Trap Beat

    作者:一縷野望

    ●バスセンター前駅  深夜
     バスセンターとは名ばかり、結構乗り場までの距離はあるこの駅、特に地下通路の道が充実。
     札幌駅前通地下歩行空間を通ればさっぽろ駅までてくてく行くのも可能。
     ……そんな駅が、ダンジョン化してしまうのももっともと言えるのか。
     徒歩でも行ける大通駅へ向けて、あり得ざる石畳へ塗り変わっていく床。
     室内に唐突に現われる紫色の曰くありげな川に、かかる吊り橋はゆーらゆら。
     意外と行き止まりは近そうか? いやいや、ではどうしてこの骨張った足が物々しい西洋武者がわらわら涌いて出てくるのか?
     はてさて、ここでは一体何が起るのやら……。
     
    ●トラップの宴
    「大丈夫、お前達なら生きて帰ってくると信じてる」
     灯道・標(中学生エクスブレイン・dn0085)は腕を組みうんうん頷く。酒場気取りで置いたのがペットボトルだから様にならない。
    「……あ、いや、マジでマジで。深刻な顔しないでよー」
     錠之内・琴弓(色無き芽吹き・d01730)に発見された深夜の札幌地下鉄のダンジョン化、今回もその件である。
     終電が終わった後、始発が出るまでの数時間の内緒のダンジョン化。被害は出ていない今の内に、さっくりと灼滅者の手で攻略してきて欲しい。
     今回のダンジョンは東西線のバスセンター駅 から 大通駅の間。深夜2時から攻略開始、タイムリミットは始発前の5時まで。
    「出てくるアンデッドは30体+ボス1体が確認されてるよ」
     奴らは1~3体でチームを組んでダンジョン内を徘徊している。
    「ボスはともかく、数の暴力使わないとキミ達と張り合えないぐらいの強さ。んで、だ」
     ぴ。
     標は人差し指を立てると瞳を細める。
    「それを補ってるつもりなのかさー、罠に掛かった灼滅者に襲いかかってくるパターンもあるっぽいよ」
     ゆらゆら吊り橋は恋の告白にも最適……ではなくて、如何にも落ちそうですねー?
     落とし穴。あー、足下は暗い霧っぽいのがでてるらしいよー?
     なんか壁がね、ごごごごーって押してくるんだよね。
     もちろんボタンは至る所にある。
     等々。
    「もし探索してて敵が全て見つからない場合は、敢えて罠に掛かる勇気が必要かもしれないね」
     幸いにも灼滅者を直接害するような罠はないので、掛かるコトで即座に探索失敗とはならない。
     とはいえ、掛かった先で不意打ちを受ける公算は高いので注意されたし。
    「発想と工夫次第で罠を逆手に取って優位に立つとか、そういうのもありかもね」
     ちなみに、アンデッドは妖の槍のサイキック。ボスはそれに加えてWOKシールドのも使用する。
     このダンジョンが自然現象なのかノーライフキングの実験かは判らない、しかし放置するわけにはいかない。
    「びっくり箱みたいに愉快げではあるけど、油断すると洒落にならないし……ま、気を付けて行ってきてよ」
     標はひらり手をふると皆を見送るのであった。


    参加者
    紫乃崎・謡(紫鬼・d02208)
    日野森・沙希(劫火の巫女・d03306)
    メルキューレ・ライルファーレン(春追いの死神人形・d05367)
    天神・緋弥香(月の瞬き・d21718)
    鷹成・志緒梨(高校生サウンドソルジャー・d21896)
    七篠・零(旅人・d23315)
    花衆・七音(デモンズソード・d23621)
    玉城・曜灯(紅風纏う子花・d29034)

    ■リプレイ

    ●手始めに罠の洗い出し
     一言で現すと、カオス。
     古風で豪華なお屋敷っぽい廊下の突き当たり、右に断崖絶壁、左は石造りの階段、とか。
    (「確かにアトラクションみたい」)
     玉城・曜灯(紅風纏う子花・d29034)は小さな欠伸を漏らす。
    「ね、眠気覚ましにガムいるー?」
     3メートル超えの棒で先をつつく鷹成・志緒梨(高校生サウンドソルジャー・d21896)からガムを受け取り、
    「ありがとう」
     更なるお礼は小休止の時に眠気醒ましのハーブティを振る舞うつもり。
    「それにしても嫌な時間指定ではあるわね」
    「瞼は重いですが……駅員さんを巻き込まないで済むのはありがたいですわ」
     かつん、かつ、つんつん。
     棒の手前を紫蘭月姫【緋】でさらうように探るのは、天神・緋弥香(月の瞬き・d21718)
    「リアルダンジョンアタック、まるでTRPGみたいなのですよー」
     罠を見落とさぬように日野森・沙希(劫火の巫女・d03306)は、腰に結わえた灯で行く先をしっかり照らす。
    「なんやうちウォーロックポジションか!」
     パーティ最後方でタイムキーパー、確かに花衆・七音(デモンズソード・d23621)の立ち位置は魔術師っぽい。
    「……誰や今モンスターポジションとか言うたの」
    「あれ、聞こえた? なんて」
     軽妙な口ぶりで笑う七篠・零(旅人・d23315)の瞳は、抜け目無く壁や天井へ向けられている。
     ドライアイスをぶちまけたような床に注意を惹きつけて、実は天井から……はよくある話。似た懸念抱く緋弥香も念入りに壁と天井をちょんちょん。
     ちなみにみんな、巻き込まれぬよう志緒梨からしっかり距離を取る。
    「不意打ち、隠し扉……なんでもありそうだよね」
     その中で紫乃崎・謡(紫鬼・d02208)はフォローを鑑み前方寄り。もちろん紫苑は抜け目無く周囲を捉えている。
    「あ、待ってください……花衆さん、現在地はここであっていますか?」
     メルキューレ・ライルファーレン(春追いの死神人形・d05367)の指さす箇所に目を懲らし七音はこくりと頷いた。
    「間違いないで」
     スーパーGPSで七音に見える印は、彼のさす箇所と一致している。
    「だとしたら罠があるかもしれません」
    「確かに不自然な空間があるわ」
    「……これは怪しいのです」
     ざっくりと記す曜灯の地図を覗き込む沙希も、うんうんとサイドの髪を揺らす。
    「隠し部屋とかがありそうなのです」
     ゲームなら定石と沙希が指さすのは、怪しさプンプンのつきあたり。
    「ふふ、離れた所で作動させれば危険なんて……ん? これフラグっぽいわね」
     正解。
    「音?」
     謡に頷き耳を澄ます零が聴覚を研ぎ澄ます。
    「……横、違う、下だ。志……」
     そう零が注意を喚起した直後、棒を伸ばして前のめりな彼女の立つ床がさくっとなくなった。
    「志緒梨さん!」
     顔色変えた謡が獣めいた速度で駆け寄った足下「大丈夫~」とへろりと響く。
     なんという悪運。棒が引っかかりぶら下がる志緒梨に、仲間は胸を撫で下ろす。
     階下では鎧が3体、背伸びして足裏をつつこうとしているの図。
    「良かった、ところで――罠って発動させた人の後方に発動するようなのもあるよね?」
     零さん、それもフラグや。
    「あ」
     す。
     目の前から姿を消した青年にメルキューレは瞳を細め、
    「地図を書くのを念頭に仕掛けるとは、思ったより知能犯ですね」
     刹那の吹雪の如く銀糸を翻しその穴へ飛び込んだ。その冷気は気配に留まらず、階下を極寒世界に変えて眠る場所違える骸を凍てつかせる。
    「残念だったね」
    『ね』は階下で。
     志緒梨引き上げ入れ替わるように落下した謡のつま先、奏でられた焔の火の粉が穴の中央で踊り、消滅。
     ――斯くして、最初の戦闘が幕をあける。

    ●あなたとわたしで回転小路
     冒険者、もとい灼滅者達は軽快なステップで敵を屠っていく。
    「その程度の攻撃しか出来なくって……」
     衛兵語るなど片腹痛い。
     向けられた穂先を月の綺羅で跳ね上げて、すかさず鎧の隙間に針を差し込んだ。
    『ッ……』
     緋弥香に仮初めの命を吸われた骸は、操り糸が切れたようにばらけ落ちた。
     灼滅者側の損傷軽微。
     このレベルの戦いがあと9回あるとしても、先手を取られすぎなければ恐るるに足らない。
     だからこそ、
    「できるだけ罠には掛からないようにしたいものですね」
     戒めのようにメルキューレ。実害あるお化け屋敷な有様に竦めた肩に埃を見つけ、優雅に払った。
    「いきなりやったなあ。まだ30分も経ってへんで」
     カウンターを3回ノックした七音が時計を見てそう知らせる。
    「残りは27体、数が多いからストレス解消にはよさそうね」
     確認するような曜灯に頷く一同は隊列を整え歩き出した。

     さらっと徘徊中の3チームを倒した所で、謡が怪訝そうに首を傾げる。
    「……あ、謡ちゃんも気付いた」
    「ああ、あの凹み」
     ――さっきも見たよね。
     コソコソとハモるの零と謡の視線は天井の削れた箇所に向いている。
    「確かに、あれは先程つついた箇所に似ていますわ」
    「なあ、地図のこっから対称になってへん?」
     緋弥香の後押しに七音はついっとメルキューレの地図をなぞる。
    「……確かに、反転するとそっくり同じです」
    「これは……ダンジョン王道の回転する床なのですっ」
     沙希がその場で後ろを向きくりっと瞳を瞬かせる。
    「だとしたら、次の曲がり角の奥……」
     曜灯の声皮切りに始まる相談は何処か悪巧みめいている。

    「すっかり怪しい物が出てこなくなったねえ」
     かっつんかっつん、
     志緒梨が派手に前方を叩き進む脇を抜け、足音忍ばせ先行する前衛達。
     どんがらがっしゃーん!
     そんな事も知らず、前方の壁を突き破って3体の鎧骸が飛び出してきた! さて、出会い頭に凍てつく世界。
    「くるとわかっていれば罠でもなんでもありませんね」
     そんなメルキューレの影から飛び出す灼滅者達は、1体に照準を絞り的確にダメージを重ねていく。
    「いらっしゃい♪」
     被弾が多い鎧の攻撃を出迎えたのは、とてもよい笑顔の零である。まずは敵の手首を掴み勢いを殺し、
    「そして、さようなら」
     でもって巨大な蝶のようにふわり翳した腕の祭壇を開き、殴る。
     ノックバックの鎧さんは背後に嫌な気配を感じたが、遅い!
    「隙だらけなのですよっ」
     タイミングばっちり!
     壁際身を屈め潜んでいた沙希は、巨腕の裏拳で後頭部をしこたま打ち返す。
     振り子のように前へ、頭を覆う鎧が外れ石畳に硬質な音が響き、消えた。割合けたたましい音だったが、沙希の手により音封じは施し済み。
    「回復必要ないし、思い切りいかせてもらうわ」
     ニヤニヤ笑いの魔の剣七音は、2体目を焔で包み込み唇をますます歪め傾がせる。
     あー、所謂一つの瞬殺ってやつですかね。

    ●漢探知はじまる
     ……怪しげなスペースからは概ね鎧がでてきた。
     ……地図はかなりカキカキと潰せた気がする。
    「残りの雑魚はあと2体ね」
    「うん、おうてる」
     曜灯と七音のやりとりに、なんとなーく黙り込む灼滅者達。
    「…………とうとうその時が来てしまったようですね」
     メルキューレの長い溜息に、謡は小さく口元を崩した。
    「幾らでも洗浄し放題。存分に罠に掛かると良いよ」
     さぁ! 漢らしく罠を踏みつぶす漢探知の時間ですよー?
    「……途中に吊り橋あったよね?」
     追い落すのにぴったりな奴がと思い出し呟く志緒梨に、皆ごくりと喉を鳴らす。
    「大丈夫、灼滅者は頑丈だから」
     手始めに行ってみようかと、何故謡は愉しそうなのか。

     ゆーらゆら。
     暗闇に一筋頼りなく揺れる縄の吊り橋。下が霧で煙っているのも手伝って、非常に不安を誘う。
    「どなたが渡るのかしら?」
     振り返った緋弥香は澄んだ声音でそう問うた。
    「あー俺が行くよ。女の子にそんな事させられないしね」
     ずずいと零が前に。
    「……そう言われると、私も行かないわけにいきませんね」
     汚れるのは嫌だけど、とメルキューレ。
     そんなわけで、2人の男子は覚悟を決めて吊り橋の上へ一歩二歩。
     かこん☆
     大方の予想通り底が抜けた、織り込み済みで踏みとどまる青年の頭上掠める影に沙希が瞳を見開いた。
    「あ、危ないのですよっ! 上に気を付け……」
     注意喚起に上を向けば、
     ぺちっ☆
     黒い手が「さっさと落ちとけ」と言わんばかりに穴へと叩き込んだぞー。
     ひゅるるるるぅううううぅぅぅぅぅ!
     ばっしゃーん!
     もわわん。
     納豆の如くネバネバした薔薇の香りな川に落ちれば、キノコが胞子を飛ばす如く謎物体が吹き上がる。ちなみに美味しそうな焼き肉臭――つまり、混ぜるな危険。
    「「…………」」
     沙希のお陰で備えていたから体勢はすぐに立て直せたんだ。
     しかし折れた心が立ち直る前に、流れるように左右から飛び出るは、2体の骸騎士。その切っ先が届く前に、
     ガゴッ!
     切りそろえた髪を靡かせ直滑降、矢のように突きだした曜灯の拳がこれでもかと突き刺さる。
    「雰囲気がソレッぽ過ぎて逆にゲームみたいね」
     ねぱしゃんっと着地、靴にねとつく水に眉を顰めた。
     べちこーん!
     もう1体は、志緒梨に鼻っ面をしこたま打たれて仰け反った。
    「怪我はない?」
     怒りに打ち震える鎧へ「カモーン♪」と掌を上にしくいくいっと誘い庇い立つのは志緒梨だ。
    「本当、手厚い歓迎に痛み入るよ」
     攻撃を二の腕で止めたのは割り入った謡。そのまま相手を抱え込み膝蹴りを入れる。
    『がぁっ!』
    「失礼! これでも手加減したのですが……」
    「攻撃させる暇なんて与えないのです」
     燃えさかる鎧に対して鈍い打撃音が、2。
     緋弥香と沙希のクラッシャーコンビの鬼の手が刮いだ金属鎧を、七音『な』剣が横一文字にかっさばく。
    「はやくも残り1体やで……て、2人ともどうもないか?」
     気遣いの眼差し受ける罠にかかった2人は、ゆうらりと立ち上がった。
    「大丈夫だよ。クリーニングがあるから、クリーニングがあるから」
     零、2度言った。
    「……安寧の眠りはないと思いなさい」
     メルキューレさん、ビロードのような上質な裾について離れないねばねばに氷点下な怒り頂点なり!

    ●罠迷宮の仕上げ時
     戦闘後、謡と曜灯の手によるクリーニング大会が開催される。
    「うう……落ちてない気がします」
     曜灯の華奢な指に叩いてもらい身も衣も綺麗になった……はずだが、メルキューレは未だ残る不快さに眉を顰めた。
    「ボスの前だし休憩しましょう?」
     顰められた眉も、曜灯の差し出すハーブティを前にほわりと緩む。
    「ありがとうございます。ふー……」
    「気ぃ効くなぁ、おおきに」
     ほっこり。
     メルキューレと七音のお礼に少女は水筒をゆすり「どういたしまして」
     和やかな空気の中、ボスへ向かう準備を誰ともなしに整えはじめる。
    「心霊手術は、ディフェンダーにまわる日野森さんどうぞ。私はドレインもしておりましたし」
    「お願いしますです」
     と、手当しようとする緋弥香を零が留める。
    「俺がするから、緋弥香ちゃんは……」
    「あ、私が手当するよー」
     しゅたっと手をあげた志緒梨も準備があるとの事で、手術同時に開始。
    「ボクは大丈夫だから」
     と、謡。
     そんなわけで10分後、今度は緋弥香から零へ。
     その間、地図の中央、四角くあいたスペース指さしあれやこれや。ここがボスゾーンなのは確定で、後は囲む壁をしらみつぶし。
    「ボタンがあったのは2……」
     ……かとん。
     地図を指さす曜灯の声が、止る。
     なんか音がしたとみんなが気づき交差する視線。
     ごごごごごごごこ……。
    「ちょ、この音!」
     志緒梨がびくんっと眉を引きつらせた。
     地響きたててやってくる、罠の花形巨大な鉄球がやってくる。
    「走ろうっ!」
     心霊手術完了まで待ってくれるなんて親切ですね! なーんて余裕なく、必死に疾走灼滅者。
     押されるように走れば見えてくるのはボスゾーン囲む壁。いらっしゃいませと観音開き。
    『ガァアアア!』
     出迎えるボスが剣と盾を振り上げて吠え猛りお出迎え。

    ●ようこそクライマックスへ
     ――さすがに迷宮のボスである、雑魚と違い初手からクリーンヒットとはいかない。
     しかし、ダンジョンアタックで苦楽を共にした彼らの前に、堅牢なる構えは崩されつつある。
     ガッ……!
     曜灯を狙った剣は零の肩を抉り石畳へめり込んだ。衝撃の大きさを語るように石畳に亀裂が入る。
    「ありがとう。ゲームも大詰めなのね」
     跳ねる子狐か羽ばたく蝙蝠か、身を躍らせて斜めから袈裟に蹴り掛かる曜灯。
    「どういたしまして」
     痙攣し鈍った所を影で縛り込み、零は更に戒めを強めた。
    「頑張る男子は、全力で応援するよ」
     腕を流せば志緒梨の指を飛び立つ符。それは生き物のように滑らかに零の傷を覆い消した。
    「そろそろ、仕掛け人出てこないかしら?」
     月で天井を掠める様に、半円描きそのまま屍へ差し込む。
    「ゾンビを倒すの飽きて来ましたわ」
     緋弥香の声音は、普段とはがらりと変り凜烈にして厳格。
    「本当に、こんなしょうもなくて悪趣味な罠を仕込んだ者の顔がみたいです」
     嘲笑う所を凍り付けにしたら腹が立ちそうか、だがメルキューレの極寒の攻撃は緩む事は、ない。
     延々氷を浴びせつけ、練り上げた魔力すら凍てつきの矢の形を取り、いくつもいくつも突き刺さる。
    「ザコも結構殴ってたけどな」
     でも、やはり足を止めてぶちかませるこの距離がよいと、七音は自分の躰が裂ける勢いで牙剥き嗤う。
     と同時に、滴り落ちる闇からぬるりでた真白の腕が抱える銃が、石畳を揺らし夥しい銃弾をばらまいた。
     しゅ。
     風が抜け、早廻しのように、左へ。
    「命は、もう途絶えてるんだ」
     奪うを厭う必要なしと、謡は膨張する腕で押さえ込むように殴り、下からの膝で頭を砕きにかかる。
    『ぐあぁあああ!』
     半分以上欠けた頭を引きはがした鎧がデタラメに剣振り上げた刹那、沙希が懐に滑り込んだ。
    「どんなゲームでも、ボスは倒されるためにいるのですよ」
     ひゅん。
     神の加護宿す杖の振りは最小限に、鳩尾に押し当て思う様魔力を流し込む。4度の痙攣、後にソレは役目を果たす力を失いかき消える。

     斯くして、仮初めの姿を現したタチの悪い迷宮は、現実に存在を刻む事赦されず儚く消え去るのであった。

    作者:一縷野望 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年6月5日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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