その城主の名は、関市刃物怪人!

    作者:のらむ


    「この城を、ワシに……? それは誠か、安土城怪人よ!」
     とある森の中に建てられた城。その城内にて、安土城怪人と関市刃物怪人が、向かい合って行儀よく座っていた。
    「もしお前が良ければ、是非この城を拠点とし、より一層大規模な活動をして欲しいのだ……どうだろうか、関市刃物怪人よ。この申し出、受けてくれるか」
     その安土城怪人の言葉に、関市刃物怪人はびっしりと刃物が突き刺さった頭を下げる。
    「勿論! 安土城怪人の頼みとあれば、引き受けぬ訳にはいきますまい!!」
    「そうか、引き受けてくれ感謝するぞ……であれば、お前には差しあたっての配下が必要となるな」
     安土城怪人が手を挙げると、部屋の外に控えていた4人のペナント怪人が、静かに姿を現す。
     ペナント怪人のペナントには関市の刃物が描かれており、その腰に下げている刀は紛れもなく関市の物だと、関市刃物怪人は一瞬で理解した。
    「おお……!! まさかここまで手厚い待遇を用意して頂けるとは……安土城怪人殿。この城は、ワシが命を賭けてお守りいたします!!」
     刃物怪人のその言葉に、安土城怪人は満足げに頷くのだった。 


    「小牧長久手の戦いで勝利によってパワーバランスが一気に崩れた東海地方と近畿地方を、安土城怪人が制圧しようと動き始めたみたいですね」
     神埼・ウィラ(インドア派エクスブレイン・dn0206)はそう言いながら、赤いファイルから数枚の資料を取り出す。
    「今回の作戦には、上寺・誠が参加します。そんな訳で、大体の説明をどうぞ」
     ウィラに資料を手渡され、上寺・誠(アウトドア派熱血ファイター・dn0209)が説明を続ける。
    「よろしく頼む。援護は任せろ。まあ、そんな訳で勢いに乗ってる安土城怪人だが、東海と近畿のご当地怪人に城を作って、城主として傘下に加えてるみてえだな。城主となった怪人は怪人で調子にのって世界征服に乗り出そうとするだろうし、城が完全に城として機能し始める前に、この怪人をぶっ飛ばそうぜ。っていうのが今回の作戦の目的だ。今回の敵は、関市刃物怪人だぜ」
     誠は続いて、敵の戦闘能力についての説明に入る。
    「まずは、ペナント怪人。こいつらは関市産の刀を振り回して、ディフェンダーで戦闘を行う。サイキックで言えば、日本刀とご当地ヒーローの物だな。んで、関市刃物怪人の方はっと……」
     誠は資料に目を落とす。
    「関市刃物怪人は、全身に仕込んだ滅茶苦茶大量の関市産の刃物で戦闘を行う。刀、鋏、包丁、ナイフに爪切り。全身も鉄で出来てるみたいで、攻撃力と防御力が普通に高い。ただその分、命中と回避はやや弱めみたいだな」
     ただ、と誠は説明を続ける。
    「城の主となった関市刃物怪人は、その力が増しているみてえだ。この城の内部には関市刃物怪人の旗が立っていて、この旗を引き摺りおろすと元の力まで戻るらしい。正面から乗り込んで全面戦争してもまあ、そこそこ厳しいが勝てなくはないだろう。だが城に忍び込んでこの旗をどうにかしてから戦えば、有利に戦えるだろうぜ」
     そう言って誠は、この城の周辺地図を皆に配った。
    「俺たちは夜、この城に攻め入る事になる。周囲には森が拡がっていて、かなりの所まで近づいても気がつかないだろうが……4体のペナント怪人共が常に城の内部を巡回している。当の関市刃物怪人も、恐らくこの城の中にいる。灼滅者の存在に気づけば一瞬で大騒ぎ。すぐに全員集合して襲い掛かってくる筈だ……まあ、こんな所だ。締めをよろしく」
     誠が投げ返した資料をキャッチすると、ウィラは灼滅者達に向きあう。
    「説明は以上です。安土城怪人から城を貰ったご当地怪人は安土城怪人にとても感謝しており、安土城怪人の為に必死に戦う事でしょう。ですが安土城怪人の勢力をこれ以上拡大させないためにも、確実に灼滅して下さい。お気をつけて」


    参加者
    海神・楓夏(ミーミルの泉・d00759)
    葉月・葵(高校生ストリートファイター・d00923)
    霧島・竜姫(ダイバードラゴン・d00946)
    枷々・戦(異世界冒険奇譚・d02124)
    綾峰・セイナ(銀閃・d04572)
    近衛・一樹(創世のクリュエル・d10268)
    シエラ・ヴラディ(迦陵頻伽・d17370)
    蔵座・国臣(病院育ち・d31009)

    ■リプレイ


    「ふっふっふ……この城に訪れてから数日、ワシ好みに城を装飾してきたが……これは中々快適に世界征服に向けた計画を進めることが出来そうであるな!」
     現在の時刻は22時。関市刃物怪人が、城の最上階にある自室で、飾られた無数の刃物を眺めながら満足げに呟いていた。
     そして一方では、この城に訪れた灼滅者達が、作戦決行の時を待っていた。
    「そろそろ時間ですね……それでは、どかんとやっちゃいますね♪」
     北門の正面に立つ海神・楓夏(ミーミルの泉・d00759)がおもむろに魔道書を開くと、魔術を詠唱する。
     どかん。
     突如として引き起こされた爆発が北門を木端微塵に吹き飛ばし、城内を巡回していたペナント怪人が唖然とした様子で灼滅者達を眺める。
     そんな中シエラ・ヴラディ(迦陵頻伽・d17370)がゆっくりとペナント怪人に歩み寄り、一言。
    「えっと……ごめん……ください?」
    「敵襲!! 敵襲!! 他人の城の門を挨拶も無く吹き飛ばす非常識な奴らが現れた!! 至急応援を!!」
     ペナント怪人が手に持っていた鐘をガンガン鳴らしまくり、仲間たちを呼び寄せる。
    「なんだその鐘超うるせえぞ止めろ!!」
     イラッと来た枷々・戦(異世界冒険奇譚・d02124)がペナント怪人の腹に炎の蹴りを放ち、鐘を落とさせた。
    「ふっふっふ……今更止めてももう遅い!!」
     ペナント怪人が自慢げに言い放つと同時に、城内にいた怪人が1階に集結した。
    「ここからが本番だな……旗がすぐ見つかるといいんだが」
     蔵座・国臣(病院育ち・d31009)が静かに呟き、純白の刃を持つ剣を構える。
    「何者だ貴様ら!! 安土城怪人様に頂いたこの城を破壊するとは……誰であろうと容赦しないぞ!!」
     関市刃物怪人は激昂した様子で、灼滅者に向けビームを撃ち放った。
    「グッ!! ……確かにこれはかなりの力……ですが、今は持ちこたえるしかありませんね」
     ビームを受け止めた霧島・竜姫(ダイバードラゴン・d00946)は予想以上に強烈な攻撃に驚きつつ傷を抑え、懐に潜ませていた警棒型ロッド『DD×Rod』を手に取った。
    「刃物だらけの身体を殴るのは、少し怖いですが……でも殴ります」」
     葉月・葵(高校生ストリートファイター・d00923)は固く拳を握り、刃物怪人の懐まで接近すると、刃物だらけの頭部に鋼鉄の拳を叩きこんだ。
    「敵が全員集まったか……」
     城内にいた怪人が全て集まった事を確認した誠がこっそりと、南門に待機していた仲間たちに携帯で合図を送った。
     携帯が鳴った次の瞬間、南門に待機していた綾峰・セイナ(銀閃・d04572)が近衛・一樹(創世のクリュエル・d10268)を箒に乗せ、最上階まで一気に高度を上げた。
    「さて、今回は私たちが作戦の要よね。トチらないよう頑張ら……あっ」
    「そうですね……旗に強化された関市刃物怪人の強さはかなりのものらしいで……あっ」
     最上階の窓から城内に突入した2人の眼前に、乱暴に戸が開け放たれた刃物だらけの部屋が現れた。恐らく刃物怪人の自室だろう。
     そしてその部屋の中央に、関市の刃物が描かれた旗がすごく堂々と飾られていた。生活する上ですごく邪魔だし、多分隠す気は無い。
    「…………」
    「…………」
     2人は無言で旗をバラバラに引き千切り、くるりと踵を返す。
    「それじゃ、戻りましょうか」
    「はい」
     最上階に突入してから19秒後。迅速に任務を完了したセイナと一樹は、セイナのエアライドを利用して窓からぴょんと飛び降りたのだった。


     刃物怪人達が応援に駆け付けてから1分が経過し、刃物怪人が再び攻撃を仕掛ける。
    「ふっ、貴様らは灼滅者だな……関市の刃物の錆にしてくれるわ!!」
     威勢よく叫び、刃物怪人は全身に突き刺さった刃物をがんばって放り投げまくった!!
    「ん」
    「ん?」
    「あら?」
    「え?」
    「なんだ?」
    「なんか弱くね?」
     ダークネスの攻撃なんだから確かにそれなりの威力はあるけど、なんかどう考えてもさっきのと比べると弱いなー。と、灼滅者達は思った。
    「ど……どういう事だこれは!!」
     分かりやすく焦る刃物怪人とペナント怪人達の前に、セイナと一樹が華麗に着地した。
    「皆お待たせ……っていう程待たせては無いと思うけど。とにかくバッチリ成功よ。さあ、第二ラウンド開始といきましょうか!」
     セイナは仲間たちにそう呼びかけ、手近にいたペナント怪人に槍を突き刺した。
     そして一樹が槍を取り出しながら、眼鏡を外す。
    「あとは、目の前のこいつらを叩きのめすだけや! 覚悟してかかってこいや!」
     一樹は槍を構え。怪人たちと相対した。
    「まさかこんな短い時間で旗を見つけちまうなんて、2人ともよくやったぜ! …………さあて、短い間だったが随分と調子づいてくれたなあ? 今度はこっちから行くぞ!」
     戦は構えた剣に業火を纏わせながら、ビハインドの『枷々・烽』と共にペナント怪人に突撃する。
    「さあ峰、合わせていくぞ! せっかく城を手に入れた所悪いけど、三日天下と洒落こもうぜ関市刃物怪人!」
    「この……我らの大将を、そう易々と討ち取られる訳にはいかぬ!!」
     突撃してくる戦に向けペナント怪人が刀を振り降ろすが、戦は剣で斬撃を弾き返す。
     そして背後に回り込んだ烽が刀を振り上げ、戦もまた剣を突き出す。
    「これが炎だ!」
     烽が背を斬りつけると、次の瞬間には戦の剣が身体を貫く。
     そして剣に纏った炎が一気に火力を増したかと思うと、ペナント怪人の身体は炎に包まれそのまま灰になった。
    「ウググ……怯むな! 一気に攻めた立てろ!」
     刃物怪人の命に従い、ペナント怪人たちが一斉に前衛に向け斬撃を飛ばす。
    「ん……すぐに……回復するよ」
     シエラが囁くように放った美しき歌声が、癒しの力となり仲間の傷を癒していく。
    「行くぞ小童ども!!」
     刃物怪人が灼滅者達に向け刃物を投げまくる。
    「ふむ……攻撃の威力自体は落ちたものの、やはり素晴らしい物だな」
     仲間に放たれた攻撃を庇った国臣は、身体から引き抜いた刃物をじっと眺める。
    「良質な土、松炭、水が揃う関という地で刀鍛冶が始まった事もだが、やはりその伝統を受け継いできた職人達の功績も多いだろう。世界に誇れる関の刃物は、これからも栄えて行って欲しい所だな」
    「そこまでしっかりと関の刃物の素晴らしさを理解してるのに何故貴様はワシの敵になっているのだ!!」
    「それとこれとは別だ」
     真顔で語っていた国臣は剣に緋色のオーラを纏わせ、ペナント怪人に斬りかかる。
    「グ…………!」
     国臣の動きを読み切れず、ペナント怪人の心臓に刃が突き刺さる。
    「終わりだ」
     そして緋色のオーラがペナント怪人の生命力を根こそぎ奪い取り、そのまま仕留めきった。
    「ペナント怪人は残り2体……ふふ、このまま一気に攻めましょうね」
     続いて楓夏がナイフを掲げると、放たれた毒の風が怪人たちの身体を蝕んだ。
    「次は私の番……まとめてお掃除といきましょう!」
     竜姫が警棒型ロッドを大きく振るうと、魔術によって生み出された竜巻が怪人たちを吹き飛ばす。
    「グオオオ!! まだだ!!」
     吹き飛んだペナント怪人が竜姫に向けてビームを放つが、竜姫は軽く後ろに跳びこれを避ける。
    「このまま仕留めきります……行きますよドラグシルバー、キャリバーダッシュ!」
     竜姫の指示に従い突撃したライドキャリバーが、ペナント怪人を轢き、そのままはね飛ばす。
     そして空中に浮いた怪人目がけて竜姫は跳び魔力を充填させた警棒を振るう。
    「レインボースパーク!」
     そしてペナント怪人の腹に放たれた渾身の突きが怪人の身体を地面に叩き落し、地面に衝突すると同時に木端微塵に吹き飛ばした。
    「クソオオ!! 同士がまた1人やられてしまった!」
     最後に残ったペナント怪人が、強烈な斬撃を放つ。
    「中々の威力……ですが、こちらも負ける気はありません。全て打ち砕いてみせましょう」
     葵は腕を斬られても尚怯まず、そのまま自身の闘気を雷へと変換していく。
    「僕に出来る事なんてそれくらいですしね」
     ペナント怪人に肉薄した葵は雷の拳を鳩尾に放ち、怪人の全身を焼け焦がす。
     その一撃怪人がよろめいた隙に、葵は更に追撃を仕掛けようと、拳を包み込む闘気に炎を纏わせていく。
    「これで、終わらせます」
     そして放たれた炎の拳は怪人の頭部を打ち、同時に放たれた炎がその全身を燃やし尽くした。
    「クッ……まだだ!! 安土城怪人様の為、そして関の刃物の為、ワシはまだ諦めぬぞ!! 関市の刃物万歳!!」
     配下を全て失った刃物怪人は自身の傷を癒しつつ、己の力を高める。 
     戦いはまだ続く。


    「まだまだ行くぞ! うおおお!!」
    「何かしら、旗の強化は無くなったのに、煩さはどんどん増して来てる気がするわ!」
     関市の刀二刀流で突撃してくる怪人に、セイナは魔力で創り上げた矢で迎え打つ。
    「くらいなさい!!」
     そして放たれた魔力が怪人の全身に降り注ぎ、突き刺さった。
    「痛いぞおお!!」
     かなりのダメージを負った怪人が刀を振るい、セイナを斬りつけた。
    「ここからが正念場だ、回復するぜ!」
     戦は装着した縛霊手に蓄積された霊力を解放し、放たれた癒しの力はセイナの全身を包み込んだ。
    「助かったわ戦くん、それじゃあもう一撃いくわよ!」
     続けて杖を構えたセイナが、全身の魔力を杖に込めながら大きく振るう。
     そして突き出された杖が怪人の頭部に叩きつけられ、引き起こされた爆発が全身の刃物を砕いた。
    「グオッ! ワシの自慢の刃物がぁ!!」
     慌てふためく怪人に、竜姫が電撃を纏わせた警棒を突きつける。
    「金属には電撃攻撃が定番なのです!」
     警棒から放たれた電撃が怪人の身体を貫き、その全身を痺れ上がらせる。
    「年貢の納め時や! 往生際良く散っていけや!」
     一樹は構えた槍に妖気を集め、氷の刃を形成する。
    「氷漬けやで!」
     放たれた刃が怪人の足元に突き刺さると、その半身を凍りつかせた。
    「ワシは年甲斐無く往生際が悪いともっぱらの評判だぞ! 関市刃物ビーム!」
     怪人は頭から一樹に向けてビームを放つが、一樹の前に飛び出した国臣が真正面から受け止める。
    「自分の仕事は果たさなければな」
     そう言って国臣は赤い霧を放ち、仲間たちの傷を癒す。
    「攻めて攻めて攻めまくれ!」
     誠も黄色い標識を掲げると、仲間たちに耐性を付与した。
    「このまま畳み掛けるで!」
     一樹は両脚に朱いオーラを纏わせると、怪人に向けて両足で十字を切る。
     同時に怪人の身体に十字の傷が刻まれると、その精神にまで傷が刻まれた。
    「グゥウウ……」
    「あなたの体力も、そろそろ限界の筈……!」
     苦しげに呻く怪人に接近した葵は、オーラを纏わせた拳の連打を放ち、その身体を吹き飛ばし、城の壁に叩きつけた。
    「ご当地怪人が……自分の好きな物の為に……いろいろ頑張る姿は……ちょっと……可愛いなって思ってたけど……今回のは……可愛く思えない……な」
     シエラは鋭く尖らせたダイダロスベルトを、怪人に向けて射出する。
    「だから……ここで……止めさせてもらう……ね」
     放たれたダイダロスベルトは怪人の全身に突き刺さると、身体を壁に縫いとめた。
    「グググ……まだワシは死なん!」
     怪人はそのまま頭を突出すと、放たれた無数の鋏の一本が、シエラの霊犬『てぃんだ』を斬った。
    「ん……てぃんだちゃん……いじめちゃ……ダメ」
     シエラは僅かに怒りを露わにすると、てぃんだに自己回復を指示して大きく息を吸う。
    「身体が……刃物で……出来ていても……魂はみんな一緒……だよ」
     そしてシエラが透き通った神秘的な歌を紡ぐと、それを聞いた怪人の魂が直接揺さぶられた。
    「ウゴゴゴゴ…………関市の刃物は日本、あ、間違えた世界一!!」
     度重なる攻撃を受け怪人はかなりボロボロだったが、未だ諦めていない様子で食い下がる。
     怪人が身体から生えた刃物を滅茶苦茶に投げまくるが、楓夏は軽く横に跳んで避ける。
    「あらあら、攻撃も随分と避けやすくなってきましたね」
     そして楓夏は蒼き短刀を構え、怪人に接近する。
    「私の刃と、貴方の刃。どちらが強いでしょうか。ふふ」
    「その短刀が関市産じゃないならこっちの方が強い絶対!!」
     怪人は2本の刀で斬撃を放ちまくるが、楓夏はそれを真正面から受け止め、そのまま短刀を突き出す。
    「痛くしませんから、ね?」
     優しく差し込んだ短刀でグリグリ抉りながら楓夏は囁くが、ただでさえ多く付与されたバッドステータスを更に増やされた怪人は、滅茶苦茶痛がりながら後ろに退がる。
    「おのれ灼滅者……まさかこの様な小童どもに我が野望が……いやまだだ、だってワシは往生際悪いからなぁ!!」
     怪人は叫びながら、全身から刃物を射出する。
     灼滅者達は放たれた刃物の嵐の中を突き進み、怪人に一斉に攻撃を仕掛けた。
     シエラが構築した結界が怪人の全身を縛り、
     蒼いが放った拳が刃物だらけの顔面を打つ。
     国臣が放った炎の蹴りが怪人の鳩尾を抉り、
     一樹が突き出した槍が心臓を貫いた。
     竜姫が生み出した竜巻が怪人の身体を打ち上げると、
     セイナがオーラを纏わせた蹴りで地面に叩き落とした。
     戦が炎の刃で怪人の身体を燃え上がらせると、
     楓夏が魔道書を開き、魔術を詠唱する。
    「最初と同じく、どかんとやっちゃいますね♪」
     どかん。
     引き起こされた巨大な爆発は怪人の身体を吹っ飛ばし、刃物で出来た頭は綺麗に北門に突き刺さった。
    「ワシはここまでか……申し訳ありませぬ安土城怪人殿……グオオオオオ!! 関市の刃物に栄光あれ!!」
     ドカァァァァァァン!!
     音だけは派手な爆発と共に怪人は爆散し、北門ごと木端微塵に吹き飛んで行った。
     そして城は夜の静寂を取り戻し、灼滅者達は戦いが終わった事を理解するのだった。


    「ん……お疲れ様。怪我……大丈……夫? 誠も…大丈夫?」
    「ノープロブレム、無問題だ。密かに援護してくれてた奴もいたみたいだしな! お前こそてぃんだの傷大丈夫か?」
     シエラと誠がそんな事を言いつつ、仲間たちの傷をあっという間に癒していく。
    「城獲りは成功か。私たちの勝ちだな」
    「作戦勝ちという奴ですね。旗は全く隠してありませんでしたけど」
     国臣と一樹がそう言って、殲術道具を封印した。
    「まあでも、1階に敵を終結させてなければ旗を取るのは結構苦労したでしょうね。確かに拍子抜けだったけど」
    「旗が降ろされて無かった時の関市刃物怪人の攻撃の威力は半端じゃなかったし、戦闘自体も苦戦しただろうな。上手くいって良かったぜ!」
     セイナと戦が、自分たちの作戦が成功した事を喜んでいた。
    「安土城怪人の城……あちこちに建てられてるみたいですけど、これで彼らの勢力は削れたのでしょうか」
    「焦らず着実に、ですよ♪ 城の数も無限じゃないでしょうし、足元を崩していくのは大切な事です」
     竜姫と楓夏がそう言いつつ、城を後にし始める。
    「関市といえば、最上大業物に数えられる兼元の流れですよね……一本位確保しておけば良かったですかね」
     関市刃物怪人が爆散した地点を振り返り、葵がそう呟いた。
     

    作者:のらむ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年5月27日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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