道後温泉のとある温泉宿で、酒の乗った盆を浮かべて風呂に入り、女性を侍らせる1人の男がいた。
「がっはっは! いやー、酒に女に風呂に飯。ここは全く最高だぜ!」
「ありがとうございますぅ~。でも、突然襲われるなんて大変でしたねぇ~……」
しなを作って羅刹へと寄りかかる淫魔だが、その服装はいつものナース服でもなければ、温泉地お馴染みの浴衣スタイルでもない。
「ああ、後ろから不意打ちとか卑怯な真似しやがってよ。今思い出してもムカツクぜ……。そうだ、気晴らしにまた『登って』くれよ」
「もう~、お客さんも好きなんだからぁ~」
言いつつも嫌な素振り1つ見せない淫魔の恰好は、ぱっつぱっつの体操服。下に穿くのは当然ブルマーだ。
「1番マリー、登りまぁ~す」
そして淫魔は何故か風呂場に設置された『のぼり棒』を登り始めるのだった……。
頬を真っ赤に染め光景を説明する園川・槙奈(大学生エクスブレイン・dn0053)に対し、まず始めに返って来たのは『それってポールダンスなんじゃ?』の一言。
「私も初めはそう思ったのですが、特にポーズを取るでもなく、ただ体操服を着て登ったり下りたりするだけなんです」
軍艦島の戦いを経て道後温泉に結成されたHKT地方組織の1つ、ゴッドセブンNo2のもっともいけないナースをトップとするDOG六六六。ダークネスを淫魔らしいサービスで強化し友好関係を築く計画と聞いているが、こんな趣味にも応えているとは流石である。
「強化方法はともかくとして、HKT六六六やDOG六六六の戦力強化は放置できません」
接触方法だが、淫魔達はバルコニータイプの部屋風呂に入っている。のぼり棒があるのはその部屋だけのため、外から見ると非常に目立つ。
「現場は4階ですが、皆さんなら各階のバルコニーを踏み台にするなどでクリア可能です。突撃して戦闘に入ってください」
敵の戦力については、淫魔が胸を押し付けBS耐性を得る攻撃、尻を押し付け催眠状態にする攻撃、はちみつレモンで回復の3種。羅刹は鬼神変、ブレイク付きの貫手、素数を数え冷静になりつつ回復の3種。ポジションは淫魔がジャマーで羅刹はクラッシャーだ。
「今回は強化阻止……。配下の淫魔か客の羅刹、どちらかを灼滅できれば成功になります」
前述のような行為に耽る相手だが、淫魔にとっては平常運転。羅刹も灼滅者8人を相手に引けを取らぬ力を持つ。淫魔はお客様である羅刹の逃走を優先するため、逃がしておくのも作戦の内だ。
「では、どうかよろしくお願いします」
話す内に頬の赤みも抜け、真剣な顔付きで頭を下げる槙奈。この期待、応えないわけにはいかない。
参加者 | |
---|---|
アリス・セカンドカラー(腐敗の魔少女・d02341) |
天峰・結城(全方位戦術師・d02939) |
三園・小次郎(燕子花のいろ・d08390) |
天里・寵(超新星・d17789) |
一色・紅染(料峭たる異風・d21025) |
栗元・良顕(浮かばない・d21094) |
吉武・治衛(陽光は秋霖に降り注ぐ・d27741) |
天草・日和(深淵明媚を望む・d33461) |
●思春期にも色々ある
遠路はるばる辿り着いたは道後温泉。目的である淫魔や羅刹がいるという温泉宿の下で、灼滅者達は4階を見上げ戦闘への想いを馳せていた。
(「この温泉に淫魔と羅刹がいる……。2人とも冗談みたいなことをしてるけど、強敵には違いない……!」)
吉武・治衛(陽光は秋霖に降り注ぐ・d27741)が正義の炎を背負い強敵へ立ち向かう己を奮い立たせ、
(「この温泉に細マッチョの羅刹と体操服のまりぃちゃんがいますのね……。両方おいしくいただきたいわー☆」)
アリス・セカンドカラー(腐敗の魔少女・d02341)が負ではなく腐のオーラを立ち上らせアンナことやコンナことに妄想を膨らませる。
(「まぁ、折角の温泉だ。少しばかり羽目を外しても問題なかろう……」)
天草・日和(深淵明媚を望む・d33461)の心の声も、隙があれば自分も『登って』みようという考えへの免罪符だ。
「何ていうか絵面ヤバそうだな。こう、マニアックっつーか……。天里クンはどう思う?」
「僕は他人のシュミに口出しする気はないから、コッジくんも素直に喜べばいいと思うよ。そうだ、登り易いように肩車してあげよっか?」
一方、三園・小次郎(燕子花のいろ・d08390)と天里・寵(超新星・d17789)の2人は分かり易い男子の会話を繰り広げている。こちらの方がよほど健全と言えるだろう。
「のぼり、棒……。見ていて、楽しい、の、ですか……? ……ちょっと、僕には、よく、分からない、です……」
「見てるだけで楽しいらしいし、見学できそうなら一度見てみたいかな……」
そして、一色・紅染(料峭たる異風・d21025)と栗元・良顕(浮かばない・d21094)の会話には、君達はそのままでいてほしいと願わざるを得ない。
「……そろそろ時間です。皆さん、ご準備を」
カードを手にした天峰・結城(全方位戦術師・d02939)の呼びかけに応えると、仲間達もカードを取り出し起動。完全武装でバルコニーを駆け上がる。
●後ろを狙う灼滅者達
起動後の身体能力をもって、灼滅者達は肩車など無くとも軽々と4階に辿り着く。するとそこには、絶賛『登り中』の淫魔と鼻の下を伸ばしきって湯に浸かる羅刹がいた。
「な、何だてめぇらは!」
「名乗る必要は無い」
侵入者に対し即座に装備を纏い湯からでる羅刹へ、結城の操る鋼糸が巻き付いていく。
「お客様に何をするんですかぁ~っ!」
客を助けようと胸を突き出して飛び掛かる淫魔に対し、治衛が身を盾にしこれを防ぐ。
「僕等がいる限り、仲間に傷は付けさせないっ!」
気を整えて自らの傷を癒し、相方であるライドキャリバーの無銘の騎馬が、機銃で淫魔を牽制する。
「ガラクタの分際で、マリーちゃんに何しやがるっ!」
怒号とともに羅刹の巨腕が振り抜かれ無銘の騎馬が宙を舞うと、大急ぎで小次郎と霊犬のきしめんが回復を飛ばす。
「マリーちゃん、大丈夫かい?」
「お客様ありがと~っ♪ でも、まりぃ的には逃げてほしいかな……。お客様に必死に戦う顔とか見られるの恥ずかしいし……」
俯いて頬を赤らめながら胸を押し付ける淫魔に、羅刹はデレデレだ。
「チッ……、全くほんとフケンゼンだな淫魔ってヤツは! お前もそんなんで喜んでるとか恥ずかしくねーのか!」
「と言いつつも見てしまうコッジくんでした。嬉しいなら素直に喜べばいいのにー♪」
回復相手と淫魔のゼッケン間を行き来する友人の視線にツッコミつつ、寵は羅刹に巨腕を叩き付ける。
「そうだぞ青年! 友人とその拳のように、好きな物に対して真っ直ぐになってみろ!」
攻撃を真正面から受け止めてナイススマイルを浮かべる羅刹。良いセリフに聞こえるが、実のところはただスケベなだけである。
「そんなに好きなのに見てるだけ? 自分も参加した方が楽しいんじゃないかな……?」
「マリーちゃんみたいな娘が登るから見てるだけでも楽し……いや、マリーちゃんの登った棒を後から登るってのも……」
突き出された針を腕で受け止めると、小学生の良顕の問いに対し教育上非常に宜しくない想像をする羅刹だったが、その後頭部を紅染のシールドがはたく。
「後ろ、隙、だらけ……」
「ってぇなこの! どいつもこいつも後ろを狙いやがって……!」
「どいつもこいつも……? そ、その時の話をkwsk! 次の新刊のネタにしたいのです!」
よく思い出せるようにと、アリスは背後から回り込ませた影に羅刹を襲わせる。夏と冬の某聖戦に備え、ネタは多くて困らない。
「後ろの意味が違ぇっ! 俺の好みはマリーちゃんみたいに出るとこ出てる『女』だっ!」
「ほう、それでは私はどうだ? スタイルには自信があるぞ。貴様が勝ったらアレに登ってやってもいい」
影をからくも避ける羅刹に対し、日和は前衛陣を癒しながら体を誇示してみせる。
「ほぅ……。そりゃ後が楽しみだ。今も十分楽しませてもらってるけどな」
「冥土の土産に堪能してもらっただけさ。では、私も本気を出そう」
そう言って人造灼滅者の能力で変身した姿は、パンツ一丁に人体模型のボディペイントをしたおっさんだった。
「……っざけんなぁぁぁっ!」
「あはん!」
叫びの直後、羅刹の貫手が肝臓のペイント箇所へもろに突き刺さるのだった。
●ラッキースケベは学園ものの基本です
その後、怒る羅刹の攻撃は熾烈を極めたが、状態異常やディフェンダーとの連携でこれを凌いだ灼滅者達も、羅刹を後少しまで追い込んでいた。
「そろそろ危ないか……。交代を頼む」
「ん……。分かった……」
更に、自己回復で粘った日和が普通の恰好に戻り紅染と陣形を代わり、ディフェンダーに無傷の壁役が補充される。
「逃げてお客様……。後は私だけでも大丈夫だから……ね?」
「仕方ねぇ……。マリーちゃん、後は任せたぜ!」
決断すれば即実行。羅刹は飛び降りようとバルコニーの縁へ向かうが、そこに良顕が立ち塞がる。
「逃がさないよ……」
向かい来る羅刹を紅色を纏わせた鋼糸で切り刻むが、羅刹もそれだけでは倒れない。
「邪魔だガキィィィッ!」
「くっ、キャリバーっ!」
自分の位置からは庇えないと無銘の騎馬へ指示を出す治衛。カバーに入った無銘の騎馬は致命傷を受け消えてしまったが、その間に仲間達が駆け付ける。
「ふふ、細マッチョで素敵なおじ様、もっとアリスと遊んで?」
羅刹に追いついたアリスが、紅色に染め上げた影業で唇を作り羅刹を貫き、その肩に死のキスマークを刻み付ける。
「ぐあぁっ……! くそ、落ち着いて素数を数えろ……。逃げ道を探すんだ……。1、2、3、5、7、11……」
「残念だが、ここからは全て通行止めだ。Gefrabigkeit des Schattens……」
そして、続く結城の影が羅刹を包み込む。
「うぉぉぉぉぉぉっ!」
「後、今は1を素数に含まない。あの世では覚えておくんだな」
灼滅される羅刹へ言葉を贈り影を戻すと、そこには何も残っていなかった。
「ああ、お客様が~……」
「まぁ、そう落ち込まないで。お客さんなら他にも見つかりますよ。次はセーラー服なんてどうです? 背徳感が増していいと思いますよ!」
落ち込む淫魔に軽い調子で声をかけながら、寵は手にした剣を振るう。
「堕ちてくれたらどんなプレイもOKよ~。た・と・え・ば……」
腕に巻き付いた剣を気にもせず寵に近付くと、淫魔は尻を押し付けて甘い声を出す。
「もぉ~、先輩どこ触ってるんですかぁ~……。なんてどうかしら?」
途端に押し寄せる得も言われぬ感覚。この後輩をどこまでも守りたくなってくる……。
「しっかりしろ天里クン!」
小次郎の声に我に返ると、淫魔に背を向け立っている自分に気付いた寵は、急ぎ仲間達の方へ後退する。
「危ねぇ……。全員でキュアしてやっとかよ……」
どうやら、催眠効果を受けそうになっていたところを仲間達に救われたらしい。
「ああんっ。おしいわぁ~」
思い返せば羅刹を攻撃する間、淫魔は散発的に攻撃する他はレモンを食べてばかりいた。ジャマーと妨アップの相乗効果により、恐るべし状態異常の使い手が誕生していたのだ。
●守るという意志
ほぼ全快状態の淫魔との戦いは、催眠を受けたらすぐにキュアという緊張の場面が続く。キュアに多くの手を割く必要があるため、攻撃できる仲間が限られてしまうのだ。
「まりぃちゃんおいしそう……。ねぇ、だからあなたの血ちょうだい?」
「斬り裂く。Schwarze Klinge……」
「よくも可愛い青少年の純情を踏みにじったな!」
そんな中、他者への回復手段を持たないアリス、結城、寵が淫魔を削っていく。鬼神変の効果で徐々に淫魔の強化ははがれ始めているが、
「ワンちゃん相手は趣味じゃないのよね~」
「きしめぇぇぇぇぇぇんっ!」
きしめんが淫魔の胸に潰されて消えたり、
「許可の無い危険プレイはご法度よ~」
「変態の何が悪いのよー……」
アリスが淫魔の尻に組み敷かれ気絶したりと、灼滅者側の戦力も着実に目減りしていく。
「ん~。やっぱりマリーは君と仲良くな・り・た・い・な~♪」
体力が危険域に達した淫魔は、操れれば強化もはがれ難くなり一石二鳥と再び寵を狙う。
「やらせないっ! 操るなら僕にしろっ!」
決死の覚悟で飛び込む治衛。攻撃を受けたら操られる前に倒れてしまうかもしれないが、だからこそ飛び込んだ。倒れたなら操られない。そして……
「回復は要りません! もし操られた時は僕ごと……!」
立ち続け操られたとしても、後一撃の自分であればという考えだった。
「それは嫌だな……」
「ああ、後ろから仲間を撃つわけにはいかん。ここが全力の出しどころだな」
この覚悟を無駄にはしないと、良顕の鋼糸と日和の影業が淫魔に絡みつき動きを封じる。
「後輩にそこまで言われちゃやるしかねーだろ!」
そして、続く小次郎のビームが淫魔と胸のゼッケンを貫いた。
「うぅ……。ね~。あの人達がマリーをいじめるの……。何とかして……。ね?」
ふらふらになりながらも、淫魔は治衛を味方に付けようと近付いていく。
「……残念だけど、キミは僕の守るべき人じゃない……!」
が、既に多くの強化を失った淫魔の催眠は、この土壇場で術者を裏切った。
「マリーも、後ろ、隙、だらけ、だよ……」
声に振り返る淫魔の目に映ったのは、凝縮された魔力で輝く紅染のマテリアルロッド。
「バイ、バイ……」
「いやぁぁぁぁぁぁっ!」
その一撃がトドメとなり、淫魔マリーはお客様の後を追って灼滅されたのだった……。
次々と仲間が倒れる中、ギリギリの勝利で掴んだ2体灼滅の大金星。だが、勝利の余韻に浸る余裕はない。ここはいつ他のDOG六六六に襲われるとも知れぬ敵地なのだ。
また、気絶中の仲間を抱え温泉宿を脱出する灼滅者達はこうも思っていた。
『勝利を祝うなら、全員で』と……。
作者:チョコミント |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年6月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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