朝怒さんは朝顔を枯らしたくない

    作者:陵かなめ

    「また当番が水やりサボってる」
     碧華(あおか)はため息をついて、みずやりのじょうろを手に水道へ走った。
     クラスで育てている鉢植えの朝顔は、順番で回ってくる当番が水をやる事になっている。だが、休み時間に遊んでいたり面倒くさくなったりして、サボる生徒も少なからずいるのだ。
     水をやらなければ朝顔が枯れてしまう。
     綺麗な青や紫の花が開くのをたのしみにしている碧華は、当番がサボれば代わりに水をあげる事にしていた。
     けれども、どうにもやるせなくなるときもある。
    「どうしてみんなはサボるのかな? 朝顔のお花、たのしみじゃないのかな? 朝顔がかわいそうだよ」
     水をやりながら、碧華はある噂を思い出していた。
    「そうだった。朝顔を枯らしちゃうと、朝怒(あさおこ)さんがお仕置きをしに来るって、聞いたことがある。もしも、もしも朝怒さんがいるのなら、水やりをサボったお友達にお仕置きしてもらいたい! 今も、当番はグラウンドで鬼ごっこしてたよ。もし、朝怒さんがいるのなら……!」
     碧華は悲しみと怒りの光を宿し、グラウンドを見た。
     じょうろを握り締めていた手に朝顔の花が咲く。身体はつたに覆われて、碧華は朝怒さんと化していた。
     
    ●依頼
    「碧華ちゃんと言う小学生の女の子が、闇落ちしてタタリガミになろうとしているんだよ」
     千歳緑・太郎(中学生エクスブレイン・dn0146)が説明を始めた。
    「元々、朝顔を枯らすとお仕置きに現れる『朝怒さん』と言う都市伝説があったんだよ」
     それは、九葉・紫廉(ローエンド・d16186)も危惧していた都市伝説だ。
    「碧華ちゃんもその噂を聞いて、『朝怒さん』に水やり当番をサボった生徒にお仕置きして欲しいと願ったんだ。でも、その結果、碧華ちゃん自身が『朝怒さん』になっちゃったみたい」
     通常ならば、闇堕ちしたダークネスはすぐさまダークネスとしての意識を持ち、人間の意識は掻き消える。だが、碧華は元の人間としての意識を残しており、ダークネスにはなりきっていない。
    「もしもね、彼女が灼滅者の素質を持っているなら、闇堕ちから救い出してあげて欲しいんだ。もし、完全なダークネスになってしまうようなら、その前に灼滅してあげてね」
     そう言って、太郎は具体的な説明に入った。
     碧華と接触できるのは放課後の教室だ。
     『朝怒さん』となった直後に教室に踏み込むのがいいだろう。放っておくと、グラウンドで遊ぶ水やり当番の生徒を襲ってしまうようだ。
    「気をつけて欲しいのは、学校には水やり当番の生徒の他にも、一般の生徒も残っているんだよ。もし碧華ちゃんが一般人に危害を加えてしまったら、闇堕ちから救い出すのは難しくなるよ。そうなる前にどうか彼女を説得して欲しいんだ」
     彼女を闇堕ちから救う為には『戦闘してKO』する必要がある。戦いの最中、碧華の人間の心に呼びかける事で、戦闘力を下げる事ができるはずだ。
    「彼女は、もともとお花が大好きな優しい女の子だよ。呼びかけて、優しい心を思い出させてあげて欲しいんだ。もしお花が好きな人がいたら、彼女に共感する思いを伝えてもいいかもね。ただし、水やりをサボった生徒に共感するのは、やめてあげてね」
     戦いになれば、『朝怒さん』は朝顔のつるのようなもので攻撃してくる。
     教室には窓があるが、窓辺に朝顔の鉢が置いてあるので、『朝怒さん』は無理に窓から飛び降りる事は無い。戦闘は教室内で足りるだろう。
    「油断しなければ大丈夫だと思うけど、どうか頑張って。碧華ちゃんのこと、よろしくね」
     そう締めくくり、太郎は説明を終えた。


    参加者
    山城・竹緒(デイドリームワンダー・d00763)
    九葉・紫廉(ローエンド・d16186)
    石見・鈴莉(偽陽の炎・d18988)
    波崎・葉織(斬り狂い・d28232)
    ルチノーイ・プラチヴァタミヨト(トライエレメンタルドラグーン・d28514)
    クリスタ・ラヴィン(つのうさ・d31020)
    鳴海・利一(我楽苦多遊戯・d33493)
    皆城・朔夜(夜に咲く・d33838)

    ■リプレイ

    ●朝怒さんは怒っている
     放課後の校庭では、多くの子供が遊んでいた。
    「朝怒さんってのもすごい名前よねぇ。こっくりさんの親戚かしら」
     皆城・朔夜(夜に咲く・d33838)が校庭をきょろきょろと見回した。
     鉄棒やブランコなどの遊具で遊ぶ者、仲間とボールを追いかけ走り回る者、そして数名で集まってじゃれ合いながら話し込んでいる者。皆、楽しそうに放課後を満喫しているように見える。もっとも、この中には水やり当番をサボったものもいるのだけれど。
     灼滅者達はそんな子供達を横目に校舎へ足を進めた。
     廊下では途中何度か生徒とすれ違ったが、特に問題なくその教室の前までたどりつく事が出来た。
    「ここで碧華ちゃんにクラスメイトを傷つけさせる訳にはいかないもんね」
     そっと中の様子を窺っていた山城・竹緒(デイドリームワンダー・d00763)が仲間達を見る。
    「がんばってこ!」
    「ああ、絶対助けるぞ」
     ライドキャリバーのカゲロウを従え九葉・紫廉(ローエンド・d16186)が頷いた。
    「個人的には手を出しちゃう人だから気持ちもわかるなぁ……」
     波崎・葉織(斬り狂い・d28232)が手元でナイフをパタパタと動かし、再び教室の中の様子を探る。
     教室内では、小柄な女の子がじょうろを握り締め何かをぶつぶつと呟いていた。
     窓の外を見ているようで、教室の入り口に背を向けている。顔は見えないけれど、彼女こそ当番の代わりに水やりをしていた碧華に違いなかった。
    「もし、朝怒さんがいるのなら……!」
     ひときわ大きな声で碧華が言った。
     瞬間、彼女の手に朝顔の花が咲き、身体が朝顔のつるで覆われた。
    「行きましょうか」
     ルチノーイ・プラチヴァタミヨト(トライエレメンタルドラグーン・d28514)がそう言って教室の扉に手をかけた。
     各々武器を手に、灼滅者達は教室へ踏み込んだ。
     目に飛び込んできたのは、全身につたを纏い両手に朝顔の花を咲かせた『朝怒さん』だ。
    「一般人の犠牲を出すわけにはいかないからな」
     鳴海・利一(我楽苦多遊戯・d33493)は静かに怪談を語った。こうしておけば、この教室から一般人を遠ざける事ができるはずだ。
    「……だぁれ?」
     朝怒さんとなった碧華が首を傾げた。
     幼い顔は、半分以上つたに覆われている。
     灼滅者達は朝怒さんを取り囲むように素早く位置を取った。
    「朝顔を誰より想う碧華をタタリガミになんかにさせない」
     クリスタ・ラヴィン(つのうさ・d31020)が後ろ手で扉の鍵を閉める。
    「早く元の優しい彼女に戻してあげよ」
     そして、ダイダロスベルトの先を朝怒さんに向けた。
    「そうだよね」
     槍を構えた石見・鈴莉(偽陽の炎・d18988)も、別の扉の鍵を閉めた。傍にはウイングキャットのビャクダンの姿もある。
    「ほんとうに、だれなの? あなたたちも、朝顔を枯らすの?」
     朝怒さんは手にしていたじょうろをそっと朝顔の鉢の傍に置き、怒りの様な、それでいて哀しげな表情で灼滅者達を見た。

    ●朝怒さんは戸惑って
     じょうろを置いた朝怒さんに紫廉が優しく語りかけた。
    「俺は自分で花を育てたことは殆ど無いけど……それでも花を見てると穏やかな気持ちになる」
     彼女の背後には、まだ花を咲かせていない朝顔の鉢がある。しかし葉はぴんと張り、つるが元気良く伸びているのは分かる。もしこのまま水やりを続ければ、そのうち美しい花を咲かせるに違いない。
    「君は花が好きみたいだけど、花のどんな所が好きなんだ?」
     その花を見るのは、やはり嬉しいことだろうか。それとも楽しいことなのだろうか。
    「え?」
     どちらにせよ、問いかけることで穏やかな気持ちを思い出して欲しい。
     紫廉は言葉を続けた。
    「花を見てるとどういう気持ちになる?」
    「それは、わたしはお花がだいすき。お花をみているとわくわくするよ。でも……!」
     一瞬穏やかな表情を浮かべた朝怒さんは、話しているうちに険しい顔つきになった。
    「でも、みんなはわかってくれないとおもう。みんなは朝顔を枯らしてしまう! ゆるせない。にくい。どうして当番をさぼるの。朝怒さんは、怒っている……!」
    「まぁ確かにサボりは良くないよね、怒る気持ちも分かるよ」
     用心深く距離を取りながら葉織が頷いて見せた。
     すでにサウンドシャッターを発動させている。戦場内の音は、外部に漏れていないはずだ。万が一ということもあるし、他の一般の生徒をこの場所に近づけさせるわけには行かない。
    「男子ってこういうのやりたがらないよねー」
     うんうんと、鈴莉も深く同意を示す。
    「めっちゃわかるわ」
    「そう、なの。朝顔をみんなでそだてているのに、水やりをさぼる。それは、おかしいことだとおもう。それは、ゆるせないとおもう」
     朝怒さんはだんだんイライラして来たのか、つるがわさわさと動き始めた。今にも攻撃を繰り出してきそうな雰囲気にルチノーイがピコピコハンマーのような外見の武器を構えた。
    「まぁ、当番をサボるのはよくないしそれに対して怒るのもわかるのですけど」
     じりじりと場所を移動し、窓際に近づく。
     窓から突破されないようにとルチノーイは窓を背に戦うつもりだ。
    「お仕置きするのはなんか違うと思うですよ」
    「え?」
     朝怒さんが片腕を上げた。
    「だって、当番をさぼるのはよくない! 朝顔が枯れてしまう! こんなに綺麗に伸びたつるもだめになっちゃう!」
     そしてついに、彼女の体に纏っていたつるが右へ左へと大きく伸びる。はっきりとした戦いの意思を感じ取り、皆はとっさに地面を蹴った。
    「ほら、おこったつるがおいかけてくるよ。おこったつるはゆるさないよ」
     朝怒さんの語りに合わせる様に、つるが前衛の仲間に襲い掛かる。つるが執拗に絡み付き、ねっとりとした不快な毒を体にしみこませてくる。
     仲間が毒に侵されたのを見て利一が動いた。
    「任せたぞコッペリア、証人として碧華に道を示してやってくれ」
     愛を求めて悲劇を繰り返していた少女。けれど、彼女は理解者達に出会った。あいしていると語った彼女は、きっと救われた。
     利一が語った首狩り人形の言霊が仲間を浄化する。
    「ていうか、朝顔って季節いつなのよ? こんな時期だっけ?」
     見事に伸びるつるを眺めて朔夜が小首を傾げた。
     回復のサイキックを受けた仲間達は、すぐに走り出した。それならば心配ない。朔夜はライドキャリバーのケラヴノスを呼びひらりと飛び乗った。
    「さぁて、タタリガミ相手は初めてね。朔夜、行くわよ!」
     雷に変換した闘気を拳に宿し、強烈な拳撃を繰り出す。
    「当番を放り投げて遊ぶなんて……無責任ね」
     クリスタは帯を器用に操り朝怒さんに向かわせた。
    「そうだよ。みんなむせきにん! みんなゆるせない!」
     攻撃を気にしながらも、朝怒さんが声を上げる。
    「でも碧華がしようとしていることは、朝顔のためになるかしら?」
    「なに、それ? え?」
     クリスタのダイダロスベルトが正確に朝怒さんの体を貫いた。
    「気持ちはすっごくよくわかるけど、その悲しみを怒りにしちゃったらダメだよ」
     言いながら、竹緒が予言者の瞳を発動させる。
     碧華は本当は怒ってるんじゃなくて、みんなが朝顔を大事にしてくれないから悲しいのではないのか。
     その気持ちは良く分かる。けれども、本当にその気持ちをクラスメイトにぶつけても良いのか。
     クリスタや竹緒が言いたいことを感じたのだろうか。
     朝怒さんは一歩下がりうつむいた。

    ●朝怒さんは朝顔を枯らしたくない、けど
    「何事も適度がいいのですよ」
     言いながらルチノーイがフォースブレイクを叩き込む。
    「水をあげるもの適量じゃないと朝顔が枯れてしまうですよ?」
    「ちがう。朝怒さんは朝顔を枯らしたくない! 枯らさない!」
     朝怒さんが再び顔を上げた。
    「怒りにまかせてクラスメイトにおしおきなんてしたら、碧華ちゃんにお世話してもらった朝顔さんもきっと悲しむよ!」
     机や椅子をなるべく避けながら、竹緒が指輪を朝怒さんに向けた。
    「悲しむ……?」
     驚いたような表情を見せる彼女に、まっすぐ魔法弾を撃ち込む。
    「花は愛情を注ぐと綺麗に咲くって聞くけど、今の碧華じゃ折角の朝顔も萎んでしまうよ……」
     クリスタも魔法弾を撃ち出した。
    「そ、そんなこと! そんなこと!」
     必死に言葉を否定しようとする朝怒さん。
     彼女の葛藤を見ながらクリスタは思う。
     彼女は知っているのだろうか。朝顔は英語でMorning Gloryという。Morningは朝、Gloryは栄光や輝きという意味で、朝の光を浴びて、キラキラ輝く朝顔にピッタリじゃないかと。
     けれど、今はまだ、朝怒さんは……綺麗な花を見せてくれそうにない。
    「だって、だって、朝顔を枯らすのはよくない! 枯らしたくない!」
     今はまだ、朝怒さんは怒りに顔をゆがませている。
    「怒っていいんだよ、碧華さん。あなたは優しい人だからこそ、こういうことに怒るのは当然だよ」
     鈴莉が槍を構えた。
    「でもね、その怒りを、誰かに預けちゃあ駄目だと思うな。あくまで『あなたが怒ってる』んだ」
     語りかけるのは碧華に。
     そして、冷気のつららで朝怒さんを貫く。
    「朝怒さんなんかじゃあない」
    「あ、わ、わたしは……」
     氷の攻撃を受けながら、朝怒さんが周囲を見た。その表情には戸惑いが浮かんでいる。
    「それを忘れたら、あなたの優しさまで誰かのものになっちゃうよ」
     鈴莉は必死に訴えた。
    「あ、だって、だって、当番をさぼると朝顔が枯れちゃう。あ、朝顔が枯れるのは悲しい! 悲しいよ、朝怒さんは分かってくれる! 朝怒さんは朝顔を枯らしたくないっ!」
    「……その気持ちを、誰かに話したのか?」
     利一が問いかけた。
    「……。ううん。それは、話してない……」
     途端に彼女の口調がトーンダウンする。
    「同じ気持ちを抱えていた者や心を入れ替えてくれる者が居るかもしれない」
    「えっ?!」
    「襲うのではなく言葉で碧華の想いを伝えるんだ。『語り』にはその力がある」
     襲うのではなく伝えること。
     朝怒さん、いや、碧華は呆然とその言葉を聞いた。
    「一回落ち着いて考えてみなよ、今のその力で人に危害を加えたりしたら後で後悔をしない、そう言える自信はある?」
     動きの止まった碧華のつるを葉織が斬り裂く。斬れるのは嬉しいけれど、どうもこういう相手は斬り難いと感じた。
     とはいえ、放って置くのもなんだしと、葉織はナイフを動かしながらさらに言葉を重ねた。
    「私は、まず回りの人と話して気持ちを伝える事をおすすめするな」
    「……」
     体を刻まれながらも、碧華は沈黙する。明らかに、彼女は最初の勢いをなくしていた。
    「お友達やサボったヤツらを誘ったり、朝顔の素敵なところを教えたりした方が今後に繋がるんじゃない?」
     彼女が変り始めたことを感じ、クリスタも声をかける。
    「……君は朝顔の水やりが面倒って思ってる訳じゃなくて、サボりがいるのが嫌なんだよな」
     紫廉は碧華を見ながら、彼女と同じ年頃の妹を思い出す。そして、花が大好きな恋人のことも。
     絶対に助け出す。
     決意を新たに、語りかける。
    「ならいきなりお仕置きなんてするよりも、注意でもしてから『一緒にお花育てよう?』って誘いかけてみな」
    「いっしょに?」
    「可愛い女の子と一緒ってんならサボり連中もきっと頷いてくれるぜ!」
     碧華はその言葉を聞くなり顔を真っ赤にして俯いた。
     年相応の反応が返ってき始めたのだ。
    「俺なら喜んで水やりでも何でもするね!」
     明るい紫廉の声を聞きながら、碧華は花の咲いた手をもじもじとこすり合わせる。
    「あの、わたしは、……その」
     彼女が迷っている様子を見て、朔夜がケラヴノスを走らせその懐へ飛び込んでいった。
    「いいからさっさと戻ってらっしゃいな」
     伸びたつるを掴み、引きずるように投げ落とす。
    「アナタがいないと朝顔どうすんのよ」
     碧華は黙って攻撃を受けた。抵抗する素振りも、反撃の姿勢も見せない。
    「好きなんでしょ、朝顔」
     朔夜が問う。
    「……うん。好き」
     おずおずと、答えが返ってきた。

    ●朝怒さんの怒りは消えた
    「戻ってくるわね?」
     確認するように、朔夜が問う。
    「うん。わたし、戻りたい」
     碧華は完全に攻撃の意思を無くしていた。語りかけられた言葉を受け止め、しっかりとした表情で灼滅者達を見る。
     その姿を見て仲間達は次々と畳み掛けるように攻撃を繰り出した。回復や仲間を庇うことに回っていたサーヴァントたちも、最後の攻撃に加わる。
    「大丈夫。誰かに託したりしなくても、あなたの思いはきっと誰かに伝わるさ」
     鈴莉が最後に黒死斬を繰り出し、碧華はその場に崩れ落ちた。

     再び碧華が目を開けたとき、その姿は小さな少女に戻っていた。
     心配そうに覗き込む灼滅者達を見て、恥ずかしそうにはにかむ。
    「さて、じゃあサボり魔たちに注意しにいってきな。ちゃんと水やりしろこのやろー! ってな!」
     紫廉が明るく声をかけると、碧華はおずおずと頷いた。
    「うん。わたし、言ってみる」
     そうして立ち上がる。
    「言ってみる。言って、伝えて、そうだよね」
     確認するようにつぶやき、皆を見た。
    「あの……助けてくれて、ありがとう」
     碧華はすっきりとした笑顔で礼を言い、グラウンドへ駆け出した。

    「当番廃止用にスプリンクラーでも準備するです?」
     窓際に置かれた朝顔の鉢を見ながらルチノーイが言った。
    「ふふふ、どうかな? そういえば、碧華ちゃん、武蔵坂に転校することになるのかな。転校してもちゃんと育ててくれるように、クラスのみんなにお願いしたらどうかなって、勧めてみようかな」
     竹緒が柔らかな笑みを浮かべる。
    「朝から怒り顏の朝顔なんてまっぴら。出処はどうであれ、爽やかな朝を過ごしたいよ」
     クリスタは朝顔の鉢を眺めた。
    「そうよね、って、どうしたの? つまらなかったかしら?」
     話に頷いていた朔夜がふと葉織を見る。
    「いや、まぁ、斬れて満足だよ」
     葉織は小さく肩をすくめて見せた。
    「朝怒さんが使っていた話は元からあるものだろうか、聞いてみるか」
     窓の外に目をやると、碧華が鬼ごっこをしていた男子生徒に向かっていく姿が見えた。
     利一は彼女の姿を目で追いながらつぶやく。
     ともあれ、すでに怒りに満ちた朝怒さんの姿は無い。無事、碧華を救出し、灼滅者達は学園へ帰った。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年6月5日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 5
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