修学旅行2015～果てのうるまにて

■リプレイ

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　楽しい修学旅行も今日で３日目。
　人が住む島としては日本最南端、波照間島に学生達は訪れる。
　かけがえのない一日をこの島で過ごす為に。
　
●青きはてるま
　最南端だと聞けば、行きたくなるのは仕方が無い。
　４人が目指すのは日本最南端の碑だ。
「綺麗な貝殻、これもお土産になりますね」
「貝殻がお土産なんて、ステキですねぇ」
　途中の砂浜で貝殻を拾う真琴の隣で、かばんのてるてる坊主を揺らして穂布留が拾うのは薄桃色の貝殻。
「白い貝殻見つけたよ！　ほらっ」
「ほんとに海の音が聞こえますよぅ！」
　潤子が貝殻を見せると、貝を耳にをあてるヒオも皆で貝をみせあいっこしたり。
　先頭で跳ねるよう進むヒオは空や畑などの風景や皆の姿を写真に収め、のんびり目的の場所へ。
「ここが最南端の場所なんだね」
　爽やかな風に髪が揺れ、目的の碑を目に潤子が言えば、
「記念写真には、とびっきりの笑顔で映りますよぅ！」
　肩を寄せ合い穂布留も皆ととびきり笑顔でぱちり！
「最南端って聞くとすごく遠くに来た気がしますね」
「一番南にいるってなんだか不思議な感じだねーっ」
　真琴と潤子は言葉を交わし見れば、うん、よく撮れてる。ヒオもにっこり。
「最南端の碑を前に記念写真もとったらば証も逃さずゲットですー！」
　そうそう、日本最南端の証も忘れずに。
　
「わぁ……これが海、かぁ……凄く広くて、綺麗……」
「ほらほら、ボク行っちゃうよー？」
　二人の視界に広がるのはニシ浜のはてるまブルー。
　初めて見る南国の海におっかなびっくりの光月とは対照的に琉海は元気いっぱいだ。
「ほらほら、るみがいるからさっ」
　不安な光月に寄り添い純白ビキニの琉海と共に海の中へ。
「どう？　スゴイでしょ、暖かい海って♪」
「……んー、気持ちいい、ね……♪」
　溺れかけつつもある程度泳げるようになった光月と琉海はにこりと笑顔。
　
「なかなか沖縄まで来る事はないんだ……。折角の機会だし、存分に満喫しないとな」
　爽やかな潮風に髪が揺れるのを感じながら宗嗣は持参したベイトロッドを手に獲物を待てば、隣の翔也ものんびり釣りを楽しんでいた。
　戦いの日々を忘れて、たまにはこういうのもいいな。
　そんな思いを胸に水平線を眺める翔也だが、手にするロッドに手ごたえが……。
「ん？　これは……」
　透明な海を見つめれば、その魚影はＧＴだ。
「俺も手伝おう」
　宗嗣はサポートに回り、まずは１匹目を釣り上げた。
　
　自転車を借りて【白の王冠】メンバーが目指すのは日本最南端の碑！
　が。
「……あれ？　ヒビトどうしたの、つかれちゃった？」
「おーい響斗ー遅れてっぞー！」
　ポンパドールと光貴の言葉を耳に、は響斗は海を見ながら行こうと提案した事を後悔していた。
　休憩を挟みつつ、目的地に到着する頃には息も切れ切れで。
「誰かカメラ持ってきた？」
「カメラ持ってきたよーみんな一緒に撮ろう！」
　日本最南端にテンションだだ上がりのポンパドールがカメラを用意すれば、光貴の提案でチャルを真ん中に笑顔の記念撮影。
「帰って美味いモン食ったらそのまま気持ちよく寝れそうだな」
　久しぶりの自転車だった光貴の言葉に二人は頷き、あちこち寄り道しながらホテルへと戻っていけば、明るかった空も徐々に茜に染まっていき――。
　
●奇跡の緑閃光
　巳桜の傍らでサズヤが砂を少し掬えば、それは星の形をしていた。
「金平糖と違って……食べちゃ、駄目」
　興味津々のシャーリィと二人は夕日を眺め、その一瞬。
「ねぇねぇ、サズくんも見た？」
「ん……ちゃんと、見えた」
　はしゃぐ巳桜は手招かれると、頭に暖かな掌が。
「……巳桜は今、たのしい？　……しあわせ？」
　恋人として初めてのお出かけに気になるサズヤは頭を撫でて見つめれば、
「勿論。貴方と一緒ですもの」
　巳桜は腕に抱きつき、二人の時間はゆっくり流れていく。
　
　美夜の水着を拝め、自慢できそうなフェリシタスは話を聞いていた。
　話題は美夜の同棲生活。
　特に何もないと言う美夜の反応を目に夕日へ視線を――、
「あ……っ！　今、瞬きましたよ？　美夜ちゃん！」
　輝く緑を指差し美夜へ顔を向ければ残念そうな瞳。楽しみにしてたのに。
「では来年、二人で見に来るといいと思います♪」
「もぅ、リシーのバカ……そんなに簡単に来られる場所じゃないじゃないの」
　宿に戻ったら互いの恋愛話になりそうだ。
　そんな美夜の脳裏に彼の姿が過るのだった。
　
「やっべえもう大分暮れて来てるぜ！」
　サイクリングで島内観光をしていた３人だが、その時は迫っている。
「魅勒、付いてきてます？！」
　允の言葉に亮が振り向けば、魅勒も必死にニシ浜を大爆走。
「これだけでも凄くキレイ……あ？！」
　ギリギリ到着の中での夕日に思わず見蕩れる魅勒だが、その一瞬。
「……あ、アレ……今観た！？　観たよな！？」
「は、はい 今確かに……！　ね！　魅勒も観ましたわよね……」
　輝く緑を目にした允と亮が魅勒へ振り向き――ぱしゃり。
「さーみぃめっちゃ口開いてたよーニャシシッ♪」
「ってオォイ撮るんなら言ってくれよ顔キメとくのに！」
　カメラを手にした魅勒へ允が言えば、亮もふと笑う。
「では、どなたかに撮影をお願いしましょうか」
　今度は３人で記念の一枚をぱしゃり。
　
　夕日を二人で見るって何だか恋人のよう。
「どうしたの突然。もしかして僕じゃご不満ですか？」
　史明の言葉に赤面と共に振り払った思いが戻りかけ――、
「見た！　今見た！　緑っぽいのがキラッとしてな！　すっげぇ綺麗でさ！」
　飛び込む輝きに大はしゃぎする朔之助は、海を背にした史明に気が回らない。
「朔の方見てて勿論見れなかったけれど、それが何か？」
「いひゃ……いひゃいっへ！！」
　薀蓄と告げる筈だった想いを胸に、頬を左右に引っ張る史明は浪漫とは縁が無いとひっそり反省するのだった。
　
「沖縄は楽しかったかい、のどか？」
「はいっ、入夜さんと陽菜さんと色々回れて楽しかったです！」
　入夜と陽菜の間に座り、のどかは満面の笑みで答えて頷いた。
　二人で回った幸せな旅も明日が最終日。
　入夜が見つめるのは夕日に映える、愛しい人。
「……もっと想い出、作ろうか」
　顎に指を掛け、交わす唇。
「愛してるよ、のどか」
「わたしも愛してます、入夜さん、陽菜さん……！」
　陽菜とも口付けを交わし、恥ずかしそうに照れるのどかは３人で奇跡の光を見つめた。
　
「楽しんでますか？」
　初めての海を目の当たりにする花吹雪だが、相馬を目に声をかけるとデジカメを手にするシアンもにこりと笑顔。
　尻尾を浮き輪代わりに泳いだり、砂でお城を作ったりと彩蝶とシアンは遊んだり写真を撮ったり。
　そんな３人が待つのは日が沈む一瞬だ。
「果ての世界って、すごく素敵ね……」
「見れるでしょうか」
　南の果ての水平線にシアンと花吹雪は言葉を交わし、彩蝶が見つめる中、太陽は沈み――、
　その瞬間が瞳に写る。
「あれがグリーンフラッシュなんだね！　太陽があんな色になるなんて幻想的だね」
「素敵だったわねー！　皆で見れたのは最高の思い出ね！」
　楽しそうにはしゃぐ彩蝶とシアン。
「わぁ……凄く、綺麗、ですね」
　夕日を見つめる二人をデジカメに納め、花吹雪は皆としばらく夕日を眺めいると、きらりと一番星が瞬いた。
　
●満天の煌きの下で
　南の島の静かな夜。波の音を耳に似合いもしない人生とかを語りたくなってしまう。
　望遠鏡で眺めた大地は寝転び満天の夜空を仰ぎ見た。
　自分の願い事なんてないが、知り合いの幸せ位は祈っておこうかな。
　流れる光を目に、珈琲を飲む大地が知り合いの幸せを祈る頃、
「ナノナノ……ナノナノ～！！」
　誰もいない場所で蒼騎から離れた白豚は、空を見上げて鳴いていた。
　目を潤ませ叫ぶ様子は流れ星に願いでもしているのだろうか。
「ナノ？　ナノナノ～♪」
　サトウキビを喜ぶ空腹の白豚を目に、蒼騎は流れる星を仰ぐのだった
　
　波の音を聞きながら、智優利と嶺滋は星を眺めていた。
「あなたと手を繋いで、そばにいられる幸せを感じたい……なーんてね☆」
　たまにはセンチメンタルになってしまう。そんな智優利は瞳を向ければ、
「一緒に来れて良かった」
　嶺滋の言葉ににこりと笑顔。
「いつも突っ走ってて元気なわたしだけど、これからもそばにいてね！」
　智優利と会ってなかった頃の俺からしたら、流れ星に願い事しなくても十分かな。
　笑顔で言う智優利を背に一筋の光。それを目に嶺滋は優しく頷くと、スィランと未散も満天の星空を眺めていた。
「わ、凄い！　木々とか遮るものがないから一面星空だね……！」
「本当だ……手が、届きそう」
　大切な人と見上げる星空は、毎日見るそれとはまるで違って見える。
　驚きと嬉しさに背の羽をパタパタさせる未散が腰を下ろせば、愛しい人のぬくもりに包まれる。
「またこうして……二人で色んな思い出作ろうね」
「もちろん……たくさん、たくさん……作ろうな」
　誓うスィランの袖を指先で掴む未散は微笑み、幸せな二人は再び空を仰ぎ見る。
　
「本当に笑えてくるくらいなにもねぇとこだな」
　靴を手に素足の啓を横に葉は星空を仰ぎ、歩く。
「なあ、お前は知ってたか？　星がこんなにも明るいものだって。俺、はじめて知ったわ」
「いや……俺も」
　白砂に足を取られ、振り返ると二人の跡は波に流され消えていく。
　少し寂しいような気分に顔を戻し、ふと空を仰ぐと一筋の光。
「……なあ、ひょっとしてあれじゃね？」
　そう言い葉が指差すのは光が落ちた先、水平線にある小さな輝き。
　込める願いもなく、二人はこの瞬間を刻む中、雄哉に耳に入るのは楽しそうな声。
　咎人である自分はあの輪には入れない。
　そんな思いを胸に昼間泳いだこの場所で寝転び星空を眺めていると、広がるのは壮大かつ荘厳な光景。
　こんな星空、見たことがない……。こんなに綺麗なものなのか。
　雄哉は言葉なく星空、南十字星をいつまでも仰いでいた。
　
「夜なのに星の光で空が明るいね」
　星灯りの下、紫王が振り向けばユメは何やら考え事をしているような。
　もしや先日の事を根に持っているのだろうかと手を繋げば、ユメは嬉しそう。
　ぶんぶんと手を振り、そのまま引っ張りグルグル踊り、
「あ、足がとられて転……」
　手を繋ぐ二人はそのまま浅瀬にドボン。
「星が綺麗だねえ、紫王」
　波の音を間近に感じ、ユメはそのまま仰ぎふと水平線に見えるのは――、
「アレって南十字星かな」
　紫王の言葉に二人はしばらくその星を見つめていると、星座早見盤を手に命も満天の星空を目にしていた。
　遠出の経験がなく、この波照間島で楽しみにしていた星空は予想以上のものだ。
　早見盤を頼りに南十字星を見つける命の隣には恩。二人で楽しんだ疲れらか、瞳は睡魔に閉じかける。
「幸せだなァ」
「うン……」
　たくさん遊んだ日中を思い出し、交わすのはただそれだけの、短い言葉。
　さわりと冷たい夜風が流れ、寄り添う二人は互いのぬくもりを感じながら穏やかな波音を耳に星空を見つめた。
　
「あ、うん。見える見える。スピカ……あれだね」
　クリスに教わり桃夜は輝く一等星を見つければ、次に探すのは南十字の一番上の赤い星。
　綺麗な星空の下でクリスは根気よく教え、
「あぁ！　見つけた！」
「よかった。綺麗だろう？」
　ようやくの発見に桃夜は嬉しそう。
　すごく綺麗だ、クリスの次に。
「あ、流れ星……！　何かお願いしようか」
　南十字星の間を縫う一筋の光を目するクリスを隣に桃夜も願うが、それは願わずとも叶えるつもりだ。
　流れる星を目に、桃夜はクリスを見つめる中、顔を寄せて記憶を辿るミールィもヴォルクに南十字星を教えていたが、睡魔に勝つ事は出来なかった。
「起きろって。星を見たかったんだろ？」
　肩を揺らしても寝言を言うだけの様子にヴォルクがえいっと鼻をつまむと、そのいたずらにようやく目を覚ます。
　ほんのり拗ね気味に何かを言いかけ黙る妹に兄はごめんと頬にキスをすれば、
「もう一度してくれたら、機嫌なおしてあげてもいいよ……？」
　お姫様のお願いにはしょうがない。
　ヴォルクはミールィの頬を両手で優しく包み――。
　
「島の南部はサトウキビ畑ばかりだから、星を見るには都合が良い。星空観測タワーまで行かなくても、水平線が見えるなら、その辺の道路で問題ないよ」
　１０年ぶりの波照間島でヤギ料理の手伝いを思い出す八雲は記憶を頼りに道案内。
「ああ、運が良いな……今日は水平線の靄が無い」
　許可を得たサトウキビ畑の中、３人は毛布と双眼鏡を手に活動も兼ねて南十字星探し。
　偽十字との区別もチェック済みだ。
「あれかな？」
　コールサックを目に星座表アプリを使い、澪音が指差すのはω星団やマゼラン雲に――、
「見た！？　お願いしなきゃ！」
　流れる星にはしゃぐミナは微笑む澪音と顔を合わせ、願うのは想い人へのベタな願い。
「感動～来て良かった！」
「来てよかったわ」
　南十字星や様々な星を記憶に刻み、星は流れていく。
　
「『星空に一番近い島』かぁ。わかる気がするよね」
　肩を寄せ、星を眺めるマシューは言いながらそっと手を伸ばす。
　見上げれば手が届きそうな、深呼吸すれば吸い込みそうなほどの星。
「マシューくん、幸せってこういうことなんだね」
　マコトの言葉にマシューも頷き、思う。
　こんなに幸せな時間を過ごせるなんて、奇跡みたいだと。
「……あ、あれ、南十字星！」
「え？　南十字星？　どれ？」
　指差すマコトにマシューも身を乗り出せば、二人は更に急接近。
　互いのドキドキが聞えそうな、そんな夜。
　観月からのメールにソワソワしつつ、乃絵は二人でニシ浜に。
　タオルを手に足を漬けたり水をかけたり。
「ほんとに見れるんだ」
　東京から出る機会のない二人は焼き付けるように輝く南十字星を見つめる中、ふと指した指をもう少し上に――流れ星。
「あ、もひとつ」
　何かお願いしたかと聞けば何故か手で塞いだ口から返ってくるのは、
「秘密です」
　短い言葉。
　――今日だけじゃなくて、また一緒に空を見られますように。
　そっと観月の袖に手を伸ばし、乃絵は消えた星へと願いを託す。
　
「この二年間は、悠一にとってどんな二年間でしたか？」
　高校の修学旅行から２年。
　彩歌は手を繋ぎ海岸を歩く悠一へ問えば、二人の胸中を過るのは様々な出来事や経験、そして互いの存在。
　そう、互いが無い未来など二人には想像出来ない。
　――だから。
「……彩歌、これから先もずっと、俺と隣を歩いて欲しい」
　頬を朱に染める彩歌に言葉はなく、二人の間を静かに時が流れていく。
「その時が来たら、また二人で……ここに来ようか」
　優しい波の音と数多の星の中、星がいくつも流れていった。
　
●
　爽やかな空から陽は落ち、瞬く奇跡。
　満天の空は煌き、星が流れていく。
　一生に一度きりの１日は、それぞれの思いと共に過ぎていくのだった。

作者：カンナミユ	重傷：なし 死亡：なし 闇堕ち：なし
種類： 公開：2015年6月25日 難度：簡単 参加：51人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 9／キャラが大事にされていた 3
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