逃走を許すな

    作者:東条工事

    「遅い! この愚図が!」
     イラつきを隠そうともせず、成金趣味な見た目をしたソロモンの悪魔は配下の強化一般人を蹴り倒す。
    「止まるな! 速く詰め込まんか!」
     動きの止まった配下達を怒鳴りつけ、内装を豪奢に改装したマイクロバスに貴金属を詰め込ませる。
    「くそ、くそくそっ! 何故私がこんな目に遭わねばならん。そもそも何がどうなってる。こちらから連絡を取る事すら出来んとは、どういう事だ」
     爪を噛みながら、ソロモンの悪魔は考えをまとめるように呟き続ける。
    「いっそハルファスの奴めを見限るか……だが、次にどこに就けば良い? 伝手も何もない状況で行った所で、身ぐるみはがされて始末されるのがオチだ……くそが、やはり北に逃げ合流するしか道が無い……」
     先の見えない未来にソロモンの悪魔は呪うように呟く。そこに、配下が全ての荷物を積み終わった事を告げた。
    「終わったなら早く言わんか馬鹿者が! 早く車を出せ!」
     理不尽極まりない事を言われながらも、すでにまともな自我の無い強化一般人達は無言で指示に従うのであった。

    「最近動きのなかったハルファス勢力に動きがあったようです。皆さんには、それに関する対処をお願いします」
     五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)は、集まってくれた灼滅者達に説明を始める。
    「現在ハルファス勢力は、安土城怪人など他のダークネス組織の勢力拡大によって劣勢に陥り、近畿や関東の支部を閉鎖し北へ戦力を集中させようとしているようです。それに伴い、現在ハルファス勢力の構成員が続々と北に向かって、物資と戦力を持って合流するべく移動しています。皆さんには、その阻止をお願いします。
     いま彼らが向かう北海道では、地下鉄のアンデッド迷宮事件や、SKN六六六のアリエル・シャボリーヌの事件、六六六人衆の斬新京一郎の事件などが立て続けに起こっており、ここにハルファス勢力が揃えば何が起こるのか予想も出来ません。ぜひ防いで下さい」
     いつになく厳しい表情で彼女は告げると、固くなった表情を意識して和らげながら更に続ける。
    「北海道に向かっているハルファス勢力は、人目につくことを嫌っているのか、人通りの少ない間道を物資と強化一般人を乗せた車で移動しています。今回皆さんに対処して頂く相手も同様で、人通りの無い山間のトンネルを通ります。そのトンネルの中ほどにバリケードを作り車を止めさせた上で、出て来るソロモンの悪魔を灼滅して下さい」
     ここまで言うと、資料を配り干渉できる日付等の説明をする。
    「資料に記してあります日付の午前十時にソロモンの悪魔を乗せたマイクロバスがトンネルを通りますので、それまでにトンネルの中ほどに、周囲の山間にある倒れた木や岩などを使ってバリケードを作っておいて下さい。この日は、午前九時から午後一時まででしたら一般人の方の車は通られませんので、その間に全てを終わらせて下さい。
     この際ですが、ソロモンの悪魔が下りて来る前にバスを攻撃するのは止めて下さい。それをすると、不利を悟ったソロモンの悪魔は最初から完全に逃げに徹し、配下を捨て石にして逃げますので気を付けて下さい」
     ここまで言うと、今度は敵の戦力に関して説明する。
    「今回の敵ですが、ソロモンの悪魔は魔法使いに相当するサイキックを使い、ポジションはディフェンダー。配下の強化一般人は5人です。強化一般人は既に取り返しがつかないほど改造されています。ですので、彼らも灼滅をお願いします。強化一般人のポジションですが、メディックに2人就き、ディフェンダーに3人就きます。メディックの2人は怪談蝋燭に相当するサイキックを、ディフェンダーの3人はWOKシールドに相当するサイキックを使ってきます。
     敵の数は多いですが、ソロモンの悪魔はそれほど強くありません。むしろ強化一般人の方が戦闘では苦労するかもしれません。それだけに、明らかに不利と分かれば今回のソロモンの悪魔は逃げ出す事に全く躊躇はありませんので、その点に関してお気を付け下さい」
     そこまで言うと、最後に激励を口にする。
    「ハルファス勢力が戦力を集中させれば、その先に何が起こるか分かりません。それを未然に防ぐ為にも、どうかよろしくお願いします。それに今回は、普段表に出ず自分は安全な場所から配下に命令を下すソロモンの悪魔を灼滅出来る絶好の機会です。今までのような事件を今後2度と起こさせない為にも、お願いします。
     皆さんが怪我も無く、打ち倒す事を願っています」


    参加者
    レイ・アステネス(高校生シャドウハンター・d03162)
    鳳仙・刀真(一振りの刀・d19247)
    天草・水面(神魔調伏・d19614)
    牧野・春(万里を震わす者・d22965)
    ディエゴ・コルテス(未だ見果てぬ黄金郷・d28617)
    弛牧・星亜(星屑フィロソフス・d29867)
    七那原・エクル(希望の魔法使い・d31527)
    九鬼・白雪(鏡の国のブランシュネージュ・d32688)

    ■リプレイ

    ●接敵
     北へと逃走するソロモンの悪魔の灼滅。
     滅者達が準備万端に整える中、バリケードの敷かれたトンネルに敵を乗せたマイクロバスが訪れる。
     それと同時に灼滅者達は一斉に戦闘準備に動いた。トンネル内部、バリケード側の灼滅者達は敵の突破を防ぐべく、いつでもサイキックを放てる準備を終え、入口側で隠れていた灼滅者達は、ソロモンの悪魔がバスから出て来ると同時にトンネル内に突入すべく機を見計らう。
     初手、戦闘前に見せる灼滅者達の行動は、敵の逃亡を確実に防ぐ為に的確であった。もしバリケード側かトンネル入り口のどちらかだけに戦力を集中していれば、敵は早々と配下を捨て石に灼滅者達の居ない方向へ向け逃げを打っていただろうし、それを追う為に攻撃の手数を減らし追跡に動かなければならず不利になっていただろう。
     また味方の配置や、敵の逃亡への予防措置は、必要な数は揃っていると同時に余分が無い。今回の作戦以上に、敵逃亡防止の為の手順を加えていたとしたら、その手順分攻撃を犠牲にしないといけなくなっていたので、最小にして最大の効果を上げられる準備を行えたと言える。
     ゆえに、戦闘前から灼滅者有利の状況で戦況は動き始めた。
     マイクロバスはバリケードより幾分余裕のある手前で止まる。止まると同時に、周囲の状況を図るべく、勢い良く強化一般人が外に出る。強化一般人達は、即座に状況をソロモンの悪魔に報告、状況を把握したソロモンの悪魔は対応の為にバスの外に出て来た。
     それと同時に灼滅者達は一斉に動く。バリケード側の灼滅者達は敵へ圧力をかける為に距離を詰め、入口からも逃走の防止を念頭に、一斉にトンネル内に突入した。
     灼滅者達の襲撃に、ソロモンの悪魔は呪いの言葉を吐きながら攻撃を放つ。
    「クソどもが!」
     手中に作り出した魔術の光弾を、長期戦も想定し、邪魔となるメディックに就いていた九鬼・白雪(鏡の国のブランシュネージュ・d32688)に向けて放つ。
     勢い良く向かう光弾。だがそれは、ディフェンダーに就いていた弛牧・星亜(星屑フィロソフス・d29867)が強引に受け止める。
    「女の子は、守ってあげないとね」
     女の子が攻撃を受ければ無茶をしてでも庇う。そう決めていた彼らしい行動だった。それにソロモンの悪魔は挑発するように言う。
    「自己犠牲に浸りたいだけの馬鹿が。貴様のような奴は、都合良く利用されるだけよ」
     しかしこれに、
    「べっつに~、好きでやってるだけだし。それよりもトンネルの中で戦うとかの方が、埃っぽくてやだねぇ。だから、手早く終わらせるよ」
     星亜はのらりくらりとした口調で余裕を持って返す。これにソロモンの悪魔はイラつきながら、
    「何をしてる! 貴様らも動かんか!」
     配下の強化一般人達に檄を飛ばし指示を出す。それに従いメディックの2人はジャマー能力を高める黒煙を前衛に掛け、ディフェンダーの3人は防御力場を展開した。
     これにより敵前衛に盾アップのエンチャントが重ねられ、防御力が強化される。倒す事よりもこの場から逃げ出す為に、時間稼ぎを優先した戦術。
     灼滅者達の用意周到さに危機感を抱いたソロモンの悪魔は即座に撤退を決め、逃げ出す方向を決める。バリケードのある出口方向よりも入口、バスに乗り込み逃げる余裕は無いと判断し、身一つで部下を捨て石にする事を決めた。
    「奴らに攻撃しろ!」
     入口側への灼滅者達への攻撃を配下に指示するソロモンの悪魔。だが、
    「ちぃと、背中がお留守じゃないッスかね」
     ソロモンの悪魔の思惑など灼滅者達が許す筈も無い。天草・水面(神魔調伏・d19614)は、腰に撒いたさらし状のダイダロスベルト・オーシャンブルーに自身のサイキックエナジーを注ぎ込み活性化すると攻撃を放つ。
     さらし状からカーテン形状に広がったオーシャンブルーは勢い良く射出され、ソロモンの悪魔を貫いた。
    「がぁ!」
     ソロモンの悪魔は憎々しげに苦痛の声を上げると帯を掴み強引に引き抜く。引き抜かれた帯は勢いが残ったまま敵の乗っていたバスのフロントタイヤをも切り裂いた。
    「これで逃げられなくなったッスね。諦めてオレッち達にやられてくれても良いッスよ」
    「貴様!」
     挑発するように言う水面にソロモンの悪魔は憎悪の眼差しを向ける。そこに、
    「だから、背後がお留守って言ってるじゃないッスか」
     水面の言葉より早く、ソロモンの悪魔の背後に移動していた水面のビハインド・ペケ太が、距離を詰め顔を晒す。
     声も無く顔を歪め動きが止まるソロモンの悪魔。その隙にロボットのような姿のペケ太は、敵が逃げ出せないような位置取りをする。
     その間にも灼滅者達は攻撃を放つべく間合いを詰める。それに気付いたソロモンの悪魔は、配下に向け命令した。
    「俺を守らんか馬鹿ども!」
     その命令に統一性は無く、場当たり的に指示を出すだけ。普段戦いの場に出ず暗躍する事に慣れ過ぎ、明らかに戦闘は不慣れだった。
     それに対し灼滅者達はこれまでの経験を活かすように攻撃を重ねて行く。
     敵が指示を出している間に距離を詰めていたディエゴ・コルテス(未だ見果てぬ黄金郷・d28617)はフォースブレイクを叩き込む。攻撃のみに専念したその一撃は、凶悪な破壊力を内包する。
     しかしソロモンの悪魔に突き刺さる、その直前、敵ディフェンダーの一人が防御力場を展開させ立ちはだかった。
     命中と共に力場は歪み、周囲に雷の如き金色の火花を飛び散らせる。受け止めた敵は防御力場越しに体中の骨が砕かれ裂傷が血飛沫を上げた。
    「ひっ!」
     部下の姿に恐怖の声を上げるソロモンの悪魔。そこに、
    「ハルファスの居場所を知ってるなら、ここで吐いていきな」
     敵の情報を探るべくディエゴは問い掛ける。
    「は、話せば助けるんだろうな」
    「馬鹿言うな。吐いたとこで命乞いは聞かねェよ」
    「き、キサ――」
     元より正直に答える気の無いソロモンの悪魔だが、ディエゴの言葉に顔を歪ませる。そこへ追撃が入った。
     鳳仙・刀真(一振りの刀・d19247)から濃密な殺気が放たれる。それは臨界点を突破すると同時に漆黒の闇と化し、疾風の如き速さで敵前衛を覆う。研ぎ澄まされた刃の如き殺気は斬り裂くような衝撃を与えると共に、刀真にジャマー能力を高めさせた。敵のエンチャント破壊も想定した、次へと繋がる戦術。戦い慣れたそれに、けれど戦慣れしていないソロモンの悪魔は嘲るように言う。
    「成り損ない共が! この程度で俺をどうにかできると――」
    「その成り損ない相手に、逃げ出そうとしている人が口にして良い言葉ではないですね」
     逃走を防ぐように、刀真は敵の心にくさびを打つように言い切る。
    「それでも完成体のダークネス、それもソロモンの悪魔ですか? ここで逃げたとなれば種族の恥、脳筋と蔑まれるアンブレイカブル以下でしょうね」
     この言葉に敵は、声すら上げられず怒りに顔を歪ませる。それを更に歪めさせるべく、星亜は手にした魔導書を使い禁呪を発動。ゲシュタルトバスターにより敵前衛は爆発に包まれた。
     その爆発に敵の動きが止まる中、七那原・エクル(希望の魔法使い・d31527)は傷を受けた星亜への回復に動く。ラビリンスアーマーを使い回復と共に盾アップを付与。それに敵は、折角与えた傷が癒されていくのを知り焦りながら逃げ出す隙が無いか灼滅者達に忙しなく視線を向ける。だが、
    「無駄だよ。ここは行き止まりだ。残念だけど……君たちが向かう先は北海道じゃない、地獄だ……片道切符は君たちの命で払ってもらおうか……」
     エクルの言葉通り、灼滅者達は逃がす余地など与えるつもは無い。更に焦る敵。その焦りを更に広げ情報を探る為に、
    「オマエ達がハルファスの指示で集結しようとしているのは、武蔵坂学園は察知済みだ。ボクたち以外にも既に動いている……ハルファスは終わりだよ、オマエがハルファスについて知ってる事を喋るなら学園がオマエを保護してやってもいい」
     エクルはゆさぶりを掛ける。だが、
    「貴様らなど信用できるか!」
     殺意を込めた声で敵は言い返した。そこへ間髪入れず、
    「そうですか。なら、交渉は決裂ですね」
     牧野・春(万里を震わす者・d22965)の天魔光臨陣が味方前衛に展開される。回復と共に、EN破壊のエンチャウントを次々付与していく。
    「逃げた先で何をしようとしているのかは知りたい所ですが、ここで貴方を止める事が邪魔になるでしょう。逃がしませんよ」
    「大口を叩くなよ貴様ら。貴様らなど殺して――」
    「させません」
     宣言を告げるようにして、白雪はラビリンスアーマーを発動。星亜をダイダロスベルトで包み込み回復させると同時に、防御を表すルーン文字エイワズが周囲に浮かび上がり、盾アップを与えて行く。そして更なる回復に、彼女のウイングキャット・イサも当たる。
    「貴方がどれほど傷を与えようとも、私達が癒します。貴方如きに負けません」
     これに怒りの声を上げるより早く、ソロモンの悪魔はレイ・アステネス(高校生シャドウハンター・d03162)の放った緋牡丹灯籠の炎に包まれた。
    「怒っている暇は無いよ。そんな余裕、あげる気はないね」
     レイの言葉に、ソロモンの悪魔は焼け溶けた貴金属に視線を向けながら、
    「貴様、これが幾らの価値がすると思っている」
     憎悪の声を上げる。それにレイは、
    「命のやり取りをしている最中に気にする事じゃないね。バスの内装といい、悪趣味な相手だよ」
     呆れた声で返した。

     こうして戦いは続く。敵は回復と防御に集中し戦いは長引いたが、ディフェンダーの一人を倒すと一気に戦局は傾いた。そこから更にもう一人ディフェンダーを倒し、戦いの終わりは一気に加速する。

    「ここで貴方達は終わらせます」
     刀真は一気に間合いを詰めると、雷纏う拳を振るう。その動きは柔術のように、剣術を基盤とするような全ての動きが連動した無駄のない動き。それを辛うじてディフェンダーが受けに入るが、防御力場越しに伝播した雷が体を焼き払い、地に倒れ伏すより早く塵と化し虚空に消え去った。
     これでソロモンの悪魔を守る者は無くなり、一気に決着をつけるべく、灼滅者達は連撃を叩き込む。
    「逃がさないよ」
     逃げに必死になる敵に、星亜はバイオレンスギターを叩き付ける。ダメージと共にアンチヒールが付与される中、間髪入れずエクルの爆裂手裏剣が入る。
    「心を惑わし、人々の未来を奪う……ソロモンの悪魔、オマエをここで灼滅する。絶望しながら、ここで果てろ」
     爆裂手裏剣が命中すると同時に爆発に包まれ、ダメージと共に更にアンチヒールが付与される。よろめきながら逃げる場所を探す敵に、
    「逃げる足は潰させて貰います」
     死角に移動していた春は黒死斬により足の腱を断ち切り動きを鈍らせる。そこへ、これまで回復に専念していた白雪とイサも攻撃に加わる。先行してイサが肉球パンチ。パラライズで麻痺させた所に、流星の煌めきを纏う白雪の蹴りが突き刺さる。
    「諦めなさい。ここが貴方の終わる場所です」
     蹴りで膝を砕いた白雪の言葉に、
    「貴様らのような成り損ないの弱者にやられるか!」
     ソロモンの悪魔は声を上げる。しかしそれを否定するようにレイの影縛りが入った。地を影が走ると、敵目前で影は無数の触手となって別れ巻き付き縛り上げる。
    「弱者はどっちだろうね。強い方が好きみたいだけど、それならこちらにつけば良かったのに」
     挑発するようなレイの言葉に、
    「舐めるな!」
     ソロモンの悪魔は激昂と共に影の拘束を引き千切ると、周囲一帯の熱を一気に奪う。前衛に凍てつく冷気が食い込む。そこへ更に、
    「殺せ!」
     後衛メディックの強化一般人も小妖怪の幻影を生み出し使役すると、前衛を襲撃する。それによりダメージは幾らか受けるが、その回復よりも敵の殲滅に灼滅者達は動く。
    「やる気出して来たッスね。でも、遅い!」
     終わりの時が近い事を感じ取った水面は、飄々とした気配を消し鋭さをみせる。清浄なる輝き、ジャッジメントレイの光条を放ち焼くと、即座にペケ太が霊障波を叩き込む。
     繰り返された攻撃に敵は声すら上げる余裕が無くなる。そこへ止めを刺したのは、ディエゴだった。
    「散々、あくどい事して儲けてきたんだろ? ここで精算していけ」
     黄金の輝きを伴った蹴りが放たれる。ディエゴのご当地キックは深々とソロモンの悪魔の腹に突き刺さると、弾けるように粉砕させる。吹き飛んだ破片は何かにぶつかるより早く、塵と化し虚空に消え失せた。
     後に残るのは後衛の強化一般人2人。だが、主が滅びたというのに、自我が無くなるほど改造された2人は戦意を喪失させる事も無く淡々と戦いを挑んでくる。
     それを止む無く灼滅し、戦いは終わりを見せた。

    ●戦い終わり
    「バリケードは作るのも壊すのも大変だな……」
     戦後、片付けに皆が動く中、レイは小さく呟く。実際、バリケードに敵のバスの撤去や痕跡の可能な限りの排除は、地味に手間が掛かり労力が多かった。
    「放置して事故が起こるといけませんからね」
     レイに返すように、バリケード撤去をしていた刀真が返せば、
    「そうッスね。テレビのヒーローみたいに、そのまま放置って訳にはいかないッスから」
     水面はペケ太と共に、一抱えはある岩を持ちながら返す。
    「後始末も仕事の内ですね。手早く終わらせましょう」
     春が木を肩に担ぎ小走りに外に移動する横で、
    「それにしても、情報を聞き出せなかったのは惜しいな」
     ディエゴは残念に思いながら作業に動き続ける。それに同意するように、
    「聞き出せれば有益だったんでしょうけれど……残念です」
     エクルは返しながら作業を続けていた。
     そうしてバリケードが解体される中、一方敵の乗っていたバスは、
    「あ、ちょっと右に寄ってます。そうそう、そのまま真っ直ぐ押して下さい」
     白雪の誘導で、怪力無双を使った星亜がトンネルの外の邪魔にならない場所にまで押していた。
    「結構重いよね、このバス。怪力無双がなかったら動かすの大変だったかも」
     そう呟きながらも、出来る限り急いでバスを動かす星亜だった。

     こうして片付けを終わらせた後、エクルの提案で敵のバスは接収する事になった。
     放置しておくと、積み込まれた貴金属が騒動の元になりかねない事と、警察などが抑えたとしてもそれでダークネスが取り返そうと襲撃に行けば拙い、という理由からだった。
     かくして戦いも事後処理も終わらせ、灼滅者達は今回の依頼を解決する。
     今回の結果がこの先どう繋がるかはまだまだ見えてこなかったが、彼らと彼女の行動はベストであったと思える結末であった。

    作者:東条工事 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年6月9日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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