まな板と葛藤

    作者:聖山葵

    「あかん、やっぱ会われへん」
     少女は一枚の手紙を前に頭を抱えていた。
    「あぁ、なんでうち、正直に白状せぇへんかったんや……この胸で会える訳ないやん、うーっ」
     前屈みになったせいで机に押しつけられ変形した自分の大きすぎる胸を見て少女は唸る。
    「みんなには会いたいし、あっちには戻りたい、せやかて、絶対言われるわ……『お前のどこがまな板なんだ』て……うぐ」
     ぼそりとこぼすと、もう一度自分の胸を見た少女は、次の瞬間。
    「どうしろって言うイターッ!」
     人型をした板状のご当地怪人に変貌したのだった。胸の部分だけ凸面を残したままの。



    「かって起伏のない自分の胸を自虐ネタにしていた少女が居た」
     出身県はヒノキのまな板の生産日本一、そんなご当地愛とセットで自らをまな板称していた少女が。
    「そして、この少女が闇堕ちしてダークネスになる事件が起ころうとしているのだよ」
     ただし、問題の少女はご当地怪人マナイーターへ変貌しつつも人の意識を残したまま一時踏みとどまるのだと座本・はるひ(大学生エクスブレイン・dn0088)は言う。
    「故に頼みたい、もし彼女が灼滅者の素質を持つのであれば闇堕ちからの救出を」
     また、全なダークネスになってしまうようであれば、その前に灼滅を。君達が呼ばれたのはそう言う理由からだった。
    「それで、少女の名だが、板壁・まな(いたかべ・まな)高校二年の女子生徒だ」
     元々は先の説明にあったように胸の起伏に乏しい少女だったらしい。
    「ただ、転校後、遅れていた発育が一気に来たらしくてな」
     胸が大きくなったことへの気恥ずかしさと、当時仲良くしていた女友達の反応が怖くなり、ご当地愛との板挟みになったことで闇堕ちしてしまうとのこと。
    「まさにまな板だけに……失礼した。実際に闇堕ちが起こるのは、まなの自室。君達がバベルの鎖に引っかかることなく、介入出来るのは闇堕ち直後となる」
     ちなみにこの時まなの両親は仕事に出かけており、来客の予定もない。
    「人避け不要、と言う訳だな。ちなみに時間帯も夕方で明かりも不要だ」
     こちらに都合の良いことにと続けたはるひは、黒板に歩み寄ると、チョークで四角を描き始める。
    「まなの自宅の間取りはおおよそこのような感じだ。まなの自室は庭に面しているのが解ると思う」
     そこで、君達には選択肢が二つある。
    「屋内で戦うか、理由をつけて庭に連れ出すか、だ」
     闇堕ちした一般人を救出するには、戦ってKOする必要がある、よって戦闘は避けられない。ただ、庭に連れ出せば部屋が被害に遭うことは避けられると言うことでもある、連れ出す理由を考えなくてはいけないが。
    「戦いになれば、まなはご当地怪人とWOKシールドのサイキックに似た攻撃で応戦してくる」
     この時人の意識へ呼びかけ、説得することがかなえば、ご当地怪人を弱体化させることも出来る。もっとも、試みるかは君達次第だが。
    「説得をするなら、闇堕ちの原因が葛藤にあることを踏まえて言葉を選ぶことを私は勧める」
     まなは友達の反応を恐れ、愛する故郷に戻りたくても戻れなかった、ならば不安を払拭するような言葉がかけられれば。
    「このまままなの友人達が遠方の友人を失ってしまうような結末は私も望まないのでね」
     大変だろうが宜しく頼むよとはるひは君達へ頭を下げたのだった。
     


    参加者
    館・美咲(四神纏身・d01118)
    海濱・明月(金髪爆乳明月ちゃん・d05545)
    皇樹・零桜奈(漆黒の天使・d08424)
    天槻・空斗(焔天狼君・d11814)
    崇田・悠里(旧日本海軍系ご当地ヒーロー・d18094)
    杠・狐狗狸子(銀の刃の背に乗って・d28066)
    夕凪・影子(夕暮れの合わせ鏡・d33072)
    リリィ・プラネット(その信念は鋼の如く・d33874)

    ■リプレイ

    ●板並べ
    「まな板仲間と思ったら、その真逆だったなんて……!」
     説明を受けても尚反芻せずには居られないのだろう。佇む館・美咲(四神纏身・d01118)の背後にはまな板をくわえた白い犬の姿。
    (「人型で出発すると言ったな? あれは嘘だ」)
     仲間の視線を受けると声には出さず犬の姿のままドヤ顔をしつつ、天槻・空斗(焔天狼君・d11814)は敷地内にまな板を敷き詰める作業を続けていた。
    (「うーん……何というか、言いにくい気持ちも判らなくはないですけど、大切な友達をそんな程度の事で嫌いになる訳ないのにって思うんですがねえ……」)
     続く作業を背景にして崇田・悠里(旧日本海軍系ご当地ヒーロー・d18094)が困惑気味にこれから闇堕ちするであろう少女の家を見つめ。
    「急におっきくなっちゃって戸惑ってるのかな……」
    (「以前、差し伸べた手は届かなかった。もう二度と、あのような事にはしない……!」)
     首を傾げた海濱・明月(金髪爆乳明月ちゃん・d05545)がポツリと漏らしたかと思えば、夕凪・影子(夕暮れの合わせ鏡・d33072)は助けられなかった人を思い浮かべながらぐっと拳を握りしめる。
    (「一般人が……闇堕ちして……救出するのは……初かな……?」)
     向ける思いは人それぞれ、一部に温度差を作り出しつつも、準備は進んでいた。影子の顔に感銘を受けたと言うよりも真剣さを感じ取った皇樹・零桜奈(漆黒の天使・d08424)は、視線を他の面々同様少女の家に向け。
    「しっかり……助けないとね……」
     とだけ口にして、スレイヤーカードを取り出し。
    「ソノ死ノ為ニ、対象ノ破壊ヲ是トスル」
     封印を解くと、念のために一般人除けの殺気を放つ。
    「うん。おっぱいは怖くないよ! それを教えてあげなきゃ!」
    「……あれ? まな板を助けるって依頼じゃ……ってか、そこの二人微妙に話がかみ合ってないわよね?」
     主旨が変わりつつあることにか、話を聞いていた杠・狐狗狸子(銀の刃の背に乗って・d28066)はすかさずツッコみ。
    「大丈夫だ。きっと、いつか分かり合える日は来る」
    「私はツッコミ役じゃないんだけどなぁ」
     そんな自身の肩にポンと手を置いて頷くフルフェイスヘルメットを被ったリリィ・プラネット(その信念は鋼の如く・d33874)をちらりと見てから思わず遠い目をする。
    「……くっ。と、ともあれ、準備は終わりましたし、そろそろこちらも動きましょう」
     リリィの胸を見て歯噛みした美咲がそんな狐狗狸子を促したのは、夕日に自分のおでこが輝くのを誤魔化す為ではなく、家の中からの声を耳にしたから。
    「闇堕ちか」
    「ええ。正確にはその前触れだと思いますが」
     察した誰かの声に頷き、近寄る先は声が漏れてきた部屋の窓辺。
    「どうしろって言うイターッ!」
    「こっちに本物のまな板があるわ……まな板が用意する、伝説のまな板の名を冠する、真のまな板がね」
    「だ、誰イタ? えっ、真のまな板?!」
     接触は、部屋の中の少女が板状のご当地怪人に変貌した直後だった。

    ●誘引
    「見給え、このCHIFFONというまな板は実在の人物をもとにして作られたそうだよ。あまりのフラットさに、興味があるんじゃないかい?」
     言葉の後を継いで説明し出したのは、狐狗狸子と同様にCHIFFONを手に持つ影子だった。
    「まな板で誘き出そう」
     と言う大まかな方針のもと二人は特定のまな板一つを前面に押し出した。
    「CHIFFON……イタ」
     じっとまな板を見つめるまな板怪人。
    「私、華麗に参上!」
     影子の後ろでポーズを決める、リリィ。
    「ってかあんたは付いてるじゃない何被せてんのよ……!」
     唐突に激昂して影子の後ろに回り込み、むんずと胸を鷲掴みにする狐狗狸子。
    「……っ、く! 何、をっ……! やめ、ないか……!」
    「な……そん、な」
    「……結局何がしたいイタ」
     揉みしだかれ悶える者と揉んでその意外なほどの質感に打ちのめされる者、両者を見て、ご当地怪人はとりあえずツッコんだ。
    「こんばんは、これで新しいまな板を作りませんか?」
     とりあえず、直接的なフォローのしようもなかった美咲は、発生した事案とカオスから敢えて目を背けつつ提案する。
    「えーと……もう夕方イタ?」
    「あ」
     返ってきたのは、割と常識的な言葉であった。
    「屋外の作業にはあんまり向いていないタ。『まな板ならもうそこにあるイタ』とか初対面の人に言う訳にもいかへんイタ」
    「後半、全く要りませんよね?」
    「あ、ごめんイタ……つい、昔の癖で考えてしまうイタ」
     さりげなく精神攻撃してくるところは、流石ダークネスと言うべきか。
    「けど、明かりを持ち出せば何とかなるイタ、よっしゃ、まな板と言われたらつれない返事はできイタ」
    「あの、大量のまな板を庭に持ってきてるので、まな板の整備の仕方を教えてくれませんか?」
     お詫びも兼ねてと外に出る気になったらしいご当地怪人へ悠里も希望を口にし。
    「まあこの際、一人も二人も同じ事イタ。手入れも制作のついでにすれば良いイタ。ええイタ……ん?」
     開けはなった窓からひらりと外に身を躍らせた元少女、ことご当地怪人マナイーターは着地するなり周囲を見回して言った。
    「おたくらどちら様イタ?」
     と。
    「私が誰かと聞いたかっ!」
    「聞いたと言うか、ただ誰何の声をかけられただけじゃね?」
     特定の個人ではなく一同にかけられたという意味で。まな板を並べ終えた後日陰で休んでいた空斗は、ご当地怪人の前に進み出たリリィを一瞥して指摘し。
    「あ、そこ手元に気をつけるイタ」
    「はい」
     アクシデントやらカオスやらがあったものの、名乗り終えれば待っていたのは平和な作業の時間だった。提案に沿う形で始まったまた板作りを監督するご当地怪人を見て、リリィは首を傾げた。
    「君は自虐ネタでしか友情が無かったと思っているのかな?」
    「な、いきなり何言うイタ?」
     唐突な言葉に仰け反るまな板怪人だが、それは始まりに過ぎない。
    「まな板好きで貧乳ってネタが使えない……ってのが悩みで、そっから友達に会いづらい、ってなっちゃったんだよね」
    「ま、まぁ、当たらずしも遠からずってとこやイタ……って、うち話したんイタか?」
     明月の確認頷きかけつつも、はっとを上げる。
    「大丈夫! これからは『まな板だけど巨乳』って新しい芸風で行けばいいんだよ!」
    「そうか、その手が! ……や、のうてイタ?」
    「では、今までは平面を生かした芸でしたが今度は立体を生かした芸、すなわち「まな板スタンド」となりまな板を身をもって支える、とかどうでしょう?」
     はたと膝を打ちかけて我に返り、ジト目を向けようとすれば、今度は美咲がアイデアを提供し。
    「『まな板スタンド』イタ?」
    「ええ、わたしには絶対出来ない芸ですが。ええ。…………くっ」
     振り返る元少女の前で最終的に俯いて呻く。ようやく説得に移ったかと思いきや、待っていたのはやはり混沌だったのだ。

    ●諭し戦い
    「あかん、完全に回りのペースにのせられとるイタ」
     ご当地怪人からすれば一部だが、問題はそこにない。
    「いいかい、変わってしまったものはしょうがない。むしろそれも笑い話にしてしまえばいいじゃないか」
    「おっぱいが小さくていじけちゃう人だって多いのに、それをむしろ皆を楽しませるネタにできる、そんな明るいまなさんが好きだったんだと思うんだ。そんなまなさんが『新しいネタをひっさげて帰ってきた!』ってなればむしろ今まで以上に楽しんでくれるはずだよ!」
    「え?」
     振り回された結果、不意に話しかけられる隙を作ってしまったことにあった。
    「急に成長した胸についていじられるかもしれませんが、友達が離れるなんてことはないと思いますよ。私なら秘訣を聞きます。絶対聞きます」
    「体の成長は……人それぞれだし……少なくとも……まなの……友達は……まなを……嫌ったりしないと……思う……」
     振り返り固まってしまった元少女が、反論する間もない。最後の部分にやたら力を入れつつ美咲が断言すれば、じっともと少女を見たまま、零桜奈も仲間の言葉を肯定する。
    「そ、そんなん」
     ありえへん、と断言出来るなら、人の意識などおそらくは残っていなかっただろう。
    「うちも学園ではうちの年代でも胸が大きい子ばっかりだったり、再会した従妹の子がそれなりに胸がある状態でショックだった事が有りますけど、そんな事で大切な人を嫌ったりはしません!」
     そして、動揺したところに悠里が突きつけたのは、元少女が気にする友人に近い立ち位置からの否定。
    「そ、そんな事イタ?」
    「友達だってさ、まな板で貧乳ネタが見たいだけでまなさんと付き合ってたわけじゃないとおもうよ?」
    「其れに軽く嘘をつかれた程度で友達を嫌える訳ないじゃないですか」
     愕然とするご当地怪人へ言葉は次々と投げかけられ。
    「どんなに姿や見た目が変わろうが、大きくなろうが君はキミだ。そして友達は友達だ、簡単に友情は壊れない」
    「仲がいいなら……なおさら……正直に……話せば……すぐに……また……仲良くなれると……思うよ……」
    「う、く……」
     葛藤を打ち砕き、背を押す言葉であったからこそ、マナイーターは反論出来ず、言葉に詰まった。
    「……思い出しなさい。さっきの哀れな姿を」
     故に、ある意味で、満を持してだろうか。
    「私はあなたよ。軽い気持ちでまな板を名乗り、ガチで育たなければ、こうなっていた」
     仲間の胸を揉み、項垂れた自分の姿を思い出せと言ってのけた、狐狗狸子は言葉を続ける。
    「揺らして歩け。胸を張れ。あんたには、立派な胸がついてるじゃないか」
     そして、明月も言った。
    「あたしとどっちがおっきいかな? ちょっと比べてみよっか?」
     胸を突き出して近づきながら。
    「う」
     気圧されたご当地怪人は一歩退き。
    「目覚めろ。疾く翔ける狼の牙よ。吼えろ、焔天狼牙」
     傍観していた空斗がスレイヤーカードの封印を解く。現状が少女のダークネスにとって好ましくない状況であることは一目瞭然だったから。
    「喧しいイターッ! な」
     暴発は、物理的排除すべくマナイーターが唐突に繰り出した一撃は、空振った。
    「見え見えなんじゃねーの?」
    「しまっ」
     大振りに身体を半ば持って行かれた所へ肉迫した空斗は炎を宿した殲術道具の刀身を板状の身体へと振り下ろす。
    「イタァァァァッ、ベッ」
     叩き付ける一撃と共に噴き出す炎が表面を焼き、倒れ込もうとするところへ突き立ったのは、悠里の飛ばした氷柱と零桜奈が射出した帯。
    「ヒイタァッ」
     弱体化が響いているのかいきなり連係攻撃を叩き込まれたご当地怪人は、地面伏したところを突撃してきたライドキャリバーのユニヴァースに轢かれ。
    「くっ」
    「悪いけど」
     タイヤ痕の残る身体を起こした時、知覚したのは、狐狗狸子の声。
    「い、いつの間」
    「容赦はしないわよ」
     標的が跳ね飛ばされた時、ユニヴァースを踏み台に死角へ飛び込んでいた育たざる者は、育ちたる者へと凶刃を振るう。
    「きゃあああっ」
    「ニャアッ」
    「へぶっ」
     刃が狙う先を胸以外にしたのは、コンプレックス刺激しそうだから意外に理由はなく、刻まれたまな板怪人を更にウィングキャットのニャーレイによる肉球パンチが襲った。
    「ぐっ、ま、まだイタ」
     それでも膝を着くに留まったのは、ご当地怪人としての意地か。
    「この程」
    「悪いがね、今度は絶対に助けたいんだ」
     ただ、立ち上がるより囁きが聞き取れる程近くに影子へ踏み込まれる方が早く。
    「イタバッ」
     腹部に炎を纏った蹴りを脇腹へビハインドのドッペルゲンガーが放つ霊撃をほぼ同時に叩き込まれたご当地怪人は再び倒れ伏す。
    「ぐ、ぎぎ」
    「明月の胸でおやすみなさ~い♪」
     一方的だった、フルボッコだった。呻きつつ尚も身を起こそうとするまな板怪人の耳に聞こえる伝説の歌姫を思わせる歌声さえ、攻撃であった。
    「う、く……まだイタ」
     だが、元少女は立ち上がる。
    「成る程、そう簡単には折れないと言うことか、まな板だけに。だが、友情もまた不変なものだよ」
     フルフェイスの奥から見届けたリリィはクルセイドソードを手に語ると振り返る。
    「行こう」
     仲間へ向けた声は攻撃の再開を促すもの。
    「はぁっ」
     最初に放たれたのは、白光と斬撃。
    「おおおおっ、イターッ!」
     いくつもの傷を作った人型まな板が迎え打ち。
    「気魄だけは立派だけどな」
    「隙だらけなのよね」
    「イタっ」
     複数方向からしかけられた斬撃や蹴りにご当地怪人は刻まれ新たな傷を作る。
    「会って謝って、少しいじられたら仲直り、そうなる為に戻って来ましょう!」
    「ぐ……う、あや……まる? あ」
     射出された帯よりも悠里の呼びかけに動きを止めてしまった元少女を足下から斬り裂いたのは、零桜奈の影。
    「うちは……まな板、まな板に……」
     傾いだ身体は再び草の上に倒れ伏す。ただし人の姿に戻りながら。戦いは終わったのだ。

    ●一つの始まり
    「……ありがとうな。なんや、世話になってもうて」
    「気にすることはない。私達がしたくてしたことだ」
     意識を取り戻し、周囲を見回して灼滅者達へ礼を言う少女にリリィは頭を振って応じた。沈みつつある夕日の残照がそのフルフェイスのヘルメットとついでに隣にいた美咲のおでこに反射して輝く。
    「……怪我が……なくて……良かった」
     仲間と少女の状態を確認し終え、そう呟いた零桜奈は既に少女へ背を向け。
    「これを」
    「うん? 何なん、これ?」
    「ほら、胸が大きい人だと流行ってるらしいし?」
     空斗も青いリボンに似た紐を少女へ差し出すと、首を傾げてからそのまま立ち去った。少女を救うことは叶ったのだ、故にもはやこの場に留まる理由もほぼ無いということなのだろう。
    「折角おっきくなったんだし、合う服とかも選んであげるね!」
     学園に来たらと言う部分を省略しつつ、明月は告げて去り。
    「助けられて、良かった」
     茜色を人型に切り取って佇みながら、影子は言う。
    「その、何や……ありがと」
    「これでキミも灼滅者だ。もし、何処かで会った時は、仲良くしてくれたら嬉しいな」
    「せやな。そん時は……」
     少女は微笑み。
    「あ、せやかて友達やで? あーいうんはナシや」
     胸を揉まれていたのを思い出したのか、真顔になって釘を刺す。それは、一人の少女の新たな門出であった。

    作者:聖山葵 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年6月11日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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