかもしれないな」)
     明人は内心で思う。今後、生き残った彼らが戦意を回復されるのも、面倒な話ではある。
    「ちんすこう、無駄になっちまったな」
     佳澄は持参のちんすこうを見下ろす。これを投げつけ説得の糸口にするつもりだったが、タイミングを逸してしまった。
    「さて、私達はこれからどうしようか?」
     片奈が竹刀を肩に乗せ、周りを見回す。もう、破壊工作や陽動に動くタイミングではないだろう。
     それまで黙って考え込んでいた小次郎が、口を開いた。
    「救命ボートを出せるようにしておきましょう。どこにあるかはわかっていますし」
     この先、何が起きるかわかりませんし……と、意味ありげに小次郎は言った。

    ●討伐班4――戦いの行方
     船長室の戦場は2分されていた。
     扉近くでは、増援の六六六人衆を食い止める戦いが展開されている。
     そして船長室の中央では、スマイルイーターを囲んでの戦闘になっていた。
     弥生は迷わずスマイルイーターへと距離を詰め、勢いを活かしマテリアルロッドを繰り出す。
    「その笑みを逆に奪ってやるよ!」
     ほとばしる魔力の奔流が、弥生の手の先で閃光となって輝く。
    「っ……! あなた達など、すぐに船橋に逆さ吊りにしてあげますよ!」
     スマイルイーターの周囲に、無数の『物』が顕現する。血錆に汚れたハサミ、灼熱する鉄串、ごつごつしたペンチ、血に染まるトラバサミ。
     ぱちりとスマイルイーターが指を鳴らすと、黒光りする拷問具が八方に飛ぶ。
    「痛っ……!!」
    「うあああっ!」
     ハサミやペンチが伊万里や劉麗を貫く。生命力を根こそぎ削る、耐えがたい痛み。鮮烈な痛みは視界をスパークさせる。
    「しっかりしろ。今、すぐに回復させるから」
     虚は魔力の霧を展開する。ヴァンパイアミストの霧に洗われるように、体に食い込む拷問具は溶け消えていく。
    「今度はこっちの番だぞ!」
     蝶胡蘭の肩にも、今の攻撃による焼きごての煙が上がっている。痛みを気合いで無視し、蝶胡蘭はクルセイドソードを叩き込む。破邪の白光が室内を満たす。
    「スマイルイーター、お前の悪行は私達が必ず阻止してみせるぞ!」
     背後に回り込むウツロギにも、受けた拷問具の攻撃の名残がある。激痛は変わらず、しかし戦いは始まったばかり。ウツロギは阻害と支援を中心とした組み立てで、スマイルイーターにつきまとう。
     ウツロギは『不安』の名を冠する指輪から魔法弾を撃ち、スマイルイーターの動きを鈍らせる。
    「やぁ、僕はウツロギ。殺人階位を記録蒐集しているんだけど、君の序列は何位? 僕達が勝ったら教えてよ」
    「配下に下るなら、教えてあげましょう。痛みでたっぷり『矯正』してからね!」
     スマイルイーターはさらに拷問具を投擲する。ウツロギは身を引き、エアシューズでトラバサミを蹴り上げる。顔には笑顔を貼りつけたまま。
     ウツロギだけでなく、この場の数人が笑顔で戦う。周の笑顔は気合い負けしないため。紫桜里の笑顔は敵の気を引き付けるため。
     虚が使うのはぼんやりとした笑顔と、あざけるような笑顔。それは、笑顔一つを壊した程度では、という挑発の意図がある。
    「色々聞きたいことはあるのだが……殺しの流儀、出身地、年齢、交友関係――そう、松戸のアツシのことなども」
     符を投げる虚の問いかけに、スマイルイーターは唇の端をつり上げ笑う。
    「あなた、僕と話をするために来たんですか?」
    「いや。しかし、灼滅してしまったら聞くことはできないだろう?」
     どちらの冥土の土産になるかはわからんが、と続ける虚の態度はどこまでも捉えどころがない。
    「本当に、しつこいですね……!」
     スマイルイーターの語調に苛つきが濃くなっていく。幾度か拷問具が飛び、紫桜里はその場に膝をつく。無数の拷問具が体に食い込んでいる。
    (「私は、保って一撃でしょうか」)
    「あと少しだ、このまま押し切るぞ!」
     紫桜里と並び立つ蝶胡蘭が、癒やしのオーラを紫桜里に注ぐ。蝶胡蘭も満身創痍。どんなに癒やしても、痛みが全身にわだかまる。
     それでも。紫桜里にも蝶胡蘭にも、確信に近い思いがある。
     ――このまま押せば、いける。
     護りと回復に重点をおき、じっくり攻める灼滅者は、少しずつスマイルイーターを押していく。
    「どこにでもいる正義のヒーローの力、思い知れ!」
     影業『睦月』が広がり、スマイルイーターを押し包む。不可知の幻を見たスマイルイーターの表情が歪む。
    「イクさん、皆の回復張り切っていくよ!」
     劉麗はナノナノのイクさんと、同じく回復役の虚や、前線とも連携しながら、テンポよく回復を回していく。イクさんも右へ左へと飛び回り、せっせとハートを飛ばす。
     劉麗は頭上に巨大なオーラの法陣を作り出す。まばゆく輝く天魔の陣が、味方の痛みを消し去り、活力を呼び戻す。
    「ハハッ、楽しくなってきたぜぇ! さぁ、もっと殺り合おうじゃねぇかッ!」
     悠夜は赤い瞳をぎらつかせ、獰猛な笑顔で叫ぶ。バベルブレイカーから撃ち出される巨大な杭が、猛回転をしながらスマイルイーターを撃ち抜く。
     普段の少年らしさはかなぐりすて、戦闘狂の一面をあらわに悠夜は笑う。
    「もっと楽しませろよォ! まだまだこんなもんじゃねえだろうッ!」
    「ぐ……が、はッ」
     悠夜の巨大杭に貫かれ、スマイルイーターの口から血があふれる。
     そこに伊万里が忍び寄る。一瞬前まで気配も感じなかった場所から、蛇の群れのごとき黒革ベルトを振りかぶる。
    「歯ぁ、食いしばってください!」
     ダイダロスベルト『レヴィアタン』は、じっくりと狙いをつけた分の精度と威力で、スマイルイーターを打ち下ろす。
     扉の封鎖を受け持つ知信は、迫る敵の数にため息をつく。
    「いい加減、うんざりするね」
     扉と廊下という狭い戦場、一度に戦う相手は少ないが、何しろ続々に押し掛けてくる。
     とはいえ……と、知信は内心で思う。
    (「次の連絡は、討伐完了の報が伝えられそうだ」)

    ●討伐班5――取り引き
     船長室の壁に、スマイルイーターが叩きつけられる。
    「がっ、は……!」
     好機とみた弥生の目が光る。詩乃は一歩先んじて紫紺の傘を広げている。
    「参ります」
     詩乃の傘からは魔力が放出される。着物の袖を翻し、詩乃は傘を強く突き込む。
     バランスを崩すスマイルイーターの背後へと、槍を構える弥生が高速の動きで突撃する。
    「もらったぜ!」
     スマイルイーターの防御を突き崩す、弥生の斬撃。
    「嘘だ。絶対に嘘だ! 僕がこんなところで、こんなやつらに……!」
    「ええ、こんなところで、わたくしたちに、あなたは灼滅されるんです」
     広げた傘をすらりと閉じ、たおやかに揺るぎなく詩乃は微笑む。
    「嘘だ、こんなことがあるはずがない! う、わ、あああああ……!!」
     笑顔を歪め、スマイルイーターは叫ぶ。何度目かの拷問具が宙を飛ぶ。しかしもう、最初ほどの威力は感じられない。
    「させないぞ!」
    「最後の攻撃、防いでみせます!」
     攻撃の前に飛び込む蝶胡蘭と紫桜里が、そこで力尽き、倒れ伏す。
     盾役は半減。しかし、激しく息をつきながら、スマイルイーターは絶望的な目で灼滅者を見返す。
    「それで終わりか、スマイルイーター? 自慢の笑顔も、すっかり食われちまったな」
     周が不敵に笑う。
     戦いの決着はつきつつある。蝶胡蘭と紫桜里が倒れても――むしろ倒れるまで攻撃を受けもったことで、アタッカーにはまだ余力がある。
     一方で、スマイルイーター側への増援はない。呼んだはずの六六六人衆は、足止め班によって封じられている。度重なる攻撃に焔が倒れたが、戦況はしばらく変わらないだろう。
    「最後にそのニヤケ面、絶望に歪ませてやろう!」
     ずん、と周が踏み出す。スマイルイーターが後ずさるより早く、拳に炎を纏わせたレーヴァテインが振り下ろされる。
    「いっそ、強行突破で撤退を……!」
     とはいえ、窓の前には周が陣取る。退路を探るスマイルイーターの進路に、ウツロギは『絶望』の名を冠するダイダロスベルトを飛ばす。
    「僕はしつこく邪魔をしやすぜ?」
     表情がひきつらせるスマイルイーターへ、破壊衝動むき出しの悠夜が迫る。
    「もう終わりか? そんなわけねえよなぁ、もっともっと楽しもうじゃねえかッ!」
     悠夜は『舞刀【神楽】』を高々と振りかぶる。有形無形の畏れをまとう一撃が、スマイルイーターに襲いかかる。なおも逃げようとするスマイルイーターに、伊万里の拳が叩き込まれる。
    「ま、待て、僕の負けだ、認めよう。知っていることは何でも話す! だから見逃してくれ!」
     一転して命乞いをするスマイルイーターに、攻めこむ白金の手が一瞬止まった。
    「何でも聞いていいのか? 他のゴッドセブンの場所も?」
    「そ、そうだ。僕は、HKTの幹部だったんだ。他のゴッドセブンの場所も、軍艦島の情報も知っているし、アツシ君の密室についても詳しい」
     急に饒舌になったスマイルイーターに、白金は目を瞬かせた。
    「なんだったら、ラブリンスターのように、お前たちの味方になってやってもいい! だからお願いだ、助けてくれ!」
    「……それは魅力的な提案ですね」
     くすりと詩乃が笑う。
    「! じゃあ、助けて……」
    「だが断る」
    「そもそも貴方の言葉は、一片足りとも信用出来ません」
     周が力強く断言し、うんうんと伊万里が頷く。何を当たり前を、という調子で白金が言う。
    「あ、言っても言わなくても、灼滅はするからな」
    「そ、そんなあー」
    「では、仕上げといきましょうかね」
     ウツロギの言葉を皮切りに、灼滅者は各々の武器を構える。
    「ひっ……」
     伊万里のフォースブレイクがみぞおちへ、白金の繰り出すオーラの連打が顔面へ。ウツロギの聖剣が白光をまとって肩口を切り裂き、周の影が四肢を引き裂く。そして、悠夜のバベルブレイカーがうなりを上げて腹をごりりと貫いた。
    「覚悟しな外道!」
     妖の槍をふるう弥生のティアーズリッパーが急所に入り、紫紺の傘を広げた詩乃がフォースブレイクで爆破を誘う。
     見る間にスマイルイーターの体は穴だらけになり、こま切れになり、切り刻まれ、そして消えていく。
    「どう……か……助……けっ……」
    「あ、消える前に序列を教えてよ! あと『???』どうしてるか知らない?」
    「ウツロギさん、もう手遅れですよ」
     思い出したように言うウツロギに、苦笑気味の伊万里。
     スマイルイーターは完全に灼滅された――その時。

     船は大きく揺れ、急速に沈み始める。

    ●終章――脱出
     役目を終えた豪華客船は沈み始める。
    「密室状態が解除されたのでしょうか?」
    「恐らくは。一刻も早く、ここを脱出しなければ」
     萌愛と詩乃は顔を見合わせ、頷く。
     船首側から沈み始めた船は、急速に床が斜めになっていく。
    「計器の電気も止まったぜ、どのみち完全に壊れているけどな」
     可能なら灼滅放送をと思っていた周だが、機器は完全に沈黙している。知信はハンドフォンで慌ただしく連絡を済ませる。
    「どうした、涼介? 長居は無用だ」
    「この辺り、何か宍戸やアツシなどの情報は残ってないか?」
     白金が声をかける中、証拠品を捜す涼介や周。内容を精査する暇はないが、それらしきものは手当たり次第に回収する。
     傷の重い紫桜里や蝶胡蘭は弥生や知信が支え、ふらつく焔は劉麗が箒に乗せる。虚と玉緒がしんがりにつき、灼滅者は次々と海へとダイブする。
     船が沈む。
     海面は大きく波打ち、しぶきを上げる。人数を数えていた伊万里が、ほっとした口調で言う。
    「全員、揃ってます」
    「じゃ、陸地目指して泳ぐとしやすかね」
     方向を確認しようと頭を巡らすウツロギに、ライトの光がさしかかる。
    「みんな、無事かしら!?」
     そこには、救命ボートに乗った陽動班。綾子が、ルリが、陽桜が大きく手を振っている。
    「このメンバーだったら泳いでも戻れるだろうけど。この小次郎ちゃんが」
    「せっかくですから、ボートくらいあってもいいでしょう」
     小夏の言葉を、オールを操る小次郎が引き継ぐ。
    「ありがとうございます」
     佳澄に引き上げてもらいながら、悠夜が表情を緩めた。一途や、軛もボートから手を貸し、討伐班は救命ボートへと乗り込む。
    「スマイルイーターは灼滅したんだね、お疲れさま!」
    「沖縄ダークネスは、一足先に船を脱出した。いろいろあったけど……」
     片奈が笑顔で言い、理央はため息交じりに報告する。雷歌は沈む船に目をこらす。
    「六六六人衆が出てこねえな」
    「指示がないから、脱出しないんでしょうか?」
    「何だ、それ。スマイルイーターはもういないのにな」
     明人の推測に、昴があきれた調子で首を振った。
    「さあ、武蔵坂に帰ろうか」
     利恵が言い、ボートを陸へと向ける。
     ――半分ほど進んだところで、背後から轟音が響く。
     大爆発を起こした船は、木っ端みじんになって沈んでいく。
    「わあ……」
     感歎に似た声は、誰のものだったか。
     ――スマイルイーターは灼滅され、密室豪華客船も沖縄の海のもくずとなった。
     30人の灼滅者はしばらくの間、沈んでいく船を海上から見つめていた。

    作者:海乃もずく 重傷:加藤・蝶胡蘭(ラヴファイター・d00151) 花藤・焔(戦神斬姫・d01510) 銀・紫桜里(桜華剣征・d07253) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年6月2日
    難度:難しい
    参加:30人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 50/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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