カカシの墓

    ●栃木県某所
     カカシの墓と呼ばれた場所がある。
     この場所は人里離れた山奥にある小さな村の外れにあり、いつの頃からか、カカシが捨てられるようになっていたらしい。
     誰が最初に捨てたのか分からないが、かかしはここに捨てるものという認識が村人達の間に出来ており、だんだんゴミまで捨てられるようになったようである。
     そのため、村の長老っぽい人や、何となく力を持っていそうな老婆が、『カカシ様がお怒りじゃ。カカシ様によって、お前達は死ぬ、死んでしまう!』などと騒ぎ始め、『意味が分からねーし』、『つーか、来るならきやがれ』、『二度と鳥避けが出来ない身体にしてやらあ!』と言った感じだったようである。
     しかし、その頃から都市伝説が生まれたらしく、カカシの墓にゴミを捨てに行った者が命を落としたりしていたようだ。

    「サイキックアブソーバーが俺を呼んでいる……時が、来たようだな!」
     依頼の語り手は、神崎・ヤマト。
     今日もヤマトスマイルが決まっている。

     今回、倒すべき相手は、カカシの姿をした都市伝説。
     コイツは結果的にカカシの墓と呼ばれる場所を守っているらしく、ゴミを捨てに来た村人の命を奪っている。
     まあ、このゴミのせいで物凄い異臭が辺りに漂い、大量のハエが発生したりして問題になっているから、ある意味で間違った事をしている訳ではないんだが……。
     おそらく、お前達が行く頃には村人の誰かがゴミを捨てている頃だろう。
     こいつを助ける事に抵抗がある奴がいるかも知れないが、放っておけば確実に命を落とす。
     それだけは何としても避けてくれ。
     また、都市伝説は素早い身のこなしで飛び跳ね、大量のカカシを飛ばしてくる。
     しかも、この辺りは地面がぬかるんで戦い辛いから、くれぐれも気を付けてくれ。


    参加者
    相良・火鳥(不撓不屈の紅翼・d00360)
    ベルタ・ユーゴー(アベノ・d00617)
    水無月・礼(影人・d00994)
    白鐘・睡蓮(火之迦具土・d01628)
    甘粕・景持(龍毘の若武者・d01659)
    安曇・陵華(暁降ち・d02041)
    楯守・盾衛(シールドスパイカ・d03757)
    山岡・鷹秋(赫柘榴・d03794)

    ■リプレイ

    ●カカシ
    「本土はゴミ問題が多いとは聞いていたが、まさか都市伝説になるほどとは驚きだ。今回は敵を倒すのみならず行為も正さねばな」
     険しい表情を浮かべながら、白鐘・睡蓮(火之迦具土・d01628)が都市伝説の確認された場所に向かう。
     都市伝説が確認されたのは、人里離れた山奥にある小さな村。
     その外れにあるカカシの墓と呼ばれる場所だ。
     カカシの墓には、大量のカカシが捨てられていた。
     捨てられるカカシは、使い込んだものから、飽きられたもの、失敗作まで様々。
     いつの頃から、この場所にカカシが捨てられるようになったのか定かではないが、村人達にはそれが当たり前であるかのように認識されているようである。
    「それにしても、ゴミ捨て場にされてカカシが怒った、か。ンなもん俺だって怒るっての。仕事ついでに、お灸据えてやるかねェ」
     いかにも楽しそうにしながら、楯守・盾衛(シールドスパイカ・d03757)が邪悪な笑みを浮かべた。
     流石に血祭りにあげると言った危険極まりない事をするつもりはないようだが、それに近い事をしそうな雰囲気がプンプンと漂っている。
    「この後の為にも後味が悪くなる事がない様にしたいのだが……」
     念のため釘をさしながら、白鐘・睡蓮(火之迦具土・d01628)が村の中を通っていく。
     既に日が落ちているせいか、辺りはシーンと静まり返っており、あちこちの家からイビキや歯軋りの音が聞こえている。
    「まあ……。正直、自業自得ですと言いたくなる所ですが、だからと言って命まで落とす事は無いでしょう。少しは懲りて、きちんと分別処理をするようになれば良いのですが……」
     村人達の気持ちも考えつつ、水無月・礼(影人・d00994)が意見を述べた。
     おそらく、村人達からすれば、ほとんど習慣になっていたため、罪悪感すら覚えていないのだろう。
     そのため、例え注意をしたとしても、どうして悪いのか理解する事が難しそうである。
    「ある意味 罰が当るってやつなんやろけど、死人でんのはいただけんわ。ここらであんじょ清算したらんといけへんな~」
     納得した様子で頷きながら、ベルタ・ユーゴー(アベノ・d00617)がハンカチで鼻を塞ぐ。
     ……臭い。物凄く臭い、半端なく……。
     いますぐ鼻をもぎ取ってしまいたくなる衝動に駆られるほど、辺りに異臭が立ち込めていた。
     一瞬、村人達はよくこの臭いに耐えられるな、と思ったが、長年生活しているうちに、すっかり慣れてしまったのだろう。
    「しかも、最悪の間だ。いや、むしろ好都合なのか、この状況……」
     カカシの墓に誰かがゴミを捨てている事に気づき、山岡・鷹秋(赫柘榴・d03794)がライドキャリバーに乗ったまま物陰に隠れる。
     ゴミを捨てているのは、ふたり。
     どうやら、一人は見張りで、もう一人がゴミを捨てているらしい。
     だが、ふたりの背後には既に都市伝説が忍び寄っている。
    「き、気づいていないのか?」
     唖然とした表情を浮かべ、安曇・陵華(暁降ち・d02041)がダラリと汗を流す。
     しかし、ここはカカシの墓。
     彼らが見ている時に都市伝説が動かなければ、怪しまれる事はほとんどない。
    「一体、ここで何をやっているんですか? ここはゴミ捨て場じゃありませんよ」
     すぐさまプラチナチケットを使い、甘粕・景持(龍毘の若武者・d01659)が村人達を叱りつける。
     その途端、村人達が腰を抜かすほど驚き、都市伝説も一緒になって腰を抜かす。
    「……って、なんでアイツまで驚いているんだよっ!」
     藁で作ったカカシの着ぐるみを着たまま、相良・火鳥(不撓不屈の紅翼・d00360)が物陰に隠れてツッコミを入れる。
     何とも言えないシュールな光景。
     だからと言って、都市伝説が人に危害を加えないとは限らない。
     少しでも早く村人達を都市伝説から遠ざけるため、火鳥たちは二手に分かれて行動を開始した。

    ●粗大ゴミ
    「自分の目の届かない所に捨てるだけでは……何の問題も解決しませんよ?」
     村人達を叱りつけながら、景持が彼らを守るようにして後ろに回る。
     しかし、村人達は納得しておらず、『なんで俺達だけ責めるんだよっ! 他の奴らだっているだろ? そもそも、ここにゴミを捨てた奴が悪い。そうだ! そいつを捕まえてくれたら、俺達も謝るわ』と言い返す。
     おそらく、村人達も最初にゴミを捨てた人間が誰だか分からないと踏んでいるのだろう。
     思いっきり、いやらしい笑みを浮かべていたため、さすがに……イラッと来た。
     ……とは言え、ここでプチデストロイ的な事をする訳にもいかないので、あくまで笑顔。
     物凄く引きつってはいるが、むりやり笑顔を作っている。
    「おい、コラ! ゴミ捨てんな、祟るぞゴルァ! いますぐゴミ掃除しねェとテメェの命(タマ)掃除すんぞゴルァ!! おめェもカカシにしてやろうかァァ!!」
     物陰からパニックテレパスを使い、盾衛が思いっきりドスの利いた声を響かせる。
     それに驚いた村人達が『ひぃっ!』と間の抜けた声をあげ、その場にステンと座り込む。
    「我ラガカカシノ安息ノ地、穢ス事許サレヌ」
     カカシの着ぐるみを着て別の茂みから飛び出し、火鳥がカタコト混じりに言葉で村人達に迫る。
     一緒に都市伝説も迫ってきたため、別の意味で緊張が走る火鳥たち。
    「悪い子はいねぇがー。ゴミ捨てる奴は喰っちまうぞー」
     それに気づいたベルタが村人達を逆方向に誘導するため、カカシを持ったまま旅人の外套でコッソリ脅す。
     これには村人達もさすがに驚き、『た、助けてくれぇ~!』と叫んで、這うようにして逃げだした。
     そのドサクサに紛れて、都市伝説もピョンピョンと逃げていく。
    「おっと、そうはいかない。お前にはここで滅びてもらう」
     すぐさま都市伝説の行く手を阻み、睡蓮が『火葬(インシナレート)開始』と叫んで、スレイヤーカードを解放する。
     そのため、都市伝説も観念したのか、大量のカカシを飛ばして反撃をした。
    「カカシにゃまー同情しねーこったねーけど、わりぃがぶっ壊すわ。おら、とっととバラけちまえよ、おめーの役目は俺達がやってやっからよ」
     ライドキャリバーに乗ったままカカシを避け、鷹秋が鏖殺領域を展開して自らの身を守る。
     だが、都市伝説は諦めない。
     ここを穢すもの、自分を傷つけるものは、すべて敵。
     どんな事があっても、排除、排除、排除。
     半ば使命感のようなものを持ちながら、都市伝説がカカシを飛ばしていく。
    「先程から前しか見ていないようですが、敵は他にもいるんですよ」
     都市伝説の死角に回り込み、礼がデッドブラスターを放つ。
     それに気づいた都市伝説が反撃を仕掛けようとしたが……間に合わない!
     しかも、既にまわりを囲まれ、逃げ場を失っていた。

    ●都市伝説
    「さて……、そろそろ覚悟は出来たか?」
     都市伝説と対峙しながら、盾衛がゆっくりと刀を構える。
     それと同時に都市伝説がカカシを操り、少しずつ間合いを取っていく。
     ……都市伝説も覚悟を決めたのだろう。
     盾衛達を狙うようにして、カカシ達を横に並べていった。
    「無駄な抵抗は止めた方がいいで。本当はもう限界なんやろ!」
     一斉にカカシが飛んできた瞬間を狙い、ベルタがギルティクロスを仕掛ける。
     すぐさま都市伝説が攻撃を避けようとしたが、そのせいでカカシがありとあらゆるものから解放された事を示すようにして明後日の方向に飛んでいく。
    「その悪しき心は私の火勢として共に過せ!救いの導火、灼滅」
     まるで鬼火の如く荒々しく、睡蓮がクリエイトファイアを放つ。
     その一撃を喰らって都市伝説が炎に包まれ、塵一つ残さず消滅した。
    「……終わったか。それにしても、村人達の顔、見たかよ。今後の噂が楽しみだな?」
     不意に村人達の顔を思い出し、火鳥が腹を抱えて笑いだす。
     おそらく、色々と尾ひれがついて噂になっていくのだろう。
     これに懲りて村人達がここにゴミを捨てなくなればいいのだが、そればかりは現時点で分からない。
    「しっかし、ガキだってそこらに物を捨てねーちってのに、わかんねーもんかね。ま、一件落着ってとこか、都市伝説に頼りたくねぇな」
     無理やり自分を納得させ、鷹秋が吐き捨てるようにして呟いた。
     もしかすると、処分費用を払う事に対して、抵抗があったのかも知れない。
     以前までは、すべて無料で処分してくれるか、自分達で燃やしていたのだから……。
    「教訓を忘れず、語り継ぎ。よりよき方向に導いてくれるといいのですが……。子供達の未来の為にも……」
     祈るような表情を浮かべ、景持が村のある方向を眺める。
     だが、村は過疎化が進み、ほとんどが高齢者。
     そういった意味で、未来が無いと思い込んでいるのかも知れない。
    「やはり、自業自得なのかも知れませんね」
     複雑な気持ちになりながら、礼がそっと視線を落とす。
     色々な問題を片づけず山積みにしていき、楽な方に逃げていった結果がこれである。
     やはり本当の意味で変わるには、村人達全員の意識を変える必要があるのかも知れない。
     残念ながら、今回の一件でそれが改善される可能性は低いが、変えていかねば廃村になってしまうのも時間の問題に思えた。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年9月15日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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