ソースとラード香る城! 富士宮焼きそば怪人の贈呈

    作者:森下映

    「で、では安土城怪人殿は、本当にこの城を私にくださると……!」
    「それだけではない。此処に並ぶ者たちも配下として自由に使うが良い」
    「?! これは富士宮焼きそばのペナント……! なんというお心遣い……」
     配下として贈られたペナント怪人たちの頭部にたなびく富士宮焼きそばの縫い取りを見ながら、焼きそばののった皿が頭部になっている怪人はぽたりと涙をこぼし、
    「この富士宮焼きそば怪人、この城と配下をもって、必ずや世界征服を実現してみせましょうぞ! まずは手始めに全ての焼きそばを、いや全ての麺類を富士宮焼きそばにすることから!」

    「小牧長久手の戦いで勝利した安土城怪人が、東海地方と近畿地方の制圧に乗り出したみたいだよ。そのうちの1人が、カナデさんが推理した富士宮焼きそば怪人だったんだ。カナデさん、ありがとう」
     須藤・まりん(高校生エクスブレイン・dn0003)は天城・カナデ(ローザフェローチェ・d27883)にぺこりと頭を下げると、説明を続けた。
    「安土城怪人は東海地方と近畿地方に城を作り、その地のご当地怪人を城主として傘下に加えているらしい」
     城という拠点を得たご当地怪人は、今まで以上に活発に世界征服に乗り出してくるのは間違いない。
    「みんなには城が完全に拠点化する前に、城主となった怪人を灼滅してほしいんだ」
     怪人たちと接触可能な時間帯は、18時から20時の間。夕食時ということもあって、怪人たちは3階建ての城の1階にある『富士宮焼きそばの間』で焼きそばを作って食べている。が、必ず4人の配下のうち1人は城の入り口の見張り、1人は城内の見回りをする、という決まりがある。
     配下は『城内の見回り→入り口の見張りと交代→入り口の見張りを終えた者が『富士宮焼きそばの間』に戻る→別の者が城内の見回りに出る』というスケジュールで動いているため、交代時には入り口に2人の配下がおり、城内を見回っている者はいないということになる。ちょうど18時、18時30分、19時、19時半が交代時間だ。
    「それから、一国一城の主となった富士宮焼きそば怪人は、ちょっとパワーアップしているようだよ。だけど城の中心、天守閣のてっぺんで翻っている『富士宮焼きそば怪人の旗』を引きずり降ろすことに成功すれば、怪人のパワーアップは無くなるんだ。みんななら正面から戦っても大丈夫だと思うけど、城に忍び込んで旗を引きずり落ろしてから戦えば、より有利に戦えることは確かだね」
     旗は3階をぐるりと取り囲んでいる外廊下から屋根によじのぼるなどしてとることができる。怪人が旗を立てる時に使用したはしごも3階の室内においてあり、使用可能。階段は入り口から城内に入って1階右側の廊下にあり、そのまま3階まで続いている。
     戦闘時、ペナント怪人たちは焼きそばのヘラで攻撃してきたり、材料を投げてきたりする。富士宮焼きそば怪人はさらにご当地ビームとシャウト相当のサイキックも使う。ポジションは富士宮焼きそば怪人がジャマー、ペナント怪人は基本クラッシャーだが、富士宮焼きそば怪人と一緒に戦う時にはペナント怪人は全員ディフェンダーになる。
    「城と配下をもらった富士宮焼きそば怪人は、安土城怪人にがっちりハートをつかまれていて、とても感謝しているから、いざ戦いが始まったら、安土城怪人のために一生懸命戦うと思う。安土城怪人の勢力をこれ以上拡大させないためにも、城を攻略して富士宮焼きそば怪人を灼滅してね! 頼んだよ!」


    参加者
    長谷川・邦彦(魔剣の管理者・d01287)
    高瀬・薙(星屑は金平糖・d04403)
    桐城・詠子(逆位置の正義・d08312)
    カリル・サイプレス(京都貴船のご当地少年・d17918)
    リアナ・ディミニ(不変のオラトリオ・d18549)
    響塚・落葉(祭囃子・d26561)
    天城・カナデ(ローザフェローチェ・d27883)
    静守・マロン(我シズナ様の従者也・d31456)

    ■リプレイ


    (「焼きそばでも焼きうどんでも良いけどよ、」)
     狼の姿で城影に潜んでいる天城・カナデ(ローザフェローチェ・d27883)。日は暮れ、城の入り口にはぽっかりと明かりが灯っている。
    (「折角尻尾掴んだんだ、逃がさないぜ!」)
     カナデの推理から発見された富士宮焼きそば怪人。自分の拳で打ち砕きたい思いは強い。
    (「富士宮焼きそばは濃ゆくて大好きであるが、他の麺類まで無くすのは見過ごせないである!」)
     静守・マロン(我シズナ様の従者也・d31456)は、首にはライトをかけ、携帯も装備。
    (「下手な野望を持った城主はここで成敗するである!」)
     一方、
    (「おー、雰囲気出てんじゃん」)
     物陰、わくわくしながら城を見上げているのは長谷川・邦彦(魔剣の管理者・d01287)。
    (「城攻めなんて機会はそうそうないからな。新たなうどんの探求の為に富士宮焼きそばも食いたいし。存分に楽しんでやるぜ!」)
     麺類全般好物な邦彦。携帯電話を持参、旗降ろし組との連携に備える。
    (「土地の所有者に許可も取らずなんて横暴な……」)
     同じく潜む、桐城・詠子(逆位置の正義・d08312)。
    (「所詮は砂の城だと思い知らせてやりましょう」)
     そして、リアナ・ディミニ(不変のオラトリオ・d18549)は、
    (「安土城怪人……これ以上あちらの好きにさせるわけにはいきませんね。そしていずれ『奴』を引き摺り出して見せます」)
     リアナが狙うは安土城怪人勢力にいるグレイズモンキーとの再戦――灼滅。
    (「その為にもこの城、落とさなければですね」)
     当然やる気は十分だ。
    (「浅学なもので富士宮焼きそばがどんな焼きそばか、実は存じ上げませんけど」)
     こちらは闇に紛れる夜色のコート、天藍夜幕に身を包んだ高瀬・薙(星屑は金平糖・d04403)。銀色の留め具が星のように光る。
    (「予想通り、すごく良い香りですね」)
     薙は、足止めついでに富士宮焼きそばについてあれこれきいてみるのも面白いかも、と考える。
    (「さすが富士宮焼きそば、良い匂いじゃ」)
     と、響塚・落葉(祭囃子・d26561)。
    (「美味そうなので見逃しても……とは思うが、やはり捨て置くわけには行かぬか」)
     そして時刻は19時半。入り口に交代の怪人がやってきた。
    「こんばんはなのです!」
     カリル・サイプレス(京都貴船のご当地少年・d17918)が、調理器具にコンロを抱え、怪人に呼びかけた。
    (「かってにお城を立てちゃうのはご近所めいわくせんばんなのです! 焼きそばはおいしいですが、怪人さんをほうってはおけないのですよー!」)
    「城主への献上品を届けに参りました!」
     心中隠し、足止めに入る。


    「献上品? 殊勝な心がけだが、城主様はお食事中である。明日出直して、」
    「こちらをご覧ください」
     カリルの隣に、リアナが紅しょうが、青のりなどの乗った盆を持って進みでた。
    「トッピング次第で焼きそばの美味しさは無限大に広がると思うのですが、どう使うべきかを伝授願えませんか?」
    「そう言われても……我たちは伝授する立場には在らず」
    「城主様におたずねすべきことであろう」
     怪人たちは面倒そうに答える。と、そこへ
    「おお……なんと格好良いぺなんとじゃ……!」
     目をキラキラと輝かせ、落葉が駆け寄った。
    「我も! 我も一つ欲しいのじゃ!」
    「ぐ、イタタ、ひっぱるでない! これはとることはできないのじゃ!」
    「そうか……それは残念じゃ……ぺなんとを探して気づけばここに迷い込んでおったのじゃが……」
     落葉は肩を落とす。が、すぐに顔を上げ、
    「こんなに格好よいぺなんとに出会えるとは、これはぺなんとのお導きじゃな……!」
    「そ、そうか? いや我もこのペナントは全国ペナントランキング暫定1位といっても過言ではないと……」
     落葉の憧れの視線に満更でもなさそうな怪人たち。その隙にカリルは調理を開始。美味しそうなイカやホタテを目立つように並べ、トッピングのための目玉焼きを焼き始めた。
    「ぬ! 何を勝手に、」
    「しかも良い匂いもする……!」
     ずい、と落葉がペナント怪人を遮る。その間に城の入り口へ近づくカナデとマロン。
    「ここはすごいの!」
    「ま、まあな」
     ちょろい。さらに、
    「ここは富士見焼そばのアトラクションだよな! 旨い焼きそばが食えると聞いたんだ! ぜひ食わせてくれ!」
     邦彦がやってきて、
    「私も、美味しそうな香りがするのでつい立ち寄ってしまいました」
     詠子が外向きの清楚な佇まいで微笑んだ。薙も、
    「おや、さっそく調理中ですか」
    「いやこれはだな」
     次々に現れる来訪者に怪人たちがまごつく間に、カナデとマロンは入り口から素早く侵入。右手の階段を見つけるなり一気に駆け登る。
    (「ふぁいとじゃよー!」)
     落葉は心の中で応援。場内の見回りがいない今、足音を立てないことに気をつければ、狼姿のカナデとマロンにとって最上階までは難しい道のりではない。
    「これはどうしたものか」
    「とにかく城主様にお知らせを」
    「焼きそばできたのです!」
     困惑中の怪人たちにカリルが言った。
    「それならますます城主様に」
    「私たちは皆様にも召し上がっていただきたいのです」
     リアナが言う。
    「確かに、城主が皆さんにまで分けるとは限らないですね」
     薙がさらっと口をはさんだ。戦力は減らしておきたい。落葉も、
    「格好よいぺなんとのお主たちが食べれなかったら我も悲しいのじゃ……」
     怪人は顔を見合わせ、
    「そ、そこまで言われては」
    「では、毒味ということで」
     一方城内では、3階に着いた2人がスレイヤーカードを解放、人間の姿に戻ったところ。
    「よし、俺は全力で旗に向かうな!」
    「うむ、連絡は任せるのである!」
     カナデは先に梯子を持って外廊下へ、マロンは携帯を鳴らす。
    「……ん?」
     着信に気づいた邦彦は、皆に軽く目配せ。
    「ひゃんら、ほうひは」
     口の中を焼きそばでいっぱいにした怪人が言った。そろそろ城内の怪人たちも見張りが戻らないことを怪しむ頃合いでもあり、
    「……騙してすまんの」
    「ん? ……グアッ!」
     落葉の放った意志を持つ帯の群れが、一斉に怪人を貫いた。身体はもちろん、ご自慢のペナントにも穴が開いている。
    「ぺなんとは……ちょっと置き場に困るのじゃ!」
    「な……なっ」
    「『祈り捧げろ、オラトリオ』」
     リアナがスレイヤーカードを解放。闇堕ち後にバッサリと切って肩上の長さになっていた髪が瞬く間に伸び、かつてのポニーテール姿になると同時、右手には長剣『紅鋼』、左手には薙刀『斬穿』が握られ、白を基調にしたワンピースの腰へはリボンを模した細く可憐な帯、Knight of raindropがスカートのように装備された。
    「焼きそばに祈りなんて、滑稽だけれど」
    「図ったな!」
    「今ごろ気づいたのですか!」
     主人の声に答えるように、怪人がリアナに振り上げたヘラの前には、カリルの霊犬、ヴァレンが飛び込む。リアナはヴァレンをふわり飛び越え、
    「貫き穿て!」
     螺旋の気とりまく斬穿を振り怪人を穿ち抜いた。
    「ギャアア!」
    「クソッ!」
     もう1人が焼けくそ気味にソースをまく。壁となるは盾役たち。既に薙の霊犬シフォン、詠子のライドキャリバー、ヴァンキッシュも参戦。城内へ駆けこもうとした怪人にシフォンがとびかかった。刀傷を負いつつも怪人は城内へかけこんだが深追いはせず。回復役の詠子もまずは攻める、と聖剣を抜き放つ。
    「騙しおって卑怯なっ」
    「ごちゃごちゃうるせえんだよッ!」 
     知らない人なら誰が言ったかと思うような台詞を吐いて、詠子が怪人を、非物質化した剣で勢い、断ち切った。
    「おらおらこんな抵抗じゃ簡単に突破しちまうぞ!」
    「何をッ!」
     邦彦の挑発に、自分も城内へと逃げかけた足を止めた怪人へは、カリルが思い切り縛霊手を振り下ろす。広がる霊力の網が怪人を包み込み、動きを鈍らせたところへ詠子がヴァンキッシュを向かわせ、怪人は大きくはね飛んだ。その間に薙は蝋燭に黒い炎を灯し、黒煙を広げて前衛を回復。さらに妨害能力をも高めていく。と、その時。
    「城主様、此奴らです!」
    「ほう」
     ペナント怪人3人と、富士宮焼きそば怪人が姿を現した。
    「私の城を攻めようとは無謀よのう」
     態度も尊大になっている模様。
    「さーて、無謀かねえ?」
     邦彦がウインクするように微笑むと、目元の黒子がふっと上がる。バベルブレイカーから真下に杭が撃ち込まれ、衝撃波にペナント怪人がまとめて腰を抜かす。
    「なんと情けない! ここはやはり私が、む?」
     巨大なヘラを取り出した焼きそば怪人が、怪訝な顔をする。
    「このヘラ、城主となって以来金色に輝いていたというのに、なぜ黒く……」
    「おまたせである!」
     霊石で作られた機械鎧、霊獣装甲に見を包んだマロンの背には旗を加えた狼姿のカナデ。
    「おかえりなさいなのです!」 
     カリルが手を振り、薙は華麗に空を切って宙返った2人を口笛で出迎える。
    「はっ、旗があああああ」
    「そらよっ!」
     着地寸前人型に戻ったカナデが、マロンの背から飛び降りながら、旗を地面へ叩きつけた。一斉に走り寄るペナント怪人。しかし、カナデは有形無形の畏れを瞬く間に呼び起こして拳に纏うと、
    「遅れて来た分、きっちり働かねぇとな!」
     向かってきたペナント怪人を軽いフットワークでかわし、上半身を柔らかく傾けた状態から長いリーチで殴りとばす。そこへバキイ! と響く音。マロンが旗の棒を踏み壊していた。
    「ああーーっ!」
    「次はテメェらがこうなるんだぜ? 俺らの拳でな」
     カナデの言葉通り、殴りとばされたペナント怪人――城前でずっと戦っていた1人がバタリ倒れ霧散する。マロンは旗を棒からはがすと、ぎゅっとたすきに背中へ縛った。隣にはビハインドのシズナも顕現。
    「とり返せええええええ」
     焼きそば怪人の声に、ペナント怪人は一斉にマロンへ攻撃をしかける。
    「我が主人シズナ様の御前ぞ! 者共控えおろう!」
     マロンが片腕を半獣化、鋭い銀爪を振りかぶったと同時、シズナが霊撃を放った。1人をマロンの爪が斬り裂き、1人が霊撃にふっとぶが、もう1人はソースをぶっかけた。
    「し、シズナ様になんてことをー!」
     マロンが思わず叫んだ。かばいに入ったヴァレンとシフォンの毛並みはぺったり、ヴァンキッシュも車体にソース。邦彦も見事にかぶっている。
    「あ、はい。すぐ浄化しますね」
     やや主人に手厳しいという噂のシフォンの視線に、薙は再び黒煙を流し、シフォンもそれを補助。詠子も様子をあえて後手で確認、傷と回復の様子で的確に手段を選択、縛霊手から邦彦へ癒しの光を飛ばす。
    「サンキュー。しかし気をつけねぇと、焼きそば怪人からのはこれより多いんだよな」
     邦彦が言った。パワーアップは消えたとはいえ油断はならない。
    「私の城は渡さぬ!」
     焼きそば怪人が吠えた。


    「貪り散らせ、ルサールカ」
     リアナの暗く、紫色に映る影業がペナント怪人を飲み込んだ。
    「頭数を減らしておきましょうか」
     薙がエアシューズで駆けると、
    「そいつ弱ってるぜ!」
     カナデがトラウマに翻弄される怪人を指す。
    「覚悟するのじゃ!」
     落葉も踏み切り、次々と重力を伴う蹴りが降り注いだ末、戦闘続き、2人になっていたペナント怪人がついに1人となる。残ったペナント怪人が投げた粉の前には、カリルが飛びこんだ。
    「うわっぷ、こなまみれなのです……」
    「回復します」
     詠子が聖剣から吹かせた風が、カリルのかぶった粉をふきとばし、他の仲間の傷も癒していく。さらにカリルも、カリル自身のように元気いっぱいの音をギターで奏で、回復を助けた。ヴァレンもほっとした面持ち。
    「お前もそろそろ消えとく頃じゃねぇの?」
     邦彦がペナント怪人を挑発する。
    「なにおおっ!」
    「そこをどけ! 私が相手をする!」
     焼きそば怪人がヘラを振り上げた。邦彦は拳にオーラをためて、待ち構える。
    「全ての麺類を富士宮焼きそばだと。せめてうどんも入れろ!」
    「じゃかあしいいいっ!」
     間合いに踏み込んできた邦彦に、意気揚々と怪人はヘラを振り下ろした。だが、そのヘラは邦彦の頬をかすめたのみ。邦彦の狙いはペナント怪人。大振りな腕の隙を抜き、邦彦はペナント怪人に痛烈な連打を喰らわせる。
    「お主らには旗ではなく、この止まれという標識がお似合いである!」
     そしてマロンが赤色標識で殴打。最後の1人も消え去った。邦彦の傷は駆け寄ったシフォンが癒し、
    「ここが年貢の納め時じゃっ!」
     と、落葉は手にしたロッドを、焼きそば怪人に向けるが早いか距離を詰めると、怪人の放ったビームをくぐりぬけ、ロッドで怪人を殴りつけた。続くはヴァンキッシュの突撃。跳ね飛ばされた怪人は、空中で注ぎ込まれていた落葉の魔力によって爆発を起こす。
     地面に叩きつけられ、欠けた頭部の皿から焼きそばがこぼれた。薙の放出した吸血鬼の魔力を宿した霧は、仲間を命知らずの戦士と変え、パワーアップもなく盾役もなく、妨害役の恩恵はあれど、怪人は追い詰められていく。
    「くっ、お前らは何故っ」
    「我輩達もお主達の勢力拡大は見過ごせないのである!」
     マロンが煌きの軌跡を引きながら、シズナとともに迫る。
    「我らの信念と吾輩の忠誠が、お主らの信念と忠誠を今越えていく!」
     シズナの毒の波動に翻弄される怪人を、マロンが蹴り潰した。その側へ葬奏邪音【ルサールカ】を足に纏わせ、立つリアナ。
    「この城の次は本陣を潰すとしましょう。位置はもう掴んでいますので」
    「ほ、本陣とは」
    「勿論、安土城怪人のです」
    「素晴らしき御心を持つ安土城怪人様のことじゃ……さぞやりっぱな城をお餅なのであろうな……」
     心酔しきっている様子の怪人。しかし城については単なる親切と思っており、安土城怪人側の情報も何も知らされていないようだ。
    (「考えてみる必要がありそうですね」) 
     リアナは影を纏わせた足で怪人を蹴り飛ばす。重ね、カリルの影も地を走り、刃となって怪人を斬り裂くが、怪人も最後の力を振り絞ってビームを放った。
    「チッ!」
     受けたのはカナデ。だがカナデは傷に怯むことなく、片腕を鬼のそれと変えて駆ける。
    「落ち着いて行けッ!」
     カナデに詠子の放った帯が巻き付き、血を止める。カナデは振り返り、
    「昨日の敵は今日の友ってな。感謝するぜ、桐城!」
     先日対戦した2人。カナデは正面から怪人へ腕を振り下ろし、対角では邦彦が、先祖代々伝承する『一寸法師』の柄に手をかけた。
    「御命頂戴する!」
    「ぐああああ!」
     叩き潰され、斬りつけられ。倒れ伏した怪人は、
    「む……無念じゃああ!」
     叫びとともに爆散した。
    「大将討ち取ったり!! なんてな」
     邦彦は刀を鞘に納め、
    「ちょっと城の中見物していけっかな?」
    「賛成じゃ! 焼きそばもあれば頂きたいのじゃ……」
     落葉が言う。主を失ってなお、城はソースとラードの香りと共に、そこに在った。

    作者:森下映 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年6月4日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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