悪魔『ラエル』ときずな会

    作者:空白革命

    ●『ダンダリオン』はここにいない
     ボストンバッグに札束を乱暴に押し込んでいく。
     手近な金品を掴んでは、うまく入らないそれらを無理に叩いて詰める。
     そんな動作を見て、黒服の男たちは不思議そうに首を傾げていた。
     黒服の一人が問いかける。
    「どうしました、ロード。そんなに慌てるなんて、何かあったんですか?」
     途端、男の顔面に札束がぶつかり、とめ紙がちぎれてあたりに一万円札が散らばった。
    「どうもこうもあるか! ここはもう終わりなんだぞ!」
     銀縁の眼鏡をかけた初老の男が怒鳴りつける。
     黒服たちとは桁がいくつも違うスーツを纏った彼は、両目が水晶でできていた。
    「非競争妥協同盟、背徳クラブ、積極性被害者会……立て続けに潰された。残りの組織もメチャクチャになっとるんだぞ。そこへ来てハルファス様の引き上げ命令だ。うかうかしていたら我々まで切り捨てられる」
    「それは大変ですねえ。しかし私たちに被害が及ぶことなんでないでしょう?」
     和やかに笑いあい、ここは落ち着いてお茶にしましょうなどと言い始める男たち。
     ロードと呼ばれた男はバッグを蹴飛ばし、男たちに怒鳴りつけた。
    「いつまで安全圏にいるつもりだ! さっさと準備しろ、お前たちから切り捨てるぞ!」
     彼の乱暴な様子に、黒服たちは目を丸くしてお互いを見合い、ようやく事態の厳しさに気づいたという顔でそれぞれの持ち場へと駆けだしていった。
     全ての黒服たちが飛び出していった部屋はひどくがらんとしていて、足下に散らばった札束だけが妙な存在感を残している。
     そんな中で、男はそれまでの慌てた表情をすっと引き、なんの感情もないようなのっぺりとした無表情で立ち上がった。手に持っていた高級な腕時計も、まるで興味がないかのように放り捨てる。
    「焚き付けはこんなものでいいか。怒る演技は疲れるな」
     彼が今いる場所は広告代理店を装った隠し施設である。
     名を『きずな会』。全てのメンバーがお互いの絆を信じて全ての財産を共有しあい、常に笑顔をたやさず一切の嫌悪を示さず毎日手を取り合って仲良く暮らしていきましょうというお題目のもとに集まっている。
     だがそんなものはまぼろしだ。ソロモンの悪魔である彼が擬似的に作った絶対平和で絶対安全な環境に閉じ込め、長く培養し続けたことで生まれたものだ。
     彼らは絆という形のないものを崇拝し、自分たちを邪魔する悪という形の無い存在を敵視している。これによって、彼らは絶対的かつ狂信的な兵隊となり、より高品質な強化一般人となる……予定だったが。
    「ハルファスは末端組織の切り離しを始めている。この組織を盾にしつつ、より安全な土地に移動するべき時、ということだな」
     男はそう呟くと、空のバッグを持って歩き出した。
     彼の名は『ラエル』。
     感情の無いノーライフキングである。
     

    「ハルファス勢力に動きが見られました」
     武蔵坂学園にて、エクスブレインはそのように説明をした。
     かつて武蔵坂学園灼滅者が壊滅させたソロモン下部組織、非競争妥協同盟、背徳クラブ、積極性被害者会、殺人共有教。これらの事後、灼滅者たちが独自に活動を続けた結果組織を作成した人物を探り当てることが出来た。
     それが『ラエル』という、ハルファス勢力に属するソロモンの悪魔である。
    「このハルファス勢力は他ダークネス組織の勢力拡大をうけて、拠点を北へ移そうとしています。ラエルもその流れに乗って拠点移動をはかるつもりでしょう。この途中でとまるパーキングエリアで待ち伏せし、襲撃。そして灼滅することが今回の目的となります」
     完全なるソロモンの悪魔を灼滅する。
     これは、通常ではそうそう巡ってこないチャンスである。
     
     ソロモンの悪魔『ラエル』は自身の作成した組織のひとつ『きずな会』の強化一般人だけをつれて拠点移動をはかっている。
     強化一般人の数は合計28体。これらは大きな戦力にはなりませんが、ラエルの弾よけとして存在しているようだ。
     戦力として警戒すべきはラエル自身で、高い戦闘力と対多戦闘にむいた性質のため、長期戦闘は不利になるだろう。
    「ラエルは安全確保のため、休憩するパーキングエリアをあらかじめ無人にしています。そのため他の一般人はおろか車両すら無い状態です。ここを待ち伏せ、襲撃します」
     通常待ち伏せは有効では無いが、バベルの鎖を突破できるエクスブレインの作戦であればこれが可能だ。
     車両がとまり、全員が下りたことを確認し次第彼らの撃滅にあたってほしい。
    「以上です。あとはよろしくお願いします」


    参加者
    細氷・六華(凍土高原・d01038)
    時渡・竜雅(ドラゴンブレス・d01753)
    華槻・灯倭(月灯りの雪華・d06983)
    御門・心(日溜りの嘘・d13160)
    石見・鈴莉(偽陽の炎・d18988)
    旭日・色才(虚飾・d29929)
    平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)

    ■リプレイ

    ●絆という幻術。絆という真実。
     夜のパーキングエリアに数台の自動車がとまり、ヘッドライトが消える。
     エンジン音までも消えると、あたりは虫の声しかなくなった。
     ドアを開いて男たちが降り、周囲をきょろきょろと見回す。
     しばらく間をおいて、悪魔『ラエル』も車を降りた。そんな彼に幹部メンバーの一人がほほえみかける。
    「長い運転で疲れましたね、ロード。売店で何か食べましょうか」
    「売店には誰もおらん。ここは無人のパーキングだ」
    「へえ、そうなんですかあ」
     あっけらかんと笑う幹部の男。
     ラエルは内心で舌打ちした。
     パーキングエリアが完全に無人化している異常事態に全く関心が無いらしい。
     この平和ボケが、である。
     平和ボケ。絶対安心で絶対平和の空間で培養された男たちの姿だ。
     本来ならこの後で平和の破壊者を設定し、『集団結束による魔術』で強靱な殲滅力を獲得する筈だったが、その時期が来る前に引き上げ命令が来てしまったのだ。まあ、仕方あるまい。この連中も運転手や肉壁くらいにはなる。
    「三十分休憩したら出発だ。全員に伝えておけ」
    「はい、ロード! 僕らの絆にかけて!」
     男は笑顔で手を振り、仲間のもとへ駆けていく。
     ラエルはその背中を鼻で笑った。

    「へえ、本当に無人なのね」
    「これが絆の奇跡なんでしょうか。商品を買えないのが残念です」
    「お金とメッセージを置いていったらいいんじゃないかしら」
    「でも勝手に入るのは悪いですよ」
     女性の幹部たちが売店の窓から中を覗くようにして立っていた。
     その背中に平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)が声をかける。
    「すまない、あなたたちは……」
    「――」
     反射的に振り返る二人の女……の目つきに、和守は半歩下がった。
     まるで外敵を見るような目立ったからだ。
     だが女たちはすぐにやわらかい表情に戻った。
    「あなたたちは? ここは無人だって聞いたけど」
    「どこから入ってきたんでしょう。売店ならお休みみたいですよ」
    「ううん、売店に入りたいんじゃないの」
     暗がりから石見・鈴莉(偽陽の炎・d18988)が姿を現わした。
    「あなたたち、きずな会よね。興味があるんだけど」
    「なぜ僕らがきずな会の人間だと分かる?」
     ぬ、と鈴莉の背後から大柄な男が問いかける。
     殺気のようなものを感じて、鈴莉はスレイヤーカードを反射的に握った……が、その手をポケットの上から押さえつけられた。御門・心(日溜りの嘘・d13160)によってだ。
     彼女の名指しがたい笑顔に、押し黙る鈴莉。
     その沈黙を回答と受け取ったようで、男が話を続けた。
    「会員の皆も僕らがここに居ることは知らない。僕らだって、知らなかった」
    「そう、なの……」
     後じさりする鈴莉。その行く手に女たちが立ち塞がった。
     どこに居たのかわからないほどスムーズにきずな会の幹部メンバーたちが現われ、和守や鈴莉たちを取り囲んだ。
    「あなたたちは誰ですか? 興味があるのはなぜですか?」
     ナイフを喉元につきつけるかのような、圧力のある質問である。
     和守は両手をあげて言った。
    「誰でもいい。絆というものに興味があるんだ。あなたたちの言う絆とはどんなものなんだ?」
    「そうですか……仕方ありませんね。お教えし――」
    「教えてやる必要はないぞ」
     夜闇に響く老人の声。
     幹部たちの列が割れて、ラエルが姿を現わした。
    「お前たちは見て分からんのだろうが、こいつらはただの人間ではない。この格なら弱いダークネス……いや、灼滅者だな? つまり我々の敵だ」
    「「――!?」」
     幹部たちに緊張がはしる。
     途端、ラエルが小さな竜巻を引き起こした。
    「やべえっ!」
     売店の屋根から時渡・竜雅(ドラゴンブレス・d01753)たちが飛んだ。
     和守たちの足下から渦巻いた風が暴風に変わるその寸前、華槻・灯倭(月灯りの雪華・d06983)
     雪結晶のようなプレートを発現。仲間を守るように翳した。
     着地した竜雅や灯倭の後ろに身を隠す心。
     一拍遅れてエクスティーヌ・エスポワール(銀将・d20053)と旭日・色才(虚飾・d29929)が敵の輪の中へ着地。それぞれの武器を出現させた。
    「……うまくいきませんでしたか?」
     エクスティーヌの問いかけに、色才は片目を隠す仕草で応える。
    「まだ未来はある。哀れな一般人どもを救う手立てが潰えたわけではない」
    「けれど、戦闘が始まってしまったからにはあと2分しかありませんよ」
     心のささやきを受けて、エクスティーヌは表情を僅かに曇らせた。
     説得の見込みを得るまでのタイムリミットを、彼らは事前に『2分(ターン)』と決めていた。ラエルの猛攻を永久にしのぎ続けることは無理だと判断したためだ。
     もしその間に取っ掛かりすらつかめなかったなら、彼らの努力が無になってしまう。
    「やりましょう。まだ、なんとか」
     濃い霧と共に細氷・六華(凍土高原・d01038)が現われた。
     本来なら『言って聞かないならば』と皆殺しにしてもおかしくないような状況で、少しでも可能性があるなら彼らを助けたいと頭を悩ませ続けた彼らである。
     その願いと努力を無駄にはしたくない。
    「フン、防戦一方か」
     ラエルは杖を翳し、周囲の大気を凍結。硬い霜が鈴莉たちをむしばみ始める。
    「つっ……ラエル!」
    「おちついて。まだ大丈夫ですから」
     心の手が鈴莉の腕を優しく掴んだ。それだけで酷い凍傷になっていた腕がみるみる元の肌色を取り戻していく。
    「ただ」
     鈴莉くらいにしか聞こえないごく僅かな声量で、心は言った。
    「皆どうも、執着しすぎていませんか、すずりん?」
    「……どういう意味?」
     鈴莉の疑問を差し置いて、竜雅がきずな会の幹部たちへと身構える。
     攻撃ではなく、防御の姿勢でである。
    「あんたらがきずな会だろ。でもこれで全員じゃないよな。他の奴はどうした?」
    「一般会員の連中なら」
    「あんたには聞いていない!」
     ラエルが口を開こうとしたところへ牽制射撃を放つ和守。
    「お、教える必要が、どこに……」
    「ならもっと聞くよ。みんな、ラエルに切り捨てられないって本当に言い切れる?」
     幹部たちを見回し、灯倭は声高に叫んだ。
    「どうして自分たちを盾にしてまでラエルを守ろうとするの? 一般会員の人たちだって、切り捨ててきたんじゃないの?」
    「どうなのですか」
     念を押すように問いかけつつ、剣を翳すエクスティーヌ。
     ラエルの攻撃に備え、霊犬一惺と翼猫ビャクダン、それにクロサンドラの鈴が警戒してうなりはじめる。
     が、そんな中。
     鈴莉だけは蒼白になって自らの口を押さえていた。
     自分の言おうとしていることを、皆同じように語るつもりだったのだ。ミュージカルではあるまいに、全員が一斉に今の文句を合唱するわけにはいかない。皆で説得する内容を話し合った際に『より上手な文句』に執着しすぎてしまったのだ。
     そのうえ、今の内容は詭弁で挑発することで相手の激高や疑念を誘い、更に詭弁で畳みかけるというプランである。一人を取り囲んで一日中詰問し続ければ無実の人間でも罪を認めるというテクニックがあるが、それに近い。
     ……などと、とりようによってはネガティブに聞こえるかもしれないが、マインドコントロールを受けた人間の回復方法としてはごくまっとうな手段である。実際きずな会の幹部たちが信じている絆の力というものも、詭弁と人為的安全による詐欺の手口そのものだからだ。
     惜しむべくは、この手段をとるのに最低でも一日、長いと数年かかってしまうことと、マインドコントロールをはかっている本人からの引き離しが絶対条件であることか。
    「ロード……ロード・ラエル。嘘ですよね? 彼らは我々を騙そうとしているんですよね?」
    「そうとも。皆の絆を信じなさい」
     頷くラエル。
    「そうですよね! 聞くんだ皆!」
     幹部の一人が高く手を掲げた。
    「彼らは僕らの絆を砕こうとしているんだ! 僕らを疑わせ、結束を乱そうとしている!」
    「そうよ、私たちはロードのおかげでずっと安全な暮らしができたもの。そんな人を疑わせるなんて、ひどいことよ!」
     幹部たちがざわつきはじめる。
     失敗か。
     竜雅たちが歯噛みした、その時。
    「そうかな。心当たりがあるんじゃないのか?」
     色才がびしりとラエルを指さした。
    「お前はラエルを信じてるかもしれない。だがラエルはお前を信じているか? 心当たり、あるんじゃないのか?」
    「そ、そんなはず……ないですよね!?」
     男が引きつり、ラエルへ振り向く。
     ラエルは『わしはお前たちを信じて居るぞ』と言って微笑んだ。
     そうだそうに決まってる。よかった騙されるところだった。ロードが言うんだから間違いないよ。幹部たちが口々に言う……中で。
    「ぼ、ぼくは、その……ちょっと」
     おずおずとその輪から抜けた者が五人ほどいた。
     彼をその幹部たち全員がにらみ付ける。
    「なんだ? お前、絆を信じてないのか?」
    「い、いや、ちがうんだけど、ロードは……その」
    「こいつは絆を疑っているぞ! 裏切り者だ!」
    「お、おい!」
     危険を察して止めようとした竜雅たちを振り切って、幹部たちは離脱者を殴りつけた。
     倒れた彼を全員で蹴飛ばし、つばを吐きつける。
    「まさか幹部に裏切り者がいたなんて。きっと彼の差し金に違いありませんよ、ロード!」
    「……と、いうわけだ」
     ラエルは穏やかな笑みを浮かべ、灯倭へと向き直る。
    「君らはにできることはもうない。帰るか、もしくは死ね!」
     魔矢を生み出し、凄まじい速度で射出。灯倭の胸元を一瞬にして貫いた。
    「――ッ」
     一瞬意識が奪われそうになったが、すぐにレースストールが巻き付き、彼女の傷口を塞いだ。
     六華の放ったものである。
    「あなたのような悪辣なやからは、だいっきらいです」
    「ならどうするね」
    「決まってるでしょう?」
     心が左右非対称な笑顔で肩をすくめた。途端、巨大な影業の蜘蛛が出現。それぞれの脚が鎖剣のように乱れ、幹部たちを蹂躙し始めた。
    「あ、あぶない!」
     先程まで蹴飛ばされていた男たちが、自分を蹴飛ばしていたはずの幹部メンバーを庇い始めた。
     身体を複雑に切り裂かれ、ばらばらに散っていく幹部たち。
     それを見下ろして、心は息をついた。
    「塵芥だ、こいつらもあんたも、私だって……」
     心に続いて灯倭が九字を詠唱。残りの幹部たちを爆破させた。
    「絆は目に見えないし、私も、信じたい。けど意図的に作られた絆は、しあわせなのかな」
    「ごめんなさい……」
     一部の人たちはまだ息があるようだ。先程会を抜けたがった数人だ。
     だが他の幹部たちは、無残な死体となっている。
     エクスティーヌは胸元に手を当て、表情を曇らせた。
    「ふむ……」
     力尽きた幹部たちを見渡して、ラエルは自らの顎を撫でる。
    「不完全体ではこんなものか」
    「不完全体……?」
    「教えてやるわけが……いや、いいか。お前たちから得たアイデアだものな」
     そう言いながらも竜巻を放ってくるラエル。
     色才が間に割り込み、高速回転させた道路標識でもって竜巻をはねのける。
    「俺たちから? どういうことだ」
    「どうもなにも、お前たちは強いだろう?」
    「決まってんだろペテン野郎!」
     竜雅が突撃。地面を引きずった剣が火花を散らし、強引に振り込んだ斬撃がラエルを襲う。
     それをロッドで受け止め、ラエルはずりずりと後じさりした。
    「絆があるからだ。絶対に自分を裏切らない仲間。絶対に目標を同じくしてくれる仲間。仲間がいるから強くなれるんだろう? それが集団結束の魔術だ。絆信仰だ」
    「絆を軽々しく口にするんじゃねえ!」
    「信仰対象をけなされて怒ったか?」
    「テメエ……!」
     竜雅が目を見開いた所で灯倭が乱入。ラエルの横っ腹を蹴りつけた。
     売店のガラスを破壊して店内に転がり込むラエル。
    「鵜呑みにしちゃだめ。挑発だよ」
     店内から激しい雷が走る。クロサンドラの鈴がスパークにやられて落ちそうになるが、それをビャクダンが空中でキャッチ。
     続いて放たれた矢を、一惺が途中でキャッチし、噛み砕いた。
     鈴音が店内へ飛び込み竹刀を抜いた。思い出すのはかつての事件。非競争妥協同盟での惨状である。
    「つらいときは何かにすがりたい。わかるよ、でも……!」
     商品棚の影へ回り込もうとしたラエルだが、鈴音はその棚めがけて竹刀を叩き込んだ。
     棚ごと粉砕。
     ラエルの腕がへし折られ、その場に崩れ落ちた。
    「よくも多くの人を狂わせましたね」
     絶妙なタイミングでエクスティーヌがビームを発射。銀色の光がラエルを貫き、更に和守のガトリング射撃が彼の身体を穴だらけにしていった。
    「お前は確実に灼滅する。たとえ罪無き人々を盾にしようと、俺は止まらない」
    「はは、ふむ、よし……」
     一方。ぼろぼろの身体でありながら、ラエルはまだ笑っていた。
    「間違っていなかった。集団結束の魔術、たしかに強い……! 必ず完成させるぞ、ワシが死んでも、誰かが、必ず……!」
     途端、六華のナイフがラエルの脳天を貫いた。
     それだけでラエルは事切れ、灰になってその場に散らばった。
     武器をしまって振り返る六華。
     救えた人数はおよそ6人。零ではない。
    「全てが救えるとは限りません。ですから……」
    「ああ、救えた人がいた。それだけでも、喜ぶべきことだ」
     全ての終わったパーキングエリアには、少し冷たい風がふいていた。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年6月9日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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