闇夜の狙撃手

    作者:天木一

     山に囲まれた小さな村。夜ともなれば都会とは違い、深い闇夜に閉ざされる。
     そんな中、1人の人物が足音を消すように山道を歩き村へと下りてきた。その人物は周囲を見渡す。するとそこには千鳥足で歩く中年の男が居た。
    「ふぃ~、飲んだ飲んだ、飲みすぎたわ」
     ふらふらと歩く男は明かりの灯った自分の家の扉に手をかける。
    「こりゃ~またかーちゃんに怒られちまうか……げっ」
     男の頭が扉に釘付けになる。その頭に何かが刺さっていた。それは一本の矢。頭部を貫き扉に刺さっていた。
    「あんた、また飲んできたの? お医者さんにこの間止められたばかりでしょっ」
     そんな異変に気付かずに、中年の女が扉を開ける。すると女の頭部に飛来した矢が突き刺さった。女は一瞬にして絶命し倒れ伏した。
     冷静にその様子を見つめる異形の者。その手には弓と矢を持ち、姿はまるで中世の騎士のようだった。
    「お母さん? どうかしたの?」
     そこへ奥から娘がやってくる。異形の者は矢を番え弓を構える。何の感情も無く放たれた矢は正確に新たな命を一つ奪った。
     異形はその家からもう物音がしないのを確認すると、次の明かりが灯った家へと静かに歩いていく。
     村全ての人間を獲物とした、悪魔のような狩りが始まった。
     
    「みんな集まったね、どうも朱雀門のロード・クロムに動きがあったみたいなんだよ」
     慌てたように能登・誠一郎(高校生エクスブレイン・dn0103)が灼滅者達に説明を始める。
    「ロード・クロムは人里から少し離れた場所に配下のクロムナイトを配置して、人里を襲わせて一般人を虐殺する事件を起こそうとしているんだ」
     このままでは数多くの人々が殺害されてしまう。
    「でもまだクロムナイトが動き出すまでには猶予があるんだ。今からみんなに準備してもらえば人里を襲うまえに接触する事ができるよ」
     村に被害が出る前に迎撃して、被害者を出さないようにしたい。
    「ロード・クロムはクロムナイトを量産しようと企んでいるみたいでね、最終段階の実験としてクロムナイトをみんなと戦わせようとしているようなんだ」
     実戦によって得た情報を、量産型クロムナイトに使用するつもりなのだという。
    「だからみんなには、戦闘経験を積む前に、短期決戦でクロムナイトを倒してもらいたいんだ」
     その言葉に神妙な顔で灼滅者達は頷いた。
    「敵が村に入ってくる場所は分かっているから、そこで待っていれば接触する事が出来るよ」
     上手く待ち伏せ出来ればイニシアチブを得る事が出来る。そうなれば戦闘を優位に始められるだろう。
    「クロムナイトはダークネスと同じくらいの戦闘力を持ってるよ。今回相手をするのは弓を武器にしているみたいだね。身を隠して正確な狙撃で一撃必殺を狙ってくるみたいだよ」
     遠距戦闘が得意な個体のようだ。距離が離れているからといって油断は出来ないだろう。
    「クロムナイトの戦闘力は高いみたいだからね、短期決戦に拘って灼滅に失敗したら一般人の被害が大きくなる事を忘れないで。大勢の人の命がみんなの戦いにかかってるんだ。だけど、ここに集まった仲間達なら何とかしてくれるって信じてるよ」
     真剣な表情だった誠一郎が自分の仕事はここまでと息を吐く。そして灼滅者達は後は任せろと気迫に満ちた表情で教室を出て行くのだった。


    参加者
    椎木・なつみ(ディフェンスに定評のある・d00285)
    シオン・ハークレー(光芒・d01975)
    八握脛・篠介(スパイダライン・d02820)
    フィオレンツィア・エマーソン(モノクロームガーディアン・d16942)
    中津川・紅葉(咲き誇れや風月の華・d17179)
    久条・統弥(時喰みのディスガイア・d20758)
    奏川・狛(獅子狛楽士シサリウム・d23567)
    ヒュートゥル・マーベリック(ピースオブクラップ・d25797)

    ■リプレイ

    ●村へと続く道
     夜の暗闇に包まれた村は静寂に満ちている。その村へと続く明かりも僅かな山道を灼滅者達は見張る。
    「闇夜のスナイパーか……かっこいいね」
     おどけた様に言いながらも、久条・統弥(時喰みのディスガイア・d20758)の目には一切の油断無く闇夜を見通すように目を細めた。
    「何の実験か知らんが、その所為で無関係の命が奪われるなんざ、堪ったもんじゃないわい」
     民家の明かりを振り返り、八握脛・篠介(スパイダライン・d02820)は憤りを込めた声を深く吐き出した。
    「利用されるのは癪じゃが、黙って見過ごせるもんじゃねぇ」
     敵の思い通りだとしても、放っては置けぬとペイントボールを手に持ち、いつでも投げられるように備える。
    「私達とも戦闘経験を積ませ、フィードバックすることにより殺戮人形をたくさん作りだすつもりのようね」
     迷彩服を着たフィオレンツィア・エマーソン(モノクロームガーディアン・d16942)は、冷静に敵の行動を読み解く。
    「なら、その目論見を潰させてもらうわ」
     夜道を見張るその瞳には強い意思の光が宿っていた。
    「相手の戦闘経験を盗もうというのは、よい考ですね。が、それだけに、敵の作戦として成功させるわけにはいかないですね」
     小さく呟いたヒュートゥル・マーベリック(ピースオブクラップ・d25797)は手馴れた様子でライフルを構える。
    「狙撃対決……しっかりと捉えて差し上げます」
     そしてまるで置物のように微動だにしなくなった。
    「大量虐殺に走れば駆け付けざるを得ない……わたくし達武蔵坂の事を良く解ってらっしゃる様で」
     それでも思い通りにはさせないと、奏川・狛(獅子狛楽士シサリウム・d23567)はワジワジする心を落ち着かせるように深呼吸した。
    「例え相手の思い通りだったとしても、こんなこと絶対に見過ごせないよね」
     ならば少しでも早く倒し、敵の目論見を撃ち砕こうとシオン・ハークレー(光芒・d01975)がその身を草陰に潜める。
    「被害は出ないようにしたいです」
     椎木・なつみ(ディフェンスに定評のある・d00285)は身を潜め、一般人の住む民家には近づかせないと、自らを盾にするつもりで飛び出せるように構える。
    「よしっ、準備完了!」
     あちこちの木に中津川・紅葉(咲き誇れや風月の華・d17179)はランタンを吊るして終えると汗を拭った。
    「業の嗅りが漂ってきたわ」
     フィオレンツィアがハンドサインで皆に報せる。
     僅かな物音。道の先、そこに足音を殺して影のように道を歩いてくる異形の姿があった。その身には西洋の甲冑を纏い、手には弓を持っている。そして何よりも甲冑の下には青い皮膚をした怪物の体が収まっていた。

    ●闇夜の怪物
     木陰から現われた篠介がペイントボールを投げつける。それは見事にクロムナイトの胸に当たった。
    『グルゥァ?』
     驚いたようにクロムナイトは自分の胸元についた塗料を手で触っていた。そこへ一斉に照明が当てられる。
    『ギォッ!?』
     突然のライトを浴びて眩しさに腕で顔を隠す。
    「これで逃げられることはねぇ、やっちまうぜ!」
     篠介の声に一斉に灼滅者達が動き出した。紅葉が殺気を放ち人払いをし、狛が音を封じる結界を張る。
    「Yes master」
     指示を受けたヒュートゥルが引き金を引く。光線が放たれ、不意をついた一撃が怪物の頭部を撃ち抜いた。
    「一気に行くよ!」
     続けてじっと息を潜めていたシオンも立ち上がり、槍を回すと氷柱を撃ち出す。放たれた氷柱は敵の腕に直撃して凍りつかせた。
    『グルァ!』
     威嚇のように声を出しながらクロムナイトは弓を構える。
    「こっちです!」
     駆け寄ったなつみが勢いのまま体当たりするように前に構えた盾を叩き込んだ。
    「私達の結束の力とチームプレー見せてあげましょっ♪」
     敵が怯んだところへ紅葉は駆け出して横から飛び蹴りを浴びせる。クロムナイトは僅かに身を逸らすが避けきれずに吹き飛んで地面を転がる。
    『グルルゥァッ』
     獣のようにクロムナイトは飛び起きて矢を放つ。それをふわふわと割り込んだナノナノのめーぷるが受け止めた。
     腕を砲台にしたフィオレンツィアが強酸を撃ち出す。
    『ギィィッ』
     それを浴びたクロムナイトの顔が音を立てて焼ける。手で顔を覆ったクロムナイトは苦悶の声を漏らして駆け出した。
    「クロムナイトがそっちに向かったわ」
     フィオレンツィアの言葉に反応して仲間が包囲するように動く。
    「確実に仕留める!」
     駆けて一気に間合いを詰めた統弥が槍を突く。胴体を狙った一撃が身を捻った敵の腕を貫いた。クロムナイトも負け時と至近距離から矢を放つが、統弥は槍を回して矢を弾いた。
    「転身っ!」
     狛は沖縄のシーサーのご当地怪人シサリウムの姿に変身する。
    「めんそーれっ!」
     腕からシークヮーサーの皮が伸び、敵の甲冑に突き刺した。
    『ギアォッ』
     クロムナイトが反撃の矢を放つ。流星の如く飛来する矢の前になつみが立ち塞がる。
    「私が相手です!」
     なつみは盾で矢を受ける。だが鋭い一撃は盾を貫き腕に突き刺さった。なつみは矢を抜くと大きく深呼吸してオーラを体内に集め、体を活性化させて傷を塞ぐ。
    「鎧が硬そうだね、攻撃を通しやすくしようかな」
     シオンがそっと自らの影に触れると、影が敵の足元まで忍び寄るように伸びて刃となり、甲冑を斬り裂いた。
    『ギォッ』
     駆け出したクロムナイトは木陰に身を隠し、陰を移動しながら矢を射る。
    「狙撃対決で、負けるわけにはいきません……!」
     ヒュートゥルは射線を確保する為に位置を変える。移動しながらガンナイフの銃口を向けて弾幕を張り、注意を引きつける。
    「ナイトを名乗るなら誇りある戦いをしましょっ! さぁ闇から出て来てねっ♪」
     吊っておいたランタンを紅葉が順番に灯していく。眩い明かりに闇夜が照らされ、隠れられる場所が減っていく。
    「そこに居たね!」
     陰から飛び出たクロムナイトが明かりに照らされ姿を現す。飛び込んだ紅葉は刀を振るう。鋭い刃は肩を斬り裂き体液がぼたぼたと地面に流れ落ちる。
    「村に入られでもしたら困るんじゃ、まずは動きを止めるとするか」
     的にならぬよう低く駆けた篠介が敵と擦れ違いながら剣を振り抜く。刃が敵の右太股を斬り裂いた。
    『ギィィッ』
     膝をついたクロムナイトが次々と矢を放つ。
    「戦闘データを蓄積する前に、灼滅してあげるわ!」
     そこへフィオレンツィアが帯を放って牽制しながら接近し、鬼の如く巨大化させた拳で殴りつけた。
    『ギォォッ』
     吹き飛んだクロムナイトは足に矢を刺して治療し、もう一度駆け出そうと起き上がる。だがその眼前には狛が迫っていた。
    「遅いグース!」
     果汁を飛び散らせながら、狛はクロムナイトを蹴り上げる。
    『ギオォォ』
     宙に飛ばされながらも、クロムナイトは頭上から矢を射掛ける。
    「強くなるためには、努力だけじゃなく、きっかけも必要なのかな?」
     統弥は炎を纏った蹴りで矢を蹴り飛ばした。
    「そんなきっかけは与えないけどね!」
     そして勢いを殺さぬまま回転し、落下してくるクロムナイトに回し蹴りを叩き込んだ。

    ●狙撃手
    『ギィィィッ』
     吹き飛ばされたクロムナイトはそのまま闇夜に隠れるように気配を消す。
    「隠れたつもりじゃろうが、丸見えだ」
    「こないのならこちらから行きますよ!」
     篠介が闇夜に浮かぶ塗料の光を頼りに忍び寄り、木に向かって剣を振るう。両断された木がメキメキと音を立てて倒れた。そこから投げ出されるクロムナイト。木の上に上り狙撃しようとしていたのだ。落下して倒れたところへ、続いてなつみが手に光を纏わせ、手刀を振り下ろし肩を甲冑ごと斬り裂いた。
    『ギィォ!』
     不意打ちを受けて驚いたように声をあげて、クロムナイトは距離を取ろうと駆け出す。そして動きながら上半身を捻って弓を構えた。
    「もう少し……もう少し………今!」
     ライフルを構えてじっと待ち構えていたヒュートゥルが敵の動きを計算し、光線を胸に撃ち込んだ。
    『グギィィオオオッ』
     衝撃に思わず足を止めたクロムナイトは周囲を見渡し、灼滅者達を近づかせぬように矢を乱れ撃つ。
    「その程度の攻撃で、わたくしの装甲は貫けないグース!」
     狛が矢に当たりながらも衝撃を無視して突っ込み、回し蹴りを叩き込んだ。
    『グギィッ』
     クロムナイトはよろめきながらも踏み止まり、跳躍して頭上から矢の雨を降り注がせ、狛の体に何本かの矢を突き立てた。
    「まだまだ動きが甘いわね、無闇に跳んだら隙だらけになるわよ」
     突進するフィオレンツィアは帯を鎧のようにして矢を受け止め、クロムナイトが着地するタイミングで、魔力を込めたロッドをスイングして腹部に叩きつけた。
    『グゲッ』
    「身体能力は高いけど、まだ実戦には慣れてないようだね」
     くの字になったところへ統弥が連続して槍を突く。クロムナイトは弓を盾にしてで何とか突きを凌ぐが、統弥が速度を上げると腕に脚にと傷が出来ていく。
    『ギッィ!』
     クロムナイトが刃のような腕を横薙ぎに振り抜くと、統弥は咄嗟に後ろに下がる。それを好機とクロムナイトが距離を開けようとする。
    「お返しだよ!」
     だがそんな間は与えぬと、シオンが周囲に幾つもの魔法の矢を展開させていた。そしてクロムナイトを指差すと、矢は次々と目標に向かって飛んでいく。
    『グギィィ!』
     その矢に向け、クロムナイトも次々矢を放って相殺していく。魔法の矢は全て撃ち落とされたが、クロムナイトの足も完全に止まっていた。
     シオンはそこで槍を振るって氷柱を撃ち出す。氷の矢は避けようとしたクロムナイトの脇腹を抉っていた。
    「私達の戦いを簡単に覚えられると思わないでね!」
     好機と紅葉がローラーダッシュで一直線に駆け寄ると、迎撃に放たれる矢を跳躍で避け、頭上から炎を纏った蹴りを浴びせて叩き伏せた。
     地面を転がって燃え移った炎を消しながらもクロムナイトは矢を番える。放たれた矢は正確に紅葉の胸を狙う。だが後少しというところで、矢は邪魔するように飛んで来ためーぷるに命中した。
    『ギィィオアッ!』
     劣勢を覆すようにクロムナイトは一際大きく叫ぶと、矢を一度に何本も番えて同時に撃ち出す。一斉に飛ぶ矢は避ける暇も無く紅葉に飛来する。
    「私の後ろに!」
     盾を構えたなつみが割り込んで前に出ると、紅葉が弾除けにするように背後に回る。なつみは飛んで来る矢を防ぎながら前に進む。途中何本もの矢が手足を傷つけたが、血が流れようとも怯む事無く歩み続け、クロムナイトを間合に収める。
    「私達を誘き寄せたいなら正々堂々果たし状でもくれればいいのに、悪逆非道に弱い者いじめなんてナイトの名が泣くわよ!」
     クロムナイトが矢を番える合間に、なつみの背後から紅葉がスライディングするように飛び込み、クロムナイトの足を払って転ばせた。衝撃にクロムナイトの手から矢が転がり落ちる。
    『ギギギィ』
     弓を支えにして跳ね起きたクロムナイトは、現状を不利と見たのか身を隠そうと茂みへと駆け出す。
    「あら? 私たちから逃亡をするの? それでよく私達との戦闘記録を取ろうだなんて計画できたわね」
     挑発するようにフィオレンツィアが嘲笑しながら、強酸を進行方向へ飛ばして茂みを溶かし、クロムナイトの動きを阻害した。
    『グギォッ』
     慌ててクロムナイトは方向転換するが、目の前にはシオンが立ち塞がっていた。既に灼滅者達の包囲網が出来上がっていたのだ。
    「かくれんぼはもうお仕舞いだよ、鬼ごっこに付き合う気もないしね」
     追いついたシオンの持つロッドがクロムナイトの胸に触れる。すると流れ込んだ魔力が敵の体内で爆発して肉片を撒き散らす。
    『ギォッ』
     仰向けに倒れ呻きながらも、クロムナイトが矢を放つ。
    「あなたを倒し、こちらが新たな敵との戦闘経験を積まさせてもらいます」
     狙い済ましたヒュートゥルの放った光線が、クロムナイトが射る矢を撃ち落とした。そして続けての2射目が足を貫く。クロムナイトはバランスを崩してよろめいた。
    『グギィッ』
     クロムナイトは足を引きずるようにしながらも、距離を取りながら手は休む事なく矢を放ち続ける。
    「悪いがこれ以上時間はかけられん、決着といこうか」
     ローラーダッシュで篠介は矢を掻い潜り、低い姿勢から炎を纏った足で敵を持ち上げるように蹴り上げる。
    「データくれてやるのは大変癪グースが……人の命には代えられないグース!」
     シーサーのオーラを纏った狛が大きく跳躍し、宙に浮かび矢を番えようとしていたクロムナイトの背後に組み付いて腕を封じる。そして逆さになると落下の力を利用してクロムナイトを頭から地面に叩き付けた。
    『グ……ギ……』
     兜が潰れぐちゃぐちゃと体液を垂らしながら、クロムナイトは立ち上がろうともがく。
    「これで終わりだ!」
     鋭く踏み込んだ統弥が刀を抜き放つ。奔る剣閃が防ごうとした弓ごとクロムナイトの胴体を両断した。
    『ギ、ギギィ……』
     クロムナイトはそれでも動こうと腕を伸ばす、その頭部をヒュートゥルが撃ち抜く。ビクッと体が痙攣し、やがて力尽きると体がどろりと溶けて消え去った。

    ●戦闘経験
    「ふぅっ……任務完了です」
     大きく息を吐き、ヒュートゥルはライフルを下ろして武装を解除した。
    「上手くいきましたね」
     なつみはクロムナイトが倒れた場所に近づき、完全に消えたのを確認した。
    「私達のチームプレイを見せつけられたねっ♪」
     紅葉は笑みを浮かべて飛んできためーぷるを抱きとめる。
    「意外と大したことなかったわね、やはり戦いは経験を得ないと駄目ね」
     予想の範疇を超えなかったと、フィオレンツィアは敵の強さを推測する。
    「なんか、本当に生物兵器なんだな……俺自身も似たようなものだけど、理性がない分、厄介なのばかりだよ」
     戦う以外の意識を持って無さそうだった敵に、統弥はあんなものが量産されれば大変な事が起きそうだと、肩を竦める。
    「少しは早く倒せたかな。でも量産したら何をしようとしてるんだろうね。なんだかよくないことが起こりそうな気がするよ」
     シオンは嫌な予感に、悪い想像を打ち消すように頭を振った。
    「敵がどれだけ強くなったとしても、わたくし達がもっと強くなって倒すだけです」
     変身を解いた狛が、たとえ量産された敵が現われようとも倒してみせると強く意思を固めると、仲間達も頷く。
    「造り出すのも、奪われるのも、元は同じ人間じゃろうが……胸糞悪ぃ」
     クロムナイトも元はただの人であったのだと思うと、篠介は苦いものを吐き出すように溜息を吐く。
    「業が在ろうと無かろうと、灼滅するしかないのは苦いもんだ」
     このような所業を行なうロードクロムと顔を合わせる事があれば、必ず後悔させてやると呟いた。
     後処理を済ますと、灼滅者達は村を後にする。何事も無かったように、村には静けさが戻り、振り向けば穏やかな民家の明かりが温かく輝いていた。

    作者:天木一 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年5月28日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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