うなぎ蠢く城! 三島うな重怪人の養殖

    作者:森下映

    「それでは安土城怪人殿は、此の城をわらわにくださると……」
     頭が重箱になっている怪人が、向かい合って座っている城に手足が生えたような姿の怪人に言った。重箱頭部の怪人は、薄手の着物にニョロニョロとうなぎを這わせている。
    「うむ。加えて此処にいる者たちも目的達成の為に役立てるがよい」
     此処にいる者たちとは4人のペナント怪人。全員奥女中風の着物を着ており、頭部のペナントにはうな重が描かれている。
    「ここまで尽くしていただいては、この三島うな重怪人、なんとしてもご期待に応えねばなりませぬな!」
     うな重怪人が、重箱の蓋をぱかりと開けた。中には特上と思しきうな重。湯気とタレの香りが立ちのぼる。
    「まずは東海地方のありとあらゆるプールを占拠してうなぎの養殖を始めまめることにいたしましょうぞ! そしてゆくゆくは世界征服を!」

    「小牧長久手の戦いで勝利した安土城怪人が、東海地方と近畿地方の制圧に乗り出したって話は、もうみんなきいている?」
     須藤・まりん(高校生エクスブレイン・dn0003)が言った。
     安土城怪人は、東海地方と近畿地方に城を作り、その地のご当地怪人を城主として傘下に加えているらしい。城という拠点を得たご当地怪人は、今まで以上に活発に世界征服に乗り出してくるのは間違いないだろう。
    「城を完全に拠点化する前に、みんなには城主となったご当地怪人を灼滅して欲しいんだけど」
     と、ここでまりんは那梨・蒼華(蒼氷之華・d19894)の方を見る。
    「その城主となったご当地怪人が、蒼華さんの推理してくれたうな重怪人だったんだ」
     接触可能な時間帯は20時から22時の間。その時間帯、三島うな重怪人と配下のペナント怪人1名は3階建ての城の1階にある怪人の部屋におり、配下1名は1ヶ所だけある入り口の見張り、配下2名は2階の調理室でうな重を作っている。
     1階は部屋をとりかこむように廊下があり、入り口を入って右手に階段がある。
     2階は全体が調理室になっており、階段は調理室内につづいている。調理室には大きめの窓があり、開いている。
     3階は全体がうなぎの養殖プールで、階段を上がると部屋の右隅の、1人が立つのがやっとな小さな足場に出るようになっている。
     ペナント怪人たちはタレや山椒を投げてきたり、シラスうなぎを服の中にいれてきたりする。三島うな重怪人はオトナのうなぎをいれてきたり、うな重の香りで催眠をかけてくる他、ご当地ビーム、キック相当、シャウト相当のサイキックも使う。
     配下のペナント怪人はそれぞれ着物の柄とポジションが違う。怪人の部屋にいる配下はディフェンダーで『矢絣』、入り口の見張りをしている配下はスナイパーで『格子縞』、調理をしている配下はクラッシャーで『霰小紋』と『角通し』だ。
    「一国一城の主となったご当地怪人は、ちょっとパワーアップしているようだから、その点には注意してね」
     が、城の中心で翻っている『三島うな重怪人の旗』を引きずり降ろせば、ご当地怪人のパワーアップはなくなる。
    「正面から戦ってもみんななら大丈夫だと思うけど、城に忍び込んで旗を引きずり落としてから戦えば、より有利に戦えると思うよ。ただ……」
     まりんは城の見取り図を指しながら、
    「旗を引きずりおろすには、最上階である3階から梯子を登る必要があるんだけど、その梯子がうなぎの養殖プールの真ん中にあるんだよ……」
     3階より上は、外からの侵入者を察知して、大きな網カゴが罠として次々降ってくる仕掛けがある。
    「みんなは大したケガはしないにしても、時間はロスしてしまうだろうね」
     ちなみに、2階までは外から近づいても罠は反応しない模様。
    「安土城怪人の人心掌握術はかなり高いレベルみたいだね。戦闘になったら、うな重怪人は安土城怪人のために一生懸命戦うと思う。これ以上安土城怪人の勢力を拡大させないためにも、城を攻略してうな重怪人を灼滅してきてね! 頼んだよ!」


    参加者
    龍海・光理(きんいろこねこ・d00500)
    リーグレット・ブランディーバ(ノーブルスカーレット・d07050)
    清流院・静音(ちびっこ残念忍者・d12721)
    黒芭・うらり(高校生ご当地ヒーロー・d15602)
    那梨・蒼華(蒼氷之華・d19894)
    端城・うさぎ(リンゲンブルーメ・d24346)
    加賀・琴(凶薙・d25034)
    宮儀・陽坐(餃子を愛する宮っ子・d30203)

    ■リプレイ


    「怪人に城など勿体ない」
     那梨・蒼華(蒼氷之華・d19894)が言った。うな重怪人の出現を推理、的中させた蒼華ではあったが、まさか城をもっているとまでは思わなかっただろう。
    「うな重怪人は、まぁいいです。ご当地怪人なら普通でしょう」
     隣を歩く、加賀・琴(凶薙・d25034)が言う。
    「でも、安土城怪人が幾らお城の怪人とはいえ、単純なものでも複数の城をこうも短期間に用意するというのは、流石に驚きましたよ」 
     と、琴は少し考えるような仕草をし、
    (「これが天海大僧正が危険視する安土城怪人の力の一旦なのでしょうか……いえ、今は此処の城主の灼滅に全力を尽くしましょう」)
    「そういや以前うなぎのプールの怪人と戦った事あるけど、あいつら気持ち悪かったな」
     戦闘用に華美な装飾を省いて仕立てられた礼装に身を包んだ、リーグレット・ブランディーバ(ノーブルスカーレット・d07050)が言った。
    「よくあんなうじゃうじゃしたのを見て平気でいられる。私には考えられんよ」
    「アナゴだったら同じ海に住む仲間だから、結構好きなんだけどな。まあでもマグロが一番だけどね!」
     と言ったのは、マグロをこよなく愛する黒芭・うらり(高校生ご当地ヒーロー・d15602)。ちなみにウナギは産卵する時のみ海へ下るそうだ。
    「昨今色々ありますし、養殖でも国産うなぎが増えるのはいいことなんでしょうが、流石にダークネスの行為は見過ごせませんね」
     琴が言う。
    「ところで陽坐さん、さっきから黙ってますけれど、大丈夫ですか?」
    「どうか、した?」
    「はっ、はいっ、えっとっ」
     龍海・光理(きんいろこねこ・d00500)と端城・うさぎ(リンゲンブルーメ・d24346)に両脇からたずねられ、どぎまぎする宮儀・陽坐(餃子を愛する宮っ子・d30203)。実は今回の依頼、怪人含め、年上女性に囲まれることとなり、困惑している陽坐なのだ。その上、そのことを兄貴分に相談したところ、
    (「『世話がやける弟・草食系』でいこう! って言われたけど……なにそれ……」)
    「あ、あのっ、」
    「ふむふむ、どうしたのでござるか?」
     陽坐よりも背が低く、一見年下にみえなくもなryがれっきとした年上女性の1人、清流院・静音(ちびっこ残念忍者・d12721)も、首周りのマフラー的なものをずり上げながらたずねる。陽坐は、
    「そのっ、……お腹、へっちゃった……」
     と、しょぼーん。
    (「世話がやける弟、草食系って、こ、こんな感じかな?」)
    「がんばって! あとで食べられるかもしれないよ!」
     うらりが応援。少なくとも弟系は成功しているのではないだろうか。
    「それで、作戦についてだが」
     続く道中、リーグレットが作戦の確認を提案した。
    「空飛ぶ箒で2階まで直接行ったほうが早いんじゃないかと思ったが……」
    「気づかれずに潜入、が問題でしょうか」
     琴が言う。廊下のある1階と違い、2階は全体が調理室。加えて窓からの侵入となると、動物変身による撹乱等の計画がなければ即戦闘となる可能性が高い。
    「1階から見張りをやり過ごして潜入、でいいんじゃないかな? 宮儀君のラジコンもあるし」
     うらりが言った。
    「ラジコンがダメなら俺、時間稼ぎの囮になります。道に迷っちゃった感じで話しかけたり、地図で視界を遮りながらうなぎや三島の話したり……着物の柄褒めたり」
     陽坐が言う。続きうらりは、
    「それに最悪の最悪は全員で見張り員を殴り倒して入ればいいかなって」
     戦闘開始のタイミングについては、旗を降ろす前に2階に奇襲をかけるという意見もあったが、概ね、見つかるまで、又は旗を降ろすまでは潜むということで一致した。


    「あら?」
     城の入り口。格子縞の着物をきたペナント怪人が、草むらでなにやら物音がしたことに気づいた。陽坐の用意したラジコンである。不審な音が続くため、怪人は入り口を離れ、確認に向かう。
    (「今のうちでござるな」)
     静音、そして猫変身した蒼華が先に城内へ入り、他の皆が続いた。入り口に格子縞が戻ってきた時には全員潜入に成功。蒼華と静音は慎重に2階へ進む。
     2階の調理室では、着物の上に割烹着をつけたペナント怪人が忙しそうにうな重を作っていた。まずは蒼華が音を立てないように素早く3階へ。静音も階段の影から様子を伺いつつ、怪人がこちらをみていない隙に先へ進む。
    「……何故にこうびっちりと詰まっている」
     3階の足場で猫変身を解いた蒼華が、プールを見下ろし呟いた。
    「ふーむ、養殖とはいえ、これだけウナギがいると……」
     静音も階段から覗き込む。過密養殖は問題も多いのだが、小さな城で、野望を果たすだけのうなぎを用意するには仕方がないのだろうか。
    「躊躇うと余計に入り難くなるな……ならば、覚悟を決めるか」
     蒼華はうなぎプールに足を突っ込んだ。
    「う」
     ぬるぬめっとした感触に蒼華の眉根が一瞬寄るが、ここは根性。ずぶずぶと進み、梯子をつかむ。静音も後に続き、2人で梯子を登り屋根へ向かった。
     一方その頃、
    (「はああ……うな重おいしそう」)
     ペナント怪人の目を盗みながら階段を上がり、3階へのルートを守るため、2階と3階の間に隠れている陽坐は、調理室から流れてくる匂いに頭の中がうな重でいっぱいになっていた。
    「これ、うな重怪人の催眠技きたらやばくないですか……おなか減った、」
    「しっ」
    「むぐ」 
     一緒に控えていたうらりが陽坐の口を塞ぐ。
    「では、うな重怪人様の元へお持ちしましょう」
     怪人たちは調理を終えたうな重を持って階下へ行く模様。と、その時。
     ――ガコン! 
     屋根に何かがぶつかったような音がした。
    「……どんな仕掛けだ、これは」
     蒼華が、操糸を手元へ戻しながら言う。わざと屋根の上に出た静音を狙い、屋根の下から振り上がるように飛んできた網カゴを、蒼華が編みこんだ鋼糸で屋根の上へ落としたのだった。
    「ともあれ急がなければな」
     蒼華が言う。静音も屋根の上に片手片膝をついた体勢から、
    「これくらいなら、ジャンプでかわせるでござるよ!」
    「頼む」
     蒼華が旗へ手を伸ばした。
    「侵入者か!」
     2階では、ペナント怪人が1人は3階へ、もう1人は伝達のためか1階へ向かおうとしていた。が、
    「させない! マグロビンタ!」
     3階へ上がろうとした霰小紋を、うらりが手甲から展開したシールドで殴りとばす。傍らには霊犬の黒潮号も姿を現している。
    「何奴!」
     霰小紋は怒りに燃え、手の上には大量のシラスうなぎ蠢く塊を浮かべた。霰しかし、猫変身を解いた琴がまとった天女の羽衣のごとき帯が、突如調理室を覆い尽くすように広がったが早いか、怪人たちを縛り上げる。
     さらに光理も猫の姿から、色とりどりの花びら模様が裾に舞う、空色のワンピース姿へ変身。敵の合流より先に確実に数を減らすことを考え、霰小紋に目標を定めると、蒼穹の色を映したかのようなサファイアが填め込まれた白銀の杖、ルベルスティアで殴りつけ、霰小紋の体内へ魔力を注ぎ込んだ。その隙に光理へ襲いかかろうとする角通し。が、
    「援護する、よ!」
     傍らに常に寄り添うスコティッシュフォールドは心強い戦友のたれみみ。うさぎが角通しを縛霊手で殴りつける。縛霊手から放たれた霊力の網と、たれみみの魔法が角通しの動きを鈍らせる間に光理が飛び抜け、状況を冷静に判断、赤い獅子紋の刻まれたリーグレットの長槍、Prouderが激しい螺旋を伴い、霰小紋を穿ち抜くと同時、光理の注ぎ込んでいた魔力も爆発。霰小紋は爆散した。
    「くっ!」
     角通しがタレをぶちまける。前衛は人数が多いこともあり、ずぶ濡れになったのは数名で済んだが、
    「ずぶ濡れ女子……みっ、見てませんからっ!」
     困惑する草食系弟男子陽坐。とはいえ攻撃はしっかりと命中率の高い方法を選び、インラインスケートの摩擦から、炎上がった蹴りを放つ。燃え上がり、焦げ落ちる角通しの着物。黒潮号が浄化に駆け、今度は角通しへの集中攻撃に皆が構えた途端、
    「何ぞ。騒がしいのう」
     予知同様、薄手の着物にうなぎを這わせた三島うな重怪人が、2人のペナント怪人とともに、階下から姿を現した。
    「うっ、うなぎ可愛……い……いや……えと……」
     陽坐少年、困惑しすぎである。
    「旗を守る罠も稼働しております。私は3階へ、」
    「ここは通さないでござるよ!」
    「一歩遅かったな」
     格子縞があがろうとした階段を、逆におりてきたのは蒼華と静音。静音のビハインド、影千代も側にいる。そしてもちろん2人の手には、
    「! それは我が城の旗!」
     うな重怪人は頭部の重箱を両手で抱えると、
    「先ほど急に特上であったはずのわらわのうな重が並になったのはその為だったか……!」
     自分の頭部だけにわかるものらしい。
    「おのれ、許さぬ!」
     うな重怪人の身体を這いまわっていたオトナのうなぎが、一斉に灼滅者へ襲いかかった。


    「そんなのは駄目、なの……!」
     オトナのうなぎが、かばいに入ったうさぎを襲い、たれみみが心配そうに周りを飛び回る。そして、
    「海産物だからぬるぬるしてるのは当たり前だけどっ! 服の中に入って来るのはダメェー!」
     ペナント怪人の放ったシラスうなぎが、うらりのナイスバディを這いまわっている様子。よくみれば手にしているマグロを模した巨大な槍、アルテマグロウェポンにまでシラスうなぎがウヨっており、軽くカオス。ちなみにシラスうなぎはリーグレットにも放たれたはずだったが、
    「浄化を頼む」
     と、リーグレットは優雅に回復役を振り返る。さすがは魔術名門ブランディーバ家の次期当主候補一位にして最高傑作と言われる女性、シラスうなぎ如きでは取り乱すに値せずか。
    「任せるでござるよ!」
     どこにいるのか物陰から静音の声がして、聖なる祝福の風がそよいできた。琴も浄化の風を吹かせ、黒潮号も眼力を駆使。間髪いれずにリーグレットは圧倒的魔力による火力を存分に使い、手のひらから炎の奔流を放ち、前衛の怪人たちを圧倒する。
     次いで蒼華が長剣の名をもつ聖剣を構え、白光を纏うと、角通しへ斬撃を放った。その前に何とか矢絣が立ちふさがり、斬撃を受け止める。続き、無事うなぎから解放されたうさぎと、それにほっとした様子のたれみみが、うな重怪人を狙うそぶりを見せた。
    「鬼さん、こちら……っ!」
     咄嗟にかばおうと動く矢絣。しかし、うさぎが詠唱で圧縮、胸元から飛び立たせた魔法の矢と、たれみみのぷにぷにの肉球を向けたパンチは、角通しへ命中。矢の圧縮が解けた瞬間、爆散した。こうなれば攻撃力と回復手段に勝る灼滅者は俄然優勢。戦いは進む。
    「ぐ」
     光理の向かわせた鮮やかな蒼い呪布、碧海冥布が一斉に矢絣を貫いた。機を狙い跳び上がったうらりへ、うな重怪人がまぶそうとした山椒は影千代が肩代わり。うらりは黒潮号に浄化をまかせ、そのまま蹴りの体勢に入る。
    「必殺! マグロダイブキィィィック!」
    「ギャアアア!」
     ご当地三崎港のパワーを込めたうらりの蹴りが炸裂。矢絣も消滅した。
    「くっ、こうなったら……」
     うな重怪人が頭の重箱の蓋を開ける。確かに良いかほりがするが、所詮は『並』。前衛に多人数を揃えていることもあり、催眠にかかった者は、
    「ホント……お腹減ってて……いい匂い……」
     いた。
    「え……? 好きな着物ですか……ええと……どれかと言ったら……格子縞が好みかなぁ……」
    「まあ」
     格子縞のペナントがうれしそうにはためく。
    「宮儀殿! しっかりするでござるよ!」
     またもどこにいるのか姿は見えないものの、静音の声に続いて、霊力の光が陽坐に届いた。はっ、と我に帰る陽坐。一転、キリリとうな重怪人へ突進。
    「失礼します!」
    「!? ぶっ、無礼な!」
     宇都宮餃子パワーで怪人を持ち上げ、地面にたたきつけた。
    「そういえば」
     足元に無数の影の小鬼を足元に呼び起こしつつ、琴は爆発でボロボロの姿のうな重怪人に近づく。
    「国際的なうなぎの稚魚取引規制に関する問題が起きていますけれど、それについてはどう思っているんです?」
    「っ、最も罰せられるべきは密漁。そして長期的な視野を持って、うなぎを守ることが大事じゃ!」
    「なるほど。あなたの意見はわかりました」
     琴はうな重怪人に頷きつつ、影の小鬼たちを格子縞へ向かって走らせた。逃げる格子縞。しかし蒼華も寄生体から作り出した強酸性の液体を飛ばす。
    「ア、熱ッ、」 
     着物ごと焼け溶ける格子縞に小鬼たちが喰らいつき、あっというまに食べつくしてしまった。
     残るはうな重怪人のみ。リーグレットが全身から噴出させた炎を煉獄の右腕ジャルダレオンへ宿して叩きつければ、うさぎは炎を纏った蹴りを放って、炎の勢いを増大させる。うらりのビームによって怪人の冷静さは失われ、たれみみと影千代を中心に盾役が攻撃を食いとめる中、畏れを纏った人狼ならではの陽坐の一撃、光理の十字剣、umbraが放つ、その漆黒の刀身とは正反対の白い光の斬撃と、怪人を次々に灼滅者たちの攻撃が襲う。
    「わ、わらわの使命はまだ……あっ!」
     うな重怪人の身体ががくりと傾いだ。死角に潜んでいた静音がその片脚の腱を断っていたのだ。重ね影千代の霊撃が怪人の胴体へ風穴を開け、
    「潔く灼滅されるが良い」
    「!」
     一瞬。蒼華の繰糸が、意志のままに怪人を切り刻む。
    「わ、わらわが倒れても……この城は……そして……」
     言葉半ば、倒れたうな重怪人は、消滅していった。
    「さて、プールのうなぎはどうするでござる? 拙者は料理が出来ぬゆえ、誰か作れるとよいでござるが」
     静音が言う。
    「住人が居なくなったらずっと放置だよね……それはいけない、ちゃんと食べ物に感謝しつつ食べないと!」
     うらりが言った。蒼華も、
    「放棄するには勿体無いな……学園に連絡して回収して貰うか。生徒の中には料理の上手な者もいるだろうし」
    「もしできるのであれば、いただきたいところでござるなぁ」
     静音が言い、
    「……低コストで食べ放題……」
     実は大食い、の蒼華の期待がちらりと覗く。そんな中、
    (「やっぱうな重食べたい……」)
     陽坐はふらふらと調理場をうろついていた。
    (「捌く技術はないけど、調理されてたらラッキー、」)
    「あったー!」
     あとはご飯にのせるだけ、の状態になっているうなぎを発見した陽坐は、うな重の前にまずは、と餃子の皮を取り出し、タレに山椒にご飯まで一緒に包み始める。全ての餃子を統べる餃子マスターになるという野望に加え、最近は餃子作りにも興味がある料理男子、陽坐。
    「皮に包めば何でも餃子になるし」
     うな重餃子。もしうな重怪人が生きていたら、気に入ったかも? しれない。

    作者:森下映 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年6月8日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 2/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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