CASINO☆ZANSIN

    作者:朝比奈万理

    「はーなーせーっ! はなせよぉー!」
     仄暗いカジノ内にやけにこの場に不釣合いな声が響く。その声はどんどん遠くなり、やがてドアが派手に閉まる音と共に聞こえなくなった。
    「――ってぇ……」
     アンデッドメイクの従業員に床に投げ出された少年は、つんのめって平伏した。鼻の頭を打った気がするが、痛みは一気に掻き消える。
    「おいクソガキ。ゲーセンでゲームするにはカネが必要だよなぁ? ここも一種のゲーセンだから、カネが必要なわけ」
     頭上から響くドスの利いた声に顔を上げると、そこには黒ずくめの男。ずいっとタブレット端末を少年の目の前に突きつけた。
     そこに映されたのは、他愛もない悪戯。
     今はもう絶滅危惧種である見ず知らずのカミナリ親父に怒られた腹いせに、この家の紀州犬の額にマジックペンで眉毛を書いたのだ。
    「……これ、飼い主にバラしてもいいんだぜ?」
     噂によるとこの紀州犬、ドッグショーの常連。今年のショーにも出場予定だったが、この一件でショーに出場できなかったようだ。
     今年こそ優勝を狙っていた飼い主はとてもご立腹で、見つかり次第警察に突き出すと騒いでいるらしい。
     警察に差し出されたところで、おそらく厳重注意で終わるであろう少年の悪事。しかし、少年には警察の世話になるわけにいかない事情があった。
    「札幌市議の坊ちゃんが、おうちではいい子ちゃんの坊ちゃんが、外では悪戯三昧だなんて知られたら、マズイよなぁ? 怒られちゃうよなぁ? 失望されちゃうよなぁ?」
     それだけではない。息子が大なり小なり警察の世話になっただなんて、父親の顔に泥を塗りかねない事実。
     青ざめて声も出ない少年に、男は不気味なほどいい笑顔を見せる。
    「次は犬猫の一匹、バラしてこいや。ちょうどいい、この犬バラせや。そうしたらこの映像は返してやるし、差額のチップを渡してやる。な? イイ条件だろ?」

    「みなさん、集まっていただいてありがとうございます」
     五十嵐・姫子(大学生エクスブレイン・dn0001)は頭を上げて教室を見渡した。
    「鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)さんが、札幌で六六六人衆、斬新京一郎の新たな動きを見つけ出してくださいました」
     その現場は、札幌・すすきの。
     北海道随一の歓楽街だ。
     そのすすきので地下カジノを運営しているらしいのだ。
    「このカジノですが、普通のカジノではないようで、お客さんに犯罪をさせてその犯罪をチップにしているようです」
     最初の敷居は低く、軽い犯罪から遊べる。そして徐々に重い罪へと移行していき、最後には――。
    「斬新カジノで遊ぶために犯罪を犯していくことで、一般人を犯罪者として優秀な配下にしたり、闇堕ちさせたりしているのかもしれません。みなさんには、このカジノの支配人である六六六人衆と配下のアンデッドを灼滅していただきたいのです」
     現場はすすきのにある雑居ビルの地下二階。雑居ビルとはいえ広い造りで、従業員はアンデッド。さながらホラーカジノの様相を呈している。
    「このカジノ、最初の敷居はとても低いです」
     ごみのポイ捨てや傘泥棒でも入店が出来る。このため札幌市議の息子は小学校高学年ながらに犬に眉毛を描いて入店ができた。
    「みなさんはご自身が起こした犯罪の証拠になるビデオを持参して、このカジノのお客様としてカジノに入り込んでください。小さな犯罪にはそれなりの、重罪になると大量のチップに換金されます」
     そして、カジノで遊びつつ支配人の六六六人衆をおびき出して撃破するといいだろう。
    「おびき出す方法は、チップを使い切って連れて行かれた先で戦闘に移行していただく流れがいいと思います」
     もちろん他の方法でおびき出しても問題ない。
     敵は六六六人衆の支配人と、黒服に身を包んだアンデッドが三体。アンデッドは大した強さではないだろう。
    「支配人の雨宮は序列外ではありますが、高い能力を有していますので注意してください」
     雨宮は殺人鬼と同じ力とガンナイフを使用。アンデッドの得物は鉄パイプだがマテリアルロッドの能力があるという。
    「カジノに居るお客さんですが、十五人程度。戦闘が始まれば逃げていきます。可能な範囲で、もうこんなカジノに入り込まないように説得できたらいいですね」
     そう言うと姫子は資料を閉じた。
    「札幌で行われている闇堕ちゲームといい、斬新・京一郎は多数の六六六人衆に呼びかける力があるのでしょう。このまま放置しておけば、大きな災いになるかもしれませんね」
     姫子は物憂げに小さくため息をついた。
    「ですが斬新・京一郎の目論見を潰せるのは皆さんしかいません。どうか、よろしくおねがいしますね」
     と、優しくも力強い眼差しで教室内を見渡した。


    参加者
    不動・祐一(幻想英雄譚・d00978)
    鹿島・狭霧(漆黒の鋭刃・d01181)
    黒鐘・蓮司(グリムリーパー・d02213)
    神楽・武(愛と美の使者・d15821)
    志乃原・ちゆ(トロイメンガイゲ・d16072)
    空本・朔羅(うぃず師匠・d17395)
    ルフィア・エリアル(廻り廻る・d23671)
    阿礼谷・千波(一殺多生・d28212)

    ■リプレイ


     札幌はすすきの。
     繁華街の一角にある雑居ビルの地下二階にそのカジノはあった。
     仄暗い店内はわずかな照明のみがあたりを照らし、従業員のアンデッドメイクも鬱蒼とした店の雰囲気を醸し出している。
    (「ずいぶん良い趣味をしたカジノだことで。いったい何を企んでいるんだろうな」)
     パーカーのフードを抑えながら、ルフィア・エリアル(廻り廻る・d23671)は店内の様子を伺うと、
    (「ヤダヤダ、なんて美しくないカジノなのかしら」)
     口には出さないけど怪訝そうに眉根を寄せながら、神楽・武(愛と美の使者・d15821)も店内を見渡した。
     店の中には十五人の一般人。スーツを着たサラリーマンやエプロンをつけた主婦、派手なメイクの女子高生や猫背の男子大学生……。それぞれが遊戯に興じていた。
    (「犯罪者にとっては居心地がいいのかも知れないけれど悪趣味ネ。こんないかがわしい場所、叩き潰しちゃいましょ」)
     対して志乃原・ちゆ(トロイメンガイゲ・d16072)は少し興奮気味。……という演技をしてみせる。
    「わぁ、これが噂の……。こういう所って何だか背徳感あって、スリル満点、ですよねっ」
     チップ交換所に取り付けられたモニターに映し出されたのは、高架下のコンクリートにスプレーで巨大な落書きをするちゆの姿。
    「今回は、ちょっと地味だったし次回はもっと派手な感じの悪いこと、しちゃってもいいですよね?」
    「こんな大きな絵をかかれるお嬢さんだ、次のビデオも期待していますよ」
     係員がチップを払い出すと、モニターに新しい犯罪映像が流れる。真っ白な壁に落書きをする不動・祐一(幻想英雄譚・d00978)の姿だ。
    「万引きするより楽に小銭が稼げるって聞いてさ」
    「そうですか。それにしても、なんとも心が顕れるような落書きで」
     係員も犯罪ビデオ内で徐々に出来上がっていく仏様に感心する。……そぶりを見せつつ、
    「犯罪としては少々ヌルいですが、芸術点も鑑みて少し増しておきますね」
     と、チップの山を払い出した。
     黒鐘・蓮司(グリムリーパー・d02213)は路地裏のゴミバケツを蹴り倒して中身を派手に散乱させ、武は家の壁をアート……落書きを施し、空本・朔羅(うぃず師匠・d17395)はたくさん買ったお団子をもぐもぐ食べては串をポイ捨て。ルフィアもポイ捨てをして、それぞれの悪事もモニターに映し出された
     そして、それぞれの犯罪に見合ったチップを受け取る。
    「……つーか誰よ、こんな動画いつの間に撮ったのは。帰ったら部長室呼んで説教しなきゃ」
     鹿島・狭霧(漆黒の鋭刃・d01181)は、モニターに映し出された映像に眉をしかめた。
     教室のような個室で狭霧と数人がやり合っている。一見、恐喝に傷害、銃刀法違反に凶器準備集合罪のようだ。
    「激しい説教の映像も、見てみたいものですねぇ」
     そう次の犯罪を期待する様に、チップが払い出された。
    「で、お客様のビデオは?」
     一番最後尾に居たのは阿礼谷・千波(一殺多生・d28212)。顎を少し引いて上目使いで係員を見る。
    「それがー、忘れてきちゃったみたいなのよね! おっかしいなぁ、ちゃんと撮ったのよー?」
     明るく言ってのける千波に、係員はふっと笑んだ。
    「『犯罪の映像なしにこのカジノに入った』ってことで大目に見ましょうか。次のご来店時には忘れないようにお願いしますね」
     と、わずかながらチップが払い出される。
    「どうぞ、ごゆっくり……」
     頭を小さく下げた係員を背に、灼滅者たちは遊戯台へと向かう。
     と朔羅は、店内に一際小さな姿を見つける。おそらく犬に眉毛を書いた少年だ。
    (「……さすがに小学校高学年からギャンブルっちゅうのは、どうなんじゃろう? そんな事する位なら外でいっぱい遊んだほうが楽しいのに」)


    「ほへぇ、これ何すっか?」
     朔羅はチップを手にあちこちのテーブルを見て回る。
     一般人で満席のポーカーのテーブルを後ろから眺めてみるが、どのカードがどう強いのか弱いのか、組み合わせ方もどうしたら勝てるのか複雑すぎて。
    「ルール、ぜんぜんわからん……」
     くるっと回って別のテーブルへ。
     祐一も始めてカジノに入った客を装い、興奮気味にきょろきょろ。する演技をしてみせ、一般人の客層やのチップの多さやを観察する。
     チップを温存する作戦だ。
     狭霧もシューティンググラスをかけて店内の構造や様子、そして他の客の様子を観察していた。そして、空いていたスロットマシーンにチップを投じる。
     ルフィアも空いてる席のマシンにチップを投じる。
     小額を当たる可能性の高いものに賭けていく、こちらも温存作戦だ。
    「ふふん、こう見えても裏の裏社会では名の知れたような気がするギャンブラーだったかもしれない。任せてくれよ」
    「あ、私ルーレットとかやってみたいです。この回ってるヤツに球を入れるんでしたっけ」
     と、武と蓮司は、言い出したちゆと共にルーレットの席に着いた。
    「少し悪さすりゃ遊べるなんてな。最高じゃん」
     適当にチップを賭ける蓮司。回るルーレットを眺めながら、
    (「悪戯程度でお手軽に……で済むワケねーでしょーが。化けモン絡みなら尚更ってモンですよ……」)
     と、口に出した台詞とは裏腹で、思うことは心底ドライだ。
    「うわ、マジで? 全然当たらないんですけどー」
     ルーレットのポケットに入ったボールをマジマジ見つめて、武が声をあげた。
     ずずっともって行かれるチップ。
    「ここで1点賭けして当たったら超カッコよくね?」
     と、全てのチップをベットし、ゲームの開始を待つ。
     無謀に見える賭け方だが、その実、適当にポンとチップを賭けて意図的にチップを使い切る作戦なのだ。
     アンデッドディーラーが回るルーレットにボールを投じる。
    「赤! 赤の21! 21よッ!!」
     一枚掛けで当然当たるわけもなく、ボールは別のポケットに落ちた。
    「あーッ! もうチップねーし!」
     オネエは途中からオトコに変わり、チップを全部すった。
     ちゆと蓮司も同じタイミングでチップをすり……。
    「んー……、やべ。どうすっかなぁ」
     蓮司の呟きと同時に、ちゆが腕をつかまれて立たされる。
     黒服アンデッドだ。
     武、蓮司も次々と腕をつかまれて立たされる。そして同じタイミングで、スロットでチップを全てすった狭霧も同じように立たされていた。
     アンデッドは無言で四人を連れて、店内の奥にある扉に消えていった。
    (「斬新の社長って、あんまり斬新じゃない事しかしないなぁ」)
     千波は小さく息をついて扉に向かう。
     朔羅、ルフィア、そして祐一も、怪しまれないように遊戯台を移動するフリをして、その扉をゆっくりと開けたのだった。
     

    「おいクソガキ共。何事にも対価って言うモンが必要だって、家や学校で習わなかったのかぁ?」
     事務室らしい部屋に連れて行かれたちゆ、蓮司、武。そして狭霧。
     四人の目の前に現れたのは、支配人……というには少々下品なスーツの着こなしをした男、雨宮だ。
     雨宮はドスの利いた声で静かに告げると、タブレット端末を四人に向けた。
     端末には、家や高架橋のラクガキと、ゴミバケツへの器物破損とごみの散らかし、そして恐喝傷害、銃刀法違反に凶器準備集合罪の映像が次々に映し出される。
    「こんな生ぬるい犯罪、どうせケーサツに差し出しても注意で終わっちまうんだろうけど、経歴には確実ドロだぜ?」
     この先は、わかってんだろ? と言わんばかりの目を向ける雨宮。
    「マジかよ……、もっと悪質なのをやれって?」
     蓮司が震える演技を続けると、
    「む、無理……ッ」
     と、武がうろたえ、時間を稼ぐ。
     ちゆも怯えたフリをすると、狭霧も三人に合わせた。
     雨宮は四人の様子を眺め、にやりと笑んだ。
    「無理もクソもねェんだよ。じゃぁなにか? このままコレをケーサツやらガッコーにバラされてもいいって言うのかァ!?」
     語気を強めて足を踏み鳴らした雨宮。四人の灼滅者は怯える演技をしつつ、いつでも戦闘にもっていけるように気を張っていた。
     その時――。
    「……どーせならさ、賭けるのはチップなんてケチなコト言わずに、もっとビッグなゲームでスリル楽しまない?」
     ちらり雨宮を見上げて狭霧が呟いた。
    「何ィ?」
    「例えば……お互いの命を賭けるとか、ね?」
     その挑発に雨宮の表情が一気に狂気を帯びる。
     これは戦闘に発展する。そう察した蓮司もゆっくりと立ち上がって武装する。
    「……ぶっちゃけ、動画なんかどーでもいいんですよ。……ここでアンタ殺せばチャラだからな」
    「……お前等、灼滅者か……?」
     四人の正体を察するや否や、狂気はどす黒い殺気に変わり、四人を多い尽くした。
     ちゆは立ち上がるとくるりと後ろを振り返り、鞭剣を高速で振り回す。加速で威力を増した鞭剣は、黒服アンデッドを切り刻む。
     アンデッドの攻撃をさらりとかわして、蓮司は一番ダメージ量の多い武の傷を癒しのオーラで回復させる。
     癒しの力で傷がふさがった武は、立ち上がって足元に力を込めた。と言うより、攻撃されてキレた。
    「てぇな、アァッ!? イテこますぞ、クラァ!」
     咆えた言葉は雨宮に。そして炎を纏った激しい蹴りを、黒服アンデッド目掛けて放出する。
     狭霧は『Chris Reeve “Shadow MKⅥ”』を構えると、呪いによる毒の竜巻で黒服アンデッドを薙ぎ払った。
     援軍はまだ来ない。
     と、扉が大きな音をたてて開かれた。
    「武、おまたせっす!」
     飛び込んできたのは朔羅とナノナノの師匠。
     間髪いれずに襲い掛かってきたアンデッドをちょいっとステップで避けると、縛霊手に内蔵した祭壇を展開し、霊的因子を強制停止させる結界を構築。
    「いくっすよ、師匠!」
    「ナノー!」
     元気いっぱいに掛け声をかけて気合を入れた朔羅。師匠は武の残りの傷を癒しきる。
    「六六六人衆のカジノ襲撃して六六六人衆ボッコボコして店に放火するっつー悪事はさぁ、チップ何枚くらい貰えるわけ?」
     祐一は指先に集めた霊力を撃ち出して蓮司の傷を癒すと、迦楼羅も清らかな瞳でちゆの傷を癒した。そして祐一は顔を上げて雨宮を見据え。
    「テメーの命が買えると思えるだけのチップを積みな」
     ギリっと歯を軋ませる雨宮。何か咆えるか口を開いた瞬間、室内にグシャリと鈍い音が立つ。
    「いくら位の値が付くんだろうな」
     鬼の手に付いた腐った肉とどす黒い血をぱっぱと払いながら、ルフィアも雨宮を見。
     千波の霊犬のリコは、狭霧の受けた傷を癒す。そしてアンデッドの攻撃を交わしてその死角に回り込んだ千波は、黒服ごとアンデッドを斬る。宿敵を目の前に、その瞳は殺意で満ち溢れていた。
     雨宮は歯を軋ませる変わりに、口の端をあげて八人を睨む。
    「……このカジノを潰して俺のクビを取りに来たってか。おもしれぇ、やってみな!!」
     構えたガンナイフから発射された激しい銃撃は、攻撃手と守り手に降り注いだ。


     アンデッドを倒しきり、残りは雨宮のみ。
     誘き出し班の半数の灼滅者は耐える事を目的に守り手の役割を担っていたが、戦闘が本格的になったことから攻撃手にチェンジした。戦闘開始早々の大ダメージからのジリ貧は回避できたと言える。
     とはいえ、序列外でも六六六人衆は六六六人衆。一撃一撃が相当重い。攻撃手と守り手に攻撃を加え、時折個人を狙う。
     けれど灼滅者も確実に雨宮を追い込んでいく。
    「負けが嵩んでいるようだな」
     銀のセミロングをなびかせて、ルフィアが放ったのは炎を纏った蹴り。
     それは雨宮の厳つい印象のスーツを焦がす。
    「そろそろ、殺らせてもらいましょーか」
     蓮司は『無哭兇冥 -穿-』を構えなおすと、槍の妖気を冷気のつららに変えて撃ち出して、雨宮を穿つ。
    「ぐっ……、……ざけやがって……!」
     息つく雨宮。その後ろの回りこんだのは狭霧。その気配を感じ横に飛ぶ――より早かったのは、その斬撃。
    「遅いわね。この程度でもうついてこれないワケ? これからもっとギア上げてくわよ!」
     崩れ落ちる体を起こす雨宮。ガンナイフを構える。
    「この俺が、お前等如きクソガキに負けるわけがねぇ!!」
     その咆哮に反応する声がひとつ。
    「ごちゃごちゃウルせぇよ、タコ助ッ!」
     怒りに任せた武の鬼の手は、雨宮の顔面を捉えて壁に吹っ飛ばす。それと同時に雨宮のガンナイフから放たれた弾丸はルフィアに向かうが。
    「通さない」
     千波がルフィアの前に飛び出して弾丸を喰らった。
     すかさずリコが千波の傷を癒すと、千波はそのまま体勢を立て直して、リノリウムの床を蹴ると。中段の構えから重い斬撃を雨宮に振り下ろした。
    「子どもに圧される気分はどうですか」
     雨宮には冷静さも体力ももう残っていない。察してちゆは静かに告げた。そしてロッドを構えて立ち上がり際の雨宮を撃つ。
     倒れる寸前でその懐に飛び込んだのは朔羅。ボロボロになったスーツから露になった腹に猛烈な連打を浴びせる。
     師匠が千波の傷を癒し、迦楼羅が雨宮に襲い掛かってその体を切り刻む。
    「ま、まさか、……この俺が……、こんなガキ共に……!」
     壁際まで追い込まれて雨宮は、逃げ道などないと察した。その際たる所以は傷つきながらも両足で立つ灼滅者。そして――。
    「消火出来ねー奴に着火するって中々クールだろ?」
     カジノを襲撃し、炎を放ち、自分を殺すと宣言した祐一の拳に燃える真っ赤な炎だった。
     叩きつけられた炎に身を包み、雨宮は悶え咆える。
    「……す、すまねぇ、……斬新のダンナ……!」
     そして炎の後に、凄みを利かせた支配人の欠片さえ、何も残ってはいなかった。


     千波はひとつため息をつきながら、愛刀を納刀。
    「やる事がせこいわね。ほんと……」
     と、カジノの真の親玉を思い浮かべて呟くと、
    「お疲れ様っす! 怪我は大丈夫っすか?」
     武装を解いた朔羅は、すぐさま仲間の傷の手当てにあたった。
     おもむろに事務所を出た祐一、向かった先は店内だ。
     客は既に逃げ失せ、後に残るは小気味のいい音楽とゲーム台。そして犯罪の証拠のビデオ。
     再びこの場所でカジノが回転しないように、それらを破壊し荒らしていった。
     怖いお兄さんから再びオネエに戻った武は、荒れ果てた店内をぐるりと見渡して、
    「こんな胸糞ワルいとこ来て気分悪いし、パァーッと遊んで帰りたいところネェ」
     と、景気よく告げた。
     外に出てみると、店の入り口にいたのは小学生の男の子……、犬の眉毛を書いた子だ。怯えたように小さく震えている。
    「これに懲りて、もうこんな場所に近づいてはいけませんよ」
     ちゆが諭すように言うと、ルフィアも、
    「悪いことをする子どもは、最終的にはとても悪い大人になってしまうんだ。そんなの……嫌だろ?」
     といって聞かせた。
     こうしてすすきのから、斬新なカジノがまたひとつ消えたのだった。

    作者:朝比奈万理 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年6月1日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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