●謎の場所と謎の面々
ここは武蔵坂学園、某教室。
「やあ、皆は猫は好きかい?」
他の生徒達が集まるなり、その人物が問いかけた。
前置き無しの質問。戸惑う生徒達に、
「……あぁ、いきなり申し訳ない。この仮面で驚かせちゃったかな」
いや、そっちじゃないよ? 生徒達は思った。
問いの主は、純白の振袖姿で、純和風の装い。
ご本人も言ったとおり、龍の頭部を模した木製の仮面で顔を隠している。
その理由は、彼? 彼女? が魔人生徒会の一員だから。
魔人生徒会の正体は、謎に包まれていなければならないのだ……。
「実は最近、たくさんの野良猫が集まってる空き地を見つけてね」
その人物は、青い髪を揺らして、落ち着いた青年のように語る。少々低めの声色なのは、性別を隠すためか。
「それで、ここからが本題なんだけど……」
すっ、と人差し指が立てられた。
●魔人生徒会からのお知らせ
「『思うぞんぶん、猫と戯れよう』、か……」
いつの間にやら廊下に掲示されていたポスターを見て、初雪崎・杏(高校生エクスブレイン・dn0225)が呟いた。
魔人生徒会お手製のポスターには、愛らしい猫のイラストとともに、今回のイベントの詳細が書かれている。
魔人生徒会のメンバーによって見つけられた空き地。そこを訪れる野良猫は人に慣れている子が多いようで、気軽に触れ合えるらしい。それで、杏の呟きにつながるというわけだ。
野良猫、と一口に言っても、性格は様々。
気まぐれな子、臆病な子、人懐っこい子、空き地のボス……いずれにしても、楽しい癒しの時間になるはず。
「たくさんの猫が集まるなら、自分好みの子も見つかるだろうな」
出会った野良猫をモフるもよし、一緒に遊ぶもよし。
お気に入りの猫を写真に収めるのもいいだろうし、友達が猫と戯れる様子を眺めるだけでも、幸せな気持ちになれそうだ。
杏も、ぽわわわん、と想像を膨らませる。
「甘えん坊の子猫と一緒に日向ぼっこ……肉球ぷにぷに……これだ!」
たたっ、と参加表明に向かう杏。おっと、廊下は走ってはいけません。
ちなみにポスターの最後は、こんなフレーズで締めくくられていた。
『猫と一緒に、ほのぼのとした時間を、過ごしてみないかい?』
●にゃ
いつもの空き地は、猫だけの楽園。
しかし今日は、少し……いや、だいぶ? 賑やかだ。
「ここが……にゃんパラ……!」
『にゃ……!』
百舌鳥と、楓夏の禅が、並んでそわそわ。
「これ、どうぞ♪」
「楓夏ちゃん、ありがと……」
猫用に、と楓夏が差し出した鶏ささみで、百舌鳥も誘惑開始。
「きたきた……」
食いついたのは、おでぶの猫さん。百舌鳥と楓夏は一緒に、肉球チェック。
「「もふもふぷにぷに……」」
「同志よ、準備はいいか?」
「いざ……猫のパラディーゾへ!」
ラシェリールと真魔が猫に挑む!
「愛が苦しい……否、愛くるしい猫達だで……」
真魔は、お目当ての猫のベストショットを逃さない。
ラシェリールがのんびり屋の猫をもふもふする傍ら、相棒のロードは嫁猫探し中。その奮戦ぶりを真魔が撮影しながら、
「ロード写真集もあり……?」
「いいじゃないか……!」
「猫の楽園が学園の近くにあったんですね……」
ダンボールのそばで、ミリアは遊び盛りの猫をじゃらし始める。
「そういえば、ESP禁止とは言われてなかったな」
「はわ!」
杏の助言で、ミリアは猫に変身。これで猫ともっとお近づきになれるはず。
ニキータはビハインドのミロンと一緒。元気な猫に、毛糸玉をプレゼント。
「スマホ、便利」
毛糸玉と格闘する猫の姿を、ぱしゃり。
毛糸がボロボロになる頃には、猫写真でいっぱいだ。
「猫は神の生み出した癒しの極みですよ……」
律希は大人しい猫を膝に乗せ、写真をぱしゃり。
隣の正流もぱしゃり……。
「憂いヤツらよ……」
正流は猫じゃらし二刀流で、猫ぱーりーに夢中。その背に律希の怖い視線が、ぐさり。
「や、別にやましい事はありませんからね! そうだ! 一緒にごろ寝しましょう!」
「いい……ですけど」
正流の一番は律希。これはホント。
【花園】には、サーヴァントもいっぱい。
「かーこも遊んできな」
『にゃん!』
相棒を放した杏子は、アクティブな仔とアバンチュール。
「おし、ボールいくよー♪」
「にゃ!」
動きがいちいち可愛くて、杏子はたまらずモフ、モフ!
かーこは、悠花達の元へ。愛樹のシャロや野良猫と、猫じゃらしと格闘。
霊犬のコセイも加わって、悠花、たまりません!
「やーん、眼福もふもふパラダイス!」
サーヴァントやちび黒猫達に大人気なのは、人造灼滅者の姿を披露したゆず。しかし、
「ちょ、羽はっ、うち鳥じゃ……にゃ~!?」
遊ぶはずが遊ばれるゆずであった。
シャロを離したりんごの前には、ツンツン孤高猫。
「ほーら捕まえた♪」
「にゃっ!?」
隙を逃さず、りんごが撫でくり撫でくり。この猫がメロメロになるのも、時間の問題だ!
サーヴァント達に元気を貰った栞は、猫鍋を完成。
「じー……もふもふもふ……」
いつの間にか手が伸びて、気づけばブラッシングで美人猫に。
それを見つめていた猫を、抱き上げる愛樹。頬をすりすりすると、笑みがこぼれる。
「あなた、出遅れちゃったのかしら? ふふ……」
「……?」
「……べ、別ににやけてなんかいないしっ」
栞の視線に気づき、必死に誤魔化す愛樹だった。
●にゃにゃ
紫桜里は、甘えん坊な猫とすっかり仲良し。
モフモフぷにぷにされて、猫はうっとり嬉しそう。
「癒されます……ここは猫の楽園ですね」
そして桃源郷は、紫桜里の横にも。
友衛の周りは、人懐っこい猫達でいっぱい。その盛況ぶりは、友衛の体が猫で埋もれてしまうほど。
「ふわふわ……ぷにぷに……」
貴重なひと時を満喫する友衛だった。
りねが抱えた猫は、毛並みつやつや。とってもいい触り心地。
「かわいいネ! おれもあそんでイイ?」
「いいです……って、わわ、おにいさんの猫さん、重そうです」
ポンパドールは、りねと力を合わせて、デブ猫を持ち上げる。
ボールを転がすと、猫達は取り合うようにころころ。
ポンパドールのチャルも加わり、ころころころ。
矧は、ヤンチャな黒猫と遊びつつ、
「キミはどこかの誰かさんにそっくりですね」
「も~可愛いなぁ、たまんないなぁ♪」
矧の視線の先では、紗矢が子猫をすりすり。すると、相棒の獅音が寂しげ。
「よしよし、私が代わりにご主人になってもいいですよ?」
「し、獅音ちゃんはうちの子なんだからね!」
慌てて獅音をぎゅっとする紗矢に、微笑する矧だった。
草の上で頬杖を付くなを。目の前の黒猫をなでなで。
ふと気まぐれを起こしたか、なをの眼鏡を奪取!
「ふふ、後でちゃんと返してくれよな」
「なーご」
わかっているのかいないのか?
苦戦する芥汰と反対に、ビハインドのラナの前には猫だかり。芥汰お目当ての、美人の三毛猫まで。
「よろしければ……」
「にゃ」
ようやく触れられた肉球は、格別だった。
「ん、ネコさんネコさん」
猫の尻尾を、目で追う七葉。
一方藍花は、ビハインドばかり猫に好かれて寂しそう。すると七葉が、相棒のノエルを差し出す。
「皆で猫さんパラダイスにならないと、だね」
仲良くなった他の猫も交えて、戯れタイム。
「……天国はここにありました」
「2人もお気に入りの子、見つけられた?」
銀河の腕に抱かれるのは、七葉や藍花似の猫達。
そしてみんなで撮影会。銀河のテンションは上がりっぱなし。
「こんなパラダイスな光景、写真に残さない手は無いもんね!」
藍花の猫缶は、写真のお礼だ。
「怖くないですよー」
【あかいくま】の嘉月は、ゴムボールできまぐれ猫さんのお相手。
春陽は、その様子をぱしゃり。待ち受けにできそうな、ベストショット。
そんな春陽の足元には、甘えん坊な子猫さん。
「あ、杏さんだ。この子の肉球、めっちゃぷにぷによ!」
「本当か!」
ぱたたっ、と駆けてくる杏。肉球恐るべし。
「ねえ寺見部長、ボール貸してー」
「どうぞどうぞ。では僕は」
嘉月は猫に変わると、猫さんとじゃれ始めるのだった。
蒼と桜の遊び相手は、兄弟猫。
櫻が甘えん坊の茶トラにすりすりされる横で、蒼はのんびり屋のサバトラの肉球を堪能。
「ぷにぷに……です」
それを見ていた桜、茶トラに目で訴える。わたしも肉球触りたい……。
すると猫さん、ぽんっとお手のポーズ。桜と蒼が思わず声を合わせる。
「「……やっぱり、猫さんは、とっても可愛いのです……」」
●にゃにゃにゃ
空き地の隅に、行列ができていた。
紗雪のブラッシングの評判が、猫の口コミで広まったらしい。
「つ、次したげるから待っててね~っ♪ ……まっt……きゅぅ」
「おお、紗雪殿!」
膝の上、猫の背中を撫でつつ様子を眺めていた冥が、助けに入る。
「おねーちゃん、ありがとっ」
「なあに」
たまにはこういうのも悪くはない……微笑む冥だった。
ターゲットは、少しやんちゃな仔。
樹は、棒の先に羽がついたおもちゃで気を引いてみる。
溢れる好奇心で、拓馬のキラキラしたボールを見つめ、先にネズミのぬいぐるみが付いた玩具に猫パンチ。
ひとしきり遊び終え、樹がそっと撫でてみると、
「にゃ~」
「懐いてくれたのかしら?」
「みたいだねぇ」
身をゆだねる猫の姿に、樹と拓馬が微笑みあった。
「うちの神社にもよく遊びに来るけど、ここも中々すごいね」
迅は、念願の茶虎と触れ合いながら、空き地を見渡す。
すると、毛長の甘えん坊さんと一緒の真火が、
「迅さんの猫も、触って、いい、でしょうか……!」
「じゃ、この子と交代しようか」
が、それを見ていた真火のミシェルが、拗ねている。
「あ、浮気じゃない、から、ね……!」
なだめる真火の様子も、迅には楽しくて。
「いやはや、良い天気ですねぇ……」
「猫と遊ぶと言えばこれだよね」
【テーブルゲーム研究会】の流希と登が取り出したのは、煮干しと猫じゃらし。猫アイテムの金字塔!
「エンジュさんも猫じゃらし好きなのかな?」
「喜ぶと、思います」
なら、と登は、ルクリアのウイングキャットにもぴこぴこ。野良猫と競ってぺしぺしするエンジュに、ルクリアもほっこり。
「人用に魚型クッキーも持ってきましたので、皆さんもどうぞ……」
「可愛い、ですね」
流希のおすそ分けに、ルクリアは1枚、ぱくり。
「紅羽部長、そのクッキー貸してくれませんか?」
ダンボールの近くで待機中の良太だが、猫があまり潜ってくれないのだ。
「いいですよ……あっ」
「あっ」
ぱっ、と良太の手から猫が奪い、もぐもぐ。
これはこれで、シャッターチャンス?
一夜の膝にもお猫さん。おっとりのほほん、くっついて一緒にごろごろ。夢心地。
「ねえ、僕と一緒に歌ってくれる?」
「にゃ~」
一夜と猫さんのデュエットが、空き地に響く。
その歌声は、大人しい猫と昼寝していた奈暗の耳にも。
「そういやお前、昔世話になったヤツにちょい似てるな?」
「にゃ?」
なんでもねぇ、と言う奈暗に、猫が頬を寄せてくる。
同じように、蒼生も日陰でお昼寝。そばではウイングキャットの又臣さんや野良猫さんがごろん。ボールや猫じゃらしで遊び疲れた結果だ。
けれどそれは、心地よい疲れ。猫疲れ。
●にゃにゃにゃにゃ
エニエは、ボスと見込んだ三毛猫に、かつお節でご挨拶。
「にゃー……って、むほーー!!」
そいつはレアな三毛のオス! 肉球はんこを記念にペタン!
本当にボスか、もうそれどころではない。
【文月探偵倶楽部】の1人……マグロ着ぐるみのまぐろが襲われている。食欲旺盛な猫達から大好評なのだ。別に匂いはしないけど。
「うん、かわいいわね!」
まぐろが顔を上げると、白猫着ぐるみの空が、猫じゃらしをピコピコ。じゃれついてくれるのはいいけれど、
「って、そっちはボクのポニーテールですよー!?」
「わ、すっごい元気なのー♪」
陽桜にじゃれつく猫も、白ふわにゃんこ着ぐるみの尻尾に興味津々。
「ひおともっとあそぼ♪」
「うんうん、尻尾は便利なんだよー!」
トラネコ着ぐるみのテイルデバイスで、やんちゃ猫とじゃれあう毬衣。毛皮に顔をうずめて、もふもふ、くんくん。
「おひさまの匂いなんだよー……」
夢心地の毬衣を、陽桜がスマホでぱちり。ポニテを解放された空も、仲間の楽し気な風景を写真に収めていく。
「……どうしてこのクラブはこんなに猫着ぐるみ……あら」
微苦笑する桐香の視界に、輪から外れた子猫。寂しげな姿に、親近感。
桐花がそっと手を差し出すと、とことこ近寄ってきてくれる。
「ふふ……」
「桐香さんの猫、可愛いですねー。でも、この子も負けてないです」
「あらあら」
犬着ぐるみ姿の藍。その膝の上では、丸くなった子猫がうとうと。この可愛さの前では重さなんて、羽一枚より軽い。
それは藍だけでなく、御凛も同じ。
「あぁ、和むわねぇ」
マンチカンが、膝の上でごろごろ。ちょっと前までお高くとまっていたのが嘘のよう。御凛にすっかり気を許している。
そんな猫と人の蕩けた表情を、ミカエラが観察。
「にゃにゃー♪」
赤茶の子猫姿のミカエラは、ボス猫の横でのんびり。ぜんぜん息詰まらない攻防の末、勝ち得た場所だ。
人と猫、楽しげな声が響く中、3匹の猫が突撃してくる。
子猫に変身した歩と霊犬のぽち、そして変身歩そっくりの子猫だ。
「にゃにゃにゃんっ♪」
3匹同時に仲間へダイブ! もふもふふかふか、戯れる~。
猫まみれの風景を眺める、クロ猫着ぐるみの直哉。
「皆と一緒に遊んでくれて、ありがとな」
ボス猫にお礼して、直哉は煮干しを差し出す。
「に゛ゃにゃーにゃ」
「にゃーにゃー」
なんとなく、通じてる?
「楽園はここにあったんですよ」
「ナナシ、地に足付いてなくない?」
そわそわしっぱなしの詞水にエルメンガルトが釘差しつつ、ボス猫に煮干しを進呈。
「のんびり見てるのはちょっと楽しいな……」
「エル先輩っ」
「うわっ」
ふかふかっ。猫を乗せられたエルメンガルトが、びっくり。
くすりと笑う詞水の後ろでは、みけだまが猫達と走り回っていた。
「最終兵器またたびを用意しましたです!」
「今日は特に機嫌良さそうだなー」
フェリスを眺める紫廉の膝の上でも、猫が日向ぼっこの真っ最中。
けれど、フェリスが目を離した隙に、猫がまたたび袋をひっくり返す!
またたびまみれになった2人を目がけ、猫達、まっしぐら!
「も、もふもふですが動けませんですよーっ!?」
「でも何かすごい幸せ!」
そこは楽園、猫の国。
猫を愛する者の訪れを、いつでも待っている。
作者:七尾マサムネ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年6月6日
難度:簡単
参加:57人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 10/キャラが大事にされていた 4
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