運動会2015~ウォーターシューティング

    作者:天木一

     全力で駆け、力一杯戦い、声を限りに応援する。
     今年も夏を思わせるような熱い春の祭典がやってくる。
     5月31日は武蔵坂学園の運動会の日である。
     仲間と力を合わせ、勝利を目指し一丸となって情熱を燃やすのだ!
     
     グラウンドでは運動着を男女がカラフルな銃を構えていた。
    「そこだ!」
    「おおっと!?」
     ハンドガンタイプの水鉄砲を構えた貴堂・イルマ(中学生殺人鬼・dn0093)が、物陰に隠れた能登・誠一郎(高校生エクスブレイン・dn0103)に水を飛ばす。
    「お返しだよ!」
     誠一郎も負けじとライフルタイプの水鉄砲から勢い良く水を飛ばす。イルマは俊敏にそれを躱すと、一気に突っ込んで間合いを詰める。誠一郎は迎撃しようと銃口を向けるが、慌てて攻撃を外してしまう。
    「終わりだ!」
     胸に銃口を突きつけたイルマが引き金を引き、誠一郎はびしょ濡れになった。
    「冷たっ、あ~負けちゃったねぇ。濡れてもこれだけ陽気がいいと気持ち良いかも、でも靴の中まで濡れちゃったからちょっと乾かしてくるね」
     誠一郎は水の入った運動靴を気にしながら手を振って更衣室へと向かう。
    「うむ、練習に付き合ってくれて感謝する」
    「いいよいいよ、あ、お礼は甘い物でいいからね!」
    「それでは今度また何かを差し入れしよう」
     イルマは見送ってタオルで汗を拭うと、集まった灼滅者達に気付いて振り返った。
    「こんにちは。今日も良い天気だな。まさに運動日和というべきか」
     青空を見上げたイルマの手にあるのは水色をした水鉄砲だった。
    「もうすぐ運動会があるだろう。そこで行なわれる水鉄砲バトルの練習をしていたんだ」
     水鉄砲を使った競技は毎年学園で行なわれる種目の一つだ。
    「試合は組連合ごとの全チームがグラウンドで一斉に戦うというものだ。全滅したチームから下位の順位が埋まり、最後まで生き残ったチームが1位となる」
     数の優位も大事だが、隣接チームの戦力や作戦によって一気に状況が変わってくるだろう。
    「参加者にはこのゼッケンを前後に付けてもらい、破れたら失格となる」
     見本のゼッケンをイルマは水鉄砲で撃ち抜く。するとあっという間にゼッケンが溶けるように破けてしまった。
    「武器に使用するのはこちらのハンドガン、ライフル、バズーカタイプの3種類の水鉄砲。それとサブウェポンとしての水風船だ」
     イルマが並べた三つの銃。これらの中から一種類を選んで所持する事になる。
     ハンドガンタイプは片手で持つ銃だ。射程は短いが連射可能、操作が簡単で引き金を引けば水が出るし、補給も手早く出来る。小さいので動きの邪魔にもならない。2つ所持して二挺拳銃にも出来るが、その場合機動力が落ちて補給にも多少時間が掛かる。
     ライフルタイプは両手で持つ銃だ。射程が長く連射も出来る。しかしポンプ操作によって圧力を掛けなければ撃てない。補給時の隙が大きい武器だ。
     バズーカタイプも両手に持つ銃だ。ライフルには及ばないが射程は長い、そして何よりの特徴は水が広がって飛び範囲攻撃が可能だという事だ。欠点は弾数が少なく、ポンプ操作も必要で戦闘継続時間が短い点だ。
     水風船は希望する者に1つだけ配給される。手投げで遠距離のコントロールは難しいが、当たれば強力だ。紐がついていて銃に結んで携帯も出来る。だが簡単に割れるので自爆の可能性もある。手に持つのが安全だろう。
    「長くなったがこれで説明は終了だ。チームの連携が物を言う競技だ。仲間と息を合わせたチームは精鋭となるだろう。わたしも一参加者として精一杯がんばるつもりだ。参加する以上は勝利を目指し、全力で運動会を楽しもう!」
     イルマが水鉄砲を持った腕を上げると、灼滅者達も釣られるように腕を上げ、グラウンドに木霊すように掛け声を上げた。


    ■リプレイ

    ●運動会
     グラウンドにはカラフルな銃を手にした体操服の生徒達が集まっている。
     連合はそれぞれ赤、桃、白、橙、黄、黄緑、緑、青、紫のゼッケンを付けて陣を作り、いつでも動けるように準備をしている。
    『これより水鉄砲バトルを開始します! よーい……』
     ピストルが破裂し、火薬の匂いと共に熱く冷たい戦いが始まった。

    ●東部戦線
     まず3C桜が4D椿に一気に攻勢に出る。
    「無様な姿は見せられんな」
     ヴァイスは意気込み二挺を手にして駆け出す。
    「ぶち抜けばいいんだろう、問題ない。……無論、本気で行く」
     板から透流はライフルで敵を狙撃する。
    「そっち行ったよー。大丈夫?」
    「悲しいけど、これ戦s……じゃない、勝負なのよね」
     夕月が動き回って敵を撹乱すると、軽口を叩きながらアヅマがバズーカを撃ち込む。
    「わふわふ~♪」
     エミーリアが楽しそうに戦場をぽてぽて走り回ると、敵が近くに接近する。
    「ざーんねんで・し・たっ」
     敵が射程に入った瞬間、フローレンツィアがバズーカをぶっ放した。
    「狙い撃つの~」
    「……こっちは任せて」
     向かって来た敵を瑞葵とフィリアがライフルで迎撃する。
     4D椿もやられるばかりではない。
    「こっちから打って出るよりは相手の消耗を待つのが吉よね」
     奏音は後方から仲間に指示を出し、防衛線を築く。
    「スナイパーヒロインの腕の見せ場だよね!」
     あるなはライフルの狙いを定め、近づく敵に水を飛ばす。
    「長くなりそうだし、温存しないとな」
     武流は向かって来る敵に牽制の水を放つ。
    「女子のびしょ濡れ姿を拝む為にも、頑張るよ。頑張りますとも!」
     晃は女子を狙って引き金を引いた。
    「さぁ、ショータイムだ!」
    「いっくよー!」
     和正と翼はヒットアンドアウェイで仲間からの援護を受けつつ、近づく敵に二挺拳銃で足を止め、バズーカをぶっ放す。
    「一網打尽ってね!」
     続けてジェーンもバズーカを撃ち込んだ。
    「いいか、こういうのはな、ビビったら負けだ」
     晃は敵の固まっている方向へ水風船を投げ込み、二挺拳銃で突撃する。
    「一人だけいいカッコさせるかよ!」
     笑みを浮かべた武流もその後に続き突破口を開く。
     そこへ新たに2B桃も参戦する。
    「これより敵陣へ奇襲を開始する」
     真は銃を手に機敏に動き、敵の死角から近づき水を撃ち込んだ。
    「頼れるのは自分とこの銃だけ、これだけだと映画みたいなんだけどね」
     見桜は笑いながらも、戦場を駆け出す。

     3連合による混戦となり一気に戦況が動いた。
    「ん、水なくなりそう」
    「その間は俺に任せろ! そらそら撃つぞ!」
     夕月が補充する間に、アヅマは近くの敵にバズーカを向けて牽制する。
    「楽しいね~♪」
     エミーリアの言葉に仲間達も笑って頷く。
    「エミーリア、離れすぎちゃダメよ?」
     フローレンツィアが注意するが、エミーリアは手をぶんぶんと振って返事をしている所に水が顔に直撃した。
    「……敵」
    「虎の子の爆弾なの~」
     フィリアがそれ以上の接近を防ごうと水を撃ち、瑞葵が水風船を投げ込む。
    「補給に下がる援護を頼む!」
     真は仲間の援護射撃の中、バケツの元まで駆け出した。
    「覚悟を決めないとね」
     敵に囲まれると潔く決心した見桜は、1人でも倒そうと特攻する。眼前の敵を倒すと、四方からの水で撃沈した。
    「うわっ」
     前に出ていた翼が被弾して防衛線に穴が開く。
    「こうなったら道連れにしてやるわ!」
     補充を狙われたジェーンは相打ち狙いで水風船を投げた。
    「踊れ……俺の掌の上で」
     飛び込んだ和正はスタイリッシュに敵を撃ち倒す。
    「バケツ確保したよー!」
    「最後まで生き残ろうね!」
     その隙にあるなが周囲を警戒しながらバケツを確保し、傍に駆け寄った奏音は元気良く声をかける。
     そこへ【キルセ】の面々が協力しあって戦場を動き出す。
    「オラ、ビビってんじゃねーぞ。ズブ濡れになりてェヤツからかかってきなァ!!」
     瞳孔を開いた錠が二挺拳銃を構えて周囲を威嚇する。
    「よし、俺たちで誰よりも多くの敵を撃ち落として見せるぜ……!」
     続く香艶も銃を構えて動き回る。
    「うっしゃ、撃ちまくったる!」
     錠や香艶を狙う敵にライフルを向け、葉は連射する。
    「みんな結構前に出てくんだなー、危ないよ撃たれるよ!」
     エルメンガルトは仲間を狙う敵に水を撃ち込む。
    「エルさんを背にしていれば他より安心でしょう」
     由乃はエルメンガルトを壁として利用しながらライフルを構えた。
    「何が何でも最下位だけは避ける……!!」
     1人でも倒そうと香艶は敵陣に飛び込んで銃を撃ちまくる。
    「悪ィな、テメェもココでゲームセットだ」
     錠は突撃して至近距離から相打ち狙いの水風船を破裂させた。
    「エルは由乃ちゃんだけじゃなくて俺も守れよ!」
    「ってオレ、ユノちゃんの壁になってるの?」
     葉の言葉にエルメンガルトが振り返ると、そこには由乃が立っていた。
    「勝った暁にはアイス奢ってあげますから後ろを守りなさい!」
     アイスの言葉に釣られた瞬間、水がエルメンガルトに命中していた。それを盾に由乃が反撃する。

    ●北部戦線
     ほぼ拮抗する勢力を持つ1A梅と9I薔薇。先に動いたのは9I薔薇だった。
    「さぁ、今年こそ勝利を味わいに行くわよ」
     逢紗はスタートダッシュを切り、前線の板を確保すると二挺拳銃で弾幕を張る。
    「こういう時は遮蔽より速度だね」
     続く七葉も足を止めずに敵の動きをかき回す。
    「追い込むよ」
    「シルビアちゃん、ストちゃん、いまだーっ! どっかーん!」
     星流がライフルを撃って敵の移動を遮り、結月が動き回って敵を誘導する。
    「地上で溺れさせてやるのじゃ!」
    「やりますわよ、ガンホーですわー!」
     合図を受けてシルビアとストレリチアは敵に向けてバズーカを発射した。
    「チームワークこそ最大の武器。我らの連携、崩させはせぬぞ!」
     近づく敵に華織が二挺拳銃で弾幕を張る。
    「さて、一人ずつ片付けますか」
    「確実にいきましょう」
     七波と府月が仲間を狙う敵をライフルで狙撃していく。
    「後ろは任せな、最高の援護を約束するぜ♪」
    「前線の拠点確保はバッチリ任せて下さいですわ、高明さん♪」
     ウインクした高明に、桜花も微笑み返して前に出ると、高明はフォローするようにライフルを構える。
    「敵が来ます!」
     悠花は壁から上半身だけを乗り出してライフルを構える。
    「いやはや、暑い中での熱い戦いに水を使ってクールダウンしながら戦うとは、合理的ですねぇ……」
     流希は敵の攻撃を避けるように動き回る。
     速攻を受けながらも、1A梅も迎撃の用意は整っていた。
    「見敵必殺。サーチアンドデストロイです」
     公平は水風船を投げると、ライフルを構えて敵に水を放つ。
    「今年は最高学年として恥じない働きをしなければ」
    「♪」
     理緒は二丁拳銃で弾幕を張りながら敵へと向かうと、夜宵も援護をする。
    「今日は誤射しないから大丈夫ですよ。まあ、いつも誤射はしてないですけどね」
     冗談混じりに芽瑠はライフルで仲間を援護する。
    「毎日の射撃訓練を欠かさない本職スナイパーの腕をお見せしましょう」
    「水鉄砲で撃ち会うって事はよぉ……塗れて下着が透ける覚悟は出来てるって事だよなぁ?」
     ニヤリと笑った真咲は二挺拳銃で補給ポイントを狙う。その目はじっとりと女子に釘付けだった。
    「それでは一刀君、一緒に頑張りましょう。できる範囲で守ってくださいな?」
    「僕がいる間は、誰も近づかせないんだよねェ~。。。クククっ」
     微笑む公に、一刀は任せろと銃を構えた。
    「やるからにはMVPも狙いたいよな!」
     紅輝はちょこまかと動いて敵を牽制する。
    「これでも、体育の成績はいいんだぜ!」
     素早く敵の背後を取ると、背中を撃ち抜いた。
    「援護するのよ」
    「了解であります」
    「折角魔改造エアガンを開発したのに支給品しか使えないとは……」
     琥珀の指示に優奈は頷き、美亜もぶつぶつと嘆きながらライフルを構え、味方を襲う敵を撃つ。

     両軍は牽制と睨み合いから少しずつ削り合い戦況が動く。
    「補給するのじゃ、援護を頼むぞ」
    「ゆきがまもるよっ!」
     シルビアが補給するのを守るように結月が周囲を警戒する。
    「ゆきちゃん危ない!」
     死角から狙う敵にストレリチアがバズーカをぶっ放す。
    「おっと、そこまでですよ!」
     迫る敵を七波が狙撃して足を止めた。
    「落ち着いた動きなんてさせないよ?」
     七葉は水風船を投げ、二挺拳銃で敵を迎撃する。
    「七葉、無理はし過ぎないようにね。結月、華織、左右を固めてちょうだい」
     指示を出しながら逢紗も援護射撃を行なう。
    「もう少しじゃ、優勝とMVPを掴みに行くのじゃ!」
     気合を入れた華織が防衛線を押し上げる。
    「バズーカは厄介ですね」
     府月はバズーカを持つ敵を牽制して近づけない。
    「一発必中一撃必殺」
     狙い済ました星流の一発が、仲間を狙っていた狙撃手を撃ち抜いた。
    「ここが勝負どころか」
     敵の混乱に乗じてクーガーが突っ込む。
    「むやみやたらと無駄玉を撃っても、当たらなければ意味が無いですからねぇ……」
     補給する敵を流希は落ち着いてライフルで狙い撃った。
    「これは拙いですね」
     悠花は水を切らして逃げるが、横からの水を浴びてしまう。
     公は板に隠れながらライフルを構え、単独行動する敵を狙い撃った。
    「確実に一人ずつ、でございますよ。千里の道も一歩からと言いますからね」
    「カカカカっ! 公さん……もとい、管理人さんを狙う輩は即・退場なんだな」
     近づく敵は一刀が手品のように一挺の銃を左右の手で操って迎撃する。
    「敵増援を確認、3時の方向より2体接近中なのよ」
     琥珀が敵を見つけるが敵の方が攻撃が早かった。水が当たる直前、優奈が身を挺して庇う。
    「お嬢様、お仕えできて幸せでした……ガクッ」
    「優奈さん!」
    「また攻撃が来るぞ!」
     美亜が迎撃し、琥珀も続けて撃ち込む。優奈は倒れながら用意しておいたカメラで琥珀を激写した。
    「ここまでですね」
     囲まれた理緒は弾切れの銃を捨て、水風船を投げつけると同時に水を浴びた。
    「……武器が変わった途端負けるとは、情けないですね……」
     同じく被弾した公平は水を払う。
    「眼福だぜ!」
     頭からずぶ濡れの真咲は満足そうに笑った。

    ●西部戦線
     8H百合が進軍を始め7G蘭と激しくぶつかり合う。
    「さて、三年目ねぇ水鉄砲に参加するのも。かつて最後の死闘を演じた実力……見せてあげるわよ」
     巫女はライフルを片手に狙いやすい物陰へと移動を始めた。
    「敵の攻撃は蓮花に任せるぜ!」
    「任せて、どんな攻撃も通さないから」
     天牙が攻撃、蓮花が守りと役割分担して行動を開始する。
    「俺達の結集力を見せてやるぜ」
    「はい! がんばります!」
     宇宙と優夏がまずはと水風船を投げた。
    「防御は任せろ、守る方が性に合っている」
     結生は片手に持った銃を撃ち牽制する。
    「ふー、それにしても暑いですねー……ちょっとくらい脱いじゃってもいいですかね?」
     ゆいなはそんな台詞で敵を誘き出してバズーカを撃ち込む。
     7G蘭も弾幕を張って少しでも敵の進軍を遅くしようと粘る。
    「まずは生き残る事ですね」
     紅緋は銃を連射して敵を近づかせない。
    「よっしゃ! 誰よりも多くびしょ濡れにしてやるぜ!」
     レイジは楽しそうに開幕と同時にバズーカをぶっ放す。
    「背中は任せたよ! ……って、これ一回言ってみたかったんだよねぇ、あはは」
    「任せてー」
     そう言って静が笑うと、ガーゼが親指を立てた。
    「隙だらけよ」
     じっと敵が視界に入るのを待っていた巫女は、正確にゼッケンを撃ち抜いた。
    「私の目の黒いうちは水一滴たりとも通しません」
    「一気に行かせてもらうぜ!」
     近づく敵を蓮花が牽制し、横から天牙が撃ち抜く。
    「へっへ、そう簡単には倒れないぜ~」
     宇宙は板を利用して水を避けて自陣へと補給に戻る。
    「宇宙くんごめんっ!」
     上から落下してくる水風船に、ゆいなは宇宙を盾にして敵の攻撃を避けた。
    「うっ……ここまでか。後は頼んだ」
    「貴方の死は……無駄にはしませんっ!」
     頭からずぶ濡れとなった宇宙を見下ろし、涙を拭う仕草をするとキッとした表情で敵に向かう。
    「や、やらせませんよ……!絶対勝ちます!」
     優夏も何とか持ち堪えようと銃で弾幕を張りながら下がる。
     結生は銃を持ち替えて敵を迎撃するが、それも尽き被弾する。
    「早く着替えたい……」
     濡れた体操服を引っ張るようにして歩き出した。
    「おおっと!? あーびしょびしょにされちまったな!」
     水を浴びたレイジはそれでも楽しそうに笑った。
    「あっごめんこれ無理。たすけてがーぜー!」
     弾を切らして逃げてきた静が背後からの一撃を受けて倒れる。
    「あ、ごめん。虹作ってたー」
     ガーゼは敵を攻撃しながらライフルの水を連射して虹を生み出していた。
    「僕の事は気にせず、先に進んでくれ……」
    「え、嘘でしょ? 誰か医者……いや、獣医を!」
     静のボケにガーゼもボケ返して2人で笑い合う。

    ●南部戦線
     戦力で劣る6F菊に向け、5E蓮が牙を剥く。
    「今年は同じチームだね、よろしくイルマさん」
    「うむ、よろしく頼む。勝利を目指してがんばろう!」
     殊亜は二挺拳銃を構えて水を確保しようとしている敵に突っ込み、イルマはそれを援護する。
    「上から爆弾や!」
     乃麻が声をかけると、一斉に仲間が飛び退いて水風船を回避する。
    「支援に回ろう」
     千都はライフルを構えて仲間を援護する。
    「こんな暑い中で涼を取りつつ楽しめるゲームがあるなんてな!」
    「コノ学園での行事は初めてなんだよねー。ミンナ優しいしノリもイイしワクワクしてしょうがナイの」
     倫理と二挺拳銃を手に周囲を警戒し、ルシアは楽しそうに水鉄砲を振り回す。
    「最後まで濡らさず守り切るのが……勤めだな」
     アルベルトはルシアを見て呟きライフルを構えた。
    「正直女子の濡れ透けはガン見したいです。だけど、我慢我慢……」
     雑念を払った浩志はMVPを狙って気合を入れてバズーカを上空に曲射する。
    「さぁ始めようか。やるからには全力だ」
    「二人でだって、息を合わせたら無敵だよ!」
     翔也と杳は顔を見合わせ笑い合うと、翔也が二挺拳銃で駆け出す。それを狙う敵が炙り出されると、杳がバズーカを叩き込んだ。
    「じゃ、どんどんいくよー!」
    「夏の暑さには丁度いいが……水を浴びるのは最後の最後といきたいものだ」
     拳銃片手に飛び出す歩良を援護するように、寂蓮はバズーカを持って敵を牽制する。
     劣勢であっても6F菊は激しい反撃で踏み止まった。
    「榛名、背中は任せたよ」
    「お任せください。撃ちますよ~」
     銃を手にした宥氣が敵に姿を見せる。誘い出された敵へ榛名がライフルで狙撃した。水は狙いを外れるが、偶然現われもう1人の敵に当たった。
    「流阿武、背中は預けたぞ」
    「背中を預ける相手がいるのは心強いね」
     莉那と知信は背中合わせに互いの死角をフォローしながら攻撃を始める。
    「ふふふ、水を得たワラスボは捕食者なのです! お覚悟!」
    「そんなに突っ込むと危ないと思うけどなぁ……」
     二挺拳銃を持って突っ込む明海を、フォローするように死愚魔がライフルで援護する。

     一気に押し切ろうと5E蓮は攻勢を強めるが、6F菊も手を休めずに迎撃する。
    「最後に物を言うのは体力だよね!」
     殊亜は止まることなく戦場を駆け回り、敵を混乱させていく。
    「漁夫の利を狙うというのもありかもしれないが、欲張らず、当てれると思ったものを狙うさ」
     千都は冷静に見渡し、こちらに気付かぬ敵を狙撃する。
    「右から奇襲! ってやられてしもたか。んーっ! はぁ、ええ気持ちやなぁ」
     水風船の直撃を受けた乃麻はぷるぷるっと犬のように頭を振って水を飛ばす。
    「……すまん、行嶋。俺はこれまでのようだ。……何人かは連れて行くから、後は任せたぞ」
     敵に囲まれた寂蓮は水風船を手に特攻する。
    「任せて! 1人でも多く倒すから!」
     同時に歩良が駆け出した。
    「やらせん……!」
    「るぅちゃんを一番に守る! そう、肉壁作戦!」
     アルベルトと浩志はルシアを庇って代わりにずぶ濡れになる。
    「ワンチャンアタックをくらえ!」
     襲い来る敵に倫理が水風船を頭上に投げ、水を撃ち込んで割る。広がった水が敵の頭上から降り注いだ。
    「わわっ? もしかしてコレってナイト様に囲まれたお姫様な状況? あたしもみんなの分まで頑張るー!」
     2人が壁となっている間にルシアは敵に狙いを定めて水を飛ばした。
    「人生初の運動会、誰かと参加できるなんて夢にも思わなかった。すっげぇ楽しい!」
    「何? 運動会に出れたのが嬉しいって? 行事があれば幾らでも一緒に出てやるから今は目の前のことに集中しろ」
     楽しそうに笑う杳に釣られたように翔也も頬を緩めながらも、迫る敵に弾幕を張った。
     榛名が水風船を投げると、すっぽ抜けてあらぬ方向へ飛んでいった。
    「ぅぅ……違う人に当たってます……。ごめんなさい……」
    「あと何人かな、結構倒したと思うんだけど」
     戻ってきた宥氣が戦況を確認するように周囲を見渡す。敵も味方も随分と人を減らしているようだった。
    「勝てばご褒美あげるぞ?」
    「それは楽しみだね」
     ライフルを撃ちながら莉那がそう言うと、知信は銃を持ち替えて笑みを浮かべた。
    「当たってしまったのです……」
    「負けちゃったけど、楽しめたからいいかな」
     濡れて透ける明海の体操服を見ないよう、死愚魔は目を逸らした。

    ●混戦
    「見つけた師匠、修行の成果を見せる時だ」
     透流は高明を狙い引き金を引いた。水は隣の桜花に当たる。
    「や~ん! びしょ濡れになっちゃいましたわ~?」
    「水濡れ女子には気を取られる事はない……わけあるか!」
     濡れた桜花の姿に高明の目が釘付けとなる。そこへ透流が撃ち込むが、高明は反射的に躱すと攻撃の来た方向へ射撃していた。
    「流石師匠……」
     透流が濡れたゼッケンを見下ろす。尊敬の眼差しで見る高明の視線は桜花の胸にいったままだった。
    「さあ、イルマさん、今年も楽しくバトりましょう!」
    「いいだろう、勝負だ!」
     紅緋は二挺拳銃を構え、イルマも片手に銃を持って駆け出す。
    「イルマか、交戦中のようだな、私も仲間に入れてもらおう!」
    「全力で勝負だ!」
     そこへヴァイスが現われ、三つ巴の戦いへと突入する。
    「……志賀野先輩……覚悟、なんだよ……!」
    「この勝負、私も楽しみだったんだ! 行くぞ!」
     樹里と友衛が向かい合う。樹里が駆け出し、友衛はそれを追う。
    「……障害物、なんて……幾らでも……敵は減って……私は、身を守れて……一石二鳥……」
     樹里は板や人を遮蔽物として使い、目くらましとして水風船を投げる。
    「そこだ!」
     友衛は飛び退いて避けながら、距離を取ってライフルを向ける。すると樹里が飛び込んできていた。
    「速い……だが!」
     友衛も迎え撃つべく前に出た。樹里と友衛が擦れ違う。すると互いの胸のゼッケンが破れていた。
    「……負けたやつが帰りアイス奢りな?」
    「わーいおごりー! どらごんとして蒼狐ちゃんには負けないよー!」
     十六夜の言葉にアストはやる気を見せてライフルを構えた。十六夜が二挺拳銃で牽制をし、じりじりと距離を縮める。負けじとアストも距離を保とうとする。
    「……なぁ、ところで、これなんだと思う?」
     十六夜は銃を投げ捨て、水風船を振りかぶる。
    「ばくだん……!?」
     アストは覚悟を決めて前に出る。水風船が胸に命中する。だがアストは既に目の前にまで迫っていて。
    「死なばもろともなんだよー!」
    「……おいおい嘘だろ……」
     びしょ濡れで楽しそうにくっつくアストを呆れたように見下ろし、十六夜は頭をぽんぽんと叩いてやった。

     南側に近い戦場で【宵空】の面子が2つに別れ戦い合う。
    (「ねえ、盾にするだけじゃなくて佐藤先輩も檮木も助けてくれるよね? 信じてるからな?」)
    (「小鳥遊の目線は前向きに検討したよ? 盾となり散れ!」)
    (「いいから早く行きなさい」)
     先頭を歩く葵の必死の目線に、司と櫂はうんうんと頷き、葵を狙う敵を待つ。
    「よーし頑張っちゃうぞ」
     七は目線で合図し、仲間内で他連合と組んで5E蓮の面子に襲い掛かる。
    「5E蓮から狙うか、リョーカイ」
     治胡は頷いてバズーカの銃口を向ける。
    「はっはっは! 5E蓮チームよ、華々しく散るがよい!」
     楽しそうに朔之助は水を撃ち込んだ。
     葵は必死に避けながら嵐と対面する。
    「許せ嵐、彼女と言えども容赦はしな……どうしよう視線が痛い」
     バズーカを向けた葵は引き金を引けずに引っ込む。
    「いっぺん派手に使ってみたかったんだ」
     反対に情け容赦なく嵐はバズーカをぶっ放した。そして追いかけようとして足を躓く。
    「大丈夫か」
    「あっ」
     転んだ嵐はそのままバズーカを撃ってしまう。
    「……参ったな、こりゃ」
     目の前では助け起こそうとした治胡がびしょ濡れになっていた。それを好機と司が嵐を狙う。
    「犠牲になってもらいましょ」
     それを待っていた七が水を撃ち込んだが、司は葵を盾にして逃れた。
    「チャンスだな!」
     朔之助がライフルを撃ちまくる。
    「盾にさせてもらうわ。大丈夫、貴方達の勇姿は忘れない」
    「はは……檮木お嬢様を犠牲にはできねーわな」
     後ろに回った櫂の堂々とした態度に、司は苦笑して前に出る。朔之助と相打ち、その背後から七が櫂を狙い撃った。
    「あー体動かすの楽しい!」
     七は満足そうに笑い、次の戦いの場へと向かった。
     【香坂家】のメンバーは連合に関係なく共闘を始める。
    「暑いですね」
     バズーカを手にした織久は真っ青な空を見上げた。
    「まぁ、結果はどうあれ楽しんで行こうか」
     颯は気楽そうにライフルを構えた。
    「兄ちゃんと織久先輩が居れば、オレは無敵だもんねー!」
     隣の翔は楽しそうに二挺拳銃を振り回す。
    「きゃー♪ 怖いですー」
     瑠璃花は楽しそうに駆け回る。
    「共闘も良いですね」
     瑛斗は淡々とライフルで近づく敵を撃ち払う。
    「ったく、裏切りが前提の共闘なんて怖い真似を良くやるよ」
     そう言いながらも透は不敵に笑みを浮かべて二挺拳銃を敵に向ける。
    「見つけましたわ」
    「来ましたね」
     ベリザリオが織久に向けて水を撃つと、織久は板に身を隠しながらバズーカを撃ち込んだ。
    「それで隠れたつもりですの?」
     ベリザリオは板の後ろに回り込む、だが同時に織久も移動をしていた。入れ違いになった所へ、織久は板の上へバズーカで雨を降らせた。
    「残念、やられてしまいましたわね」
     ベリザリオが濡れた髪をかき上げる。
    「この辺の敵は見掛けなくなったし、この先に追撃しようか」
    「わかった!」
     それは裏切りの符丁。颯が水風船を投げると、翔が空中で撃ち抜き水を拡散させる。
    「漸く動いたか。なら、ここからが勝負って訳だな!」
     透は瑛斗を盾にして水を防ごうとする。だが瑛斗の手には水風船が握られていた。
    「ただの盾なんて真っ平ごめんてすからね! 姉弟、一緒が良いんでしょう……?」
    「瑛斗!」
     水風船が割れ2人は水浸しとなった。
     織久は飛び退き弾を補給に向かう。
    「油断大敵……です♪」
     その背中を瑠璃花が撃ち抜いた。
    「これも勝負、仕方ないよね」
     颯と翔が残った瑠璃花を挟撃し、楽しそうに逃げる瑠璃花を撃ち倒した。

     【花園】の面々は戦場の片隅で戦い始めていた。
    「うちの薄い体に当てられるものなら当ててみぃっ……なんか涙がっ」
     自分で言いながら悲しい気持ちになったゆずは逆恨みで胸の大きな女子を狙う。
    「濡れないためには、隠れるのが一番、と伺います」
     板からエリカは飛び出して乱射しては隠れるといったゲリラ戦法を繰り広げる。
    「機動力で翻弄しましょー」
    「が……がんばり、ます……」
     悠花が囮になって駆け出し、おどおどしながらも水鳥がバズーカを構えて後を追う。
    「陰ながら動きましょうか」
     斬火は板から板へと隠れながら移動を繰り返す。
    「姫条セカイ、狙い撃たせていただきます」
     セカイは近づく敵にライフルで狙撃をお見舞いする。
    「こうなったら、生き残ったもの勝ちだよね」
     乱戦となりつつある戦場を華琳は逃げ回る。
    「へっへっへ。あたしが素直に戦うと思うてか」
     杏子は補給を狙ってライフルを構えた。
    「濡れ透けになるお覚悟はよろしくて?」
     りんごとタシュラフェルがバズーカの砲撃を叩き込むと、悠花が身を挺して水鳥を守る。
    「うふふ、おっぱいに服が貼り付いてえっちぃわねぇ♪」
     タシュラフェルは、楽しそうに濡れた体操服を観察した。
    「わたしの屍を越えて……征け……!」
    「仇を……討ちます……」
     ヤル気を見せた水鳥がバズーカを手に特攻する。
    「こーなりゃ、濡れ場諸共ーっ!」
     杏子も突撃し相討ちを狙う。
    「そう簡単にやられるわけにはいかんのだよ」
     追い詰められた華琳は水風船を投げ、周囲に水を撒き散らした。
    「……濡れてしまいました、透けてしまったでしょうか?」
     見下ろしてエリカは体操服を摘み上げた。
    「部長さん含め、おっきいおもちの人は多い…なら当てられないことはないんよっ!」
     ゆずは水風船を投げる。
    「ああっ、補給中に狙うのは卑怯ですよっ」
    「あぁっ、私の下着が透けちゃってる……」
     りんごがタシュラフェルを盾にして逃れると、濡れたタシュラフェルは恥ずかしそうに胸を隠しながらも、どこか楽しそうにしていた。
    「チャンスですね」
     セカイの補給時を斬火が銃撃する。
    「油断しましたね。長い髪にはこの様な使い方もあるのですよ!」
     同時にセカイは髪に隠していた水風船を叩きつけた。 
     セカイを撃ち抜きながらも、斬火も頭から水をかぶる。
     激しい身内のぶつかり合いの後、最後に立っていたのは自分の胸を見下ろすゆずだった。

    ●決着
     戦場で最後まで争っているのは1A梅、4D椿、5E蓮の3つ。
     残った者達が一斉にぶつかり合い、水が飛び交う。
     琥珀がライフルを向けると、殊亜が突っ込んでくる。そこへ錠も加わり琥珀が被弾すると、殊亜と錠が向き合う。互いに二挺拳銃。示し合わせたように一気に間合いを詰めると、飛び跳ね片方の銃で牽制し、必殺の一撃を胸元に突きつけた。

    ●勝者
    『優勝は5E蓮連合です! おめでとうございます!』
    「頑張ったよー!」
    『おおー!』
     相打ちの後、最後に残っていたのは様子を窺っていたルシアだった。連合の皆が一斉に腕を上げ喜ぶ。
    『MVPは4D椿連合の錠選手です!』
    「オシッ!」
     ガッツポーズをする錠をキルセの面々が笑顔で囲む。
    「なあ、何人仕留めたか数えてるヤツいるかー?」
    「しっかりカウントしていますよ」
     葉の言葉に由乃が手を上げる。一番少なかったのがエルメンガルトだった。
    「ふぅ、最下位だけは避けれたぜ」
     安堵して香艶が汗を拭う。
    「うう……でもアイス奢ってもらえるから……」
     エルメンガルトが由乃を見ると私は知りませんとばかりに視線を逸らされた。
    「ちょっ」
    「後で購買いこーぜ!」
     問い詰めようとするエルメンガルトを錠が掴まえ、何を奢ってもらおうかと笑みを浮かべた。
    「勝負はわたしの勝ちですね!」
    「むぅ、チームは勝ったのだがな……」
     紅緋が笑うとイルマは悔しそうに水で濡れた顔を袖で拭う。
    「やれやれ、私も随分と甘ちゃんだな。勝負に私情を挟むなんて」
     イルマへの流れ弾を防いで被弾したヴァイスが濡れた髪をかき上げた。
     強い日差しが地面を照らす。僅かな間の涼も終わり、まだまだ熱気立ち込める戦いが待っている。選手達は新たに気合を入れなおし、次の競技に向かうのだった。

    作者:天木一 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年5月31日
    難度:簡単
    参加:103人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 8
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