運動会2015~思いよ届け、応援合戦

    作者:陵かなめ

     今年もこの時がやって来た。5月31日、武蔵坂学園の運動会だ。
     組連合ごとに力を合わせ優勝を目指す。
     熱い戦いが今、始まろうとしている!!
     
    ●思いよ届け、応援合戦
    『応援合戦』
     配布されたプリントには、そう記されていた。
    「へー! 応援合戦! えーと、自分の組連合を応援するん……ん? 今年は、違うのかな?」
     空色・紺子(高校生魔法使い・dn0105)がプリントに目を通して行く。プリントには、こんな風に記述されている。

     応援したい者を応援すれば良い!! それが、敵であろうとも、思いを届けるのは自由だ!!
     だが、これは競技種目である。
     誰を応援しても良いが、パフォーマンスが優秀だった者が勝者!!
     最高のパフォーマンスを競い合い、運動会を盛り上げよう。

    「ふーん。応援のパフォーマンスを競う競技って事か」
     紺子は、興味深そうに競技の詳細を読んだ。
     参加は1人から可能である事、一つのグループに与えられる時間は3分である事などが書かれている。
    「踊りとか、歌に、掛け合い、ほうほう、何でもいいんだ」
     大きなグループで一つの応援パフォーマンスを披露するも良し、個人で趣向を凝らした応援をするも良し。皆が思い思いのパフォーマンスを披露するのは、大変盛り上がる事だろう。
    「楽しそう! すっごく面白そう!」
     想像するだけで胸が躍る。
     紺子は笑顔で応援合戦を思うのであった。
    「それに、競技だもんね。頑張って盛り上げて、しかも組連合に得点を貰っちゃおう」
     さあ、それぞれの思いをパフォーマンスに託し、運動会を盛り上げよう!!


    ■リプレイ

    ●みんなに届け、この思い!
     様々な競技が行われ、盛り上がる運動会。
     そんな中、グラウンドに応援合戦の開始を知らせるアナウンスが流れた。参加予定の生徒たちが続々と集まってくる。
     最初に金管楽器の通り抜けるような音が響いた。
    「みんなが一生懸命頑張れるようにっ! 私たちが演奏して応援するよ!」
     【武蔵坂ウィンドアンサンブル】からさやかが軽快にトランペットの演奏を始めた。
     足元で器用にバスドラムを操作し、リズムを打つ。
    「がんばれ、がんばれ、み、ん、な~~~!」
     キコルが合わせて声を張り上げた。
    (「わたしのこの声と曲がみんなのチカラとなれますように」)
     願いを込めて、懸命に。
     それから、トロンボーンのスライドを動かし、力強い曲を作り上げる。
    「ふれー! ふれー! み、ん、な!!」
     今度はさやかが声を上げた。
     私たちの応援がみんなに届きますように♪
     演奏終わりには大きな拍手が沸き起こった。まだまだ続く運動会を盛り上げようと、応援合戦参加者たちが次々にパフォーマンスを披露する。
    「ふふ、懐かしい……」
     学ランの袖をさすり、想希が微笑んだ。そして、まっすぐ悟を見つめて声を上げた。
    「ふれーふれー悟」
     悟は親戚以外でこの学園で初めて声かけてくれた人で。
     今は一番大切な人で。
     いつでも俺の応援団長で。
     だから、今日は自分が応援するのだ。
     いつでも君が俺を応援してくれるように。
     一緒に頑張ってくれるように。
     俺も君と一緒に頑張りたい。
     これからも一番近くで。
     ずっと。
     想希は「ありがとうございました」と声を上げ一礼し、応援を終えた。
     次に、揃いのレオタードを身につけ奏音とあるなが登場した。
    「今年も一緒にアゲていこうね!」
     ピンクのレオタード姿の奏音が片腕を上げる。
     黄色い衣装のあるなは頷きながら飾り布を触ってみた。この姿、ちょっと恥ずかしい……かも、と心の中でこっそり思う。
    「でも気にしてちゃ演技は出来ないよね。女は度胸!」
     しかしあるなは首を振り、腕に力をこめた。
     2人は頷きあい、グラウンドの中央へ進み出る。
    「「Let's go! Ready go! 4・D・椿!」」
     声を合わせて舞い始めた。
     大きく腕を伸ばし、足を蹴り上げ、ダイナミックに動き跳ねる。
    「「Sally go! Movi'n go! 4・D・椿!」」
     飾り布が流れるように揺れ、鮮やかな色合いの衣装が右へ左へと交差した。
     会場からは手拍子が生まれ、2人の演技も激しさを増す。
    (「みんなに届け、あたし達の想い!」)
     奏音が想いを届けるような仕草で両腕を広げた。
     相手の動きに呼吸を合わせ、あるなも必死に舞い続ける。
     2人のアクロバティックな舞は、多くの視線を釘付けにした。
     次に登場した洋は、グラウンドの中央に立ち大きく腕を広げた。
    「フレー! フレー! 9組!」
     大きな声がいきなり皆の視線を集める。
    「フレッ、フレッ、9組! フレッ、フレッ、キューくみー!」
     ハチマキが洋の動きに合わせて大きく揺れた。
     十分に大声で応援を叫び、次に笛で三三七拍子のリズムを取りながら腕を動かす。
     力強い応援が見ている皆の心を盛り上げて行った。
    「みんな、俺の『バーニング運動会』を聴いて、気合い入れようZ!」
     最後にオリジナルの応援歌を歌い、応援を終えた。
     続いては【天中2F】のパフォーマンス。男子は学ラン、女子はチア衣装での登場だ。
    「天中2F! オレたちで勝機を引き寄せンだ、さァ行くぜッ!!」
     ヘキサの掛け声にあわせ、一斉に飛び跳ねる。
     後列に並んだ男子たちが並んで身体をそらせた。タイミングを合わせて地面を蹴り、綺麗なバク転を見せる。
    「すっげぇ盛り上がらせて、優勝してやろうぜ!」
     奈暗の紫色のポンポンが弧を描く。
     動きを止める事無く、ヘキサは続けて宙に跳び体を捻らせた。
    「オレたちが応援してンだ、負けはねェ!」
     ポンポンの色は赤。
     その間から黒が黒のポンポンを手に跳び上がる。学ランの背に鎌とナイフを交差させた刺繍が見えた。どうやら、それぞれ好きな色のポンポンを持ち衣装には刺繍を施してあるようだ。
    「6F菊! GO FIGHT WIN!」
     みんなの声が綺麗にハモる。
     仲間の動きに合わせて犬ーも懸命に動いていた。
     最初はぎこちない動きだったが、次第に大きく手足を伸ばし、緑のポンポンを大胆に躍らせる。
    「ろ、6F菊! ゴー・ファイト・ウィン!」
     英語はまだ少し苦手だが、みんなと動くのはとてもの楽しいと思った。
     ヘキサの掛け声がまた一つ響く。
     合わせて身体を回転させ、器用にくるりと回って見せた。
     外に向けて散るように跳ねた男子の前で、女子たちが舞う。
    「6F菊連合 GO FIGHT WIN! であります!」
     バンリが持つサーモンピンクのポンポンが陽の光を受けて輝いた。
     チア衣装には『6F菊VICTORY』の刺繍が施してある。ガタガタの縫い目を見せ付けるように堂々と胸を張って足を蹴り上げた。
    「戦う以上は勝利する。全力を以て敵を喰い尽そう」
     銀色のポンポンを持ち、狼の肉球シューズを履いたリリエンタールが、綺麗に空中で舞う。
     耳と尻尾が可愛く揺れて、会場の視線を集めた。
    「6F菊! GO FIGHT WIN!」
     尊も声を上げる。
     良く通る声が会場に響いた。
     白いポンポンを上下に動かし、みんなと合わせて踊る。多少の失敗は笑顔で流し、元気いっぱい声を張り上げる。
     そんなみんなと動きをあわせるように、アリスも必死に踊っていた。
     青色のポンポンで身体を隠しながら皆に合わせるようにぎこちなく動く。
     これが学園に来て初めての行事だ。内心とてもドキドキしている。
    「6F菊! GO FIGHT WIN!」
     仲間達が声を上げた。アリスも合わせて声を張り上げる。
     周りを見ると皆の笑顔が見えた。
     先頭で音頭を取り皆を引っ張るヘキサ。
     疲れることを知らないかのように派手に跳ぶ奈暗。
     楽しげにポンポンを上げる犬ー。
     手足の先まで意識し気合の入ったダンスを見せるバンリ。
     笑顔が眩しい尊。その声は会場の隅まで大きく響く。
     目まぐるしく動き、笑みを浮かべるリリエンタール。
     会場を盛り上げようとダイナミックな動きで宙を舞う黒。
     アリスは仲間達の熱気に包まれた気がした。
    「6F菊! GO FIGHT WIN!」
     声を合わせて合言葉を叫ぶ。
     もう迷いは無かった。
     皆で動きをあわせ、力の限り合言葉を叫ぶ。
     揃って宙に舞うと、会場から大きな拍手が沸き起こった。

    ●皆を応援して!
     クラス連合を超えた応援も次々に行われた。
    「味方とか敵とか関係ないでス☆ 頑張っている人をみーんな応援しちゃいますヨ☆」
     チアガールの服を纏い英瑠が現れた。
     相棒のライドキャリバーに付いているスピーカーから軽快な音楽を流し、元気に踊り出す。
    「L・O・V・E☆ ラブリー、武蔵野坂☆」
     皆に元気を届けるように、暑さも疲れも吹き飛ばすように、体全部を動かし応援した。
    「みなさーン☆ 張り切ってラストまで頑張りまショー☆」
     ポンポンを持った両手を挙げると、皆から掛け声が上がった。
     次に【光画部】の名前がアナウンスされると、ぼんと煙幕が上がる。
     そこからカラフルな光が飛び出てきた。
    「全組連合の参加者全員に!!」
     最初にまぐろの大きな声が響く。
     【光画部】のみんなの手首や腕、足や頭にはサイリウムのブレスレットが光っている。揃いのチアガール衣装を身に纏い、学園全体の応援に登場したのだ。
     まぐろの色はマリンブルーだ。
    「力いっぱいエールを送る!!」
     その声を皮切りに、皆がパフォーマンスを始めた。
     両手足に黄色のサイリウムを付けた空が軽快なステップを踏む。
     ただ応援するだけだは無い、全力で応援を楽しむのだ。
    「武蔵坂学園、ふぁいっ、おーーっ♪」
     力強い声が会場に響いた。
    「どんな時も諦めないで、諦めちゃうと、チャンスが逃げて行ってしまうのです!」
     瑠理香が踊りに込めたメッセージだ。
     ピンク色のサイリウムを腕に付け、飛ぶように踊る。
     片手を上げ、大きく足を開き、可愛い振り付けで会場を沸かせた。
    「武蔵坂ー! ファイトー!」
     ブルーのサイリウムを身につけた玉緒が声を上げる。
     応援中はノーサイド。組み分けは気にせず、皆を盛り上げようと大きな動きのパフォーマンスを披露した。
     華琳のサイリウムの色は赤だ。
    「みんな頑張ろう。この時に!」
     全ての組連合が健闘するようにと思いを込め、精一杯叫ぶ。
    「フレーフレー、武蔵坂!!」
     自分を表に出すのもきっといい。
    「フレフレみんな! フレフレ武蔵坂学園!!」
     オレンジ色のサイリウムを付けたノエルが力を込めて声を出した。
     チアガール衣装を着ることが出来たのが嬉しくて、心が弾む。
     ポニーテールを揺らしながらキレのある動きを披露した。
    「フレーフレー、わたし!」
     そして、自分も活躍できるよう応援する。
    「フレー! フレー! ……あははっ、なんや、わたしできとぉやん」
     緑色に発行したサイリウムを上下させながら乃麻も頑張った。
     次は左手を高く上げ、振り回し、それで次は、足を――。
    「ってうわわわっ!?」
     と言うところでバランスを崩す。
     それも一瞬で、何とか持ち直した。運動は苦手だが、皆が一緒なら何とかなる。何とかなるはずなのだ。
    「フレフレみんな! フレフレ武蔵坂学園!!」
     皆をまとめるようにまぐろの声が響く。
     武蔵坂学園の皆を平等に応援する事。身体いっぱいで表現しながら声を張り上げる。
     自然と観客からリズム打ちの拍手が起こり、盛り上がってきた。
     そんな仲間達の様子を、赤が写真撮影している。
    「カメラ初挑戦だ。慣れてないから、変なものが撮れるかもな」
     言いながら、シャッターを押す。
     ファインダーを覗くと、クライマックスに向けて仲間達の最後のパフォーマンスが始まっていた。
    「さあ、最後よ!」
     まぐろの掛け声に、皆が揃って決めのポーズをとる。
    「みんなで踊るって、すっごく楽しくて気持ちいいねっ♪」
     空が仲間達の顔を見た。
     瑠理香は右手を銃の形にして上に向けている。
    「ふふっ、やりきれば気持ちのいいものね」
     玉緒が満面の笑みを見せた。
    「みんな、頑張って」
     ポーズを決めながら華琳が声を上げる。
     ノエルもやりきった顔でカッコイイポーズを決めていた。
    「……ふぅ、ヒーローさん達も結構大変なんやなぁ」
     乃麻もすっかりやりきった表情を浮かべている。
    「けど、楽しかったなぁ」
     そう言うと、皆笑顔で頷いた。
     さて、樹の名前がコールされた。一瞬ビクリと肩を震わせたが、気合を入れるために頬をパシリと叩いた。
     グラウンドに進み出て、ぺこりとお辞儀した。
    「私は他の皆さんみたいな派手なパフォーマンスや熱いシャウトはないですけど、私なりに出来ることを精一杯やって、組連合だけでなく、学園の皆さんを応援していきます!」
     そう言って樹は舞い始める。
     神楽舞をアレンジした舞だ。
     動きや手振りを大胆にし、学園の皆を応援する。
     手にしている神楽鈴がシャランと鳴った。
     会場が一瞬しんと静まり返る。
     その時、鈴の音と樹の足音とだけが鳴っていた。
     美しい舞が終わると、大きな拍手が起こった。

    ●がんばれ がんばる 武蔵坂!
     天ノ川星歌隊の制服を身につけた【星空芸能館】の皆がずらりと並んだ。
    「今年も皆を応援します♪ 皆で一緒に歌って最後まで皆で諦めず勝利を目指しましょう♪」
     えりながグラウンドの真ん中から皆に呼びかけた。
    「そうだぁ♪ 紺子ちゃんも一緒に参加しないかしらぁ? 一緒に歌えば楽しいわよぅ♪」
     天ノ川星歌隊では初参加のみかんが紺子を手招きした。
    「え? 私もいいの?」
    「紺子先輩もよろしければご一緒に歌ってください!」
     きょとんとする紺子の手を心桜が引っ張る。
    「おう、飛び入りは大いに歓迎だ」
     ギターを抱えたファルケが準備を始めた。
    「そ、それじゃあお邪魔します。あ、それフリップだね。持つの手伝うね」
    「ちょっと重いけど、頑張りましょう♪」
     今年は皆と盛り上がるため、紗里亜が歌詞を書いたフリップを用意していたのだ。
    「紺子ちゃんだけじゃなくてぇ、学園生徒みんなで歌えばぁ、きっと団結のパワーが強くなると思うわよぅ♪」
     みかんが客席にも声をかける。
     今年【星空芸能館】が歌うのは、去年も歌った応援歌『がんばれ がんばる 武蔵坂!』だ。
     がんばるもんの気持ちがみんなに届きますように……、くるみは指揮を始めたえりなに合わせるように息を吸い込んだ。
     ファルケの伴奏の音が響き出す。
    「がんばれ がんばる 武蔵坂!」
     応援歌の合唱が始まった。
    「ファイト ファイト ファイトオー!」
     心桜が頭上のフリップを揺らす。

     ♪今日は 晴れやか 運動会♪
     ♪皆集って 賑やかに♪
     ♪全力尽くして 勝利を目指す♪

     くるみが精一杯元気良く、精一杯大きな声を張り上げる。
    「アンサンブルしたいやつは一緒にやろう、それが応援歌の醍醐味ってやつだろ?」
     ファルケの言葉に、応援を見ていた生徒達も歌い始めた。

     ♪がんばれ がんばる 武蔵坂!
     ♪ファイト ファイト ファイトオー!

     歌声は重なり、皆が皆を応援する。
    「ふふっ、元気が湧いてきますね♪」
     沸きあがる会場を見て紗里亜が微笑んだ。
    「さあ後半戦もがんばるもんだよ!」
     くるみの言葉に、皆が歓声を上げた。
     これにて応援合戦は終了し、再び組連合の対決が始まる。
     なお応援合戦のMVPは、アクロバティックなチアダンスを披露し、見事なチームワークを見せた【天中2F】のリーダー、ヘキサに決定した。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年5月31日
    難度:簡単
    参加:31人
    結果:成功!
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