●築城
滋賀県大津市。琵琶湖畔の公園に、戦国時代の城のような建物ができていた。
「安土城怪人殿は、本当に、この城を拙者にくださるというのか……!」
城内で感動にうち震えるのは、当世具足のご当地怪人。首から上は大輪の菊。具足は小菊で覆われている。
彼は菊花怪人。大津市の名産、食用菊の怪人だった。
「この飾られた菊の生け花。城の中心の当地の旗。何と奥ゆかしくも行き届いた気配り。さらに貴重な戦力までもいただけるとは……」
『大津市』と描かれたペナント怪人は、3人揃ってうやうやしく頭を下げる。
「この城と配下があれば、全国で食用菊を主食にできる! 我が宿願、遂に至れり! 必ずや、安土城怪人殿のご期待に報いてみせようぞ!」
高々と笑う菊花怪人。
……雄大な琵琶湖を一望する天守閣の一室に、威風堂々とご当地の旗が翻る。
●いざ、城攻め
「自分だけのお城とか、楽しそうだよね。わたしにとっては、仁左衛門がお城みたいなものかな?」
天野川・カノン(中学生エクスブレイン・dn0180)は、ベッドを見回す。
「小牧長久手の戦いで勝利した安土城怪人が、東海地方と近畿地方の制圧に乗り出したみたいだよ」
カノンの話によると、安土城怪人は、東海地方と近畿地方に城を作り、各地域のご当地怪人を城主として傘下に加えているらしい。
「ご当地怪人は城という拠点を得て、今まで以上に活発に活動をすると思うの。城を完全に拠点化する前に、城主となったご当地怪人を灼滅してほしいんだよ」
場所は滋賀県大津市、琵琶湖のほとりにある公園の一角。
「城主は菊花怪人で、3人のペナント怪人を従えているよ。一国一城の主となった菊花怪人は、ちょっとパワーアップしているみたい」
ただし、天守閣の一室にある『ご当地怪人の旗』を引きずり下ろすと、パワーは従来のものに戻る。
「みんなの力なら、正面から戦っても勝てると思うよ。けれど、城に忍び込んで旗を引きずり落としてから戦えば、より有利に戦えるね」
彼らは現在、城内及び城の周辺で、食用菊の畑をつくっている。地元の人達を集めて強化一般人とし、労働力にしているという。
「攻めこむ時間帯に制限はないよ。日中、菊花怪人は城内の見回り、ペナント怪人達は畑作りの監督をしているの。強化一般人は、日中は城の周りで畑仕事に精を出しているよ。夜はみんな、城内で休んでいるみたい。ちなみに消灯時間は夜22時」
健康的な時間設定ではある。
戦闘になれば、菊花怪人はご当地ヒーロー相当のサイキックを使う。ポジションはスナイパー。
ペナント怪人はストリートファイター相当のサイキックを使い、ポジションはディフェンダーだという。
城内には一応、鳴子の罠などがあるので、注意深く潜入する必要がある。
「強化一般人は、KOすればもとの状態に戻るよ。手近な間に合わせ武器で攻撃してくるけど、それほど強くないね。ただ、人数がよくわからなかったの」
「だったら、強化一般人対策に、手伝いがいた方がいいですね。私も行きましょう」
鈴森・ひなた(高校生殺人鬼・dn0181)が申し出る。
「他に手伝える人がいないか、声をかけてみます」
「うん、よろしく、ひなたちゃん。城の周辺や、城内の一般人がいる階程度なら、みんなで入っても、バベルの鎖には引っかからないと思うから」
説明を終え、カノンは資料をぱたりと閉じる。
「菊花怪人は、城と配下をくれた安土城怪人に心酔しているの。もし戦いが始まったら、安土城怪人の為に頑張って戦うだろうね。今のうちに灼滅しておきたい相手だよ」
参加者 | |
---|---|
新城・七波(藍弦の討ち手・d01815) |
ロロット・プリウ(ご当地銘菓を称える唄を・d02640) |
リュシール・オーギュスト(お姉ちゃんだから・d04213) |
エクスティーヌ・エスポワール(銀将・d20053) |
藤堂・氷弥(週休五日な人生・d20979) |
干潟・明海(有明エイリアン・d23846) |
水霧・青羽(涙の天使に永久の笑顔を・d25156) |
森里・祠(和魂・d25571) |
●城攻めを前に
琵琶湖畔の公園に、城が築かれていた。
城下は耕され、菊畑が広がる。耕作に精を出す強化一般人を、満足げなペナント怪人達が見回っている。
――そんな彼らを観察する3つの影が、城から少し離れた木の上にあった。
「忍び込むなら、湖側の石垣からがよさそうです!」
「手前の、ちょっと角度がゆるいところ……だね」
忍装束の2人が言葉を交わす隣で、1人は双眼鏡を熱心に覗いている。
……しばらく後、天守閣の菊花怪人が目を向けた時には、木の上には誰もいなかった。
「むぅ……気のせいか」
その晩。
消灯時間が過ぎ、城内の明かりが消えた後。
「日本のお城と諜報活動といえば、これだよね」
藤堂・氷弥(週休五日な人生・d20979)は忍装束で全身を固めている。
「これがごっこ遊びなら、忍び名でも欲しかったですよね」
ロロット・プリウ(ご当地銘菓を称える唄を・d02640)はくすりと笑う。昼、木の上から偵察していた3人のうち2人は、この氷弥とロロットだった。
「……忍び名、ですか?」
ロープや懐中電灯を確認する忍装束の新城・七波(藍弦の討ち手・d01815)が、ロロットへと顔を上げる。はい、とロロットは頷いた。
「何とか丸とか、何とか影とか」
「ロロット丸とか、七波影とかでしょうか?」
ロロットの言葉を受け、七波は真顔で考え込む。……微妙に違和感があるような、ないような。
「ニンジャー!」
忍者走りで駆け込む干潟・明海(有明エイリアン・d23846)は、昼の偵察班の3人目。今は人間形態の忍者スタイル。
「干潟さん、ジャパニーズニンジャってこれでいいんですよね?」
「良くお似合いですよ、リュシールさん! 皆さんもかっこいいです!」
リュシール・オーギュスト(お姉ちゃんだから・d04213)も、黒布の忍装束。黒足袋に黒草履と本格的で、楽しそうなのが傍目にもわかる。
「なんだか燃えてきますね」
仲間のはりきりぶりに、エクスティーヌ・エスポワール(銀将・d20053)の口元には、自然と笑みが浮かぶ。
「私、将棋で敵の囲いを崩すのは得意なんです。城攻めだってがんばります」
「心強いです、エクスティーヌさん」
リュシールも目を輝かせて頷く。いっそ乗っ取っちゃいましょう、と力強く宣言するエクスティーヌは勝負師の目をしていて、忍者というより城攻めの将のそれに近い。
「完全に消灯しましたね。行きましょうか」
森里・祠(和魂・d25571)が携帯照明のスイッチを切ると、周囲は闇に包まれる。
水霧・青羽(涙の天使に永久の笑顔を・d25156)は空飛ぶ箒でふわりと浮き上がる。猫に変身したリュシールが、ぴょんと青羽の背中にひっついた。
(「ご当地怪人の旗……また厄介なものを」)
内心で思いを巡らせながら、青羽は地上のひなたへとひらひらと手をふる。
「鈴森、強化一般人のほうはよろしく頼むわ」
「はい、万事手はず通りに。皆さんも頑張ってください」
鈴森・ひなた(高校生殺人鬼・dn0181)とサポート班の3人に見送られ、彼らは石垣に手をかける。
動物に姿を変えたエクスティーヌとロロットを連れて石垣を壁歩きで登る、氷弥、七波、明海、祠の4人。黒一色に身を包む彼らは、夜陰に紛れると驚くほど姿が見えにくい。
――目指すは最上階、天守閣。
●忍びて向かうは最上部
慎重に石垣を登り、用心を重ねて一階の屋根づたいに移動する。
「あっちに窓からの死角がある。向こう側に回ってから登ろう」
青羽が空を飛んで先行し、上階を確認する。寝静まった城内は、何の物音もしない。
「ご当地怪人って、お城まで立てちゃうんだね……ご当地愛って、凄い」
「ご当地への愛は深いですから、ニン」
素直に感心する風の氷弥に、何故か自分が嬉しそうな明海。
聞き慣れない語尾に、氷弥は明海を振り返る。
「……ニン?」
「ニンニン!」
忍者ですから、と明海。ニンニン!
「……ござる口調で話したくなりますよね」
猫姿で明海に抱かれていたロロットが、小さく笑う。
「天守閣へ直接行くのは無理だな。一つ下の階から、城内へ入ろうか」
青羽がほうきの高度を下げて合流し、手早く上層の様子を告げる。
「この格子戸が外せますね」
七波は格子戸を外し、進入路を確保。壁歩きの4人がまず中へ。外観からの下見は済んでおり、ルート選択には迷いはない。
(「城に忍びはつきものですね」)
無人の室内を、七波は足音を忍ばせて歩く。廊下に出た時に以上に床がきしみ、慌てて足を引っ込めた。
兎姿のまま、慎重に辺りに目を走らせるエクスティーヌ。
「天守閣への階段は……」
エクスティーヌは攻め込むべき地点を見定める。天守閣は、外観から見た限りはさほど広くなかった。階段さえ上がれば、ご当地の旗はすぐ見つかるだろう。
明海の手からするりと降り、ロロットは猫の姿から人へと戻る。
(「おじゃましまーす……」)
抜き足、差し足、忍び足……と、鳴り子の罠をまたぎ越す。薄暗い城内、要所に飾られた菊がぼんやりと影をつくっている。
その時――みし、と階段の上階から音がした。
菊の香が濃くなり、猫のまま先行するリュシールの頭上に影が差す。
「何奴?」
リュシールを見下ろすのは、白い夜着姿の菊花怪人。
反射的に祠は携帯電話に指を這わせる。数瞬後、下層階から鳴り響く鳴子の音。
「賊か!? ……ぐわあっ」
「先へ行ってください、リュシールさん!」
動揺する菊花怪人へ、眩い銀の光線が命中する。ビームを放ったエクスティーヌの声を背に受けながら、リュシールは走り出す。
祠の翼猫、みたまが菊花怪人に飛びかかり、肉球でぺしぺしとパンチを繰り出す。祠もリングスラッシャーを怪人へと発射する。
「一国一城を持てば気も大きくなりましょう。しかしその夢、ここで討ち取らせて頂きます!」
「狼藉者が! ものども、賊ぞ! 出あえ、出あえーっ」
下階からも争う音がして、数人が階段を駆け上がる音が響く。にわかに騒がしくなる城内。
「ブラン、行くぞ」
青羽もサバモンボールを掲げ、呼び出されたブランは怪人へと一直線に走る。
交錯した状況の中、猫の身軽さを活かすリュシールの声が通る。
「ありました、あそこです!」
床の間に、燦然と輝く菊花印の旗。
「いただきですニンー!」
走り込む明海が、目的の旗へと飛びついた。
●一方そのころ
城内1階。
「本体の皆さんは、天守閣に着いたでしょうか?」
呟くひなたの手の中で、携帯電話が前触れなく鳴る。
「合図だね」
頷いたシャーリー・ワイルド(自由の虜囚・d32279)は、鳴子の縄を力いっぱい引っ張る。
カランカランカラン、と乾いた音。
「わあー罠にかかってしまったー、たいへんだー、早く逃げなきゃー」
黒鐵・徹(オールライト・d19056)は黒装束に覆面と完璧な忍者スタイル。背には赤リボンのポニーテールが跳ねる。
「強化一般人相手とはいえ、単独にはならない方がいいだろう。気をつけろ」
狼川・貢(ボーンズデッド・d23454)は油断なく辺りに目を配る。
「はーい、曲者のお出ましだよォ。掛かってこいや!」
シャーリーの手から、セピア色のフィルムが帯状に広がる。ダイダロスベルト『NOSTALGIA』が勢いよく射出され、強化一般人の出鼻をくじき、吹き飛ばす。
「あそこだ、侵入者だ!」
クワを掲げる強化一般人を、貢は冷気の炎で迎え討つ。魂の一部を削り出すコールドファイアは、敵を燃やしながら凍てつかせる。
「盾役は俺が引き受けよう。心おきなく戦ってくれ」
「ありがとうございます、僕もいっぱい暴れて、引きつけます!」
徹は怪談蝋燭に青い炎を灯す。薄暗い城内に、無数に現れた小妖怪の幻影が、わらわらと強化一般人に向かっていく。
「ものども、かかれー!」
楽しそうに号令をかける徹の脳内には、日曜朝の特撮BGMが鳴っているのかもしれない。
強化一般人を順にKOしていきながら、貢がふと漏らす。
「……攻め込むということは少なかったが。戦っていると、まだ、病院の頃を思い出すよ」
感傷的だな、と続ける貢に、ひなたは首を振る。
「遠ざかる記憶もありますが、あの頃が消えてなくなるわけではないですし」
――色褪せないあの日々を思い出しながら、自分達は、それでも前へと進んでいくから。
「いー加減、目ェ覚まそうか皆ァ!」
シャベルと鉄パイプを振り回し、シャーリーは元気よく暴れる。ひなたもシャーリーの横に並び、バベルブレイカーの引き金を思い切り引く。
……階下の強化一般人が全員KOされたのは、それから5分とかからなかった。
●天守閣の決戦
「何と、我が旗が……。この菊花怪人、一生の不覚!」
「これで第一段階は完了ですね」
天守閣では、旗を確保した七波が、ほっと息をついている。
「旗は奪取しました、あとは倒すだけです! ――変身! ワラスボガール!」
明海は忍者形態からワラスボ形態にチェンジアップ。リュシールも猫の姿を解除し、故郷ブルターニュの旗を高々と掲げる。
「私はリュシール、遠く海の向こうフランスの戦士よ!」
菊花怪人の体から力が抜け、怪人は片膝をつく。菊花怪人を見下ろすリュシールの声は、歌劇の一幕のように朗々と響く。
「城主菊花怪人、この城は獲らせて頂くわ! いざ尋常に勝負!」
リュシールはガトリングガンの引き金を引く。まき散らされた大量の弾丸は、戦場に集まったペナント怪人達を爆炎と共に吹き飛ばす。
一気呵成に灼滅者は攻め立てる。菊花怪人側も善戦するが、弱体化による不利は否めない。
「惑わしの霧は濃く、深く……」
祠は守り刀から宵闇の霧を漂わせ、仲間の姿をくらませる。舞うように身を翻す祠の横、みたまがしなやかな身のこなしで怪人たちの攻撃をそらし、魔法を使う。
「己自身がこの場にいながら、みすみす旗を奪われるとは……」
小菊を散らした具足をまとい、体勢を整えた菊花怪人は、頭の菊の花から黄色いビームをまき散らす。
そのビームを体で止めるのは、霊犬の暁。護りを暁に任せ、氷弥は片腕を砲台に変える。
「……ドーモ、ゴトウチカイジン=サン。ムサシザカスレイヤーです。イヤーッ!」
「グワーッ!」
氷弥の腕から光線が閃き、菊花怪人の頭を貫く。頭部の菊花が焦げ、ぷすぷす煙を吹く。両手を合わせてお辞儀をする氷弥。
「怪人死すべし、慈悲はない! ハイクを読め、菊花怪人=サン!」
(「……おい、藤堂ってあんなやつだったか?」)
(「氷弥さん、あれがやりたくて、忍者の格好をしてきたらしいですよう」)
後ろでこそこそと、青羽とロロットが言葉を交わしている。
気を取り直し青羽は妖の槍を構える。回転させた槍を掲げた突撃で、青羽はペナント怪人達をばたばたとなぎ倒す。霊犬のブランも伴走しながら六文銭をぶつけていく。
「くうっ、あの旗さえ奪われなければ! 申し訳ありません、安土城怪人様!」
焦げた菊をひらひらと散らしながら、菊花怪人はうめく。
「安土城怪人は確か、八犬士最強の軍師だったか。勢力拡大されたらたまったもんじゃないな」
独りごちる青羽の後方から、ロロットはペナント怪人たちへと狙いを定める。
「夢幻の如くなり……でしたっけ。私達もいずれはそうなりますが……」
ロロットの魔導書から吹き出す炎が、渦を巻いてペナント怪人を呑み込んでいく。
「先に、送って差し上げますっ!」
「ぎゃあああっ!」
ペナント怪人が炎に巻かれて塵となる。ほぼ時を同じくして、2体目のペナント怪人も七波のゲシュタルトバスターに燃え落ちる。
「火遁の術……ちょっと違いますかね?」
最期のペナント怪人がリュシールに斬り裂かれ灼滅されるさまを確認しながら、七波は菊花怪人へと視点を転じる。
「逃がしませんよ」
「逃げようものか、我が城はまだ落ちぬ!」
七波へと飛びかかる菊花怪人、そこへ猛然と突っ込むエクスティーヌ。
「『寄せ』の段階です。菊花怪人、覚悟してください」
孤軍となった菊花怪人へと、へエクスティーヌは距離を縮める。襟首を掴み勢いよく投げ落とす、スティックシルバー・ダイナミック。
「安土城怪人に与するなら倒すまでです。この城も私がいただきます!」
エクスティーヌの真後ろから一直線に突っ込むワラスボ、もとい、明海。
「お刺身にそっと添えた黄一輪、お料理に散らして彩る黄色や紫! 食用菊は他のお料理と引き立て合ってこそだと思います!」
「待て、その言い回しでは、菊はあくまで引き立て役ではないか!?」
菊花怪人の反論に構わず、明海は一気にとどめを狙う。
「力に眩み、歴史の中で咲いた密やかな美を忘れたのが敗因です! 坂本菊キーック!」
「がっ……ぐぁ……あ……安土城怪人様、バンザイーーー!!」
菊花怪人は大きく爆発、小菊を天守閣に散らしながら消えていった。
●下天の夢はまぼろしか
天守閣の望楼窓からは、夜の街明かりがよく見える。
「ところで、残ったこのお城ってどうするのかな……? 何かの施設として再利用? 流石に壊すのは何だか……勿体無い、よね」
暁を抱き上げもふもふしながら、氷弥が小首を傾げる。城主の席に座るエクスティーヌが、顎に手をあてる。
「菊畑も、できれば壊したくないですね。菊に罪はありませんし」
彼らのしていたこと自体は健康的なんですよね、とエクスティーヌ。その点については、氷弥も同意する。『業』の匂いのしない怪人達だった。
「案外観光資源とか公園に出来たりするのかも。あ、でもそうなるとご当地怪人大喜び……? うーん……」
頭をひねるリュシールの視線の先には、天守閣から外を眺めるサポートメンバー達。
「夜景が遠くまで見えます、とてもきれいです!」
徹はきらきらした表情で、最上階からの展望に見入っている。リュシールの視線に気づいた徹は、小さく笑って手を振った。
「へえ、意外といい感じだねェ。狼川先輩もこっちから見てみません?」
「……あ、ああ。そうだな」
シャーリーと貢も、休息を取りながら、望楼からの景色を眺めている。
「このまま観光地にできそうな場所ですね。見晴らしもよくて、内装も立派で」
ひなたの言葉に、青羽が思案げな表情になった。
「この城を作ったのは、安土城怪人なのかねぇ?」
「安土城怪人じゃなかったら、誰の仕業でしょう」
祠が問う。青羽はうわのそらで手の中のサバモンボールをもてあそぶ。
「どっちかっていうとグレイズモンキーが何かしてそうな……一夜城に近いし」
なおも考えを巡らせようとする青羽へと、ロロットは黒くて丸い包みを配る。
「兵糧丸ならぬ、チョコレートですが」
どうぞ、と順に皆に配るロロット。受け取って、明海は笑顔になる。
「ありがとうございます、ロロットさん!」
「……ひとまず城は落とせましたし、後のことはゆっくりとまた考えましょう」
穏やかな表情で、七波が言う。
城攻めは無事に完了し、城主の菊花怪人は灼滅された。今は次の戦いに備え、ゆっくりと英気を養っていこう。
作者:海乃もずく |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年5月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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